大岡昇平 野火のあらすじ:映画原作小説を簡単/詳しくの2段階で

 


やあやあサイ象です。

ついに100回を突破した
「感想文の書き方」シリーズ。

今回は早くもその第115回((((((ノ゚⊿゚)ノ

「あらすじ」暴露サービスとしては
第70弾となります。

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今回は戦争文学の金字塔、
大岡昇平の『野火』(1952)に挑戦です。
 


さて、一口に「あらすじ」を
知りたいといっても、
話の骨子だけでいいという場合から、
読書感想文を書くんだから
分析・解説つきの詳しいものがほしい、
という場合まで、千差万別でしょう。


そこで出血大サービス((((((ノ゚⊿゚)ノ

「ごく簡単なあらすじ」と
「やや詳しいあらすじ」の
2ヴァージョンを用意しましたよ~~(^^)у


Ψ ごく簡単なあらすじ(要約)

まずはぎゅっと要約した
「ごく簡単なあらすじ」。

レイテ島の分隊と野戦病院との間を
行き来させられた肺病持ちの「私」は、
病院の周囲をたむろする群れに入り、
安田・永松の二人組と知り合う。

米軍の攻撃で病院も燃え、
孤独に歩いて行くと、無人の
小屋に辿り着き、そこで
カモテ芋などを食べて生き延びる。

近辺に無人の村と教会堂を見つけ、
入ると、祭壇の十字架に心打たれる。

小屋に男女二人が入って来、
女は撃ち殺し、男には逃げられる。

林をさまよったあげく出くわした3人の
日本兵から、所属していた隊の全滅と
レイテ島全兵士のパロンポン集合令を
知らされ、彼らに同行する。

路傍にころがる日本兵の死体が
増えていく道中で、安田と永松と合流
するが、敵襲の混乱で、また一人になる。

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丘の頂上の木に背をもたせた将校が
「俺が死んだら、ここを食べても
いいよ」と上膊部を叩いて息絶える。

右手で剣を抜いたが、その瞬間、
「私の右の手首を、左の手が握った」。

「神」を意識しつつ横臥していた私に
不意に永松が声を掛け、「黒い煎餅の
ようなもの」を口に押し込み、
「猿の肉さ」とうそぶく。

永松は安田を撃ち殺す結果となり、
「天使」として「神の怒りを代行」
しなければと感じた私は、
永松に銃を向ける。

この時彼を撃ったかどうかは
「記憶が欠けている」が、その後
捕らえられ、精神病院に送られて、
今、この手記を書いている。


どうでしょう?

え? なんだかよくわからん?

それでは塚本晋也監督による
2015年の映画化作品の予告編を
ご覧いただきましょうか。



え? やっぱりよくわからん?

まあ、そうかもしれません。

この小説、かなり高度な哲学的・
宗教的考察のちりばめられた
作品でもあって、ストーリーを追う
だけではおよそ真価は伝わりません。

ハイ、そういうわけで、やっぱり
「やや詳しい」ヴァージョンの
「あらすじ」を読んでいただくほかない、
ということになります。

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「一 出発」から「三九 死者の書」
に至る全39章からなっていますが、
実質的な物語は「三六 転身の頌」までで
「三七 狂人日記」以下は、
それまでの全体が精神病院患者の
手記だったことを明かす「後日談」の
ようになっています。

そこで以下の「やや詳しいあらすじ」では
「三六」までの各章を私の判断で
「起・承・転・結」の4部に分割し、
そのあとに「後日談」をつける
という形で記述していきます。

「  」内と「”」印の囲みは
原文の引用です。



Ψ やや詳しいあらすじ


【起】(「一 出発」~「六 夜」)
レイテ島の西岸に上陸して間もない
1944年11月下旬「私」こと田村一等兵は
軽い喀血で山中の野戦病院へ送られた
ものの3日後に、治癒を宣告されて帰隊。

が、分隊長は「馬鹿やろ」「肺病やみを、
飼っとく余裕はねえ」と私を殴る。

病院前で何日座り込んでも入れて
もらえなければ手榴弾で死ねと、
6本のカモテ芋だけ渡されて、
分隊を追い出される。

生涯の最後の幾日かを「私自身の思う
ままに使」えるという「一種陰性の
幸福感が身内に溢れる」のを感じつつ
住民が立ち退いた村を出て、6キロ先の
野戦病院へ向かう。

河原の対岸に一条の黒い煙を見る。

それが不要物を焚くただの「野火」か
「ゲリラの原始的な合図」かは不明
ながら、「敵」であるフィリピン人の
存在を示してはいる。

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川に沿って林の中の道を進むと小屋が
あってフィリピン人の男がいたので、
銃を構えると「今日は、旦那」
「You are welcome」と卑屈に笑う。

「芋をやろうか」「待っててくれ」
などと言って林の奥へ行ったきり、
男が消えたので、仲間を連れて戻る前に
立ち去るべく、林の中を進む。

林が切れると、川の向こうの野火は、
いつの間にか、2本になっている。

足を速め、再び入った林も尽きると、
広い草原に出、そこでも野火を見る。

野火の主や目的に疑問を抱きながら、
その付近は迂回して進み、朝に出た
野戦病院に再び辿り着く。

民家を利用した野戦病院では、軍医2名、
衛生兵7名が約50名の患者を診ている。

私ははたして入院を許可されず、
小屋の周辺にたむろする8名加わる。

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日が暮れ、病院が食事時間になると、
熱帯潰瘍で片足が膨れ上がった中年の
病兵、安田が「俺達も飯にするか」と
杖を突いて林の奥へ入って行く。

安田は煙草の葉を大量に腹に巻き、
医務室に行ってはこれを芋と
取り換えているという。

この安田や若い永松の話を聞きながら、
眠りに入った私は、野火の幻像を見る。



【承】 (「七 砲声」~
「一八 デ・プロフンディス」)
明け方、砲声で目を覚ますと、
軍医たちは谷間の奥へと走り、
何名かの負傷兵が続く。

ひとりで林に入り、登った丘から
燃えている野戦病院を見た「私は
哄笑を抑えることが出来なかった」。

「愚劣な作戦の犠牲」となって、
「虫けらのように逃げ惑う同胞の姿」が
「この上なく滑稽に映った」からだ。

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行く手には死と惨禍のほかは何もない
ことは明白ながら、最期の瞬間まで
「自身の孤独と絶望を見極めようという、
暗い好奇心」に駆られて歩いて行く。


丘陵地帯に迷い込み、絶えず砲声を
聞きながら誰にも会わない数日が過ぎる。

無人の小屋に辿り着き、鶏は捕まえ
損ねたが、カモテ芋の木を見つけ、
すぐに一本を倒して芋をかじる。

豆もあり、何日かをそこで過ごすが、
火がなく加熱できないため下痢が始まる。


近辺に無人の村と教会堂を見つけ、
入って祭壇に十字架を見ると、
現在は懐疑的・快楽的な無神論者ながら
少年時に心酔していたキリスト教が
死を控えた「心の空虚」に入り込み、
その「人間的映像」に心を占められる。

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さらに歩き続け、日本兵の死体が
無数に横たわる村に入り、そこでも
教会堂に入ると、祭壇の十字架を見て、
「床の埃に伏して私は泣いた」。

「デ・プロフンディス」
(われ深き淵より汝を呼べり)
という声を聞いて振り向くが、
「私はそれが私の幻聴であることを
意識していた」。

もし「現在私が狂っているとすれば、
それはこの時からである」。

「現在」がどの時点を指すのか
ここでは不明ですが、それが
終戦後、精神病院でこの手記を
書いている時点だということが、
小説の最終部分で明かされます。


教会堂を出て司祭館に入り、
台所でマッチを探すが見つからず、
長椅子で眠りにつく。

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【転】 (「一九 塩」~「三0 野の百合」)
夜ふけ、男女二人が入って来たので、
銃で扉を開けて「マッチをくれ」と
現地語でいうと、女が叫ぶ。

「獣の声」としか聞こえないその悲鳴に
「怒り」の衝動を覚え、私は撃ち殺す。

わめきながら後ずさりする男の姿勢の
「ドストエフスキイの描いたリーザ
との著しい類似」に駆られて、また
撃ったが、弾は出ず、男は逃げる。

「ドストエフスキイの描いた
リーザ」は『罪と罰』の登場人物。
その運命はこちらで。

罪と罰のあらすじ:簡単版と【詳細版 前編】と感想文
ドストエフスキー 罪と罰のあらすじ【詳細版 後編】


床板を上げてみると、
麻布の袋に入った塩を発見。

殺してしまったことの「悲しみ」に
心を領されながら村を出て、
もと来た橋に立ち、銃を構えてみると
「嘔吐(はきけ)」を感じた」。

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「すべてはこの銃にかかっていた」
ことを突然了解し「私はそのまま
銃を水に投げた」。


銃を捨てたことへの後悔と諦め、
孤独と「何者かに操られている」感じに
苦しめられながら、林をさまよう。

林を出ると、3人の日本兵に出くわし、
所属していた村山隊が全滅したこと、
レイテ島の全兵士はパロンポンに
集合すべしとの軍令を知らされる。

「俺達は、ニューギニヤじゃ人肉まで
食って、苦労して来た兵隊だ」と笑う
この3人は、私の雑嚢の塩に目をつけ、
その提供を条件に仲間入りさせる。

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パロンポンへ向か、路傍にころがる
日本兵の死体が増えていく中、
野戦病院で別れた安田と永松に遭遇。

煙草を餌に安田から手下のように
使われている永松は、安田は米軍に
あえば降伏するつもりだと私にいう。

安田たちと話をするうちに、
3人から離れ、靴も壊れて裸足になる。


湿地帯にある「三叉路」で再び3人と
合流したが、敵襲(1945年の1月初め)の
混乱の中、私はまた一人になる。

木の下に眠り、雨で流されてきた山蛭に
血を吸われ、その山蛭を私は食べる。

草と山蛭だけでも塩のおかげで
なんとか体がもっていたが、
その塩も尽きたころ、路傍の死体が
臀部の肉を失っていることに気づく。

やがてそれが人間の仕業だと見抜くが、
それは自分もその肉を食べたいと
思ったことによる。


丘の頂上の木に背をもたせて動かぬ
40歳すぎらしい将校と話すと、彼は
「俺が死んだら、ここを食べても
いいよ」と左手で右の上膊部を叩き、
息絶える。

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将校の死体を窪地に運んで、
右手で剣を抜いたが、その瞬間、
「私の右の手首を、左の手が握った」。

「汝の右手のなすことを、左手をして
知らしむる勿れ」という声が
聞こえたことに私は驚かない。

それは村の教会堂で私を呼んだ
「あの上ずった巨大な声」であり、
「起(た)てよ、いざ起て……」と
歌うので私は立ち、死体から離れる。

「これが私が他者により、
動かされ出した初めである」。

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「万物が私を見て」いると感じながら
野を横切って行くと、草の間から
身をもたげた一本の花が「あたし、
食べてもいいわよ」と言う。

その時再び右手と左手が別々に動き、
私の左半身は理解する。
「これまで草や木や動物を食べていた
が、それ等は実は、死んだ人間よりも、
食べてはいけなかったのである。
生きているからである」



【結】(「三一 空の鳥」~「三六 転身の頌」)
「神」の存在を意識しながら、
河原で横たわっているところへ、
永松に声を掛けられる。

水筒の水をくれた永松は、私をじっと
見て「黒い煎餅のようなものを出し、
黙って私の口に押し込んだ」。

「口腔に染(し)みる脂肪の味」に
「いいようなのない悲しみ」が
心を貫く。

横を向いて「猿の肉さ」という永松と
安田の二人組に再び合流し、
「三叉路」で別れてから1か月に
なると知って驚く。
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安田と話すうち、うまく乗せられて
手榴弾を手渡してしまい、
返せといっても安田は返さない。

河原で永松に声を掛けられ、
手榴弾を奪われたことを告げると、
安田は自分たちを殺そうとするから、
声を出して手榴弾を投げさせて、
いったん逃げようと言う。


実際その通りになり、爆裂した手榴弾の
破片が私の肩から一片の肉をもぎ取った
が、私は地に落ちたその肉の泥を払って、
すぐに口に入れた。

永松は安田を見つけて撃ち殺し、
蛮刀で手首と足首を打ち落とす。

安田の死体を前に私は嘔吐する。

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「もし人間がその飢えの果てに、
互いに食い合うのが必然であるならば、
この世は神の怒りの跡にすぎない」。

自分が「天使」として「神の怒りを
代行しなければならない」と感じ、
林の中を駆けて、永松が安田を
撃った銃を永松に向ける。

「この時私が彼を撃ったかどうか、
記憶が欠けている」が、
「肉はたしかに食べなかった」。



【後日談】(「三七 狂人日記」~「三九 死者の書」)
私がこれを書いているのは、6年後の
東京郊外の精神病院の一室である。

山中でゲリラに捉えられ、病院船で
復員し、食前にいちいち食物に詫びる
ことから狂人と見なされた。

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これを書いたのは、私を「離人症」と
診る医師が「自由連想診察の延長」
として薦めたことにもよっていた。

手記を読んだ医師が興味をもった
「神の映像」にかんしては、
私はその不完全性を認める。

しかし銃を持った堕天使で
あった前の世の私は、人間共を
懲すつもりで、実は彼等を食べ
たかったのかも知れなかった。
〔中略〕
もし私が私の傲慢によって、
罪に堕ちようとしたちょうど
その時、あの不明の襲撃者に
よって、私の後頭部が打たれた
のであるならば、
〔中略〕
もし、彼がキリストである
ならば――
〔中略〕
神に栄えあれ。




Ψ どう書く? 感想文

さあ、どうでしょう。

書けそうですか? 読書感想文。

突っ込めるポイントには
事欠かないことと思いますが、
作者の姿勢として重要なものの一つに、
物語の全体が精神病者の書いた手記だった、
という体裁を採ったということが
ありますね。

その仕掛けをあかす第三七章を
「狂人日記」と題したことも示すとおり
これは魯迅の『狂人日記』を踏まえて
いるはずですし、また芥川の『河童』や
太宰の『人間失格』を連想させますね。
(『人間失格』の場合は「狂人」と
言い切ってはいませんが)


これらの作品をめぐっては、
こちらの記事を参考にして
もらえたらと思います。

芥川龍之介 河童で感想文?ニーチェ先生の解説を聞こう^^
太宰治 人間失格で感想文:「恥の多い生涯」という名言から
吾輩は猫である(夏目漱石)で感想文:魯迅も学んだ「人間批判」


作者はキリスト者として知られている
人ではないわけですが、この「狂人」
問題と、作中のキリスト教の扱いとの
関係はどうなっているのか、とか……。

そのことはもちろん、戦争の惨禍が
どこまで人間にその「限界」
(と思われていたもの)を超えさせて
しまうかを考えさせる主題として、
宗教とは切り離して考えてみることも
できますね。

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ともかく考え抜かれた「戦争文学」の
傑作と評して差し支えないと思われますので、
他の「戦争文学」作品と比較してみるのも、
より高度な感想文を狙う一法です。


その場合は、「戦争文学」関連で
書いてきました記事のどれかを
参考にしてもらえたらと思います。

原民喜 夏の花で感想文:夢が交錯する”超現実派”の文体を解説
黒い雨(井伏鱒二)で読書感想文∥今村昌平映画も参考に
火垂るの墓で感想文☆原作(野坂昭如)はアニメとどう違う?
江戸川乱歩 芋虫で感想文◎◎映画『キャタピラー』も鑑賞して
夏の庭(湯本香樹実) 読書感想文の書き方:あらすじを押さえて


ん? 書けそうなテーマは
浮かんできたけど、具体的に
どう進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、
日本と世界の種々の文学作品について、
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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