浦島太郎の教訓って…意味不明なのは恋愛部分を無理に消したから? | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象

浦島太郎の教訓って…意味不明なのは恋愛部分を無理に消したから?

サクラさん
童話の『浦島太郎』って
寓意というか、教訓が
わかりません。

浦島さんは亀を助けた
善い人なのに、なぜ
いっぺんにお爺さんに
されてしまううん
でしょうか?

ハンサム 教授
なるほど。不思議
ですよね。

でもこの話、もともと
童話として作られた
わけではなくて、
浦島という人が本当に
経験したことの報告
だったんですよ。


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サクラさん
え~(叫び) じゃ、これ
実話なんすか~?

ハンサム 教授
もちろん浦島さんの
報告が全部事実だったか
どうかわかりませんし、
語る伝えられるうちに
尾ヒレがつくのはよく
あることでしょう。

『日本書紀』『万葉集』
に始まって、それ以降
どんどん面白い話に変形
していったんです;^^💦

サクラさん
そうなんだ~(🐱)

でも、それなら童話に
なった『浦島太郎』が
意味不明で面白くない
のはどういうわけ?

ハンサム 教授
『御伽草子』などを
読めばわかりますが、
これは完全な恋愛
ドラマなんですよ。

浦島と乙姫の。


Edmund Dulac,”Urashima Taro”(1916)

で、明治以降はこれを
小学校の教科書に入れる
など、子供向けに語り
直す必要があった。

サクラさん
そうだったのか~(🐱)

でもそれなら、玉手箱の
煙で一気に老化する
という謎は?

ハンサム 教授
自分を捨てた男への
乙姫の怨念が煙に
込められていた…
というのが一つの
解釈ですね;^^💦


というわけで、本日のテーマは
『浦島太郎』。

    


以前に採り上げた「桃太郎」への”“は
「鬼=悪」という前提が危うくなって
はじめて出てくる類のものでしたから、
子供に突っ込まれることも少なかった
かと思います。

でも浦島さんの場合、サクラさんが出して
いるような疑問ばかりでなく、ほかにも
色々と”“が幼いお子さんからも
続々とぶつられけてくるんじゃない
でしょうか。

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🐢 浦島太郎の❔❔❔

たとえば…

(1)浦島は亀といっしょに海に潜っても、
どうして呼吸困難にならないの(叫び)?

    

(2)浦島は亀を助けるという善いことを
したのに、なぜいっぺんに年老いる
という不幸な目に合うの(ドクロ)? 

「勧善懲悪」の原則にはずれて
いるのはなぜ?

(3)姫は玉手箱を渡しながら、
なぜ「あけるな」って言うの(ニコニコ)?

あけちゃいけないんなら、
渡さなければいいんでね?
 
     055373

(4)浦島はなぜ乙姫の言いつけを守らず、
玉手箱をあけてしまうの(叫び)?

 
子供たちの疑問に、ごまかさずきちんと
答えてこそ尊敬されるオトナ((((((ノ゚🐽゚)ノ

いやいや大丈夫!
次章以下を読めば、あなたも立派に
答えられるようになるはずなんです。

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🐢『日本書紀』に登場

まず『浦島太郎』がもともとは浦島自身に
よる報告とされていて、事実に基づく
可能性が大きい伝説だということ。

「勧善懲悪」を子供に教えるために
作られたフィクションではない、
という点を押さえましょう。


最初は「太郎」という名はなく「浦嶋子」
(うらのしまこorうらしまのこ)ですが、
これが登場する最古の文献は『日本書紀』
(720年)、雄略天皇廿年(477年)
秋七月の条。

丹波国余社郡の管川の人「端江浦島子」が
舟に乗って釣りをしていたところ、
こういうことが起こったというのです。

遂に大亀を得たり。

便(たちまち)に女に化せる。

是(これ)に、浦島子、
感(たけ)りて婦(め)にす


   

相遂ひて海に入る。

蓬莱山(とこよのくに)に到りて、
仙衆(ひじり)を歴(めぐ)り
観る。

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つまり釣った亀はたちまち姫と化した
のですから、別に助けてあげるとかの
「善い」ことをしたわけではありません。

それどころか、ただちに「感(たけ)」って
妻にしてしまったのですから、現代の倫理
からすれば、むしろ「いかがなものか」…
と眉をひそめるところではないですか。

浦島 ちりめんyjimage
”The Fisher Boy, Urashima ” (1886/明治19)の挿絵  

それはともかく、「海に入る」とあるので、
海底へと潜って行ったかのように読めない
でもありませんが、後続部分からすると、
そんな不合理なことを言っているわけ
ではないとわかります。

で、どこへ行ったかというと、
「蓬莱山」。

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これが「とこよのくに」と訓じられるのは
いろんな背景があってのことと思われ
ますが、「蓬莱(山)」が中国山東省に
実在する現実の土地であることは、477年
当時も現在も変わりのない事実。

蓬莱は仙人たちのいたところとされ、日本の
「七福神」の起源となった「八仙」の彫像や
画像もある「蓬莱閣」は現代も
行楽地として賑わっています。

山東省蓬莱閣 
      山東省蓬莱閣の現在 

「浦嶋子」が「仙衆を歴り観」たというのは
もちろん像ではなく、実物に会ったという
ことで、仙術を体得して帰国したのかも
しれません。
(帰国しないと報告できないので)
👉この「蓬莱」で出会った仙人と、日本の
「七福神」の「八仙起源説」をめぐっては
こちらの記事をご参照ください。

七福神の名前の覚え方:新作決定版!🐢なんで浦島太郎が…?

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🐢『万葉集』から『御伽草子』へ

さて、「浦嶋子」のこの事件があってから
『日本書紀』に書かれるまで、約250年が
経過していますので、それほど長く語り
継がれたということは、かなり広く
流通する伝説であったものと思われます。

同時代の『丹後国風土記』(編纂命令713年)や
『万葉集』(783年完成)に、フィクションを
加えてより面白く語られた「浦島物語」が
書き残されていることから、
それがわかります。


「端江浦島子」を祭る浦島神社(丹波国余社郡
[現・京都府与謝郡伊根町字本庄浜])に現存
 



『万葉集』巻九で高橋虫麻呂が詠む長歌の
「浦島物語」の大意は次のようです。

水江の浦島子が7日ほど鯛や鰹を釣り
帰って来ると、海神(わたつみ)の
娘(亀姫)と出会った。

二人は結婚し、常世(とこよ)にある
海神の宮で3年ほど暮らした


父母にこの事を知らせたいと娘に
告げると、「これを開くな」と
篋(くしげ・玉手箱のこと)を渡され、
水江に帰ってきた。

    

海神の宮で過ごした3年の間に
家や里はすべてなくなっていた。

箱を開ければ元の家などが戻ると思い
開けたところ、常世との間に白い雲が
わき起こり、浦島の子は白髪の老人の
様になり、ついには息絶えてしまった

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この「常世にある海神の宮」というのが
竜宮(城)」に変わるのは、室町時代に
成立した短編物語集『御伽草子』からと
思われますが、そこでもまだ、浦島が
亀と一緒に潜水したという記述は
ありません。

竜宮門 長崎崇福寺       「竜宮」を再現したといわれる長崎崇福寺の竜宮門  


ともかくここで初めて浦島に「太郎」という
名が付きますが、『御伽草子』版「浦島」の
新味、そして大きな救いは、たちまち老人に
なった太郎がそれでも「息絶え」ないこと。

しかも鶴になって蓬莱山へ向かって飛び
去り、同時に乙姫も亀になってそちらへ
向かい、太郎と乙姫は再び巡り会って
夫婦の神になったというのです。

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🐢 明治以降、恋愛の要素が消された

さて、最初に挙げた疑問点:
(1)海に潜っても呼吸困難にならないのか

(2)善いことをしたのに、
なぜ不幸な目に合うのか

(3)玉手箱を「あけるな」と言うなら、
渡さなければよいのではないか

(4)浦島はなぜ乙姫の言いつけに
背いて玉手箱をあけるのか

は、すでに述べたことから、だいたい
解ける、というか、それなりの回答を
こしらえることができますよね。

え? やっぱりわからん?

それではもう一つのポイントを
申しましょう。

それは、すでにお気づきのように、浦島と
乙姫(亀姫)の恋愛こそが「浦島物語」の
主筋とさえいえる重要部分であったこと、
そしてこの要素が明治以降、子どもへの
配慮から大きく削られていったことです。

鶴と月Free-to-fly-s

つまり「うらしまたろう」は国語の
国定教科書(全国の小学校で一律に使用)に
のせられるというような事情もあって、
話のはじめで亀を助けるとか、故郷の両親を
案じるとか、子どもの模範となるような
人物へと改変されていくわけですね。

だからもちろん、竜宮で乙姫と快楽の
かぎりを尽くしたなんていう…
江戸期までの「浦島物語」の主要部分
(むしろクライマックス?)はそぎ落とされ
ますから、それによってつじつまが合わず、
わかりにくい部分が出てきてしまう
のですよ。

ですから、疑問点の(3)(4)も、二人の
恋愛感情を抜きにしては解けないはず
なのですが、現代の多くの人の頭には
それがないために、サッパリわからん
ということになるのです。

   

もちろん、この2点にも公認の
正解というものはありません。

ただこの「玉手箱」という不思議な小道具
には、乙姫の浦島への強い感情(憎しみや
復讐心なども含め)が込められている
ことは確かのようですから、そこに
あなたなりの解釈を加えて、疑問への
「回答」を作ってみてはいかがでしょう。

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え? ギリシャ神話の
「パンドラの箱」に似てる?

そうですよね。この着眼はあの
太宰治にもありました。
👉それについては、コチラをご参照ください。

浦島太郎 玉手箱の意味は?パンドラの箱を重ねた太宰治

     

👉そして「開けてはいけない」と言われて
いたのに(なぜか衝動に逆らえず)開けて
しまうという問題。

これって、タブー(禁忌)の犯しという人類普遍の
テーマでもあるんですよね。

怖いといえば怖いこの問題をめぐっては、
コチラで探求していますので、どうぞ。

菊 鶴 菱 桜…と何?⦅日本5大タブー⦆メディアが避ける意味と理由

   

👉おっと、忘れちゃいけない。
冒頭でふれました「桃太郎」の記事は
こちらです。

桃太郎は「悪くない鬼を退治した」から悪い?子供にどう話す?

   IMG_20150125_0007


さあ、これでもう万全ですよね、
感想文だろうが、レポートだろうが。

ん? まだダメ?

それなら思い切ってこういうハチャメチャ・
バージョンの新作「浦島太郎」を参考に
してみてはどうでしょうか。

「浦=裏」「島=縞」で「背面ストライプ」
になっちゃった浦島さんです;^^💦 👇


え? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。
👉当ブログでは、日本と世界の種々の
文学や映画の作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/



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