三島由紀夫 命売ります【解説+あらすじ】シュールな冒険小説

 


やあやあサイ象です。

「あらすじ暴露」シリーズ第92弾
(感想文の書き方:第144回)の今回はあの
三島由紀夫のエンターテインメント長編
『命売ります』(1968)に挑戦で~す!
  



さて、一口に「あらすじ」を、といっても、
話の骨子だけでいいという場合から、
読書感想文を書くんだから多少詳しくないと
という場合まで、千差万別でしょう。

そこで出血大サービス((((((ノ゚⊿゚)ノ

「ごく簡単なあらすじ」と
「やや詳しいあらすじ」の
2ヴァージョンを用意しましたよ~~(^^)у

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Ψ ごく簡単なあらすじ(要約)

まずはぎゅっと要約した
「ごく簡単なあらすじ」。

睡眠薬自殺に失敗した27歳の羽仁男は
会社をやめ、新聞の求職欄に
「命売ります」と広告を出す。

訪れた老人の依頼で、その裏切った
愛人に接近すると、犯罪組織「ACS」の
者らしい男が現れるが、羽仁男は
解放され、女だけ殺される。


次に訪れた中年女の誘導でアジトに
導かれ、薬を飲まされ拳銃をこめかみに
当てるが、引き金を引く直前に、女が
拳銃がを奪って自殺する。


3人目の薫少年の依頼で、夫を亡くした
母の愛人になるが、彼女は吸血鬼。

夜ごと血を吸われ衰弱した羽仁男は、
脳貧血による卒倒で病院に運ばれ、
夫人は家で一人焼身自殺する。

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やがて知り合った玲子と夫婦のように
暮らすが、第一の依頼者だった老人に
出くわし「君は消されるだろう」
と告げられる。

玲子にも辟易していた羽仁男が
逃げ出すと、太腿に小さな針のような
発信機が刺さり、怪しい男たちに
付きまとわれる。


ついに拉致されてアジトに連行され、
ACSに属するこの一味は羽仁男を警察の
回し者と思い込み、探りを入れるために
泳がせていたのだとわかる。

羽仁男は用意していたニセ時限爆弾で
一味を脅して、脱出に成功。


交番に駆け込んですべてを話すが、
住所不定で信用してもらえず、
外へ突き出される。

ん? なんだかよくわからん┐( ̄ヘ ̄)┌?

う~ん、そうかもしれません。

というわけで、よくわからん人には
どうしても「やや詳しい」ヴァージョンの
あらすじを読んでいただく必要があります。


もちろんラストのどんでん返しまで
行くネタバレありの暴露サービスに
なりますので、結末を知りたくない
人は絶対に読まないでください。


Ψ やや詳しいあらすじ

では参りましょう。

原作は全55章からなっていますが、
わかりやすさのため、私の判断でこれを
「起承転結」の4部に分けてみました。

文中「”」印のグレーの囲みと
「  」内は上記文庫本から
そのままの引用した文です。


【起】(1~8)
才能ある27歳のコピーライター、
山田羽仁男はある日突然「全然自殺の
理由がなかったから自殺したとしか
考えようがない」睡眠薬自殺を図る。

その引き金になったのは、ある日
ゴキブリが新聞の活字の間に紛れ込み、
その新聞を拾って読もうとすると、

活字がみんなゴキブリに
なってしまう。

読もうとすると、その活字が、
いやにテラテラした赤黒い
背中を見せて逃げてしまう。

「ああ、世の中はこんな
仕組になってるんだな」

それが突然わかった。

わかったら、むしょうに死に
たくなってしまったのである。

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病院で目覚めて自殺の失敗を知った
羽仁男の前には「何だかカラッポな、
すばらしい自由な世界がひらけた」。

多額の退職金をもらって会社をやめ、
三流新聞の求職欄にこんな
広告を出した。

命売ります。

お好きな目的にお使い下さい。

当方、二十七歳男子。

秘密は一切守り、決して
迷惑はおかけしません。

自室のドアには   for sale il_214x170.823144848_otn0
「ライフ・フォア・セイル」と
書いて貼った。


二日目の朝、身なりのよい老人が
現れて、こんな依頼を述べた。

23歳の妻、るり子が悪党の「三国人」の
愛人になってしまったので、君が彼女と
「好い仲になって」見つかり、二人とも
その三国人に殺されてほしいと。

5万円で承知した羽仁男がるり子に会って
話すと、「三国人」は秘密組織「ACS」
(アジア・コンフィデンシャル・
サーヴィス)の者らしい。


「行為の最中に殺されるというのは、
全くいい死に方だ」
死の空間は「もう見おぼえがあるから
何でもない」
こちら側の「一瞬一瞬の生」を「十分
たのしんで引きのばせばよい」…

などと考える羽仁男は予期の通り、
行為の最中にベレー帽をかぶった
三国人の来訪を受けるが、彼は二人の
姿態をスケッチするだけで、
羽仁男を解放。

るり子は翌日、水死体で発見される。



【承】(9~25)
次の依頼者は図書館の貸し出し係を
している独身の中年女。

ある甲虫の催眠作用を利用して人を
自殺に導く薬の製法が載った甲虫図鑑を
「外人」のグループに20万円で売った。

羽仁男への依頼はその薬の実験台に
なることで、それによってさらに
50万円を受けとろうとしていた。

女はこの一味と    6e9e0db2a797beb3c685535c8afd35df_s
ACSとの関係を匂わせ、彼らの待つ
芝浦の倉庫に羽仁男を導く。


ちなみにこのころ(1968年)
大卒初任給の平均は
約3万円。  

薬を飲まされると、中年女の毛穴や
ほつれ毛が鐘を鳴らすように
「あなたを愛してる」と叫び出し、
羽仁男は耳をおおいたくなる。

「世界が意味あるものに
変れば、死んでも悔いない
という気持ちと、世界が
無意味だから、死んでも
かまわないという
気持ちとは、どこで
折れ合うのだろうか」


渡された拳銃をこめかみに当て引き金を
引こうとした瞬間、拳銃が奪われて
銃声がとどろく。

足もとにはこめかみから血を流す女。

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羽仁男を愛してしまった女が
身代わりになったのだ。

自分の命を売ろうとして、二度とも
相手の命を失わせる羽目になった
ことに羽仁男は驚く。


次の訪問者は井上薫という学生服の
少年で、夫も愛人も血を吸って殺し
続けている母の愛人になってほしい
という依頼。

承諾した羽仁男は、夜ごと血を吸われ
衰弱していきながら、荻窪の井上家で
薫親子と家族のように睦まじく暮す。

夫人は羽仁男と心中しようと思い、
家に放火するつもりで、薫を親戚の
家に泊まらせる。

が、その日    vampiros_goticos_04-1
「この世の名残」にと二人で公園を
散歩している時、羽仁男は煙草屋の
前で脳貧血を起こし病院へ運ばれる。

夫人はその夜、家ごと焼け死に、
「人の死ぬのを悲しいなどと思った
ことのない」羽仁男の目に涙が湧く。

「僕はあの人を愛していました」
と昂奮して刑事に言う。

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【転】(26~49)
見舞いに来た薫を尾行して来たらしい
二人組が病院の羽仁男に次の依頼を
もちかける。

彼らはB国と対立するA国大使の仲間の
スパイで、B国大使館に潜入して毒の
塗られた人参スティックの中から、
暗号解読のカギになる人参を見つけて
ほしいという。

羽仁男はその話を聞いただけで暗号
解読のヒントを得て、たちまち解決して
いわく「生きたいという欲が、すべて
物事を複雑怪奇に見せて
しまうんです」。

多額の報酬を得た にんじんfree-food-clipart-images-graphics-animated-gifs-amp-animations-24962
休養を取ろうと引越先を探しに行った
周旋屋で30歳前の女、玲子と知り合った
羽仁男はまた「おかしなものに巻き
込まれかかっている自分を感じた」。

世界は多分雲形定規のような
形をしているのだろう。

地球が球形だ    雲形定規 117481m
というのはおそらく嘘なのだ。

それは、一つの辺がいつの
まにか妙にひねくれて
内側に曲がっていたり、
かと思うとまっすぐな
一辺が突然断崖絶壁に
なったりするのである。

     

自分が先天性梅毒でいずれ発狂するという
妄想から薬物に溺れて「ヒッピー」に
なっている玲子は、新宿で配られていた
羽仁男の写真を所持するファンだった。

ベッド・インすると処女だったことが
わかり、私の命を買っていっしょに
死んで……などと言い出す。


羽仁男はそれをとめ、二人は傍目には
新婚夫婦のように暮しはじめる。

ある日、羽仁男は玲子と公園にいる時に
最初の依頼者だった老人に出くわす。

「君は遠くから監視されている。
時期がきたら消されるだろう」
と老人は別れ際に告げる。

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という夢をもつ玲子は、もし自分が
発狂したら捨てられるとの思いから
羽仁男に毒を盛ろうとし、そんな玲子に
辟易した羽仁男は逃げ出す。


逃亡中、羽仁男の太腿に小さな
トゲのようなものが刺さる。

羽仁男は傷の手当てをし、ホテルを
転々とするものの、怪しい男たちが
どこまでも付きまとう。

太腿に食い込んだ発信機のせいだと
気づいた羽仁男は、ナイフでそれを
取り去り、「死の恐怖」を感じながら
池袋駅から飯能へ逃走。



【結】(50~55)
飯能で落ちついたのもつかの間、
大型トラックにひき殺されそうになる。

羽仁男は音の大きなストップウォッチを
買い求め、木工所で作らせた木箱に
それを入れて持ち歩く。

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飯能駅前で「品のよい白髪の外人」に
尋ねられて道案内しているうち、
待機していた車に拉致される。

目隠しされ約2時間後に到着した洋館の
地下室にいたのは、甲虫の薬の実験台の
時にいた外人3人と、るり子の愛人
だった「三国人」、そして実はその
使用人だった最初の依頼者の老人。


リーダー格の三国人は「お前は警察の
人間であるのことをここで白状したら
よいね」と迫る。

ACSに属するこの一味は「命売ります」の
広告は、おとり捜査官の羽仁男が
自分たちをおびき寄せるために仕組んだ
罠だと思い込んでいた。

第一、第二の依頼者はともに彼らの
差し金で、わざと羽仁男を泳がせ、
警察のスパイ網に探りを入れようと
してきたのだという。

羽仁男がA国大使のためのスパイ活動に
使われた時から彼を警察スパイと
確信し、絶対に捕らえようと
やっきになっていたのだ。

羽仁男は例の木箱を取り出し、
この時限爆弾で自爆すると脅す。

怯えた一味が退散すると、 bomb 
羽仁男は別のドアから逃げる。


町まで来て交番と警察署ですべてを
話すが、風体や住所不定ということ
などから、信用してもらえない。

「あなたは人間はみんな
住所を持ち、家庭を持ち、
職業を持たなければ
いけないと言うんですか」

「俺が言うんじゃない。
世間が言うのさ」

「そうでない人間は
人間の屑ですか」

「ああ、屑だろうな。
〔中略〕
命を売る奴は、犯人
なんかじゃない。

ただの人間の屑。

それだけだよ」

このままでは殺されると思う羽仁男は、
留置場に置いてくれとすがりつくが、
警察署の外へ突き出される。



Ψ 解説:これぞ三島…という部分は?

さて、楽しんでいただけましたか?

この小説の連載誌がなんと『プレイボーイ』
だったとのことで、さすがに読者を
飽きさせないエンターテインメントとして
よく出来ていますよね。


さすが三島由起夫ですが、純文学的に
読んでもググッと来る部分も多々あって、
そこもさすが三島と唸らせます。

え? どこがって?

まず、「命」がいらないから売りに出していた
主人公がラストでは死を恐れ生に執着して
いるという展開のアイロニー(皮肉)。

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それにからんで、ラストの引用箇所で、
お前なんか「人間の屑」だとあくまで
彼を突き放す刑事。

その「俺が言うんじゃない。
世間が言うのさ」という言い草。


ここは、太宰治の『人間失格』を
意識してたんじゃないでしょうか。

三島自身は「あなたはイヤだ」と太宰本人に
直言しましたが、太宰はあとで「あの人、
ほんとはアタシに惚れてんだよ」と
うそぶいたとか……。

太宰治の『人間失格』を
めぐっては、こちらを
ご参照ください。

太宰治 人間失格のあらすじ ■生田斗真主演映画の原作をネタバレありで
太宰治 人間失格で感想文:「恥の多い生涯」という名言から


また【転】での、世界を「雲形定規のような
形」とみる洞察とか、冒頭での自殺の
引き金として描写される、新聞の活字が
みんなゴキブリになってしまう経緯。

三島自身は「サイケデリック冒険小説」
とも呼んだそうですが、このあたり
まさに「サイケデリック」で”シュール”
(正確にはシュルレアリスム)の世界ですね。

シュルレアリスムをめぐっては
こちらもご参照くださいね。

シュールの意味と使い方:お笑いの世界から芸術的”超現実”へ
原民喜 夏の花で感想文:夢が交錯する”超現実派”の文体を解説

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Ψ まとめ

まあ、この小説で読書感想文を書いて
学校に出したら、目をつけられてしまう
かもしれませんが、それは望むところだ、
という人はぜひ挑戦してください。

その場合、あくまで純文学として読んだ
格好にするの方が受けはマシになると
思われますので、上の「解説」に述べた
点などを参考にしてもらえればと
思います。


また、もし余裕があれば、三島の最高傑作
とされれる『金閣寺』と照らし合わせて
そこから見えてくることについて書く…
といったことに挑戦してはどうでしょうか。

『金閣寺』をめぐっては、
こちらで情報提供しています。

三島由紀夫 金閣寺の簡単なあらすじ:難解な長編を短く解説
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この『金閣寺』で大きく花開いた
妖しくアブナイ三島ワールドの
先鞭をつけたのが『仮面の告白』
『禁色』などのLGBT文学。

それについてはこちらで。

三島由紀夫 仮面の告白のあらすじ:LGBT文学の先駆作を解説

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そのほか三島の本を早く安く手に
入れたい場合は、Amazonが便利です。
こちらから探してみてください。


笳錘O島由起夫の本:ラインナップ笳驗€


ん? 書けそうなテーマは
浮かんできたけど、具体的に
どう進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、
日本と世界の種々の文学作品について、
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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