安部公房 鞄をどう解釈 ? 主題は? 問題を見つけて感想文へ

 


やあやあサイ象です。


「感想文の書き方」シリーズも、
早いもので、第73回を迎えます。

今回の挑戦は安部公房の短編小説で、
高校現代文の教科書に採用されている
『鞄』(1976。『笑う月』所収)! 
         ⇩


もちろん本文を読んでいないと
お話にならないので、まだの人はご一読を。

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え? 読んだけど、サッパリわからんかった?

まあ、前衛的・実験的な小説ですから、
ワカランという反応が出るのも
自然なことでしょう。


それを見越して、当シリーズでは、
本文よりわかりやすい「あらすじ」を
用意していますので、ワカランかった人は
まず、こちらでストーリーを
押さえてくださいね。
安部公房 鞄のあらすじ… 簡単/詳しくの2段階で解説



👉 映画化もされているが……

え? それでもまだワカラン?

うーん、困りましたね( ̄ヘ ̄)。

それでは、原作に忠実なこの短編映画では
どうでしょう。



え? これでも?……

まあ、こうなってくると、一般に
文学を含む芸術作品を「わかる」とは
どういうことか、という哲学問題に
入ってしまいそうですが、
それはまた別の機会に譲るとして、
この記事の目的に戻りましょう。

えーと、それは、安部公房の『鞄』で
感想文ないしレポートをどう書くか、
という問題でしたね。

バッグ images

一読して「ワカラン」という反応が出やすい
ということは、いろんな解釈が可能だ、
ということでもあるはずですから、
ここはひとつ、私(サイ象)なりの解釈を
提示して読者のみなさんの参考に供する
ということでご勘弁いただこうと思うんです。



👉 鞄に吸い込まれた「私」

この鞄とともに現れた青年に、語り手の
「私」は最初はあきれながら、徐々に彼の
世界に引き込まれていってますね。

彼を拘束しているというその鞄に
自分も拘束されていくのです。

採用しなくてもいいのに採用し、鞄を
置かせなくてもいいのに置いて行かせます。


この流れは、明確な意志によったのでは
ないとしたら、無意識の願望によって
生み出されたもので、「私」はこの鞄に
吸い込まれたのだともいえます。

055373

ここで別の作品に飛びますが、たとえば
川上弘美さんの『神様』(&『神様2011』)
で主人公の「わたし」は、心の底のほうで
「くま」を恐れているにもかかわらず、
すべて「くま」の言うなりに行動して
しまいますね。

『神様』のこの解釈をめぐっては、
こちらの記事をご参照ください。
神様(&神様2011)のあらすじと感想:くまをどう解釈する?

またこの種の「夢小説」の源流に
あると思われる夏目漱石の『夢十夜』
をめぐっては、こちらを。
夏目漱石 夢十夜の第一夜をこう解釈笘關€ 美しい短篇で感想文を!
漱石 夢十夜のあらすじと解釈:第三夜で感想文ならどう書く?


それとほぼ同じことが『鞄』の「私」にも
起こっているのではないでしょうか。

「私」はこの青年と鞄とによってある種の
「夢見」または催眠状態に落とし込まれ、
催眠術にかけられた人が催眠術師の暗示の
とおりに動いてしまう
:*:・( ̄∀ ̄)・:*:
というのに近い状況に陥っているのでは……?

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👉 「暗示」の力の恐ろしさ<

催眠術師の術中にあって夢遊病者のように
「自由」に歩いている間、心は”ハイ”
というか、恍惚に近い快感に浸かって
まさに愉悦の状態ですね。

でも、術または夢から醒めれば、ゾッと
冷や水を浴びせられる(叫び)、という意味
ではとても恐ろしい体験でもあります。

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上記別記事の「やや詳しいあらすじ」の
【結】 を見直してもらうと、その末尾に
こうありますね。

選ぶ道がなければ、
迷うこともない。

私は嫌になるほど自由だった。

結びに置かれたこの一句こそ、上のような
意味で「暗示」を受けてしまった者の
「自由」の愉悦と恐怖を見事に
凝縮させたものではないか……

私はざっと、そんなふうに
解釈しているんです。


これはまあ「暗示」の力、その空恐ろしさの
方向へ行こうとしている点で精神分析的
(フロイト的)な流れに棹さす解釈と
見られるかもしれませんね。

精神分析とフロイトに大きな影響を受けて
成長した芸術運動が「シュルレアリスム」
で、日本語の「シュール」はここから
来ています。

シュルレアリスムに関してはこちらを参照。
シュールの意味と使い方:お笑いの世界から芸術的”超現実”へ
原民喜 夏の花で感想文:夢が交錯する”超現実派”の文体を解説

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また特に「暗示」の力については、
その恐ろしさを描ききった傑作が
シェイクスピアの『オセロ』も
参照してください。
シェイクスピア オセロのあらすじと名言:漱石の解説つきで
シェイクスピアのオセロを講義:漱石の名言「白砂糖の悪人」?




👉 「自由」をどう読むか

さて、これらは作品をいわば心理的に
読んでいく方法ですが、別な見方、
別様の解釈ももちろん可能です。

たとえば、本文に出てきたこの
「自由」の語をもっと哲学的に、たとえば
実存主義流に受け取る人もあるでしょう。


「私は嫌になるほど自由だった」
という主人公の矛盾した心情を
「人間は自由という刑に処せられている」
というサルトルの名言に重ねてみるとか……

囚人 images

あるいは作品に出てきて、タイトルにも
なっている「鞄」自体になんらかの「意味」
を読む、なにかの「象徴」と見なす…
という解釈も可能かもしれません。

でも、この方法はいかにも古くさく、
読みの、それこそ「自由」を損なうもの。

安部公房文学の前衛性、新しさに
そぐわないんじゃないかと思うんです。

この点に関しては、もう一つの
安部公房作品『棒』を論じた
こちらの記事でも解説しています。
安部公房 棒のあらすじ:このわからない短編で感想文だって?
棒(安部公房)の考察と解説 笳泊O衛性を読み取ってテスト対策

そのほか安部公房の本を早く安く手に
入れたい場合は、Amazonが便利です。
こちらから探してみてください。

笳蝿タ部公房の本:ラインナップ笳髞€



👉 まとめ<

さあ、どうでしょう。

いくつかの解釈例をお見せし、
関連作品とその論の紹介もしました。

それらのうち、どこか気に入った部分を
参考にすれば、なんとか自分なりの
ものが書けそうではないですか?


ん? 書けそうなテーマは
浮かんできたけど、具体的に
どう進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、日本と世界の種々の
文学作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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