小津安二郎 東京物語ほかの文学的ショット!漱石『三四郎』へ

 


やあやあサイ象です。

今日は「オズ」の話をしたいと思います。

といっても「オズの魔法使い」では
ありません。

世界のOzu、そう日本映画の巨匠、
小津安二郎監督ですね。

代表作の一つがこれ。

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このカバーに使われているのは、
ヨーロッパでたいへん評価が高いという
『東京物語』のワン・ショットです。

遠方の同じものに視線を送っている
笠智衆と原節子。

いいですねえ。

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こういうふうに、主要登場人物が
視線を合わせるのでなく、むしろ
その2本の視線がどこか遠くで
接している、横から見たその情景を
差し出すことで二人の心を通い合いを
むしろ鮮やかに表現する……


小津映画の真骨頂ともいうべき
このようなショットは、『東京物語』
ばかりでなく、多くの傑作において
多用されているものですが、
この手法、いつ、どのようにして
獲得されたものなのでしょうか。



Ψ 「白い雲」を見る三四郎と美禰子

これは思いつきの域を出るものではなく、
なんら実証はないのですが、
ひょっとしたら、小津さんがたくさん
読まれたはずの文学作品にヒントを
得られたのではないか、
というのが私の仮説なんです。


たとえば?

そうですねえ。

思い浮かぶのは夏目漱石の長編小説『三四郎』(1908)です。



熊本の高等学校を卒業して東京帝国大学に
入学した三四郞が謎めいた美女、
美禰子との恋愛(むしろ「恋愛ゲーム」と
いうべきか)を含む様々な新しい経験を
重ねていくという青春小説なのですが、
たとえば第四章では、広田先生の引っ越しの
手伝いで遭遇した二人が二人だけで窓から
「白い雲」を見ながら話します。

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また第五章では、やはり広田先生のグループで
団子坂へ菊人形見物に繰り出すのですが、
やがて疲れた様子の美禰子が
「もう出ましょう」というので、
二人で群れを離れ、だいぶ歩いてから
小川の縁にすわり、空を見上げ、
やはり「白い雲」を眺めながら話すのです。

「こういう空の下にいると、
心が重くなるが気は軽くなる」

「どういう訳ですか」と
美禰子が問い返した。

三四郎には、どういう
訳もなかった。

返事はせずにまたこういった。



「安心して夢を見ている
ような空模様だ」

「動くようで、かなかな
動きませんね」
と美禰子はまた遠くの
雲を眺め出した。


二人並んで同じところに視線を
送りながら、心を通わす……。

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Ψ 心通う…とも限らないが

でもこれ、小津安二郎の父娘や老夫婦の
ように、遠くで視線が絡ませながら、
心を通わす……というのは、片方が一方的に
そう思い込んでいるだけ、という可能性
もあるわけで、ちょっと危ない場合も
ありますね。

三四郎と美禰子の場合はまさにそれで、
「迷羊(ストレイシープ)、迷羊
(ストレイシープ)」などと謎めいた
言葉をふりまいて正体をつかませない
美禰子は、けっきょく三四郞も、また
その恋敵かと思われた野々宮さんをも
振り捨てていくわけですね。

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その内容をもう少し知りたいという人は
ぜひこちらの記事をご覧ください。

夏目漱石 三四郎のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説


もちろん『三四郞』のこれらのシーンが
小津さんに影響を与えたという証拠は
ありませんが、その可能性、またはほかの
文学作品のこういった場面が(無意識的に
であれ)小津さんの芸術的感性に
しみ入っていたという可能性は
大きいと思うんですよ。


みなさん、どう思われます?
(識者の叱正を乞いたいところです)

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