サクラさん
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』
で読書感想文を書こうと
思うんですが、何を
書いたものか…

ハンサム 教授
読んでいてグッと
来たところは?

サクラさん
ジョバンニの目に見えて
きた真っ赤な火は「蠍
(さそり)の火とわかって、
それから女の子が話す
「蠍の話」…

 

イタチに追われて死にそうに
なった蠍が、自分も虫たちを
食べてきたことを思って
「どうしてわたしはわたしの
からだをだまっていたちに
くれてやらなかったろう」
と考えるという…(😿)

ハンサム 教授
そこからジョバンニの
心持も変わってきて、
「僕はもう、あのさそりの
ようにほんとうにみんなの
幸いのためならば僕のからだ
なんか、百ぺん灼(や)いても
かまわない」と考えますね。

サクラさん
私もそういう風に
思えたらいいな…と。

ハンサム 教授
というと…現実にはそう
思えないということ?

サクラさん
だって無理ですよ。

熱いじゃないですか、
灼かれたら(😹)

ハンサム 教授
同感ですね;^^💦💦

「みんなの幸い」の「みんな」
のうちに自分は入らないん
でしょうかね?

サクラさん
そこが”宮沢賢治”なのかな。

ハンサム 教授
それなら「私は”賢治”
にはなれない…みたいな
論旨で書くことも
できますね。





というわけで、おなじみ”感想文の書き方”
シリーズ第72回は宮沢賢治の名作
『銀河鉄道の夜』(遺稿。執筆時期は
1924-31と推定)で行ってみましょ~!
  



けっこう長いので全文を読む気に
ならないという人は、せめてこちらで
「あらすじ」を押さえてくださいね。

宮沢賢治 銀河鉄道の夜のあらすじ 簡単/詳しいの2段階で

        戯画鉄道027266




感想文の例(800字)

はい、ストーリーが確認できましたら、
さっそく感想文に取り組みましょう。

まずはハンサム教授が高校生に照準を
合わせて試作した、字数制限800字
(400字詰め原稿用紙2枚)の場合の
感想文をお目にかけます。

これ、高校レベルのコンクールなどで
勝ち抜けるだけの内容を狙っていますので、
中学校や小学校のみなさんには多少、
高度かもしれませんが、参考にはなる
はずですから、ぜひお読みください。


 『銀河鉄道の夜』は、「銀河鉄道」
の旅という設定を通して主人公の
ジョバンニの心境の変化を表現して
いく童話である。

かなり長い旅だが、その要となるのが
ジョバンニの目に見えてきた真っ赤な
火が「蠍の火とわかり、それから
女の子が話す「蠍の話」だ。

 蠍はイタチに追われて死にそうに
なった時、自分も弱い虫たちを
食べてきたことを自省し「どうして
わたしはわたしのからだをだまって
いたちにくれてやらなかったろう」
と考える。

ここで私は宮沢賢治の別の童話
『よだかの星』を思いだした。

それはこの蠍の考えが、よだかが
物語の後半で考えたことと全く
同じで、またその後、体が燃えて
星になるという結末も同じ
だったから。

この蠍とよだかの全く同じ運命は
賢治が何度でも表現したかった
思想の表現なのだろう。

 

 それでは『銀河鉄道の夜』(1924年
着手)は『よだかの星』(1921年)の
焼き直しかといえば、決して
そうではない。

「蠍」(=よだか)の話を聞いた
ジョバンニは彼もまた彼らに同一化
して「僕はもう、あのさそりの
ようにほんとうにみんなの
幸いのためならば僕のからだ
なんか、百ぺん灼(や)いても
かまわない」と考えるようになる。

その心理変化を描くことが作品全体の
主眼だからである。


つまり少年を主人公に設定し、
彼がこの思想を学ぶというストリーに
作り変えることで、『よだかの星』の
思想をより効果的に若い読者に伝え
ようという試みが『銀河鉄道の夜』
だったのではないだろうか。

    火の鳥phoenix-500469_640

 なにしろ長い物語で、面白い点は
多々あったが、私に最も強く訴えて
来たのは、この「蠍」に託された
「生きることで弱者を苦しめ続ける
よりは、死んだ方がよい」という
自己犠牲の志向だった。

私自身はどうかというなら、半分は
賛同に傾きながら、やはり自分の
命は惜しい。

自分にも生きる権利はあるはずだから、
それは守るという前提で、「蠍」=
宮沢賢治的な境地に一歩でも
近づけたらと思う。
          (790字)

どうです?

うまくまとまっているでしょう。

これをそのままコピペすることは
もちろん厳禁ですが、適宜、自分らしい
ものに文章を変えて使ってもらうのは
かまいませんよ~;^^💦





世界がぜんたい幸福にならないうちは…

ところで、この感想文では、蠍とよだかの
考えを宮沢賢治自身の思想と同じと
見なしていますが、その点はOKか、
まずそれを検証しておきたいですね。

つまり「生きることで弱者を苦しめ
続けるよりは、死を選びたい」という
「自己犠牲」を称揚するような、
宗教的とも見える信条告白…


賢治の作品をあれこれ読んでいくと、
どうも本気で考えていたらしい…
ということになりそうなんですね。

たとえば上の『銀河鉄道の夜』感想文でも
引用されていたジョバンニのラスト
近くでの思い。

僕はもう、あのさそりのように
ほんとうにみんなの幸いの
ためならば僕のからだなんか、
百ぺん灼(や)いても
かまわない。


        

そして、ジョバンニのこの考えは、
あの有名な詩「雨ニモマケズ」でも
主張されているようですし、
「農民芸術概論綱要 序論」という
文章に書いていたこの信条とも
合致します。

世界がぜんたい幸福にならない
うちは個人の幸福はあり得ない。


本気でそう考えるのだとすると、
その人の「個人の幸福」はもう永久に
「あり得ない」ということになりますよね。

だってその人も「世界」の一部であり、
彼が幸福でないとすれば「世界」全体が
幸福だとはいえないわけですから。

    

この意味では、言葉通りに受け取ると
堂々巡りの自滅の思想だという批判も
できるかもしれません。



賢治が伝えようとしたこと

ともかくこの問題に突っ込みたい人は、
宮沢賢治の「思想」について多少は
探ってみる必要があるでしょうね。

それは「思想」というよりむしろ「信仰」と
呼ぶべきものなのかもしれません。

法華宗を熱心に信仰していたことも
よく知られているわけですから。


その「思想=信仰」を1文や2文で言い表して
しまおうというのは乱暴かもしれませんが、
たとえばこの名言など、その役割を
果たすものの一つでしょう。

世界がぜんたい幸福にならない
うちは個人の幸福はあり得ない。
    (農民芸術概論綱要 序論)

Skulls-s


この「思想」が『銀河鉄道の夜』に表現
されていたことは、上記の読書感想文
からもすでに明らかでしょう。

賢治の創作意欲の根源には、こういう
熱い塊があったのですね。

『銀河鉄道の夜』と重なる部分の
多い『よだかの星』については
こちらで詳しく情報提供しています。

よだかの星で読書感想文どう書く?【高校生用800字の例文つき】


またサソリという「虫」の悲しい
さが=本性〔nature〕をめぐっては
こちらもご参照ください。

サソリとカエルの話 その意味は?🐸自らの自然(ネイチャー)を知れ?)

      







ファンタジーとして読む

さて、ハンサム教授が試作しました上記の
読書感想文には異論もあるでしょうし、
また自分は違う角度から書きたい…
といった不満もあることでしょう。

そこでまた別の視点からする感想文の
可能性を考えてみたいのですが、
その一つは、この童話全体をファンタジー
(幻想物語)として読むという方法です。


物語全体の構成を押さえると、ジョバンニが
現実の世界から「銀河鉄道」という夢の
なかのような世界へ旅し、やがて現実に
戻ってくるという枠組みをもっていますね。

その「銀河鉄道」(幻想)の世界は、
たとえば『不思議の国のアリス』などの
「不思議」の世界にも似ていて、見るもの
聞くもの、そして心の動きは現実世界とは
微妙に異なる《夢のなか》のような
動きをします。


この点は夏目漱石の『夢十夜』などにも
通じますね。

『不思議の国のアリス』や『夢十夜』に
ついては、こちらで詳しく
情報提供しています。

不思議の国のアリス 原作のあらすじ ハチャメチャすぎて怖い?
         

夏目漱石 夢十夜の第一夜をこう解釈☄美しい短篇で感想文を!
         
夢十夜(漱石)を解説🌛 第二夜でついに現前しない「無」とは?

漱石 夢十夜のあらすじと解釈:第三夜で感想文ならどう書く?

夏目漱石 夢十夜「第六夜」のあらすじと解説:運慶が生きている?


ただ、『不思議の国のアリス』や『夢十夜』
との大きな違いは、それら《夢》のような
《心の旅》を通して、賢治が《人の道》
(倫理・道徳または宗教)を教えようと
していることでしょう。

つまり「銀河鉄道」という心の動き方が
現実界とは微妙に異なる世界を設定し、
そこでのジョバンニの心理の微妙な推移に
読者につきあってもらうことで、読者の心、
考え方にも変化を与える
(漱石はこれを「感化」と呼んでいますが)……
という目的がはっきりしているように
読めるんですね。

そのあたりの構成方法を、具体的な
文章に即して見て行きましょう。



「鳥捕り」が気の毒でたまらない

「銀河鉄道」の旅が始まるや否や、その日、
現実の世界で自分をいじめるザネリらの
グループにいた親友のカムパネルラが現れ、
こんなことを口にしてジョバンニを驚かせます。

「ぼくはおっかさんが、ほんとうに
幸いになるなら、どんなことでもする。
けれどもいったいどんなことが、
おっかさんのいちばんの幸い
なんだろう」


その後、奇妙な「鳥を捕る人」が乗車して
きて、はじめジョバンニは彼をばかにして
いるのですが、「雁の足」と呼ばれる
お菓子をもらって食べてから、
「このひとをばかにしながら、
この人のお菓子をたべているのは、
たいへん気の毒だ」と思い直します。

     鶴と月Free-to-fly-s

その後、この「鳥捕り」と会話し、
彼の捕る鷺(さぎ)の姿も現れたり消えたり
しているうち、この人が「気の毒で
たまらなくなり」ます。

もうその見ず知らずの鳥捕りの
ために、ジョバンニの持っている
ものでもなんでもやってしまい
たい、もうこの人のほんとうの
幸いになるなら、自分があの
天の川の河原に立って、百年
つづけて立って鳥をとってやっても
いいというような気がして……


欲しいものは何かと尋ねようとすると、
鳥捕りはもう消えており、ジョバンニは
くやしがります。

僕はあの人がじゃまなような
気がしたんだ。
だから僕はたいへんつらい。






「ほんとうの幸福」が体感されるまで

ふさぎこんでいると、その後乗車して
きた灯台守と家庭教師の青年に
こう言われます。

(灯台守)「なにがしあわせか
わからないです。
ほんとうにどんなつらいことでも、
それがただしいみちを進む中での
できごとなら、峠の上り下りも
みんなほんとうの幸福に近づく
一あしずつですから。」


                004112

(家庭教師の青年)「ああそうです。
ただいちばんのさいわいに
いたるために、いろいろの
かなしみもみんな、
おぼしめしです。」


でも、「ほんとうの幸福」とか
「いちばんのさいわい」とかいわれても、
それはこの時点では観念的なお説教に
すぎませんから、ジョバンニは「幸福」を
体感できるわけではありません。


実際にそのあとも、カンパネルラに対する
嫉妬めいた「いらいら」がからんでの
「かなしい」「さびしい」気持ちに
支配され続けていますから、
少しも「幸福」ではありません。

     

でもその後、新たな乗客との交流などから、
この重苦しい心理も徐々に克服されて
「こころもちが明るく」「軽く」
なっていきます。

そこへ来てはじめて心にしみ入ることに
なるのが、最初に述べた、「蠍」の話
ということになるわけですね。


そしてラストは『不思議の国のアリス』
と同じように夢からさめるのですが、
覚めたあとの現実の世界でカムパネルラが
川に落ちたザネリを助けようとして
死んだことを知ります。

つまり「銀河鉄道」の乗客はみなどこか
死者(亡者)のような印象がありましたが、
カムパネルラもその例外では
なかったのです。

    

ここで読者はショックを受けるでしょうが、
このショックによって、あらためて、
「銀河鉄道」でカムパネルラが言ったことや
ジョバンニと共鳴し合ったことが
読者の胸にしみ入ってくる……

そういう仕組みが考えられていること、
またそれがかなり成功しているとは
たしかに言えるんじゃないでしょうか。





高度な感想文に向かって

さあ、これで書けそうではないでしょうか。

え? やっぱりまだよくわからん
・゚゚・(≧д≦)・゚゚・?

それはそうかもしれません。
「思想」内容からいっても、構成の
技法からいっても、”高度”な作品には
違いありませんからね。


実際の感想文は与えられた字数にもよる
わけで、400字ぐらいなら、そう高度な
ことを書くこともできないでしょうから、
たとえば上に引用した文章のうち気に
かかったものを読み返し、「自分なら……」と
考え合わせたりすれば、書けそうなことは
出てくるんじゃないですか?

でも800字以上なら、何かもうすこし
高度なことも書けるでしょう。

たとえば上に見た「世界が
ぜんたい幸福にならないうちは
個人の幸福はあり得ない」という
賢治の考えに納得いかない人は
これに反論してみても
いいんですよ。

そこを狙った「小論文」の
例をこちらの記事で
お読みいただけます。

就活 小論文の書き方 ✒よく出るテーマとその対策【例文つき】



また賢治作品では以下の記事も
書いていますので、そちらも覗いて
もらえると、いい着想が
湧くかもしれません。

雨ニモマケズ(宮沢賢治)の意味?ワカンナイと陽水は歌うけど

やまなし(宮沢賢治)のあらすじ◎クラムボン・魚・酒の意味は?

宮沢賢治の”悲恋”童話作品:土神と狐~あらすじと感想文~

     

宮沢賢治 注文の多い料理店のあらすじ:短くまとめると…

注文の多い料理店(宮沢賢治) 読書感想文の書き方◎猫の視点から

そのほか賢治作品をいろいろ
見てみたい場合はこちらから
探してみてください。

🌌宮沢賢治の本:ラインナップ🌌


え? 着想はなんとなく浮かんできたけど、
その書き方というか、要領がわからない?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、賢治以外にも
多くの作家・作品をとりあげて、
「あらすじ」や「感想文の書き方」の
記事を量産しています

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょう。

僕のからだなんか、百ぺん
灼かれようと…(iДi/~~

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