棒(安部公房)を解説//意味わからない…からこそ面白い

やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズもはや第22回。

今回は高校現代文の教科書に採用されて、
生徒も教師もホトホト困らせている難物、
安部公房の短編小説、『棒』(1955。
『安部公房全作品 5』新潮社所収)に
挑戦します。

            

いや、なにが難物かって、ともかく何が
言いたいのかサッパリ意味不明なお話。

テストに出るとあっては、何をどう
考えておけばいいかわからず……

それも無理のない話で、実は先生の側でも
指導案が」できなくて困ってたりします。


今回はそのへんで、ワタクシなりの
助け船を出してみよう…と。

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え? 実はまだ読んでない?

読んだけどサッパリ筋がわからん?

ハイ、そういう人はまずこちらで
「あらすじ」を仕入れてくださいね。


安部公房 棒のあらすじ:このわからない短編で感想文だって?

      




「でくのぼう」だから棒になった?

さてその「わからない」という問題。

そもそも主人公兼語り手である「私」は
駅前のデパートの屋上から墜落し、
落下して気づくと「一本の棒になっていた」
というのですね。

で、この墜落にかんしても「棒になった」
ことについても、なんでなのか原因が
わからないままなのです。


その後、「白い鼻ひげ」の「先生」と双子の
ように似た二人の「学生」とに拾われて
研究されますが、なにしろ「棒」になって
いるので、動くことはもちろん、
しゃべることもできません。

つまり「行動」しませんから、「自分なら…
と反省してみる
」という《虎の巻》
適用するのは至難のワザ…ですよね。

では、どうすればいいか。

      

困ったときは「Yahoo!知恵袋」((((((ノ゚⊿゚)ノ

というわけで「知恵袋」の回答例を
紹介させてもらいますが、その一人、
「kmkr69218」さんは「棒は社会で疎外
された人間を象徴して」おり、墜落は
「自殺」によるもの、という明快な
解釈を下しています。

男を棒といっているだけです。
おそらく「でくのぼう」
(必要のない人間)とかけて
いる
んでしょう。
屋上から落ちる瞬間と最後にも
子供の叫び声がありますよね。
あれで自殺ということが
強調されています。
〔中略〕
主題は社会に必要とされない人、
無用な人が溢れている社会を
危惧しているのでしょう。
また、男自身も自殺をする
ということは、生きる意味を
見出せていないということです。

よし、しめた。これで行こう!
kmkr69218さん、ありがとう~(^O^)/


え? でも、なんだかなあ……( ̄ヘ ̄)
ですか?

よろしい。この解釈に納得しきれない人は、
もう少し考えてみましょう。

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何かの「寓意」と解釈すべき?

まず、墜落が「自殺」だったとは
どうしてわかるんでしょうか。

「ふわりと体が宙に浮き、『父ちゃん』
という叫び声を聞きながら、私は墜落し
はじめた」とあるわけですが、その直前の
「私」は「ぐっと上半身をのりだしていた」
とはいえ、「危険なほどだったとは
思えない」と明記されています。

この場合「危険」をあえて犯さなければ
死ねないはずなので、自殺するつもり
だったとは読めないと思うんですけどね。

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また教授と学生が「生きる意味など」に
ついて考えていたとしても、それが
「自殺した」ことの証拠になるん
でしょうかね?


「私」は動けない「棒」でも意識はあって、
意識内容を記述し続けているわけですから、
「自殺」であれば、その経緯や現在の
状況との関係などについてまったく
語らないのも不自然ではないですか?


ともかく「kmkr69218」さんの解釈は、
「棒」のイメージは「でくのぼう」という
慣用句から発想されたもので、要するに
「必要のない人間」の隠喩(メタファー
=類似性に依拠した比喩)である…
という認識に基づいています。

この認識の網を作品全体にかぶせることで
見えてくる「意味」のシステム(つながった
まとまり)を物語の「寓意」と解釈し、
それがを作品のメセージ(主張)であり
主題だとする立場ですね。

          

あるいはあなたの先生も、そういう
説明をされたかもしれません。

それで納得できる人はその線で感想文も
でっち上げればいいですし、もしテストに
出たら、その線で回答すればいいと思います。


でも、どうもしっくり来ない、違うような
気がする……という人には、この先をお読み
いただきたいと思うんです。

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語りの流れの異様さ

「棒」に目をとめた白ひげの先生と二人の
学生は「この棒から、どんなことが分るか」
考えてみよう、と分析を始めます。

はじめ、「棒」をあくまで棒として扱って
いますが、「なにか一定の目的のために、
人に使われていた」という分析のあたりから、
学生の言葉は、いわばねじ曲がってゆき、
先生もその流れに乗ります。

「しかも捨てられずに使いつづけ
られたというのは、おそらく
この棒が、生前、誠実で単純な
心をもっていた
ためでは
ないでしょうか」
「君の云うことは正しい。
しかし、幾分、感傷的になり
すぎているようだね」


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つまり「棒」をあたかも「人間」である
かのように見る意識はここではじめて
発生しているのであって、それ以前には
なかったものです。
(棒は棒としてしか認識されていなかった)

「棒=人間」というこの新しい意識で
二人の学生が議論を進めてゆくと、
やがて先生が笑い出します。

「君たちの言っていることを要約
すれば、つまりこの男は棒だった
ということになる。
そして、それが、この男に関しての
必要にして充分な解答なのだ…
すなわち、この棒は、棒であった」


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ここでは、もはや「棒」でなく「この男」の
方が主語になってしまったところが、
いささかショッキングです。

ここで認識は「棒=人間」から「人間=棒」
へと反転した…ともいえますね。


「棒」の形をした「この男」こと「私」は、
人間と認識され、研究されているにも
かかわらず、依然として「棒」としてしか
扱われない、という奇妙にねじくれた
状況が現出しています。

終わりの方では、「この棒は、ぼくらの
云うことを聞いて、なにか思ったで
しょうか?」という学生の声や
「父ちゃん、父ちゃん、父ちゃん……」
という子供の叫び声をも認識しますが、
それらに対するなんらの感情的な反応も
記述されないまま、小説は終わります。

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安部公房の前衛作家たるゆえん、その芸術
としての新しさを鑑賞することが求められて
いるのなら(教科書に採用される理由が
それ以外にあるんでしょうか?)、味わう
べきはこのような語りの流れの異様さ、
それを仕掛ける意匠の新奇性といった
ところではないでしょうか。

寓意を読むとしたら、むしろそういう作品の
構造自体に見るべきなんじゃないかと。

「棒=必要のない人間」という隠喩として
読むだけなら、そこになんの新しさも
ないわけですから。

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新しい文学として読む

なので、すぐれた感想文やレポートを書こう
という志のある人なら、この異様な語りの
構造に自分がどう反応したか、どんな感じを
もったか、といったところをなんとか言葉に
して行きたいですね。

たとえば……登場人物の言葉や思考は、
他の人物の言動や状況からなんらかの
「暗示」を受け、それに突き動かされる
ように移動していっているようにも見えます。

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その動きは「シュルレアリスム」的でも
あり、語りは「意識の流れ」を直接に
映し出すようでもあります。

この「シュルレアリスム」とか「意識の流れ」
とか、20世紀に入って生まれた新しい
文学の考え方が採り入れられていることは
明らかですので、そのあたりを調べてから
読み直せば、また新しい発見があるはずですよ。

「シュール」という日本語を産み
落とした芸術運動、シュルレアリスム
に関しては、こちらもをご覧ください。

シュールの意味と使い方:お笑いの世界から芸術的”超現実”へ

原民喜 夏の花で感想文:夢が交錯する”超現実派”の文体を解説
  
    

又吉直樹 火花で感想文・批評文を☆火花を散らす”ボケ”師弟

また『棒』の世界にも顕著なのが「暗示」を
受けてしまうことの恐ろしさ。

これを描ききった傑作の一つに
シェイクスピアの『オセロ』があります。

詳しくはこちらで。

シェイクスピア オセロのあらすじと名言:漱石の解説つきで

シェイクスピアのオセロを講義:漱石の名言「白砂糖の悪人」?

           

むずかしいかもしれませんが、
やりがいのある仕事ではないですか。

なんにせよ、全文をじっくり
読みなおすところから始めるしか
ないかもしれませんね……( ̄_ ̄ i)

多少とも突っ込んだ感想文やレポートを
書こうという人は、そのへんを調べて
みるといいんじゃないでしょうか。



まとめ

さて、いろいろと情報提供してきました。

これでもう大丈夫ですよね。

テストだろうが、感想文だろうが、
はたまた授業のための指導案だろうが。



安部公房の作品ではもう一つ、『鞄』を
載せている教科書もあり、これについても
記事を書いていますので、多少は参考に
なろうかと思います。

こちらです。

安部公房 鞄のあらすじ… 簡単/詳しくの2段階で解説

安部公房 鞄をどう解釈 ? 主題は? 問題を見つけて感想文へ


そのほか安部公房の本を早く安く手に
入れたい場合は、Amazonが便利です。
こちらから探してみてください。

👌安部公房の本:ラインナップ👌

え? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、日本と世界の種々の
文学作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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