三島由紀夫 仮面の告白のあらすじ:LGBT文学の先駆作を解説

 


やあやあサイ象です。


「あらすじ暴露」シリーズも今回で
第95弾(感想文の書き方:第147回)!

今回はあの三島由紀夫が、弱冠24歳で
自らのLGBT的苦悩を文学的表現に
結晶させた先駆的傑作『仮面の告白』
(1949)に挑戦です。
 


さて、一口に「あらすじ」をといっても、
話の骨子だけでいいという場合から、
読書感想文を書くんだから多少は詳しく…
という場合まで、千差万別でしょう。

そこで出血大サービス((((((ノ゚⊿゚)ノ

「ごく簡単なあらすじ」と
「やや詳しいあらすじ」の
2ヴァージョンを用意しましたよ~~(^^)у

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👉 ごく簡単なあらすじ(要約)

まずはぎゅっと要約した
「ごく簡単なあらすじ」。

主に祖母によって育てられた
「私」は病弱で、しかも普通の
男子と異なる嗜好が顕著だった。

糞尿汲取人の若者や、女手品師の
松旭斎天勝に官能的に惹きつけられ、
そのようになりたいと切望した。

13歳での「悪習」の始まりは絵画
「聖セバスチャン」を見ての激しい
興奮によるものだった。

15歳での「最初の恋」の対象と
なった近江は、その懸垂する
逞しい姿で「聖セバスチャン」を
思わせたが、悪事で放校される。

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昭和19年、級友草野の美しい妹、
園子と知り合った21歳の私は
その美しさに心をうごかされ、
交際が始まる。

疎開先の軽井沢に園子を訪ねた
私は計画通り接吻を試みたが、
何の快感もなかった。

園子とその兄から結婚の意志を
問う手紙が来るが、婉曲に拒絶し、
園子は戦後間もなく他の男と結婚。

友人に誘われて娼家を訪れた私は、
女性への「不可能」を確認する。

官僚となった私はり園子と偶然
再会し、その後、定期的に
会うようになる。

晩夏のある日、二人で踊り場へ
行くと、踊る粗野な若者の腕の
刺青を見て情欲に襲われる。

ん? なんだかよくわからん┐( ̄ヘ ̄)┌?

う~ん、そうかもしれません。

というわけで、よくわからん人には
どうしても「やや詳しい」ヴァージョンの
あらすじを読んでいただく必要があります。


もちろんラストまで行くネタバレあり
暴露サービスになりますので、結末を
知りたくない人は読まないで…

といってもエンターテインメントでは
ないので、スッキリしたオチがある
わけではありませんが。



👉 やや詳しいあらすじ

では参りましょう。

第一章から第四章までの4部構成。

文中「”」印のグレーの囲みと
「  」内は上記文庫本から
そのままの引用した文です。


【第一章】
幼時「私」は、生まれた時の光景を
見たことがあると言い張っていた。

午後9時に生まれながら、産湯の盥の
ふちに射す日光が記憶に揺曳していた。

この冒頭、あまりにも有名です。

古い家柄の出で、祖父を憎み蔑んでいた
祖母は、生後49日の私を「かよわい
美しい」母から奪いとり、病気と
老いの匂う部屋の中で私を育てた。


病弱の私は5歳の元旦に喀血し、
「人々は私の死を見た」。

「私の反省を悩まし脅(おびや)かし
つづけたものの、最初の記念の影像」は
「汚穢屋(おわいや)――糞尿汲取人」の
血色よく美しい若者の働く姿だった。

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汚れた若者の姿を見上げ
ながら、『私が彼になりたい』
という欲求、『私が彼で
ありたい』という欲求が
私をしめつけた。


「『汚穢屋になりたい』という憧れ」
には「悲劇的なもの」が伴ったが、
それは「私がそこから拒まれている」
ことの予感によったのかもしれない。


もう一つの記憶は、絵本で見た
ジャンヌ・ダルクだったが、やがて
それが「女」だと聞かされ、
打ちひしがれる。
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私を駆り立て、憧れをそそる、
さらに一つの記憶は、家の前を
行進する兵士たちの「汗の匂い」。

それは「彼らの職業の悲劇性・
彼らの死」への官能的欲求を
目覚めさせた。


新宿の劇場で手品師、松旭斎天勝
(しょうきょくさいてんかつ)を
目にするや「天勝になりたい」という
衝動に捉えられ、女装して「天勝よ。
僕、天勝よ」と家中を駆け回った。

青ざめて目を伏せた母を見て、
私は理解した。何を?

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松旭斎天勝(右)と助手

「罪に先立つ悔恨」という後年の
主題がその端緒を暗示したのか?

人の目に私の演技と映るものが
私にとっては本質に還(かえ)
ろうとする要求の表れであり、
人の目に自然な私と映るもの
こそ私の演技であるという
メカニズムを、このころから
おぼろげに理解しはじめていた。




【第二章】
13歳の私は、父の外国土産の画集に
グイド・レーニの「聖(サン)
セバスチャン」を見た刹那、
「或る異教的な歓喜に押し
ゆるがされ」激しく興奮した。

「これが私の最初のejaculatio
(射精)であり「悪習」の
はじまりだった。

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グイド・レーニ画「聖セバスチャンの殉教」(部分)

中学二年(15歳)の私は、すでに
性経験があるという噂の不良で、
逞しく美しい近江に「最初の恋」を
意識した。


体育の授業中、鉄棒で懸垂を始めた
近江の腋窩に生い茂る豊饒な毛に
私は興奮し、同時にそのことへの
「強烈な嫉妬」にも襲われる。

近江に「似たい」という願望も
意識しながら、「二十歳までに君は
きっと死ぬよ」とからかわれるほど
虚弱な私は、その不可能性を
確信してもいた。

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やがて近江は悪事により放校処分と
なったが、その背後には「『悪』の魂」
が促す「広大な陰謀」のようなものが
あると私は確信した。

その「知られざる神」に奉仕し、
密告され殺されたのだと考えると
懸垂する近江は「聖セバスチャン」
を思わせるに最もふさわしかった。


中学四年の私を「貧血症」を診断した
医師は、その病因が自慰過多に
あることを見抜いていた。

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【第三章】

人生は舞台のようなものだとは
誰しもいう。

しかし私のように、少年期の
おわりごろから、人生という
ものは舞台だという意識に
とらわれつづけた人間が
数多くいるとは思われない。

「人生は舞台…」云々の言葉で
有名な古典といえば、まず
第一にシェイクスピアの
『マクベス』ですね。

こちらで確認できます。

シェイクスピア マクベスのあらすじ:簡単/詳しくの2段階で
マクベスの名言 英語ではなんと?シェイクスピア最高傑作は何を教える

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「『偽りの機械』であろうとする
決意」で人生の門出も乗り切ろうと、
「多くの小説を事こまかに研究」した。

またいとこの澄子や、同級生額田の
姉と接触し「恋していると信じこん」
だりもしながら、「心の人工的な
努力の合間に、時あって身のすくむ
ような白々しさが私を襲」うのだった。


昭和19年、戦争中の流行であった
「死の教義」に「官能的に共鳴」して
いた私は、高等学校の級友草野の家で、
18歳の妹、園子と知り合った。

大学法学部へ進んだ21歳の私は
召集令状を受け取ったが、身体検査の
誤診で即日帰郷となる。


入隊している草野への面会に一緒に
どうかと草野の母から誘われ、
待ち合わせの駅に着くと、園子の
美しさに心をうごかされ
「潔(きよ)らかな気持になった」。

交際が始まるが……

例の「演技」が私の組織の一部と
化してしまった。

それはもはや演技ではなかった。

自分を正常な人間だと装う
ことの意識が、私の中に
ある本来の正常さをも
浸蝕して、それが装われた
正常さに他ならないと、
一々言いきかさねば
すまぬようになった。

裏からいえば、私はおよそ
贋物をしか信じない人間に
なりつつあった。

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園子一家が近く疎開すると聞くと、
翌日には「もう彼女を愛さなければ
ならぬという当為を免れた
安らかさの中にいた」。


やがて私も学徒動員で海軍工廠へ
行き、園子とは文通を続ける。

園子らが疎開する軽井沢に招かれた
私は、園子と高原を散歩中、
計画通り接吻を試みた。

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「接吻の中に私の正常さが、私の
偽りのない愛が出現するかも
しれない」との期待から…

が、「何の快感もない。〔中略〕
私には凡(すべ)てがわかった」。


工場へ戻ると、園子から「本物の愛」の
手紙が届き、やがて兄の草野からも
結婚の意志を問うてきた。

私は婉曲な拒絶の手紙を書く。


終戦の知らせがあり、あの怖ろしい
「人間の『日常生活』が明日から
はじまる」ことに怯えた。



【第四章】
戦後間もなく園子は他の男と結婚。

私は友人に誘われ娼家に行くものの、
「不可能が確定し」、「恥じが
私の膝をわななかせた」。


「お前は人間ではないのだ」という
意識を官吏登用試験の受験勉強への
没頭で紛らわすある日、園子に
ばったり出くわす。

「もう一度二人きりで会えない?」
と切り出しながら、私は思う。

人間の情熱があらゆる背理の
上に立つ力をもつとすれば、
情熱それ自身の背理の上に
だって、立つ力がないとは
言い切れまいと。


一年後、官僚となった私は二三ヶ月
おきに、昼の一二時間、園子と会う。

晩夏のある日、レストランで話すうち
園子は「自分のことを怖(おそろ)しい
女だと思いはじめたの」などと言いだす。


「あらゆるものからの侮蔑」に身を灼かれ
ながら店を出た私は、残りの30分を
踊りで過ごそうと、園子を踊り場へ誘う。

その中庭に出ると、22-3歳の「粗野な、
しかし浅黒い整った顔立ちの若者」に
視線を吸い寄せられ、引き締まった腕の
「牡丹の刺青」を見て情欲に襲われた。

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もはや園子の存在を忘れた私は、
一つのことしか考えていなかった。

この若者の腹に鋭利な匕首が突き刺さり、
あの汚れた腹巻が血潮に彩られ、彼の
血まみれの屍(しかばね)がまたここへ
運び込まれることを……。


「あと五分だわ」という園子の声に
我に返り、少し話してからもう一度、
若者の方を盗み見ると、空っぽの椅子と、
卓上にこぼれた飲物が「ぎらぎらと
凄まじい反射をあげた」。

暗示的なエンディングですが、
冒頭で記憶に揺曳していたと
される「産湯の盥のふちに
射す日光」に呼応するよう
でもありますね。




👉 解説:「LGBT」小説の先駆

さて、楽しんでいただけましたか?

なんと背徳的で危険な世界なんだ!
と驚いた人もあるでしょうか。


でも、男に生まれたら女を愛して普通に
結婚しなければならず、女に生まれた人も
同様に当然、男を…という考え方は今や
絶対的に通用するものではなくなって
きていますよね。

すなわちまとめて「LGBT」と呼ばれる
人たちの社会的認知、人権への配慮が
今やかなり進んできていますので、
この小説のレベルでは、別に驚かないよ…
という読者も多いことでしょう。

LGBTとは…Lesbian, Gay,
Bisexual,そしてTransgender
(性同一性障害や異性装趣味
など性の不確定性の傾向全般)
の4語の頭文字をつなげて
作られた新語です。

これらの傾向はもはや隠す
必要のないものだという
考え方が世界的潮流に
なってきていますよね。


でもこの『仮面の告白』が発表された
昭和24年(1949)という時代を考えに
入れますと、その「告白」の内容が
いかにショッキングなものであったか、
ほとんど想像を絶するものがあります。

ただ、”仮面の告白”だという意味深な
タイトルは、これはあくまで虚構(うそ)
の”告白”だぞ、という作者の牽制を
ほのめかすようでもあります。

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で、三島由紀夫という人が実際、どういう
性生活を送ったのかといえば、あの劇的な
割腹自殺で生首を世にさらすに至るまで、
Bisexual(両性愛的)であったことは
確認できるようです。

結婚して子供も作りましたが、彼の首を
切った(介錯した)森田必勝さんとは
恋愛関係にあって、あの自殺も「心中」
だと言われるくらいなんですね。


考察1:”人工楽園”の世界?

さて、私はここで興味をかき立てられます。

まだ独身の弱冠24歳にしてあのような
怪作で名をあげてしまった三島は、その後の
人生がかえってその”仮面の(うその)告白”に
囚われてしまう…という側面は
なかったのだろうか、と。

つまり、たとえば同性愛の傾向にしても
もともとなかった(あるいは小さかった)
ものを強いて拡大・強化していったという
面はなかったのでしょうか。

もともと虚弱だった身体をボディ・ビルで
改造したように、性的傾向も人工的に
作り上げた部分が大きかったのでは
ないかとも思えるのです。            
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『仮面の告白』の「私」は自分の中に
異性愛を人工的に生み出そうとして
「『偽りの機械』であろうとする決意」で
「多くの小説を事こまかに研究」しますが
【第三章】)、現実の三島の同性愛も
実は同じように「研究」されたもの
ではなかったか、と。

なにしろその知力、頭脳の力には
ほとんど超人的なものがあったように
見えますし、自己顕示欲…というより
”自己神話化”に向かう志向も
すさまじかった。

なにしろ生首をさらす、あの
死に様ですからね。


考察2:三島由紀夫のライバル?

ともかく『仮面の告白』の世界には
惹かれるか、引くか、その反応は
大きく分かれそうですね。

引くのだとしても、あるいはそのこと
こそ、心の奥底に多少は秘められている
LGBT的な志向の存在を証している
のかもしれません……。

このような意味で面白い文学作品は
たくさんありますが、その一つとして
「三島由紀夫のライバル」ともいわれた
寺山修司の傑作戯曲『毛皮のマリー』を
挙げることもできますね。

ぜひこちらをご参照ください。
寺山修司 毛皮のマリーのあらすじ:LGBTの世界的傑作を解説
  
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「三島由紀夫のライバル」といえば、
まったく別の意味で、先輩格では
ありますが、同じ頃に一世を風靡
していた太宰治も挙げられますね。

太宰渾身の自伝的長篇『人間失格』は
前年の昭和23年に出たばかりで、
『仮面の告白』でこれが意識されて
いないとは考えにくいですね。

どこかで太宰に対面した三島は
「あなたはイヤだ」などと直言し、
その後で太宰は誰かに「あの人、
ほんとはアタシに惚れてんだよ」
と告げたという逸話もありますね。

『人間失格』については、
こちらをご参照ください。

太宰治 人間失格のあらすじ ■生田斗真主演映画の原作をネタバレありで
太宰治 人間失格で感想文:「恥の多い生涯」という名言から




👉 まとめ

さあ、これで、読書感想文やレポートも
バッチリでしょう。

この小説を素材に書こうという勇気の
ある人は、学校からは”それなりに”
目をつけられるかもしれませんが、
その程度のことにビビってはいけません。

ぜひ挑戦してほしいと思いますが、
そのヒントになればと、上にいくつかの
論点に即して多少の解説を試みた
次第です。


またより高度な感想文を書こうという
人にオススメなのは、三島のほかの
作品と比較対照してみること。

『仮面の告白』の7年後に書かれて
三島の最高傑作のように見られている
『金閣寺』や、さらにその12年後の
エンターテインメントの傑作
『命売ります』などですね。

『金閣寺』『命売ります』を
めぐっては、こちらで
情報提供しています。

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☯三島由起夫の本:ラインナップ☯€

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ん? 書けそうなテーマは
浮かんできたけど、具体的に
どう進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、
日本と世界の種々の文学作品について、
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^€)/


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