宮沢賢治 銀河鉄道の夜で感想文 🌌「ほんとうの幸せ」って何?

 


やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズもはや第72回。

今回は、宮沢賢治の人気作品
『銀河鉄道の夜』
(遺稿。執筆時期は1924-31と推定)
  


について、よりよい読書感想文を
書きたいという人のために、
その方法を探って行きたいと思います。

けっこう長いので全文を読む気に
ならないという人は、せめてこちらで
「あらすじ」を押さえてくださいね。

宮沢賢治 銀河鉄道の夜のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で

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👉 賢治が伝えようとしたこと

まず、宮沢賢治が多くの童話や詩をとおして
伝えようとしていたと見られる「思想」
(「信仰」といった方がいいかも
しれませんね。法華宗を熱心に信仰して
いたとのことですから)
を押さえておきましょう。

それを1文や2文で言い表してしまおう
というのは乱暴かもしれませんが、
たとえばこの名言など、その役割を
果たすものの一つだろう
と私は思っています。

世界がぜんたい幸福にならない
うちは個人の幸福はあり得ない。
          (農民芸術概論綱要 序論)

Skulls-s


で、もしこの「思想」を『銀河鉄道の夜』
から拾い出すとするなら、
たとえば次の二つが考えられます。

一つ目は、物語の終わりの方で銀河鉄道に
乗車してくる姉弟の姉の方がする話の中で
「蠍(さそり)」が思ったこと。

どうしてわたしはわたしのからだを
だまっていたちにくれてやら
なかったろう……
どうか神さま……この次には、
まことのみんなの幸いのために
私のからだをお使いください。


二つ目が、その後しばらくして 
主人公のジョバンニが思うことです。

僕はもう、あのさそりのように
ほんとうにみんなの幸いのためならば
僕のからだなんか、百ぺん
灼(や)いてもかまわない。


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異論もあるかもしれませんが、ここは
とりあえず、要するにこういう「思想」を
賢治は伝えたかったのだと仮定しましょう。


でも、それを直接に「こう考えなさい」と
お説教しても、しんから納得して、
同じように考えるようになる読者は
おそらくあまり多くないでしょう。

ただ、もしここにとても魅力のある物語を
作り上げて、読者(童話なので主に子供)を
巻き込んで、主人公と同じ喜怒哀楽に
つきあってもらうことができるならば、
その読者の考えを作者と同じ(または近い)
ものにしていくことも可能なのではないか。

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賢治の創作意欲のおおもとは、
こういうところにあったように思われます。

もちろん、それだけではなく、
いろいろな遊び心もまじってくるわけで、
だからこそ魅力的な文学の世界が
作り上げられたわけですが……。



👉 賛同しても批判してもよい

さて、以上のような見方を前提に、
読書感想文をどう書くかを考えてみますと、
大きく分けて3つぐらいの方法が浮かびます。

.上記のような賢治の「思想」を
作品から抜き出して、「そうだ、そうだ。
正しいことを言っている。感動した。
自分もこれからは……」などと殊勝に書く。

.その「思想」について、  stone-figure-174980_150
「自分は納得がいかない」と
疑問を呈し、「ここが
おかしいのでは?」と
具体的に批判する。

.その「思想」を説得するために
作者が試みている工夫の跡を押さえ、
作家としての技術力を評価する。


は、それが受け入れられるかどうか、
相手(提出先の先生)の顔色も見なくては
なりませんが、ともかくまで行ければ、
それはすでに「感想」の域を超えた
「批評」でもありますから、その高度さが
評価される可能性は小さくありません。

そこで、今度はこのの具体的方法を
考えます。

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👉 ファンタジー(幻想物語)の枠組み

まず物語全体の構成を押さえておくと、
主人公ジョバンニが現実の世界から
「銀河鉄道」という夢のなかのような
世界へ旅し、やがて現実に戻ってくる
というファンタジー(幻想物語)の
枠組みをもっていますね。

その「銀河鉄道」(幻想)の世界は、
たとえば『不思議の国のアリス』などの
「不思議」の世界にも似ていて、
見るもの聞くもの、そして心の動きは
現実世界とは微妙に異なる
《夢のなか》のような動きをします。

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この点は夏目漱石の『夢十夜』などにも
通じますね。

興味ある人はコチラへ。
夏目漱石 夢十夜の第一夜をこう解釈☄美しい短篇で感想文を!


ただ、『不思議の国のアリス』や『夢十夜』
との大きな違いは、それら《夢》のような
《心の旅》を通して、賢治が《人の道》
(倫理・道徳または宗教)を教えようと
していることでしょう。

つまり「銀河鉄道」という心の動き方が
現実界とは微妙に異なる世界を設定し、
そこでのジョバンニの心理の微妙な推移に
読者につきあってもらうことで、
読者の心、考え方にも変化を与える
(漱石はこれを「感化」と呼んでいますが)……
という目的がはっきりしているように
読めるんですね。

そのあたりの構成方法を、
具体的な文章に即して見て行きましょう。


👉 「鳥捕り」が気の毒でたまらない

「銀河鉄道」の旅が始まるや否や、
その日、現実の世界で自分をいじめる
ザネリらのグループにいた親友の
カムパネルラが現れ、こんなことを
口にしてジョバンニを驚かせます。

「ぼくはおっかさんが、ほんとうに
幸いになるなら、どんなことでもする。
けれどもいったいどんなことが、
おっかさんのいちばんの幸い
なんだろう」


その後、奇妙な「鳥を捕る人」が乗車して
きて、はじめジョバンニは彼をばかにして
いるのですが、「雁の足」と呼ばれる
お菓子をもらって食べてから、
「このひとをばかにしながら、
この人のお菓子をたべているのは、
たいへん気の毒だ」と思い直します。

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その後、この「鳥捕り」と会話し、
彼の捕る鷺(さぎ)の姿も現れたり消えたり
しているうち、この人が「気の毒で
たまらなくなり」ます。

もうその見ず知らずの鳥捕りの
ために、ジョバンニの持っている
ものでもなんでもやってしまい
たい、もうこの人のほんとうの
幸いになるなら、自分があの
天の川の河原に立って、百年
つづけて立って鳥をとってやっても
いいというような気がして……


欲しいものは何かと尋ねようとすると、
鳥捕りはもう消えており、ジョバンニは
くやしがります。

僕はあの人がじゃまなような
気がしたんだ。
だから僕はたいへんつらい。



👉「ほんとうの幸福」が体感されるまで

ふさぎこんでいると、その後乗車して
きた灯台守と家庭教師の青年に
こう言われます。

(灯台守)「なにがしあわせか
わからないです。
ほんとうにどんなつらいことでも、
それがただしいみちを進む中での
できごとなら、峠の上り下りも
みんなほんとうの幸福に近づく
一あしずつですから。」


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(家庭教師の青年)「ああそうです。
ただいちばんのさいわいに
いたるために、いろいろの
かなしみもみんな、
おぼしめしです。」


でも、「ほんとうの幸福」とか
「いちばんのさいわい」とかいわれても、
それはこの時点では観念的なお説教に
すぎませんから、ジョバンニは「幸福」を
体感できるわけではありません。


実際にそのあとも、カンパネルラに対する
嫉妬めいた「いらいら」がからんでの
「かなしい」「さびしい」気持ちに
支配され続けていますから、
少しも「幸福」ではありません。

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でもその後、新たな乗客との交流などから、
この重苦しい心理も徐々に克服されて
「こころもちが明るく」「軽く」
なっていきます。

そこへ来てはじめて心にしみ入ることに
なるのが、最初に述べた、「蠍」の話
ということになるわけですね。


そしてラストは『不思議の国のアリス』
と同じように夢からさめるのですが、
覚めたあとの現実の世界で、
カムパネルラが、川に落ちたザネリを
助けようとして死んだことを知ります。

つまり「銀河鉄道」の乗客はみな
どこか死者のような印象がありましたが、
カムパネルラもその例外ではなかったのです。

ゾンビ zombies-skeletons-s

ここで読者はショックを受けるでしょうが、
このショックによって、あらためて、
「銀河鉄道」でカムパネルラが言ったことや
ジョバンニと共鳴し合ったことが
読者の胸にしみ入ってくる……

そういう仕組みが考えられていること、
またそれがかなり成功しているとは
たしかに言えるんじゃないでしょうか。



👉 “高度”な感想文に向かって>

さあ、これでどうでしょうか。

え? やっぱりまだよくわからん
・゚゚・(≧д≦)・゚゚・?

それはそうかもしれません。
「思想」内容からいっても、構成の
技法からいっても、”高度”な作品には
違いありませんからね。


実際の感想文は与えられた字数にも
よるわけで、400字ぐらいなら、
そう”高度”なことを書くこともできない
でしょうから、たとえば上に引用した
文章のうち気にかかったものを読み返し、
「自分なら……」と考え合わせたりすれば、
書けそうなことは出てくるんじゃないですか?

でも800字以上なら、何かもうすこし
”高度”なことも書けるでしょう。

また賢治作品では以下の記事も
書いていますので、そちらも覗いて
もらえると、いい着想が湧くかもしれません。
雨ニモマケズ(宮沢賢治)の意味?ワカンナイと陽水は歌うけど
やまなし(宮沢賢治)のあらすじ◎クラムボン・魚・酒の意味は?
宮沢賢治 注文の多い料理店のあらすじ:短くまとめると…
注文の多い料理店(宮沢賢治) 読書感想文の書き方◎猫の視点から
宮沢賢治の”悲恋”童話作品:土神と狐~あらすじと感想文~

そのほか賢治作品をいろいろ
見てみたい場合はこちらから
探してみてください。
☆宮沢賢治の本:ラインナップ☆

え? 着想はなんとなく浮かんできたけど、
その書き方というか、要領がわからない?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、賢治以外にも
多くの作家・作品をとりあげて、
「あらすじ」や「感想文の書き方」の
記事を量産しています

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。


「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょう。

僕のからだなんか、百ぺん
灼かれようと…(iДi/~~

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