夜の谷を行く(桐野夏生)のネタバレとモデル 虚を突かれるラストまで

サクラさん
桐野夏生さんの新作小説
『夜の谷を行く』は女性
テロリストの逮捕・服役
後の物語とか…

ハンサム 教授
ええ。主人公はテロリスト
と呼ばれることをよしと
していませんが、ともかく
1971-2年,連合赤軍事件の
“兵士”だった人たちの
2011年の物語。

サクラさん
自分の行為を”悪”として
反省・懺悔している?

ハンサム 教授
う~ん、そこはそんな
一言で言ってしまえる
問題ではないでしょう。

だからこそ一冊の本に
しなければならないくらい
だし、それでもまだまだ
言い尽くせない…

  


そういう人生の「夜の谷を
歩く」日が君にも来る
かもしれない…;^^💦

サクラさん
ぞくぞくッ(叫び)

これはぜひ読んで勉強
しとかなくっちゃ。


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というわけで、今回でついに第154弾と
なります”あらすじ”暴露サービス!
(“感想文の書き方”シリーズ通算では
第229回)

採り上げるのは桐野夏生さん2017年の
問題作、『夜の谷を行く』です!





かなり詳しいあらすじ

では参りましょう。

作品は大きな5つの章からなっています。

それぞれの章について、話の流れがわかる
ようにかなり詳しく、もちろん⦅ネタバレ
あり📢⦆であらすじを追っていきまよ~。


「 」内や「”」印の囲みは上記
単行本からの引用。

事件の内容や登場人物のモデルなど、
気になる部分に💭CHECK!印の注釈を入れて
いますが、どうでもいいと思われる方は
飛ばしてください。



【第一章 冬の蜘蛛】

63歳の西田啓子はかつて「連合赤軍事件」
の「兵士」として逮捕され、5年9か月間
服役した過去をもつ。

「連合赤軍事件」は1972年2月~
3月、群馬・千葉県下で合計
14死体が発見された事件。

「連合赤軍」は「共産主義者同盟
赤軍派」と「日本共産党革命左派
京浜安保共闘」の”連合”により
結成された組織で、強盗による
猟銃で武装し、71年8月~72年2月
「総括」と称するリンチで14人
(男9,女5) を殺害していました。

17人の逮捕者のうち最高幹部の
森恒夫は獄中で自殺、永田洋子は
2011年、獄中で病死。

「革命左派」から赤軍に加わった啓子は、
それ以前には1年間小学校教諭を勤めた人で、
出所後は学習塾の経営で生計を立てていたが、
5年前にそれを閉め、今は貯金と年金で
暮らし、スポーツジムに通う日々。


突然、元「同志」の熊谷千代治から電話が
入り、「古市洋造」というフリーライターが
自分に関心をもっていると知らされたのは、
永田洋子死刑囚の獄中死(2011年2月)が
ニュースになったころ。


熊谷千代治と約40年ぶりに話した電話では、
「同志」たちの現在の消息が話題に。

    

啓子が気になったのは、次々に死者の出る
山岳ベースから一緒に逃走して逮捕された
君塚佐紀子のことだったが、千代治は
知らないという。


千代治はそれより、啓子の同棲相手で当時
服役中のためベースには不在ながら指導部から
「結婚」を認められていた久間伸郎の窮状を
伝え、カンパを募っているのだという。

が、啓子はかつて獄中に冷酷な手紙を
寄越し、彼女の証人になることも断った
久間への好意は皆無なので、断る。

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【第二章 孤独の道行き】

啓子の逮捕後、大企業の重役候補だった父は 
退職し、やがて54歳で病死し、母もその
10年後に病死していた。

この「西田啓子」のモデルになった
人物を逮捕者17名のリストから
探しますと、山本保子さん以外には
考えられないということになります。

ただ、作者の桐野さんはあくまで
「架空の人物」とされていますが…

詳細はこちらのインタビュー記事で
どうぞ。👉週刊朝日 2017.3.30


唯一の身寄りとなった5歳下の妹、和子は
啓子の逮捕に激怒した夫から離婚され、
その後は美容室を経営して女手一つで
娘の佳絵を育ててきた。


エステティシャンとして働く佳絵が
「できちゃった婚」することになり、
親戚を呼ばずにすむという理由から
サイパンで挙式するという。

こちらは親戚が少ないから「おばちゃん、
絶対に出てよ」と頼むので承諾する。

     

久間伸郎から電話が入り、話すうちに心が
動き、「少しカンパしようか」と口にすると、
それより「久しぶりに会わないか」
「これが最後かもしれないし」と言われ、
昼食をおごる約束をする。


3月の第2金曜日、みすぼらしい老人に
なってしまった久間と新宿で会食するうち、
地震があり、交通がストップ。

久間は家賃滞納でアパートを追い出され
文字通りホームレスだというので、啓子の
アパートまで15キロの道のりを歩くことにする。


交通事故で痛めた足を引きずる久間と二人で
午後10時ごろになってようやく帰宅し、
テレビをつけると東北の惨状が目に入る。

はじめは泊めたりしないと宣言していた
ものの、やがて湯が沸くと心も緩み、
「泊っていきなよ」(別部屋に)と告げ、
二人で発泡酒や焼酎を飲む。


永田洋子のことなどを話すうち、久間は
「啓子に会いたいとずっと思っていた」のは
聞きたいことがあったからだと言い、
こう問いかける。

「おまえさ、俺たち子供、どうしたんだよ」

「何、言ってるの」、子供なんていなかった、
「そんな嘘を聞いたのはいつ、誰から?」
と問う啓子に久間は、千代治からだと答える。

啓子は山岳ベースに入った時点で妊娠して
おり、それが永田が強く誘った理由でも
あったという説明だったが、啓子は
それを「嘘」と断定する。

  

1週間ほどして、サイパン行きのための
パスポートを取得した啓子に久間から
電話が入り、ボランティアで福島へ行って
そこを「死に場所」にするという。

こっちはサイパンだと告げると、
久間は「やめろ」と大声を出す。

昔「米軍基地に入って爆弾仕掛けた」
ことの起訴が消えていないから
殺人未遂罪で逮捕される…と。



【第三章 断絶】

啓子は和子に電話を入れて事情を話し、
サイパンに行けなくなったことを謝罪。

佳絵に説明がつかないと詰る和子に、
それなら自分から言う、過去のことも
「正直に全部喋る」ことを了解させる。


翌日、千代治に電話を入れ、渡米すれば
逮捕されると久間が言うのは根拠のある
話なのか尋ねると、調べておくとの返答。


スポーツジムを出ようとすると、ロビーに
佳絵が来ていて、キャンセルの理由は
啓子に聞けと言われたから来たという。

過去を洗いざらい話し、「人を殺したの?」
の問いには「結果として、殺すのに加担した
ことはあるよ」と答える。

14人もの死者を出してしまった
「総括」 (実態は集団リンチ)
への加担を言っています。

こういう事態の発生因として
「赤軍派」と「革命左派」の
“連合”であったがゆえに対立や
反目が起こりやすかったこと、
また永田洋子を首領とする
「革命左派」側に女性が多く
性的な部分を含む感情関係も
発生しやすかったかったこと
などが指摘されています。

   

もし彼氏がこのことを理由に
「破談とか言ったら」と啓子。
「そんな男、こっちから願い下げ
じゃない?」

「おばちゃんの時代は、それで
通用してきたんだと思うけど、
今はそうはいかない。

そんなに甘い世界じゃないよ。

一度レールを外れたら、
おしまいなの。

二度と元に戻れないよ」

「元の世界に、そんなに
戻りたいの」

「そりゃそうだよ」と、
憂鬱そうに言う。

「元の世界って何」

「あたしに聞かないで、
自分で考えてみたら」

その夜、しこたま飲んで寝ると
「真っ暗な夜の谷を、担架の脇に
付いて歩く夢」を見る。

寒さで体の感覚は失われていたが、
遺体から漂う凍った糞便の臭いは
嗅いでいる。

遺体を担ぐのは男の兵士3人で、
全員分のスコップを持たされている
女が自分ともう一人、君塚佐紀子…



しばらく後、古市洋造から電話が入る。

30代か40前後の毅然とした声で、
古市は啓子が千代治に尋ねた渡米後の
逮捕の可能性に言及し、「十年は食らう
でしょう」と前例を挙げて説明する。


出国は完全に断念したが、古市が親切で
話しやすいので、君塚佐紀子について
知っているかと尋ねてみる。

君塚は名を変えて三浦半島に住んでいて
自分も会ったことがある、会いたいなら
連絡してみると古市は申し出、
「そのことを書かない」という条件で
啓子は応諾。

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【第四章 再会】

古市から電話が入り、君塚佐紀子は現在は
藤川良子という名で、嫁ぎ先である三浦市の
農園の直売所で店番をしている、彼女も
「会いたいと、ずっと思っていた」とのこと
だから、平日の午後ならそこで会えるという。

電車とバスを乗り継いで当地へ到着し、
再会を喜び合う。


親にも絶縁された藤川(君塚)は、嫁不足の
農家になら入り込めると考えて三浦の農園で
働くことにし、やがて愛してもいない
四十男をつかまえて結婚して、今は息子が
農園を継いでいるという。

  

お互いに40年前と変わらない部分を認めて
懐かしみながら、自分らは人間に通常
許されない「一線」を越えて「一回死んだ
人間」なのだと共感する。


東北出身の藤川は、永田洋子の死に続いて、
震災で親も家も流されたと知り、これで
「私の禊(みそ)ぎはやっと終わったんだ」
とも思ったという。

でも啓子は「永田の右腕」だったから
受け止め方が違うかと尋ねるので、
「右腕」は誤解だ、逆らえないから
そう見えていただけだと腹立たしく思う。


やがて藤川が持ち出したのは、妊娠8か月の
身体で「総括」されていた金子みちよから
胎児を取り出して育てようという永田の
案に啓子が賛同した経緯。

医者も薬もないところで不可能である
ことは自明で、藤川が山を下りる決意を
固めたのは、これを「不快」に思った
からだという。


迦葉(かしょう)山のベースでのこの経緯に
ついて啓子が懸命に記憶をたどると、
この方針が打ち出される前、縛られ
横たわる金子を見張晴らされていた啓子は、
金子から密かに頼まれごとをしていた。

「子供だけでも助けて。

西田さんも妊娠しているから
わかるでしょう。

この子を助けて、
革命戦士にして」

「わかった」

この記憶を告げると、藤川は沈み込む。

自分も妊娠8か月になった時「金子さんの
ことを思い出して、すごく辛かった」と
涙をぬぐい、「ねえ、啓子はどうだったの」
と矛先を変える。

「山本夫妻の連れてきた赤ん坊、妊娠
六カ月の金子みちよ。そして自分は、
妊娠三カ月」…。

そこには「革命戦士」を育てるという
「壮大な計画もあったのだ」。

    

その子はどうしたのか、との問いには
「収監されてから、掻爬した」
と答える。


帰宅後、古市から電話が入り、楽しく
話せたので、藤川以外の元「同志」の
消息について聞いてみる。

何人かについて知らされたあと、当時
まだ20歳の看護学校生だった金村邦子に
会いたいという意思を告げる。

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【第五章 記憶】

互いの両親だけで済ませた佳絵の結婚式の
写真を和子が見せに来、ケーキを
食べながら話す。

サイパン行き取りやめの件で、向こうで
捕まるならそれも仕方ないと言った
一か月前の和子の言葉を啓子は蒸し返し、
「姉妹なのに、すごく冷たい」、
ショックだったと告げる。

和子は「だって、自分のやったこと
でしょう?」「結果を覚悟して」
やったんだから「しょうがない」と
反論し、姉妹は激しく批判しあう。


啓子はいつまでも「犠牲になってきた、
と言われるのも辛い」から、もう「絶縁」
しようと口にし、和子は立ち去りかけるが、
啓子は「待って」「言い過ぎた」と引きとめる。

和子は、結局「あたし自身が、啓ちゃんを
心の底では許してなかったのよ」と心底を
吐露し、父の死の真相を初めて啓子に語る。

「啓ちゃんが収監されている間、
お父さんは世間と闘って疲れて、
そのうち責任を取るようにして死んだ。

啓ちゃんは肝硬変で死んだと
聞かされているだろうけど、
本当は自殺同然だったのよ。

お酒を飲んだら死ぬ、と言われて
いたのに、ボトルウィスキーを
半分飲んで死んだ」

         

古市と面会した金村邦子は、啓子には
会いたくないとのこと。

古市はその理由を含む録音を文書化して
送っくれたが、それによると…

山岳ベースに赤ん坊や妊婦がいて、
看護師、保育士、小学校教諭もいて、
私のような看護学校生まで引っ張られた
のは「山で子供を産んで、皆で育てて
革命戦士にする、という計画」に
皆が乗ったから。

私は逮捕後そのことをさんざん言ったが、
取り合ってもらえなかった。

「私が頭に来るのは、西田さんが
そういうことをまったく発言
しないからです」。

またベースでは永田に唯々諾々と
従うので「スパイ」ではないかと
梶井(看護師)は言っていた…。

       

七月、古市から電話で迦葉山の
ベース跡を見に行かないかと
誘われ、承諾する。

上越新幹線の指定席で待ち合わせた
初対面の古市と話しながら現地へ。

古市は金村の言っていた「山で子供を
産んで革命戦士にする」という計画に
ついて啓子の記憶を掘り起こそうとするが、
啓子は「どうでもいい」「早く忘れたい
から」と語ろうとしない。


当時、小屋を建てていた狭い谷間まで
来ると、古市はさっき新幹線の中で啓子が
言っていた「忘れたいことと」とは何かと
追求する。

「僕には聞く権利があるような気が
するんです」と言うので、理由を問うと
「そうですね」と古市は小声で答え、
自分の生い立ちを語り始める。

父は牧師で、自分を養子に迎えた時
71歳だったが、本当の親を知りたがる
自分にこう話した。

    

「僕が生まれたのは、栃木女子
刑務所の中だったそうです。

その時、妊娠していた受刑者は五人。

獄中で出産したのは、西田さん
だけでした。

それは間違いないですよね?」

落ち着いて頷いた啓子は、電話で古市の
声を聞いた時から、このことを
知っていたような気がしていた。

あなたは「金子さんが子供と一緒に
息絶えたことを後悔している」と
古市は分析する。

「だから、自分が子供を持つこと自体を
拒絶したんじゃないかと思ったのです」


「長い間、心に仕舞っていた秘密から
解放され」て大きな息を吐いた啓子だが、
「一度も持ったことのない、希望という
慣れない感情」にまだ戸惑っている。

「金子さんをああして殺して
しまったのに、あたしはのうのうと
子供を産んだ。

それが許せなかったから、
忘れたいのです」

「僕はお礼を言いますよ」


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「子供」という主題


サクラさん
いや~、これは虚を突かれる
というか、泣いている暇も
ない、感動のエンディング
ですね~(😹)

ハンサム 教授
ええ。「僕はお礼を言い
ますよ」と作者の桐野さん
にも言いたくなる…

サクラさん
ただ、引っかかる部分も
残ってます。

おなかの子について啓子は
「掻爬した」と言っていた
じゃないですか。

あれは…❔

ハンサム 教授
嘘を言ったのか、それとも
トラウマで蓋をされていた
“過去”の記憶がいつか
歪んでいたのか…

サクラさん
そういう…知らないようで
実は知っているというか、
知ってるようで知らない
真の”過去”が徐々に
暴かれていく(🙀)

ハンサム 教授
しかもそれが元恋人、姪、
元同志の女性、妹そして
ライターの古市…各人物と
順々に接触することを通し
抗いがたくそこへ運ばれて
いくという展開が見事!

ギリシャ悲劇の傑作
『オイディプス王』(ソポ
クレス)が現代に蘇った
ような感覚さえ覚えます👏




まとめ

どうでしょう。

主人公の考え方や「希望」が射してくる
ハッピーエンディングには賛否両論ある
のでしょうが、ともあれ、小説としての
としての高度な出来栄えには
脱帽のほかありません。


「過去」をふさいできた蓋に、ふとした
ことから風穴があき、会いたくなかった
元「同志」たちにも会おうという気が
起こってくる。

その推移と並行して彼女を待っていた、
思いがけない事実がラストの2ページへ
来て読者を急襲します。

そこへ来て、敷かれてきた「子供」に
かかわる伏線も回収されるという仕掛け。


重く暗い深みへ突き進む純文学的な問題追及と
軽快なエンターテインメント性を見事に両立
させた、桐野さん畢生の傑作と申しあげて
よろしいんじゃないでしょうか;^^💦

桐野夏生ワールドに関心を
見開かされたという方は、
こちらでも情報提供しています
ので、ぜひご参照ください。

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そのほか桐野夏生の本を早く安く
手に入れたいという場合は、
こちらから探してみてください。


🍎桐野夏生の本:ラインナップ🍎


また「連合赤軍事件」のような
テロリズムの問題を扱った
先駆的な名作にドストエフスキー
の『悪霊』がありますね。

この文豪については
こちらもどうぞ。

ドストエフスキー 罪と罰のあらすじ 簡単版と【詳細版 前編】

ドストエフスキー 罪と罰のあらすじ【詳細版 後編】と感想文


ん? 感想文とかレポートですか?

それももう、これだけの情報があれば
スイスイ書いていけますよね。


ん? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、日本と世界の種々の
文学作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/


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