怒り(小説) のネタバレ 吉田修一の傑作を映画が変えた部分とは?

サクラさん
映画『怒り』、好きな
俳優が何人も出ていた
ので見たんですけど、
スッゴい感動しました。

ハンサム 教授
吉田修一さんの原作は
もっと感動するかも
ですよ;^^💦

サクラさん
だいぶ違います?

ハンサム 教授
ストーリー的には原作に
忠実とも言えるんですが、
やはり長編小説に書き
込まれた大量のセリフや
思いを2時間の映画に
収めるなんてそもそも
不可能ですよね。

映画には拾われなった
部分にこそ君がもっと
感動する言葉がある
かもしれないんです。

サクラさん
そういえば、私は映画の
展開から例のイギリス人
女性講師を殺害して逃走
した市橋達也の事件を
思いだして…

 


犯人はサイコパスかとも
思ったんですが、原作は
そのあたりも追求して
いるんでしょうか?

ハンサム 教授
市橋事件がヒントに
なったことは原作者も
認めています。

サイコパスかどうかも
含めて、原作も「これが
正解です」みたいな
シンプルな話にはなって
いないわけけですが、
だからこそ感動も深い
のかもしれませんよ。

サクラさん
あ~、これはもう
原作を読まずには
いられません(😻)


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というわけで、おなじみ”あらすじ”暴露
サービスの第161弾(“感想文の書き方”
シリーズ第226回)は2016年映画
『怒り』の原作。

吉田修一さんの同名小説(2014)に
挑戦です((((((ノ゚⊿゚)ノ
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映画DVDはこちら。
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まずは映画予告編の動画を
ご覧いただきましょうか。👇





並走する4本のストーリーライン

小説『怒り』は読売新聞朝刊に2012-13年に
連載されたものに手を入れて2014年、
中央公論社から刊行されました。

それが2016年に映画化されるというのは、
大変なスピードですが、これにはもちろん
朝日新聞連載の前作『悪人』の映画化
(『怒り』と同じ李相日監督、妻夫木聡
主演。詳しくは後で)の大成功という
前史があります。

ほかにもすぐれた小説を立て続けに発表し、
どんどん株を上げている吉田修一さんは、
“社会派ミステリーの純文学作家”ともいう
べき貴重な存在で、すでに芥川賞の選考委員
にも就任されています。


さて、映画『怒り』の基本的なストーリーが
原作にほぼ忠実だとはすでに指摘しましたが、
そのストーリーというのは、次のような
サスペンスで観客を引っ張っていくもの。

すなわち《逃亡した殺人犯の山神が日本の
どこかで名を変えて生きており、その候補
として3人の男が浮上して、周囲に疑われる
ものの、真相不明はわからないまま》
という”謎”の持続ですね。


その3人の男の第一が千葉県の漁港・浜崎に
ふらりと現れた田代(松山ケンイチ)で、
彼と恋仲になる女性が槙(まき)愛子
(宮崎あおい)でその父が洋平(渡辺謙)。

二人目は東京の会社員優馬(妻夫木聡)と
出会って同性愛関係に入る直人(綾野剛)。

三人目が沖縄・波留間島の民宿で働き始める
田中(森山未来)で、福岡から移住してきた
少女、泉(広瀬すず)と出会ったことから、
泉を愛する少年、辰哉に刺殺されるという
末路をたどります。

    

つまりこの遠く離れた3つの場所(浜崎、
波留間島は架空の地)で、素性の知れない
3人の男に絡んでそれぞれ家族や恋愛の
ドラマが進んでいくんです。


実は小説ではそこにもう一つ、山神を追って
捜査を進める八王子署の刑事、北見にも謎の
女性美佳や飼い猫と絡む(映画にはない)
プライベートのドラマが入り込んできます。

これを加えると、4本のストーリーラインが
並行して走っていくという、とても
贅沢な作りの長編小説なんですね。

「市橋達也の事件」から着想した小説が
そういう形を取った経緯について、
作者の吉田さんはこう語っています。


犯人を誰にするかも決めないまま…

僕は彼の2年半に及ぶ逃亡劇や
事件そのものより、目撃情報の
通報者に興味があった。

街で似た男を見た程度ならともかく、
身近な人間に対して疑念が生まれていく
“事件の遠景”に胸騒ぎを覚えたんですね。

当初は立場や関係の違う設定を十数通り
考えたんですが、さすがに全部は
書き切れず、絞った結果がこの3地点。

そして3人のうち犯人を誰にするかも
決めないまま、彼らの正体を巡って
引き起こされる人間模様を
書き進めていきました。

(引用元:NEWSポストセブン

う~ん、「十数通り」も考えていた
というのがスゴい(叫び)。

ともかく主な狙いはそちら―
「身近な人間に対して疑念が生まれていく
“事件の遠景”」―の方にあって、
犯人自身の思考や心理はテーマとして
二次的だったということなのかな…

だからタイトルになった「怒り」の意味も
「怒」の字を赤ペンキでウジャウジャ
書きつけていた犯人の「怒り」というより、
むしろ三地点それぞれの登場人物たちから
滲み出てきたものだった…
とも作者は語っています。

だから山神の残した「怒」という
血文字から物語を始めはしましたが、
もともと山神という男の怒りと
いうよりは、三組の人々の怒りを
描いていくというイメージが
ありました。

(引用元:週刊読書人プレゼンツ

というわけなんですね。

だから山神に市橋を見て、そのサイコパス
的な異常心理の解剖を期待する…という
読みをされる場合には、欲求不満が残る
可能性もないではありません。

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かなり詳しいあらすじ

さて、前置きが長くなってしまいましたが、
以上の情報を前提として、小説『怒り』の
多少とも詳しいあらすじに入っていきましょう。

まず発端となった事件が冒頭に語られます。
8月の熱帯夜、八王子市郊外の一戸建て
住宅で、立川市内の保育園で働く妻と
会社員の夫が侵入者によって相ついで
殺害され、犯行の場となった廊下に
指で書いた「怒」という血文字が
残された。

指紋などから特定された犯人、
山神一也(立川市の無職、28歳)は
逃走し、1年後の現在も有力な
目撃情報なし。

原作に章ナンバーはついていないのですが、
章の区切りに相当する箇所に「◇」という
記号が入っていて、この「◇」と「◇」の
間を1章と見なすと、全体で50章程度に
なるのではないかと思います。

上に述べた「4本のストーリーライン」が
どのように並走していくかを2章から15章
あたりまで見ておきますと、ザッとこんな
感じで視点や舞台を変換して行くんですね。

  • 2~5章  槙父子の周辺(千葉)  
  • 6章    優馬の周辺(東京)  
  • 7章    北見刑事の捜査  
  • 8章    槙父子の周辺(千葉)
  • 9章    泉の周辺(福岡→沖縄)  
  • 10章   北見刑事の捜査  
  • 11章   泉の周辺(沖縄)  
  • 12章   優馬の周辺(東京)  
  • 13~14章 槙父子の周辺(千葉)  
  • 15章    泉の周辺(沖縄)  

このように舞台を変えていく小説の流れを
逐一追っていっても「あらすじ」として
まとまりにくいので、ここでは上記の
ストーリーラインを一つずつ、それぞれ
物語の一部始終を見ていくことにします。

「”」印のグレーの囲みと「…」内は原作
からの引用です。

💭CHECK!印は映画で改変している部分
などについての注釈・コメントです。

うるさかったら飛ばしてください。



槙父子の周辺(千葉)

生まれ育った浜崎の漁協で働く慎洋平は、
8年前に妻を亡くしてから娘の愛子と
二人で生きてきた。

愛子は「美人ではない」が、ぽっちゃり
として愛嬌があり、これまで男との
関係でトラブルもあった。

頭もよいとはいえず、しっかり者の
従姉にも心配をかけてきたが、突然、
家出して4か月の不在。

新宿歌舞伎町の保護センターから洋平に
連絡が入り、騙されてソープランドで
働かされ、心身とも損傷して入院中だと
いうので、引き取りに行く。

映画の愛子は宮崎あおいさん
なので、もちろん美人で
スリムです。

精神的に何かの障害(発達障害
の一種か)を抱えているらしく、
周りを心配させ続ける娘だという
あたりは原作に忠実で、宮崎さんの
演技も見事! と拍手を送る
しかありません。

「ソープ……」は映画では「風俗」
と表現を改められましたが、
これは宮崎さんの清純イメージに
配慮した妥協なのかな?

浜崎で普通に働き始めた愛子は、2か月前に
ふらりとやってきて、洋平のもとで
働き始めていた田代と仲良くなる。

 

愛子が明るくなることを喜ぶ洋平は二人の
同棲も認める形になるが、素性の知れない
ことに不安を感じ、以前働いていたという
軽井沢のペンションへ向かい調査する。

田代がそこでは別名で働いていたことなど、
不審点がいくつか浮かび、それを伝えると、
愛子は田代からすでに聞いている
ことを話す。

つまり田代は、大学生の時に両親が借金苦で
自殺してしまい、その借金の返済を迫る
暴力的な集団にから逃げ回っているのだ…と。


山神事件の特集番組をテレビで見た洋平は
整形もしているという山神が田代に似て
いると思い、愛子にもそれを話す。


雨に濡れながら洋平の家へ来た愛子は、
「今、警察に通報した」と泣く。

出勤前に田代のバッグに自分が貯めた
40万円を入れておき、彼が出て行ってから
電話を入れたという。

「人を殺して逃げてるの?」
「違うよね?」
だったら「お昼までに戻ってきて!」

でも田代から帰ってきたのは
「今までありがとう」のメールだけ。


警察の捜査の結果、山神と田代の
指紋は一致しないと判明。

やがて田代から洋平に電話が入り、
二人は謝りあう。

洋平の携帯電話を奪った愛子は
「お願い! 戻ってきて!」
「みんなで田代くんのこと守るから!」
と叫び、これから迎えに行くと告げる。

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優馬の周辺(東京)

広告関係の会社で出世コースを歩む
藤田優馬は32歳のゲイ。

「発展場」で出会った28歳の大西直人が
東京へ来たばかりで住む家もないという
ので、やがて自分のマンションに同居させ、
夫婦のような生活になる。


母のいるホスピスにも連れて行くと、
直人は母とも親しくなり、頻繁に通う
ようになって、臨終も出張中の優馬に
代わって看取る。


年が明けて2013年、あるカフェで直人が
女性と話しているのを偶然、目にした
優馬は不審に思う。

ゲイ仲間が相ついで同じ手口の空き巣
被害にあったと聞いてもいたので、
直人に疑惑の目を向ける。

あの女は誰だと尋ねると「妹だよ」という
答えで一応納得し、二人は俺たちも墓に
「一緒に入るか?」「ああ、いいよ」
などと笑いあう。

   

母の墓をなんとかしようと、兄一家の
3人と優馬と直人とで御殿場の墓地へ
見学ドライブ。

映画では優馬は一人っ子
のようで、兄夫婦は出ませんが、
兄嫁の友香がもともと優馬の
友人だった人で、重みのある
人物です。

彼がゲイであることを知って
いるばかりでなく、優馬に
対して「あなた自身がゲイを
低く見ている」のでは?
と鋭い批判を放ったりします。

帰途、休憩所のテレビで一昨年の八王子の
事件の容疑者の手配写真(女装もあり)を
目にし、頬のホクロなどが直人に似た
ところがあると気づく。

「お前さ……、まさか殺人犯だったり
しないよな」と冗談っぽく言い、
直人はあきれた風に鼻で笑う。


翌日、帰宅すると直人がおらず、
何日待っても連絡もない。

やがて警察から電話が入り「大西直人
さん」をご存知ですかと問われた
優馬は、知らないと答え、急いで
直人の私物を処分する。


以前、直人が例の「妹」と話していた
カフェで、優馬はその女性を見つけ
直人の居所を尋ねる。

彼女の答えは…
  • 直人と自分は同じ施設で育った
    兄妹のような関係。
  • 直人には治癒不能の心臓疾患が
    あり、その発作で上野公園で
    倒れ、そのまま死んだ。
  • 優馬はゲイでも「堂々として」
    いて、一緒にいると自分まで
    強くなれたと言っていた。

優馬はタクシーで上野公園へ直行し、
「なんで、俺みたいな臆病者のこと、
信じるんだよ……」と泣き崩れる。

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泉の周辺(沖縄)

母一人子一人で育った小宮山泉は
テニス部所属の活発な高校1年生。

名古屋から福岡へ移った3年前と同じく
男性関係の問題から失職した母が沖縄・
波留間島のペンションに就職することに
なり、夏休み中に二人で移住したばかり。


転入した高校の同級生で民宿経営者の子、
知念辰哉のエンジン付きボートに乗せて
もらい、「星島」という無人島に上陸
してみる。

昼寝するという辰哉を残して歩いていくと、
コンクリートの廃墟があり、そこで生活
しているらしい若い男、田中に遭遇。

「この辺りをふらふら。ひとり人旅みたいな」
ことをしているのだと言い、お互いのことを
少し話してから、別れ際に「俺がここにいる
こと、できたら誰にも言わないでほしい」
と頼み、泉はうなずく。


遠方から一人でやって来てサバイバル生活
する田中を「同志」のように感じた泉は、
その後も何度か星島を訪れ、自分が作った
ビーフシチューを分与するなど、
援助し感謝される。


土曜日、映画を見に行かないかと辰哉に
誘われ、二人で来た那覇の国際通り。

夕方レストランを探していると田中に
出くわし、「晩めし奢るよ」というので、
居酒屋に入るが、泡盛を飲んだ辰哉は
泥酔してしまう。

     
  那覇・国際通り


田中と別れ、動けない辰哉を置いて
荷物を預けてある叔母さんの家まで
一人で行こうとする泉。

米兵が飲み騒ぐ路地を通るうち、突然、
刺青のある二人の大きな白人に口を塞がれ、
児童公園に引きずり込まれる。


気がつくと辰哉が携帯で電話しようと
しており、泉は「やめて……」と呟き、
「誰にも言わないで」と繰り返す。

警察への通報を勧められても母が拒否し、
泉は「体調不良」と称して5日間寝ていた。


その間、毎日下校すると防波堤に座り続けて
いるらしい辰哉から「俺、絶対に誰にも
言わない。信じてほしい」とメール。

防波堤で泣いている辰哉に歩み寄った泉は
「来週から学校行くから」と声をかけ、
でも「私、戦えないよ。……だって、私、
そんなに強くないもん」

「うん」と辰哉は何度もうなずく。
   
2013年正月の繁忙が収まったころ、
辰哉は一人で星島に渡る。

そこに初めて田中を見つけて驚き、
雑談するうち、働く気があるなら辰哉の
民宿で募集しているが…という話になる。

話が決まって、田中は辰哉の指導で仕事を
覚えていくことになり、二人はたちまち
周囲から兄弟と見られるほど仲良くなる。


ある日、田中の乱暴な仕事ぶりを見た辰哉が
「ダメですよ」と叱ると、田中は暗くなり、
「自分ではどうしようもないこと」で
悔しくて…などと言い出す。

実はあの夜、那覇で泉に起こったことを
知っていると言い、現場にいたけれども
怖くて助けられず「たぶん、『ポリス!
ポリス!』って叫んだような気がする」。

奴らがタクシーで逃げたので、自分も
タクシーで追ったが、キャンプ内の
施設に入ったので、公園に戻ったら
辰哉がいたのだという。

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泉の母が働くペンションのおばさんに
出会った泉は、星島へ草刈りに行く
ところだといわれたので、同乗する。

廃墟へ行くと田中の荷物はもうなかったが、
白壁に赤ペンキで「怒」と大書されており、
その周りにも小さな「怒」の字がイモリの
ように「うじゃうじゃと書きつけられている」。


東京の刑事が島での捜査を開始している
と知った泉は、あの落書きを辰哉にも
見てほしいと思い、二人で星島に渡る、

そこで辰哉は泉は見なかった別の
黒マジックでの落書きを発見する。

米兵にやられてる女を見た

知ってる女だった

ウケる

どっかのおっさんがポリスって
叫んで終了

逃げずに最後までやれよ米兵

女気絶

ウケる

辰哉は青ざめ、泉には見せないまま、
「泉ちゃんは心配しなくていいから」
と唐突に言う。

民宿へ戻った辰哉は厨房にしゃがみ
込んで田中を待つ。

「ただいま」と帰ってきた田中に
「何も変えられない。…もういいよ」
と辰哉は繰り返し、持っていた包丁で
その胸を刺す。

 

駆けつけた北見刑事は「君は、あの男が
殺人犯だと知って」いて、そいつが
「暴れ出した」から刺したんだろ?
と問うが、辰哉は頑として
「むかついたから、刺した」
としか言わない。

映画での最大の改変は
この刺殺の経緯でしょう。

映画ではまさに刑事たちの
思い描き通り、まず田中が
「暴れ出し」、厨房を
メチャクチャに破壊する
田中を辰哉が刺す…
という経緯になります。

「田中=悪/辰哉=正義」
という図式がそれによって
明快になるわけですが、
田中=山神という男の
不可解さゆえの面白みは
低減したともいえます。

田中があれだけウジャウジャ
書きつけていた「怒」の字が
何に向けられていたのかは、
小説でも分からないというか、
解釈の選択肢が多いぶん、
映画よりもっと不可解な
ぐらいですが、そのあたりは
「わからないからこそ面白い」
という見方もあるでしょう;^^💦


泉は辰哉のボートを勝手に操縦して
一人で星島に渡り、黒マジックの
落書きも読んですべてを理解する。

辰哉を助けるため警察にすべての経緯を
言おうと考え、いったんは母に止められて
自分でもホッとするものの、やがてまた
思い直して署に出頭し、すべてを語る。


直ちに星島へ渡った北見刑事は、
落書きを山神のものと確認する。

北見が辰哉に泉の証言を伝えた時、
「厳しい取調べの間、一度も涙を
見せなかった少年が声を上げて泣いた」。

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並走する4本のストーリーライン

さて、これでほぼわかりましたよね、
『怒り』の世界。

いや、でもそれ実はやはり映画『怒り』の
話に沿っているので、小説『怒り』の
内容はまだ語りきれていないんです。

そう、4本のストリーラインのうち
北見刑事の捜査の「あらすじ」が
まだですよね。


まあ省略しても映画は仕上がるという
話でもあるんですが、映画でのこのカットは
上記「泉の周辺(沖縄)」でふれた「田中=
山神」の人間像が深められなかったという
点と連動しているはずですね。

というのも小説では、北見が収集していく、
山神に接した人々の証言などから、この
不可解な人物像の解剖もある程度には
進行しているのです。

たとえば両親は子供時代は可愛くて頭もよく
人気者だったと言い、元雇用主は無口で
真面目だったが、突然キレて上司にバットで
殴りかかったことなどを語ります。

   

映画ではこれらはほとんど採り上げない
かわりに、八王子の事件の発生経緯を
示唆する男の証言を前面に出すのですね。

それによると、山神は炎天下を汗だくで
歩いて仕事の現場を探しても見つからず、
電話を入れると、「それは先週の仕事だ」
と笑うように言われます。

ガックリ来て、近くの家の玄関先に坐って
休んでいたところ、その家の女性が
帰ってきて、気を利かして冷たい麦茶を
出してくれた。


例の「怒」はこの親切な女性の、自分を
見下す目線(本当に見下しているわけでは
ないにしても、電話で自分を笑った男への
感情と重なって…)への怒りだった(叫び)…

というところがこの男の解釈で、
映画は一応それを押し出す格好に
なっているのですね。


小説もその通りかと言えば微妙なところで、
ほかにもいくつかの解釈を許すように
書かれています。

ともかく愛嬌があって、泉も辰哉も
惹き込んでしまう田中=山神はたしかに
特異な人物であり、「サイコパス」を
思わせる部分も多々あります。

精神医学や脳科学者で「サイコパス」
とされる人々がしばしば魅力的で
特異な能力を発揮することに
ついてはこちらで詳しく
情報提供しています。

サイコパス(中野信子著) の内容 あの凄い人も実はそうだった!

       

またサイコパスの登場する
(と解釈できる)文学作品
ならこちらで。

青髭(童話)のモデル ジル・ド・レの実話とあらすじ(ペロー/グリムの違い)

OUT(小説)完全ネタバレ!映画にはない凄惨で過激なラストとは?

コンビニ人間(村田沙耶香)はサイコパス?あらすじを押さえて考えよう



山神がサイコパスかどうかはともかく、
『怒り』の世界が、すでにふれた吉田さんの
もう一つの傑作長編『悪人』とも重なって、
異常に暗い心理を抱えた人物を扱っている
ことはたしかです。

『悪人』についてはこちらで詳しく
情報提供しています。

ぜひご参照ください。

吉田修一 悪人(小説)のあらすじ【地図つきネタバレあり】

     



まとめ

どうでしょう。

これでもう『怒り』の世界はほぼ
完璧にお分かりですよね。

読書感想文だろうがレポートだろうが、
上に述べてきただけの情報があれば
スイスイかけてしまうでしょう。


ん? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、日本と世界の種々の
文学作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。


「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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