谷崎潤一郎 刺青のあらすじと考察//若尾文子の背にも女郎蜘蛛

谷崎潤一郎 刺青のあらすじと考察//若尾文子の背にも女郎蜘蛛

やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズもはや第41回。
「あらすじ」暴露サービスとしては
第18弾となります。

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今回は谷崎潤一郎のデビュー作『刺青』
(しせい/1910)で参りましょう。


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さて、一口に「あらすじ」を、
といっても話の骨子だけでいいという
場合から、読書感想文を書くんだから
もう少し詳しくないという場合まで、
千差万別でしょう。

そこで出血大サービス((((((ノ゚🐽゚)ノ

「ごく簡単なあらすじ」と
「やや詳しいあらすじ」の
2ヴァージョンを用意しましたよ~~(^^)у


ごく簡単なあらすじ(要約)

まずはぎゅっと要約した
「ごく簡単なあらすじ」。

若い刺青師、清吉の「宿願」は美女の
肌に「己の魂を彫り込む事」だった。

心に適う女を捜し続けて4年目の夏、
駕籠(かご)をはみ出した白い素足を
見て、この足を持つ女こそは
と思ったが、駕籠は消え去る。

翌年の春、家に使いに来た16,7歳の
美しい娘の素足を見て、
あの駕籠の女だと悟る。

清吉は娘に、男の惨状を喜ぶ女を
描いた二つの絵を見せて、
「お前の心が映って居る」などと言い、
娘自身もそこに「真の『己』」を
見いだす。


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一昼夜をかけて娘の背中一杯に巨大な
女郎蜘蛛を彫った清吉の心は「刺青の
中へ己の魂をうち込んだ」ため
夜明けには「空虚(うつろ)」。

男は「みんなお前の肥料(こやし)に
なるのだ」などとつぶやく。

意識の戻った娘は、湯殿での仕上げの
痛みにも耐え抜き、私はもう「臆病な
心」を捨てた、あなたは「真先に私の
肥料になったんだ」と瞳を輝かす。

「帰る前にもう一偏」との願いを
いれて、女が肌を脱ぐと、朝日が
射して「女の背(せなか)は燦爛
(さんらん)とした」。

どうでしょう?

え? なんだかよくわからん?

いったい何が言いたいのか?


ハハハ、まあそうでしょうね。
これだけでピンと来る人がいたら、
その方がむしろコワイ……

その方面に趣味をお持ちの方かしら;^^💦
ということになるかも……ですね。


というわけで、ピンと来なかった人には
「やや詳しい」ヴァージョンの「あらすじ」
を読んでいただくことがやっぱり必要に
なるんですね;^^💦

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やや詳しいあらすじ

では参りましょう。

原作は全10ページほどの短編ですが、
行あけによって3部に分けられる形に
なっています。

なので今回は、いつもの「起承転結」でなく
「序・破・急」の3部に分けて、随所に
原文を引用しながら記述していきますね。

🐉【序】

「それはまだ人々が『愚(おろか)』
と云う貴い徳を持っていて、世の中が
今のように激しく軋み合わない時分」。

「美しい者は強者」で「醜い者は弱者」
だとする考えが支配的で、「刺青」
(ほりもの)も「美」として追求された。

      

若い刺青師、清吉は「人知らぬ
快楽と宿願」を潜ませていた。

🐉【破】

「宿願」は「光輝ある美女の肌を得て、
それへ己の魂を彫り込む事」
だった:*:・( ̄∀ ̄)・:*:。

その「美女」を捜し続けて4年目の夏、
駕籠(かご)からこぼれる白い素足を
目にし、この足を持つ女こそ永年求め
つづけたその美女だと確信し、追跡
するが、駕籠は消え去ってしまう。

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憧れが激しい恋に変わって年を越し、
春も半ばに、16,7歳の美しい娘が
家に使いとして現れる。

縁側に掛けた娘の素足を眺めて、
清吉は「顔を見るのは始めてだが、
お前の足にはおぼえがある」と言う。


清吉は娘を二階に上げ、
二本の巻物の絵を見せる。

一つは、暴君紂王の寵姫、末喜
(ばっき)が大杯を傾けて、今しも
処刑されようとする男を眺める様を
描いたもの(叫び)。

見入る娘の顔はみるみる末喜の顔に
似て来、娘自身もそこに
「真の『己』」を見いだす。


「この絵にはお前の心が映って居るぞ」
と笑う清吉は、「この女の血がお前の
体に交って」いるとも言う。

もう一つの「肥料」という絵は、若い女が
桜の幹へ身を寄せて、足下の多くの
男たちの屍骸を見つめているもので(ドクロ)、
「これはお前の未来を絵に現わした
ものだ」と清吉。

   

娘は突っ伏してわななき「お察し通り、
その絵の女のような性分を持っています」
と白状し、恐ろしいから「帰しておくれ」
と繰り返す。

まあ待て、「己がお前を立派な器量の
女にしてやるから」と引きとめる清吉の
懐には麻酔剤の壜が……。

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🐉【急】

一昼夜をかけて娘の背中一杯に巨大な
女郎蜘蛛を彫り、夜の白むころ、
その女郎蜘蛛を眺める清吉の
「心は空虚(うつろ)」であった。

「己はお前をほんとうの美しい女に
するために、刺青の中へ己の魂を
うち込んだのだ」と清吉は言う。

「男と云う男は、みんなお前の
肥料(こやし)になるのだ」

     

意識の戻った娘は早く刺青が見たいと、
湯殿での仕上げの痛みにも耐え抜く。

「親方、私はもう今迄のような臆病な
心を、さらりと捨ててしまいました。
───お前さんは真先に私の肥料に
なったんだねえ」と女は瞳を輝かす。


「帰る前にもう一偏」という清吉の
頼みに、女は黙って頷く。

「折から朝日が刺青の面(おもて)に
さして、女の背(せなか)は燦爛
(さんらん)とした」。

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文学的意味は?

どうでしょう。
少しはピンと来たでしょうか?

え? やっぱりダメ?

うーん( ̄ヘ ̄)、それでは、本文全体を
読み通してもらうしかありませんね。


ともかくこれが、わからない人にはわかり
にくい、谷崎潤一郎の世界なんでして、
外国語訳も多い「文豪」として世界に名を
轟かせながら、母国の大衆には忘れられがちな
理由も、このへんにあるわけですね。

つまり、学校の教科書にあまり出ない
ということが大きいんでしょう。

ぶっちゃけていいますと、現代の日本人が
俗に「S」だの「M」だのと、きわめて
いい加減に称する傾向の、その突き詰めた
世界こそ谷崎ワールドの核心をなして
いるわけなんですから……。

    


ですので、その文学的意味とか存在価値とかを
考察しようとするなら、まじめ一方の人が
イヤラシイ(≧д≦)とかオゾマシイ(=`(∞)´=)
とか言って目を背けるような世界に踏み込む
必要がどうしても出てくるわけなんです。

 
ただ、素足へのこだわり(つまりフット=
フェティシズム)は谷崎個人のもの。

彼はついに最晩年の『瘋癲老人日記』(1961)
まで半世紀にわたってその表現に精を出し
続けたんですから、偉いといわなくては
なりません。
👉「M」の世界についてはコチラの
記事もご覧ください。

マゾヒズムの元祖 マゾッホの指責めで痛いほど笑って感想文?

       


ともかく「美」の追求には「痛み」なり、
「支配/被支配」とその逆転なり、
それなりの代償を伴わずにはいないよ……

といったことを教えられるん
ではないでしょうか。
👉その後の谷崎が著わした数々の名作──
『少年』『痴人の愛』『卍』『春琴抄』
『細雪』『鍵』ほか──についてはこちらで
まとめていますので、お好みの作品を
お探しください。

谷崎潤一郎でおすすめの小説は?絢爛豪華 妖艶な文章美で魅了する10冊

      

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入れたいという場合はAmazonが便利です。
こちらから探してみてください。

谷崎潤一郎の本:ラインナップ


👉奥の手として、作品の世界からはやや離れ、
文化としての「刺青」を考えるというのも
場合によってはアリでしょう。

その場合はコチラへ。

蛇にピアス(小説)のあらすじを結末まで:身体毀傷の喜悦?

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まとめ

さあ、どうでしょう。

読書感想文を書こうという人も、
もうOKですよね……。


うーん、書けそうなテーマは
浮かんできたけど、でも具体的に、
どう進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

👉当ブログでは、日本と世界の種々の
文学作品について、「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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