マゾヒストの喜びとは?元祖 マゾッホの「指責め」が笑える


やあやあサイ象です。

読書感想文でお尻に火?

うーん困りましたねえ…
こうなったらもうヤケクソ(?)
いっそのこと、ザッヘル=マゾッホの
小説にしてみてはどうでしょう。

まあ学校的評価は受けられそうもない
でしょうけど、へえ、ずいぶんマニアック
な奴だなあ、と思ってはもらえますよ;^^💦

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👄 人権派公妃の拷問廃止策

時は1870年前後。
東ヨーロッパのとある公国でのお話です。

政権担当者はC公爵ですが、
これは顔も性格も羊のようなお方で、
実質的支配者は彼を牛耳る
美貌の夫人……というもっぱらの噂。

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この夫人、フランスなど先進諸国の
思潮に敏感で、ドイツの学者や
文人とも交流があります。

「拷問は非人道的であり廃止すべきだ」
という西からの進歩思想を
当国にも導入しようとするんですね。


そしてこれに反対を唱える大臣、
T伯爵を呼び寄せて説得にかかるのです。

「拷問は、無実の者に無理やり自白させたり、
犯していない罪を犯したと言わせる危険が
ある」とさかんに説きますが、 ああいえば
こう、とT伯爵の反論も頑強です。

と、公爵夫人、持ち前の険のある微笑を
浮かべてある道具を取り出します。

「こんな子供だましの指責めの道具
使っただけであなたになんでも
告白させられることを、これから
証明します」

「そんなことは不可能です」

「それなら、両手をお出しなさい」


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こうして伯爵の両手に指責め具を
はめた公爵夫人、さっそく尋問を始めます。

「まずは白状なさい。 あなたはあたしが
好きで好きでたまらず、

心中ひそかにあたしを自分のものに
したいと思っている
…と」

「滅相もない」と伯爵は答えますが、
「嘘をおっしゃい」と公爵夫人、
責め具のネジをぐいぐい締めます。


額に玉の汗を浮かべながら黙っている
伯爵を尻目に、公爵夫人は微笑を
浮かべてネジに力を加えます。

「お妃さま、おゆるしを!」

ついに音(ね)を上げた伯爵に、
公爵夫人は平然と

「そう、それじゃ、あなたはあたしが
好きで好きでたまらず、
心中ひそかにあたしを
自分のものにしたいと思っている
…のね?」

「そ、そのとおりです。でも……うぐ……」
「では次!
     

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あなたはあたしの主人、
C公爵を羊そっくりのウスノロの
ボケナスだと思ってる
…わね?」

黙っていると責め具は
また強度を増しますので、
「そ、そのとおりです。でも……うぐ……」
「では次!」

とまあ、こんな具合で、
結局、伯爵は何から何まで
公爵夫人の意見に同意させられ、
「拷問廃止」は見事、
この公国の施策となったのです。
メデタシ、メデタシ。

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👄マゾッホの「指責め」でした

どうでしょう、楽しんでいただけましたか?

これはいわゆる「M」の語源となった
ことで有名な作家、レオポルド・フォン・
ザッヘル=マゾッホの短編小説「指責め」
(池田信雄訳『残酷な女たち』所収)の
一部をやや自由に紹介したもの。
    



まあ、現代じゃどうってことないかも
しれませんが、19世紀としては
面白かったんでしょうし、今でも
面白がれる点はいくつかあると思います。


「拷問廃止」の実施を拷問をもって
勝ち取るというイロニー(皮肉)が
まず挙げられるでしょう。

それに付随して、拷問の結果として
出てきた伯爵の言葉をどう受け取るか、
という問いが 一つのサスペンス(宙づり)
として浮上するのではないでしょうか。

     

責め苦から解放されたい一心で
公爵夫人の言葉をオウム返しにしている
だけなのか、それとも案外、心の底の
本心を吐露している……、その機会を
うまく与えられたということでは
なかったのか……


この種のサスペンスって、
実は性愛としてのマゾヒズムに
つきものなんですよね。

つまり、「女王様、私をぶってください!」
っていうMの嘆願は基本的に、
契約された「ゲーム」の枠内でのことですよね。

   

で、契約上の「女王様」がその「ゲーム」に
没入するということはむしろ稀でしょうから、
そこにいろんな齟齬が生じ、 いろいろ
ってるうちに、「ゲーム」とその外部との
境界が怪しくなってくる。

そこで、 え? どっちなんだ?
ゲーム? 本気?

まさか、本気でボクを殺そうとしてんの?

ボクを愛してんの? 

それともその愛も「ゲーム」内のこと?

……みたいなサスペンスも発生する。

そうなってくると、小説としてはぐいぐい
「読まされる」、面白くてやめられない
文学体験も出来ちゃうんですね。



この醍醐味を徹底的に追求した名作が 代表作
『毛皮を着たヴィーナス』(1871) なんです。

ほんとはこの作品を紹介したいのですが、
やや長いので今回は遠慮しときました。
もしリクエストがれば、いつか
挑戦したいですけどね……


それにしても「指責め」なんてやられたら
と思うと、 ゾッとしますよね。

せいぜい気をつけましょう。


👄谷崎的マゾヒズムとは…

マゾヒズムといえば、日本の文豪で
その世界を徹底的に追求した人が
谷崎潤一郎ですね。

でも谷崎が追求した理想世界は
マゾッホの世界とは微妙に異なります。


『痴人の愛』(1925)の段階ではまあ、
似ているともいえて、その世界は
あくまで「ゲーム」的なんですね。

            


すなわち”女王様”ナオミはつまるところ、
相手の舞台に上がって望まれるとおりに
演じているだけなので、いつでも
「降りて」しまうことができます。

そこにスリルがあり、主人公の苦悩も
発生して、文学的な読み応えも大きくなる
わけですが、最高傑作とも見られる
『春琴抄』(1933)では、この種の
「ゲーム」性がかぎりなくゼロに近づく。

いわば、絶対に「降りられない」
完全真剣勝負のマゾヒズムですね……。

興味ある人はぜひこちらの
記事を覗いてみてください。

谷崎潤一郎 春琴抄のあらすじ:犯人は?簡単/詳しくの2段階で
谷崎潤一郎 刺青のあらすじと考察:若尾文子主演映画も鑑賞

      


👄 江戸川乱歩にもあり

また江戸川乱歩の小説にも
『陰獣』など、マゾヒズム的
趣向を採り入れたものが
結構ありますね。

それについてはこちらを
ご参照ください。

江戸川乱歩 陰獣のあらすじ:ネタバレ御免で結末まで
江戸川乱歩 人間椅子のあらすじ(ネタバレあり)とその解釈
芋虫(江戸川乱歩)のあらすじ:伏字だらけの問題作!内容は?
パノラマ島奇談[奇譚]乱歩最高作(?)あらすじをネタバレ御免で
江戸川乱歩 孤島の鬼のあらすじ:ネタバレ御免で結末まで
影男(江戸川乱歩)のあらすじ:ネタバレ御免で結末まで

              

当ブログでは、谷崎、
乱歩のほかにも多くの作家・
作品をとりあげ「あらすじ」や
「感想文の書き方」の
記事を量産しています。

こちらのリストを
どうぞご覧ください。

「あらすじ」記事一覧

「感想文の書き方」一覧


いかがでした?

この世界、あんまりのめり込むと命も
危ないようですが、まあほどほどに
楽しみながら、ともかく頑張って
やりぬきましょー

~~(^O^)/

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