江戸川乱歩 陰獣のあらすじを簡単に【&結末までネタバレありで】 | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象

江戸川乱歩 陰獣のあらすじを簡単に【&結末までネタバレありで】

やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズも
はや第82回。
「あらすじ」暴露サービスとしては
第51弾となります。

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今回はあの江戸川乱歩の代表作の一つ
『陰獣』(1928)で参りましょう。
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映画化の試みもいくつかあって、
加藤泰監督、香山美子・あおい輝彦主演の
『江戸川乱歩の陰獣』(1977)は素晴らしい
映像と独特のカメラワークで出色の出来。

その予告編動画をどうぞ。


なんとフランス映画『陰獣』(バーベット
・シュローダー監督。INJU, La bete dans
l’ombre
, 2008)も制作されている
のですが、これはずいぶん思い切った
翻案で、原作からはだいぶ離れています。


さて、予告編からはもちろんストーリーは
わかりませんから、これから「あらすじ」
をお届けするのですが、その「すじ」を
どの程度詳しく知りたいかも(ネタバレされ
たくないかどうかを含め)、人により
まちまちでしょう。

そこで出血大サービス(◎◎)!

「簡単」版と「やや詳しい」版の2段階で
お届けしますよ~。


簡単なあらすじ

まずはごく簡単なあらすじから。

探偵小説家の「私」(寒川)は自分の
愛読者だという美しい実業家夫人、静子
から同業者の大江春泥(しゅんでい)
について尋ねられる。

静子の話では、7年以上前の女学生時代に
捨てた恋人、平田一郎から「大江春泥」
は自分の筆名だと明かす手紙を
受け取った。

これから「着々君への復讐計画を進めて
行く」といい、しかも君の身辺はすべて
見えていると称して、「寝室の秘密」
まで含む静子の行動を毎回、
微細に記述して来ていた。

この「いたずら」をやめさせると静子に
請け合った寒川は、雑誌編集者などから
情報収集するも、居場所はまったく
つかめない。

新たな脅迫状で平田は、静子を殺す前に
「夫の命を、お前の目の前で奪」う
と宣言。

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春泥の小説『屋根裏の遊戯』を
思い出した寒川が天井裏など
探索するも、手がかりなし。

二日おいて、小山田六郎の変死体(ドクロ)が
隅田川で発見され、1か月たっても
犯人の手がかりはない。

この間、静子との関係を深めていた
寒川は事件について推理した検事宛の
意見書を書いて静子に見せる。

「平田からの脅迫状は実は小山田の
書いたもので、その変死は、静子との
怪しい遊戯の果てに川に転落したもの」
とする結論に静子は安堵の色を見せ、
二人は「秘密の逢瀬」をもつことに。

乗馬用の鞭を持参した静子の要求に
答え、寒川もSM的遊戯にふける。

    


それから20日ほどして、新しい情報と
ともに頭を冷やした寒川は、静子に
新しい推理を語り、色香でごまかそう
とする彼女を押しのける。

それによれば平田一郎は実在せず、
大江春泥の全作品、そして小山田
殺しの筋書きを描いたのは…❓叫び

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いかがでした。

これでおおよそ、どんな小説かは
わかりましたよね?

ん? でも結局最後の”❓”は誰で
そのあと二人はどうなるんだ?

それに寒川の2回の推理の内容も
よくわからんし…


それらをスッキリさせたい人は
やはりもう一度、はじめから
「詳しいあらすじ」を辿り直す
必要があるのですね;^^💦


ネタバレありの詳しいあらすじ

ではさっそく、このやや長い推理小説の
あらすじを始めから結末まで同程度の
詳しさで記述していきます。

「結末まで」ということは、ネタバレ
避けるという配慮は一切しないという
ことでもありますので、結末を知りたく
ない人は絶対に読まないでくださいね



原文は12章構成ですが、わかりやすさの
ため、これを「起・承・転・結」の4部に
分けて記述していきます。


👿【起】(一~二)

探偵小説家には、犯人の残虐な心理を
追求する「犯罪者型」と、理知的な
探偵の経路を追う「探偵型」との
二種類があるが、私がこれから書く
大江春泥(しゅんでい)は前者に属し、
私(寒川)自身は後者である。

私はある時、上野の帝室博物館で
優艶な美女に出会い、そのうなじに
赤あざのようなミミズ腫れが
あるのに気づく。

   

言葉をかわすうちに、それが実業家
小山田六郎の夫人、静子で、私の
探偵小説の愛読者とわかり、
二人は文通するようになる。

数ヶ月間後、静子から大江春泥の住所を
問われ、わからないと答えると「相談」
したいというので、面会すると、
彼女は以下のように話す。

7年前に10歳以上年長の小山田氏に
見初められて結婚したが、それ
以前、静岡の郷里での女学生時代、
平田一郎という青年と少しの間、
恋仲になっていた。

「十八の娘のちょっとした出来心
から」の恋にすぎなかったが、
捨てられた平田の方は真剣に
執着し、家には気味の悪い
脅迫状さえ舞い込んだ。

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その平田から最近「とうとう君を
見つけた」に始まる手紙が数通届き、
そこで平田は「大江春泥」は自分の
筆名だと明かした上で、これから
「着々君への復讐計画を進めて行く」
と宣言していた。

しかも「家の中で君の身辺に
起こった」ことはすべて見えて
いると称して、「寝室の秘密」を
含む静子の行動を毎回、微細に
記述してくるのだが、気味の悪い
ことに、それがすべて
事実だった(゚_゚i)。

この手紙を見せられた寒川は、平田の
住所をつきとめてこの「いたずら」を
やめさせると静子に請け合う。

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👿【承】(三~七)

雑誌編集者などから情報収集すると、
平田は極度の人嫌いで、編集者との
やりとりも妻に代行させるほど。

好男子の顔写真を著書の口絵に
出しているが、博文館の本田に聞くと、
それも「うそ」。

一年前からは小説を書かなくなり、
所在さえくらましていて、
居場所はまったくつかめない。

  

静子に届いた新たな脅迫状で、
平田=春泥は「お前を殺すに
先だって、お前を愛している夫の命を、
お前の目の前で奪」うと宣言(叫び)。

手紙には、今も「お前の影である私は、
どこかの隅から、眼を細めてじっと
眺めている」ともあり、また静子は
実際、自宅の天井に人の気配がする
ともいうので、私は春泥の小説
『屋根裏の遊戯』を思い出す。
👉乱歩が3年前に発表していた小説『屋根裏の
散歩者』(1925)を思わせずにいないタイトル。

この作品については、こちらの記事を
ご参照ください。

屋根裏の散歩者(江戸川乱歩)のあらすじ:ネタバレ御免で探索

    


『屋根裏の遊戯』の主人公をまねて、
天井裏を探索してみたものの、
手がかりなし。


二日おいて、小山田六郎の変死体が
隅田川の吾妻橋下あたりで
発見される(ドクロ)。

事件担当の糸崎検事は、小山田家を
刑事に張り込ませるとともに、春泥の
行方を全力で探すうよう警察に指令。

1か月たっても手がかりはなかったが、
脅迫状はぱったりと来なくなっていた。


一方、静子と私の関係は事件後、
親密の度を増し、ことに、ある日、
彼女の寝室から小型の鞭を見つけてから
「私の悩ましい欲望」は燃え上がる。

静子のうなじから例のミミズ腫れが
消えていることからしても、小山田が
そちらの趣味をもつ者であったことは
疑えないが、ひょっとして自分も
彼と同じ変質者かしら(((゜д゜;)))
と思い始める。

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👿【転】(八~十)

数日後、私は事件について推理した
長い意見書を糸崎検事宛に書く。

【その要旨】
六郎が鍵を掛けていた書斎から
発見された証拠品──
1.「平田と静子の関係を
知れり」云々の日記の記述

2.春泥短編集『屋根裏の遊戯』

3.雑誌口絵の春泥の筆跡を
なすった爪あと

──などから、以下の結論が得られる。

A.平田からの脅迫状は実は
小山田の書いたもの。

B.その変死は、静子との怪しい
遊戯の果てに軒蛇腹から滑落し、
塀に激突して隅田川に転落したもの。

この意見書を見せられた静子は、 
赤面、茫然ののちに安堵の色を見せる。

私は彼女に接吻し、「秘密の逢瀬」を
もちかけて承諾される。




その逢瀬に静子は乗馬用の鞭を持参し、
それを私の手に握らせて、打つようにと迫る。
👉読者はここへ来て、前半から少しずつ
ほのめかされてきたマゾヒズムの世界に
完全に導き入れられます。

この妖しい倒錯の世界をめぐっては
こちらで詳しく情報提供しています
ので、ぜひご参照ください。

マゾの心理??? そのゲーム(契約)的構造を映画・文学から解き明かす

     


その後また20日ほどして、やや冷静
になると、この事件全体が『屋根裏の
遊戯』のほか、いくつかの春泥作品の
モチーフで、いわば「春泥色」に塗り
固められたものに見えてくる。

春泥の妻について本田に尋ねると、
近眼鏡をかけ、頬には歯痛止めの
貼り薬をいつも貼っているといい、
不自然に感じる( ̄ヘ ̄)。

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👿【結】(十一~十二)

事件全体を考え直した私は、定例化
していた逢い引きの場所へ行くと、
静子と並んで腰をおろし、
新しい推理を語る。

動揺した静子は中途で制止し、上半身を
うねらせて私の気をそらそうと
試みるが、私は応じない。

【その推理の要点】
.六郎の書斎に『屋根裏の遊戯』
を置いたり、日記に「平田と静子の
関係を知れり」との書き込んだり、
雑誌口絵に爪あとをつけたり
したのはあなただ。

      


.変装して春泥の妻を演じて
いたのもあなただ。

.春泥は実在せず、その作品は
あなたが書いていたのだ。

.六郎殺しを仕組んだのも、
もちろんあなただ。

グッタリして身動きさえしない静子に
「よく考えて、正しい道を選んで
ください。このままあなたとの関係を
続けていくことは、ぼくの良心が
許しません・・・・・・では、さようなら」
と言い置いて、私は去る。

 
その日の夕刊で私は静子の自殺を知る。

  


だが、それが他殺でないという証拠も、
また私の推理が間違いでないという
証拠も、実はない。

春泥=平田がどこかに生息している
のではないかという私の疑惑は
日々深まっている。

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作者が”自己抹殺”を試みた小説?

どうでしょう。
楽しんでいただけましたか?

え? やっぱりよくわからん?

まあ、それはそうかもしれません。

かなりの長さのある推理小説ですから、
「あらすじ」ではやはり、仕組まれた
「トリック」や仕掛けをすべて説明して
いくことは無理なんですよ。

だからやはり、完全に理解したい人は
原作にあたってもらうしかないですね。
    
    

もう一つ面白いのが、最後に「結末」が
つけられたあとで、さらにもう一度、
春泥はやはりいるのかもしれない、
と再び「疑惑」が浮上してしまう
ことですね。

これについては批判があったそうで、
後の版では乱歩自身がいったん削除した
のですが、その後また「原形の方がよい」
と考え直して『江戸川乱歩全集』では
復活させたとのこと(「あとがき」)。


その「あとがき」をついでに紹介しますと、
「陰獣」とは「猫のような『陰気なけもの』
という意味だそうで(陽気な猫さんには
ゴメンナサイ😹)、この小説の「楽屋落ち
みたいなもの」が奇妙な魅力になっていた
と述べています。

つまり

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この小説の犯人は江戸川乱歩に酷似した
人物で、しかも最後にはその人物が女と
わかり、結局、江戸川は架空の作家
だったということになってしまう。

つまり、私は小説の中で自己抹殺を
試みたのである。
     (『江戸川乱歩全集』(桃源社)第二巻「あとがき」)


いや、なかなか面白い冒険ではないですか。

つまり『屋根裏の散歩者』をはじめ、
いくつかの”変態心理”的な自作品を
取り込んでその作者を犯人に仕立て、
けっきょく破滅させるんですから……

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なので、この作品を十分に理解するには
『屋根裏の散歩者』以外の主要作品も
読んでおくことが必要になるでしょうね。
👉この大エンターテイナー乱歩の世界を
めぐっては、かなりの記事をきためています。

お気に入りをこちらから見つけてください。

江戸川乱歩の本でおすすめ!初心者向きからR18+の淫靡世界まで13作

    


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こちらから探してみてください。
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👿江戸川乱歩の本:ラインナップ👿
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まとめ

さあ、どうでしょう。

これだけの情報があれば、
感想文を書こうという人も、
もう鬼に金棒ではないですか? 

  

え? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でも具体的に、どう進めて
いいかわからない( ̄ヘ ̄)?

それならまず、当シリーズの「感想文の
書き方《虎の巻》」の適用例をご覧ください。  

乱歩以外にも多くの作家・作品をとりあげて、
「あらすじ」や「感想文の書き方」の
記事を量産しています。
👉こちらのリストをどうぞご覧ください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/



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