サクラさん
映画や劇で主人公より
悪役の方に魅力を
感じてしまうことが
よくあります。

シェイクスピアなら
オセロよりイアーゴ。

その天才的な悪辣さには
圧倒されましたよ(叫び)

ハンサム 教授
そういう悪党を創造する
シェイクスピアの凄さ
には夏目漱石も舌を
巻いていました
からねえ。

サクラさん
イアーゴよりもっと
凄い悪党っています?

ハンサム 教授
まずは『リチャード
三世』でしょうね。

これはまさに主人公の
リチャードがすなわち
悪役で、とんでもなく
悪くて冷酷…

サクラさん
歴史上実在した
リチャード三世も
悪かった?

ハンサム 教授
いや、それは彼を倒して
成立したチューダー朝の
歴史観によって”悪”に
されている部分が大きい
わけで、肖像画を見ると
むしろ気弱そうな感じも
ある人ですよ。

  

ただ生まれつき背骨が
曲がり片腕は萎えていた
ので、悪者に仕立て上げ
やすかったとは言える
でしょうね。

サクラさん
その容姿では女性にも
モテないでしょうし。

ハンサム 教授
いやいやそれが、自分を
憎む美女を一発で
口説いてモノにして
しまうんです。

もちろん劇中での
話ですが;^^💦

サクラさん
キャー ますます
素敵(😻)

これは読まずには
いられません!


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というわけで、おなじみ””あらすじ暴露”
サービスの第190弾(感想文の書き方
シリーズ第272回)となる今回は
シェイクスピア歴史劇の最高傑作
『リチャード三世』(1592-93年ごろ
執筆)に挑戦です((((((ノ゚🐽゚)ノ
 👇

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リチャード三世を悪者に仕立て上げたのは
もちろんシェイクスピアが最初ではなく、
チューダー朝成立以来のことですが、
ともかく実在のリチャードは肖像画が
示す通り決して悪人ではなかった…

という視点で書かれた有名なミステリー
小説がジョゼフィン・テイの『時の娘』。
    👇

表紙を飾るリチャード三世の肖像
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舞台は日本でも様々に工夫を凝らしての
上演が試みられてきていますが、
リチャードはやっぱり醜怪な極悪人で
行こうぜ~!
という趣向を貫く前衛作品として
古田新太主演の『リチャード三世』
(2009年。いのうえひでのり演出)
もありました。

こちらがそのその紹介動画。👇



またリチャードは逆に古来、美男俳優の
挑戦意欲をこそ駆り立ててきた
稀有の難役でもあります。

どこから見てもイケメンのアル・パチーノが
それに挑み、その政策過程を自ら監督して
《ドキュメンタリー+劇》に仕上げた
ユニークな映画が『リチャードを探して』
(1996)でした。
 👇



簡単なあらすじ(要約)

さて、そろそろ本題のシェイクスピア
作品に入っていきましょう。

まずは「あらすじ」ですが、これにも
色々あって、話の骨子だけでいいという
場合から、読書感想文やレポートを書く
ためにある程度詳しいものを……
という場合まで千差万別ですよね。


そこで「簡単なあらすじ(要約)」と
「やや詳しいあらすじ」との2本立て
という出血大サービス((((((ノ゚⊿゚)ノ

まずはぎゅっと要約した「ごく簡単」
ヴァージョンのあらすじから。

ヨーク家とランカスター家とで王権を
奪い合う、30年に及んだ薔薇戦争の
最後の数年間を集約的に描く。

ヨーク家のエドワード4世は、
ランカスター家から王権を奪い
取ったものの、病気で精神不安定。

その乱心に付け込んで自ら王たらんと
する末弟のリチャードは、背骨の
曲がった醜い男ながら、巧みに動いて
次兄クラレンスを幽閉、さらには
暗殺し、またかつて自分が殺した
ランカスター家皇太子の未亡人、
アンを口説いて結婚に同意させて
しまう。

  

行く手を阻む者は次々に消してゆき、
兄王の死で王座に就くや、王座確保の
ため幽閉中の二人の王子を暗殺させる。

さらには幼い王女エリザベスとの
結婚を狙い、アンは重病との噂を
流しつつ、王女の母親(前王妃)を
巧みに説き伏せてしまう。

が、やがて国外にいたランカスター
家のリッチモンド伯が挙兵、上陸。

英国内の反対勢力を糾合して
リチャード軍を撃破し、エリザベス
との結婚によりヨーク・ランカスター
両家の和解を実現する。

ん? これじゃあリチャードが凄い
としても、その権謀術策はどう発揮されて
頭脳的にはどう悪辣だったのか…
というあたりがサッパリ…┐( ̄ヘ ̄)┌?

いや、すみません;^^💦
短くつづめれば、どうしても
そうなっちゃうんですよ。

この憎々しいリチャード、そして彼を創造
したシェイクスピアの凄みを知りたければ、
少々長くなっても、入り組んだストーリーを
解きほぐし、登場人物それぞれの言動や
性格をじっくりと味わって行く必要が
ありますね。

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かなり詳しいあらすじ

それではそろそろ幕開けです。

が、その前に、登場人物の相互関係が
かなりややこしく、混乱する恐れが
ありますので、「相関図」(人物関係の
見取り図)を掲げておきます。

読んでいてわかりにくくなったら、
ここへ戻って確認してください。

『リチャード三世』相関図(人物関係の見取り図) 

お待たせしました。
それではホントの始まりです。

「”」印のある白い囲みの中は原作
(上記広告のちくま文庫の松岡和子訳)
からの引用で、シェイクスピアの”名言”
として知られる台詞を含んでいます。

👉印は話をわかりやすくする
ための注釈ですが、不要と思われる
場合はすっ飛ばしていただいて
かまいません。

🌹【第一幕】

👉1455年~1485年の30年に及ぶ
英国の内戦が「薔薇戦争」ですが、
この優雅な名称は、戦いがいずれも
プランタジネット王家の血統に連なる
ヨーク家(家紋が白バラ)とランカスター
家(家紋が赤バラ)との間でのもの
だったことによっています。

これを収束させてチューダー朝を樹立
するのがランカスター系のリッチモンド
伯ヘンリー・チューダー(ヘンリー7世)
ですが、この劇の主人公は彼との対決に
敗れて消えていくヨーク家出身の
最後の王リチャード3世。

先天的な異常で背骨が大きく曲がり、
性格も歪んでいます。
(現実はともかく作品内では;^^💦)

  
  発掘されたリチャード3世の遺骨


物語は、その兄エドワード4世が
1471年の戦いでランカスター軍を破り、
ヘンリー6世王とエドワード王子を
殺して王座を奪取したものの、二人の弟
(クラレンス公ジョージとグロスター公
リチャード)に心を許さず、魔術師の
予言などを真に受けてしまう…
ということろに幕を開けます。


ロンドン塔へ連行されるクラレンス公
ジョージが、それを呼び止めた
グロスター公リチャードに経緯を説明。

兄王は「Gによって王の血筋は絶やされる」
という魔術師の予言の「G」は俺(George)
のことだと決め込んだのだ、と。

リチャードは、それは妃のエリザベスの
策略だから、自分がこれから談判に行く…
と泣きながら兄を抱きしめる。

が、兄が消えると

ばか正直なクラレンス、
俺はあんたが大好きだ、
だからすぐにもあんたの
魂を天国に届けてやる

      
      現在のロンドン塔


前王ヘンリー6世の棺を運ぶ一団が
その子、エドワード皇太子の妻アンに
先導されて進むところを呼び止め
られるが、見るとそれはリチャード。

王も皇太子もリチャードの手にかかって
死んでいただけに、アンは彼への憎悪を
むき出しにするが、なんとそのアンを
リチャードは口説きにかかるのだ。

「悪魔」「地獄の手先」「獣(けだもの)」
「疫病神」「ヒキガエル」と連発される
アンの悪罵、さらにはツバの吐き掛けにも
リチャードは動じず、むしろ「言葉では
言い尽くせないほど美しい人」「あなたの
美しさが、手を下させた張本人」なのです…
などと言葉と巧みに相手の心を動かしていく。

      

「どうしても私を赦せない」のなら
「死を賜るようお願いしよう」と
剣を渡し、胸をはだけたリチャード。

アンは剣を落とし、リチャードの差し出す
指輪を受け入れながら「深く悔い改めた
あなたの様子は、私にとっても嬉しい
こと」と告げ、挨拶して去っていく。
👉映画やBBCテレビ番組など
現代の映像作品では、ここで二人が
接吻するのが通例になっていますが、
原作にそういうト書きはありません。

 

ともかくアンを口説いて結婚に
持ち込むというリチャードの
狙いはまんまと成功…という次第。

リチャード こんな気分のときに
口説き落とされた女がいるか?

あの女はものにする。

だがすぐさまお払い箱だ。
〔中略〕
どうやら俺はこれまでずっと
自分を見損なっていたらしい!

間違いない、――俺には納得いか
ないが――あの女には俺が眉目
秀麗な素晴らしい男に見えるのだ。

👉わが夏目漱石はこの部分に注目し、
蔵書(英語原文)に大変興味深く有益な
書き込みを残してくれています。

その一部は後段「漱石も絶賛した
“口説き”場面
」で紹介しますので
お楽しみに~(😻)


現王エドワード4世は重病の床につき、
王宮では、王死去後の成り行きを案ずる
妃エリザベスを兄のリヴァーズ卿や
連れ子のグレイ卿がなだめている。

そこへバッキンガム公らが登場し、
王族・重臣は全員集合せよとの
王命を伝達。

その場にリチャードが出てきて、自分が
王に嫌われるようになったのは王妃ら
一派の告げ口のせいだと言い出し、
エリザベスと口論になる。


そこへ囚われの前王妃マーガレット
(精神不安定なヘンリー6世王に代わって
戦った勇武で知られる)が登場し、
リチャードに向かい、夫と息子を殺した
「悪魔!」と罵る。

すべては兄エドワードへの忠誠からの
ことだと開き直ったリチャードは、
逆に幼な子まで殺したマーガレットの
所業を言い立て「皺くちゃ婆の魔女め!」
と悪罵の反撃。

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リチャードに加勢したバッキンガム公に
向き直り、マーガレットは「その犬に
用心しろ!」と警告。

尻尾をすり寄るなり
噛みつくのだ。

噛みつかれたら最後、
膿んだ傷から毒がまわり、
必ず死ぬ。

👉マーガレットのこの言葉が
バッキンガムの運命を予告している
ことが、後で判明します。

「犬」はもちろんリチャード。

このようにしてさりげなく未来を
暗示する言葉を入れて行くのは
シェイクスピア得意の手法で、
このほかにも沢山埋め込まれています。


全員退場後、「悪事を働いて真っ先に
騒ぎ立てるのが俺の流儀だ」と
うそぶくリチャード。

「ひそかに危害を加え、その罪を
何倍にもして他人になすりつける」。

そして「聖書から失敬した使い古しの
文句を継ぎはぎし、裸の悪事に衣装を
着せ」れば「俺は聖者に見える」。

「実は最高の演技で悪魔を
演じているのだが」云々。


見参した暗殺者1・2に、リチャードは
ロンドン塔に幽閉されている
クラレンスの殺害を命じる。

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🌹【第二幕】

王族・重臣を集めたエドワード4世は、
不和のあったリヴァーズ卿と
ヘイスティングズ卿を和解させて安堵
したのも束の間、殺害命令を撤回した
はずのクラレンスの死を聞いて嘆く。

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撤回令の到着が遅れたのだと
リチャードが取り繕う。


(別の場で)クラレンスの遺児二人と
祖母のヨーク公爵夫人の会話。

父の死は妃が王をそそのかしてのことだと
言って「叔父様」(リチャード)が泣いて
いたと子供。

これに対し、「偽り」が「美徳の仮面を
つけて心の奥底の邪悪を覆い隠す」のだ、
これがわが息子とは「恥ずかしい」と
祖母の嘆き。


そこへエリザベス王妃と臣下らが
入ってきて王の死を告げる。

リチャード、バッキンガムらも駆けつけ、
ただちに幼い王子をラドローの宮廷から
連れ戻して戴冠式を行うことに手はずを
決定。


(別の場で)ヨーク公爵夫人、エリザベスと
幼いヨーク公が話しているところへ
伝令が来て、リヴァーズ卿、グレイ卿らが
囚人として送られたと報告。

命じたのはリチャードとバッキンガム
だと聞いたエリザベス、

ああ、私の一族の崩壊が
目に見える。

いよいよ、あの虎がかよわい
牡鹿をつかまえた。

傲慢な暴虐があどけない
玉座をあなどって
襲撃の手を伸ばしはじめた。


エリザベスは子らを連れて「聖域」
(教会)に身を隠すことに決める。

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🌹【第三幕】

ロンドンに到着した皇太子エドワードの
もとへ弟のヨーク公も連れてこられる。

兄弟の賢い話しぶりに、リチャードは
たびたび傍白(ひとりごと)。

俗に言うな、幼いうちから
賢い者は長生きしない。
〔中略〕
春の到来が早すぎると
夏は短いものだ。
〔中略〕
ああ、末恐ろしい小わっぱだ、
大胆で頭の回転が早い。

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戴冠式まではロンドン塔で過ごすように
との指示に、兄弟は「クラレンス叔父様の
亡霊が怒って出て来る」などと難色を
示しつつも従うほかない。

    

リチャードは今や片腕といえるバッキンガムに
自分が王となった暁に与える褒美を約束
しつつ、さらにヘイスティングズを仲間に
引き込むよう指示。

バッキンガムの片腕ケイツビーから
リチャードの野望を告げられた
ヘイスティングズは、彼への協力は
「神かけても、する気はない」と反発。


ポンフレット城ではリヴァーズ卿、
グレー卿らが処刑される。


ロンドン塔の一室にバッキンガム、
ヘイスティングズを含む重臣たちが集合。

遅れて現れたリチャードはヘイスティングズに
自分の萎えた腕を示し、これは王妃とお前の
情婦のショーア夫人とがぐるになって使った
「妖術」の結果だと言いがかりをつけ、
彼を断頭台へ送る。

      

ロンドン塔の城壁でロンドン市長ほか
多数の市民を前にするリチャードと
バッキンガム。

そこへケイツビーらがヘイスティングズの
首を持って登場し、バッキンガムは
彼が会議の席上、リチャードと自分を
殺そうとしたのだと説明。


納得した市長が去ると、リチャードは
バッキンガムに、そのあとを追って
市長の出る集会でこう言いふらせと
命じる。
「エドワードの子供は私生児だ」、
「おぞましい女狂い」だった彼もまた
実は私生児で「父上の種ではない」云々。


ベイナード城に集まった市民らの前に、
両脇に二人の司祭を従えたリチャードが
手に祈祷書を持って登場。

    

バッキンガムは、今や唯一の正統なる
王位継承者であるあなたに王位に就いて
いただくしかないと雄弁に演説する。

「私の欠点はこんなにも大きく多い」、
「国王の器ではない」と固辞し続ける
リチャード。

ついに切れた(ふりをした)バッキンガムが、
それなら「兄君のご子息」以外の誰かに
即位してもらおうと言い捨て立ち去り、
市民の多くもこれに従う。

ケイツビーのとりなしでリチャードは
彼らを呼び戻して、雄弁を発揮。

あなた方が運命をこの背に
縛りつけ重荷を担えと言われるなら、
私が望もうと望むまいと、
その重圧に耐えてゆくほかない。


全員が万歳を唱え、戴冠式は翌日と決まる。

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🌹【第四幕】

リチャードの妃アンらと前王妃エリザベス
らの一行がロンドン塔の前で鉢合わせ、
ともに二人の王子に会おうとするが、
塔の長官は「国王」がそれを禁じて
いると言う。

      

自分が王妃になることを初めて知った
アンは、「忌まわしい知らせ!」と
身もだえし、エリザベスは連れ子の
ドーセットに「死と破滅がお前の間近まで
迫ってきた」、早く逃げてブルターニュ
(フランス北西部)のリッチモンドのもとに
身を寄せなさいと命じる。


王座に就いたリチャードはバッキンガムに
ロンドン塔の2王子の「始末」を示唆。

バッキンガムは、その件は「ひと息つく
間のご猶予を」といったん辞去。

「わけ知り顔で俺の心を見とおすやつ」
にはもう用はない、とリチャードは
そばにいた小姓に、金次第で暗殺行為に
誘いこめる男を知らないかと尋ねる。

小姓が「ティレル」の名を挙げると
さっそく呼びにやり、駆けつけた
ティレルは、用件を聞くや
「すぐ片づけます」。


ポール・ドラロッシュ画『幼きイングランド王エドワード5世とその弟ヨーク公リチャード』(1831)


その一方でリチャードは王妃アン重病の
噂をまくことをケイツビーに命じる。

ランカスター家のリッチモンドが狙って
いるという兄エドワード4世の幼い娘
エリザベスと、こちらが先に結婚して
しまい、王座を固めるための方策だ。

エリザベス王妃は、リチャードから直接に
「心の底からあなたの娘御を愛している」
と告げられて反発しながらも、「征服者の
女征服者」としてイングランドに平和を
もたらすため云々の理屈に、徐々に
丸め込まれていく。

娘を説き伏せることにしたエリザベスが
退場するや、リチャードは「すぐ言い
なりになる阿呆、気の変わりやすい
浅はかな女だ」と吐き捨てる。


そこへ西海岸にリッチモンドの艦隊が
現れたとの知らせが入り、リチャードは
ノーフォーク公への伝令として
ソールズベリーでの合流を指示する。

使者が続々と入って来、各地で反リチャード
の勢力が蜂起、バッキンガム公も寝返った
と知らせる。


ケイツビーが来て、バッキンガムは捕縛
したものの、リッチモンドが大軍を
率いて南ウェールズに上陸したと報告。

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🌹【第五幕】

ソールズベリーの広場では
バッキンガムが刑場に送られる。


リッチモンドが進軍してきた
タムワース(イングランド中部)の
東20キロのボズワースの平原。

舞台の一方にリチャードらがテントを
張り、やがて他方に登場した
リッチモンドらもそこにテントを張る。


夜が更けると、エドワード王子、ヘンリー
6世、クラレンス公、リヴァーズ、グレイ、
ヘイスティングズ、幼い2王子、王妃アン、
バッキンガムらの亡霊が相次いで現れ、
順次、リチャードには「絶望して死ね」と
呪いをかけ、リッチモンドには
励ましを与えては消えていく。

悪夢から覚めたリチャード、
「俺は悪党だ――嘘をつけ、
悪党じゃない!」と心を揺らし、

絶望だ。誰一人、俺を
愛してはいない。

誰一人、俺が死んでも
あわれみはしない。

当然だ。俺自身、自分に
何のあわれみも感じない。


一方、目覚めたリッチモンドは
「いや、実にいい夢だった。
思い出すだけで心が弾んでくる」
とテントを出る。

兵士たちを前に、相手は「殺人鬼」
にして「神の敵」「祖国の敵」だ、
存分に戦えと訓示。

  

リチャードはノーフォークらに作戦を
説明し、「夢などあぶく同然、おびえる
ことはない。良心とは、臆病者の使う
言葉にすぎない」と自らを鼓舞。

兵士たちには、相手は「浮浪者、ごろつき、
逃亡者の寄せ集め」、フランスの
「いやしいどん百姓」だ、叩き返して
やれと檄を飛ばす。


(戦場で)ケイツビーがノーフォークに
援軍を依頼して言う。
王は「敵を一人また一人と仕留めて」
いるものの「馬は殺され、徒歩のまま
剣をふるい、死の喉元でリッチモンドを
おさがしです」。

リチャードが登場して叫ぶ。
「馬だ! 馬をよこせ! 代わりに
俺の王国をくれてやる、馬!」
👉あまりにも有名な台詞。

原文は非常にシンプルで、
A horse! A horse!
My kingdom for a horse!


「リッチモンドは六人もいるらしい。
五人は殺したが、全部影武者だった」
と悔しがるリチャードの前に、ついに
本物のリッチモンドが現れ、戦う。

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リッチモンドは王を殺す。

その頭から取られた王冠をいただいた
リッチモンドは、敵味方の死者を
手あつく埋葬し、敵の逃亡兵も
投降すれば許せと命じる。

そして自分はエリザベスとの結婚により
「白バラと紅バラの統合を実現しよう」
と宣言する。

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漱石も絶賛した”口説き”場面

さて、いかがでした?

リチャードという男の凄さ――権謀術数の
切れと手段を択ばない冷徹、そして
醜くてもなぜか女性を参らせてしまう
魅力といったところ――をある程度には
感じ取ってもらえたのではないでしょうか。

なにしろ名作ぞろいのシェイクスピア劇に
あっては、傑作と称されることは多くない
ものの、「いや、これぞシェイクスピアの
真骨頂!」とたたえるコアなファンも
いるのがこの歴史劇なんですね。


その種のファンの一人に数えられる
日本の文豪が夏目漱石です。

漱石は作家専業となる前、東京帝国大学
で教えていましたが、そこでの講義に
連続で採り上げていたのが
シェイクスピアの戯曲でした。
👉特に『オセロ』については講義録が
残っていて、漱石はそこで特に
イアーゴの造型を絶賛して
いました。

そのことについて詳しくは
こちらをご参照ください。

オセロ(シェイクスピア)の名言/セリフ 東大で漱石はどう講じたか

シェイクスピア オセロのあらすじ:漱石講義のコメントつきで

              


『リチャード三世』はやはりマイナーな
作品と見られていたのか、講義しないまま
退職ということになりましたが、実は
大いに感銘を受けていたことが、蔵書への
書き込みから明らかなのです。

その高い評価を最も明確に示すのが、上の
「あらすじ」内でもふれた、【第一幕】で
リチャードがアンを見事に口説いて
しまう部分。


まずアンに唾を吐きかけられるところで
こう書き込んでいます。

Glosterの罵らるにも関せず
怒らざるを見よ

👉原文の仮名はすべてカタカナ
ですが、読みやすさのため変えて
あります(以下同様)。

“Gloster”はグロスター公
すなわちリチャードを
指しています。

ひるまず話し続けるリチャードは、
アンの唇がさげすみにゆがむのを見て、
「あなたの唇は口づけのためにある、
軽蔑に歪むためではない。〔中略〕
どうしても私を赦せないと言うのなら」
と短剣を渡して胸をはだけます。

この部分の余白にはこの書き込み。

Glosterは女のweakness
〔弱点〕を見抜けるなり

最も巧妙なる謀計なり


アンがその剣を取り落とし、
「手にかけるのは嫌です」「ならば
死ねと言ってくれ」云々の言葉の
やりとりがあったあとで、
「お前の本心が知りたい」とアン。

ここで漱石、

Anneはごまかされんとす

      

結局アンは指輪を受け取り、「深く悔い
改めたあなたの様子」が嬉しいなどと
口にして去り(映画などでは接吻して)、
見送ったリチャードは「こんな気分の
ときに口説き落とされた女がいるか?/
あの女はものにする」云々と独白します。

ここでまた漱石、

然り、女はいつでも此〔この〕
手にかかるなり

👉「然り」は”Yes”。

すなわち「こんな気分のときに
口説き落とされた女がいるか?」
という疑問に対しての「いるさ」
という返答です。

「此手」がどういう手段かは微妙
ですが、ここでリチャードのやった
ことから見れば、相手の美貌・
魅力を絶賛し、《自分がかつて
及ぼした迷惑の原因もそれだという
ことをわかってほしい。そのため
には命もいらない》と真剣・熱烈に
説き続けることでしょうか。

ただ、それももちろん、「さげすみ」
の裏に実はそれと矛盾した感情・衝動
もうごめくという「女のweakness」を
見抜けばこその所業なのでしょうが。

その独白が続いて「どうやら俺はこれまで
ずっと自分を見損なっていたらしい!
〔中略〕あの女には俺が眉目秀麗な
素晴らしい男に見えるのだ」と言い出した
あたりで、また漱石、

此〔この〕成功はGlosterには
revelation〔啓示〕なり 

彼ここに至って始めて己れの
醜を忘るることを得


そして独白とともにこの場(第二場)が
終わったその余白に、

女の心も一転し男の心も一転す

其〔その〕心理頗〔すこぶ〕る妥当
にて叙事頗る巧妙なり

此〔これ〕自然なり 小説にあらず


ここで主人公が自分も見せ方次第で
「眉目秀麗な素晴らしい男に見える」
ことを知って「心が一転する」のですから、
この場面は今後の展開に向けて大きな
意味をもつことになるはずです。

この”口説き”場面、ほとんど神の領域と
言いたいほどに「自然」で圧倒的なので、
もっと後にとっておきたい感じもあるわけ
ですが、それを開幕早々、惜しげもなく
出してしまうのは、この「心の一転」が
劇全体の前提となるものだからでしょう。

このプロットを着実に進行する
シェイクスピアの手際の「妥当」さ、
「巧妙」さ、「自然」さへの推服が
書きとめられているわけです。


書き込みはまだまだありますが、
これくらいでもう、こういう反応をする
漱石という人もまた”凄い”ということが
伝わってきたのではないでしょうか。

その書き込みをすべて見たいと思われた
場合は『漱石全集』第27巻(1997)
p.310以降をどうぞご覧ください。

まとめ

いかがでしたか?

あらためてシェイクスピアという
作家の凄さを思い知っていただけた
でしょうか。


ん? これだけではまだまだ?

それならぜひ、ほかの作品にも
どんどんトライしていってください。

当ブログでは沢山のシェイクスピア
作品について「あらすじ」などの
有益情報をどんどん書きためて
いますよ~。
👉以下にその代表的ないくつかを
並べますので、興味ある作品についての
ものを、ぜひご覧ください。

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手に入れたい場合は、Amazonが便利。
こちらから探してみてください。

シェイクスピアの本:ラインナップ
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さあ、これでもう万全ですよね。

読書感想文だろうとレポートだろうと、
これだけの情報と高度の知識があれば…。

 
え? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でも具体的に、どう
進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?

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