サクラさん
現代文の授業で『鞄』
(安部公房)の感想文を
書けと言われています。

教える先生もしどろ
もどろで、結局ワケが
わかんなかったのに、
生徒に何が書けると
いうんでしょう(😼)

ハンサム 教授
先生もわかんないから、
生徒に教えてほしい
のでは?;^^💦



授業で特にわからな
かったのは、どの
あたり?

サクラさん
「私は嫌になるほど
自由だった」という
最後の1行。

先生は色々おっしゃっ
てたんですが、それが
結局、要領を得ず…

ハンサム 教授
だから君自身がその
“要領”を得て、書いて
あげればいい。

例の鞄に引き回される
ことで、なぜか「自由」
になっちゃうんだけど、
そもそもなんで鞄を
持ち上げてみるのか…

サクラさん
「なんということも
なしに」としか書いて
ありません。

ハンサム 教授
だからわかりにくい
わけですが、実はこの
作品を含む『笑う月』
の連作を続けて読むと、
結構すんなり納得が
いくんですよ;^^💦

サクラさん
え~ そうだったん
すか~(🙀)


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というわけで、おなじみ”感想文の書き方”
シリーズ、今回は安部公房の短編小説で、
高校現代文の教科書に採用されている
『鞄』(1976.『笑う月』所収)に挑戦!
       👇



もちろん本文を読んでいないとお話に
ならないので、まだの人はご一読を。


え? 読んだけどサッパリわからん?

まあ、前衛的・実験的な小説ですから、
ワカランという反応が出るのも
自然なことでしょう。


それを見越して、当シリーズでは、
本文よりわかりやすい「あらすじ」を
用意していますので、ワカランかった人は
まず、こちらでストーリーを
押さえてくださいね。

安部公房 鞄のあらすじ… 簡単/詳しくの2段階で解説

      バッグ images


感想文の例(800字)

はい、ストーリーがしっかり理解できたら、
さっそく感想文に取り組みましょう。

まずは800字(400字詰め原稿用紙2枚)
以内という想定で、サクラさんがハンサム
教授の添削を受けながら書き上げた
読書感想文例をお目にかけます。

よくある感情に流された感想文と違い、
論理的・批判的な切り口で書かれています
ので、「批評文」や「読書レポート」
などを求められている場合も十分に
通用するんじゃないでしょうか。

 『鞄』の主題は「自由」と「不自由」
とは相互に入れ替わりやすいものだと
いうことで、それがどのような場合に
起こるかという一種の実験小説として
書かれたものだと思う。

 主人公の「私」は事務所に詰める
経営者らしい人で、そこに求人に
応募した若い男が大きな鞄をさげて
現れる。

応募が遅かったのは鞄のせいで道が
「制約され」るからだと言い、鞄を
持たない可能性を示唆すると、それは
「あり得ない仮説」だとしながら、
「いつだってやめられるからこそ、
やめない」などと言う。

なんとなく説得された「私」は採用を
決め、男は下宿の下見のために、
鞄を事務所に置いて外出する。

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 それから「私」は「なんという
こともなしに、鞄を持ち上げ」て
歩きだす。

そこからの展開がこの短編小説の
山場で、戸外に出た「私」は身体の
自由を失い、鞄の意志に従って動く
ことしかできなくなってしまう。

そのうち、どこを歩いているのかも
分からなくなるが、「選ぶ道が
なければ、迷うこともない」ので、
不自由ではなく、むしろ「自由」で
それは「嫌になるほど」だった
というのである。

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 この小説の不可解さに奇妙に
ひきつけられた私は、これを収めて
いる連作短編集『笑う月』を通して
読んでみた。

すると、以前よりずいぶんよく
わかるような気がしたのだが、
それはおそらく、「鞄」のすぐ前に
置かれた「空飛ぶ男」を面白く読み、
その流れで「鞄」を再読したせい
だろうと思う。


 こちらの主人公は「空飛ぶ男」に
出会い、その意外な苦労話を聞く。

自分の「浮遊現象は、どうも
伝染力を持っているらし」く、
それは「飛ぶ人間を知ったことに
よる、心のゆがみ」のようなものに
発するというのだ。

「鞄」のテーマもこれと同じだと
私は思った。

つまりあの鞄にも「伝染力」があり、
「自由=不自由」の逆説も若者から
「私」に伝染したのだ。

小説「鞄」は「空飛ぶ男」ともども、
人間心理に潜むこの種の「伝染」の
恐怖を表現した佳作だと思う。
              (796字)

どうです?

うまくまとまっているでしょう。

これをそのままコピペすることは
もちろん厳禁ですが、適宜、自分らしい
ものに文章を変えて使ってもらうのは
かまいませんよ~;^^💦


この感想文のポイント

さて、上記のサクラさんによる感想文は
あくまで例文。

あなたはこれにとらわれる必要はなく、
自分なりの感想や意見・主張をどんどん
打ち出していけばよいのですが、それも
また、あまり経験のない人にはなかなか
むずかしいかもしれません。


そこで今回は特別に、サクラさんがどう
考えてこの文章を構成したかのポイントを
少し違う角度、違う言葉遣いで解説して
みますので、自分の感想文を構築していく
上での参考にしてもらえればと思います。

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“嫌になるほど自由”とは?

小説『鞄』のキーワードを1語挙げよ
ということになれば、これはやはり
「自由」ということになるのでは
ないでしょうか。

そしてそれがラストの1行では
「私は嫌になるほど自由だった」と
いう微妙に否定的(ネガティブ)な
表現で持ち上げられているわけです。


この表現から、作者安部公房(1924-
93)の世代では影響力の大きかった
フランスの実存主義哲学者、J=P・
サルトルの名言を想起する人も
少なくないと思われます。

すなわち「人間は自由という
刑に処せられている」云々。

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人は自由を求めるけれども、実は
自由は恐ろしいのであって、王なり
親なりの権力者に束縛されていた方が
楽ちんで幸福なのかもしれない。

嫌になるほど」という表現は
小説『鞄』もこのテーマを追究している
ことを示しているのかもしれません。


でも『鞄』の主題はそこにとどまる
ものではない…

サクラさんの感想文はさらにその
上をいっているわけですね。

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鞄に吸い込まれた「私」

この不思議な鞄とともに現れた青年に、
「私」は最初はあきれながら、徐々に
彼の世界に引き込まれていってますね。

彼を拘束しているというその鞄に
自分も拘束されていくのです。

採用しなくてもいいのに採用し、
鞄を置かせなくてもいいのに
置いて行かせます。


この流れは、明確な意志によったのでは
ないとしたら、無意識の願望によって
生み出されたもので、「私」はこの鞄に
吸い込まれたのだともいえます。

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ここで話が飛んで恐縮ですが、たとえば
川上弘美さんの『神様』(&『神様2011』)
で主人公の「わたし」は、心の底のほうで
「くま」を恐れているにもかかわらず、
すべて「くま」の言うなりに行動して
しまいますね。
👉『神様』のこの解釈をめぐっては、
こちらの記事をご参照ください。

神様(&神様2011)のあらすじと感想 くまをどう解釈する?

         


『神様』は《夢小説》と呼ばれるジャンル
の作品といえますが、日本における
その元祖はといえば、夏目漱石の
『夢十夜』だということになるでしょう。
👉『夢十夜』をめぐっては、
こちらをご参照ください。

夏目漱石 夢十夜の第一夜をこう解釈 美しい短篇で感想文を!

漱石 夢十夜のあらすじと解釈:第三夜で感想文ならどう書く?

夢十夜「第六夜」で読書感想文【1000字の例文つき】主題は何か

       


つまり言いたいのは、これらの《夢小説》の
主人公たちとほぼ同じようなふるまいを
『鞄』の「私」も見せている…
ということです。

つまるところ、「私」はこの青年と鞄とに
よってある種の「夢見」または催眠状態に
落とし込まれ、催眠術にかけられた人が
催眠術師の暗示のとおりに動いてしまう
のに近い状況に陥っているのでは?

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“暗示”の力の恐ろしさ

催眠術師の術中にあって夢遊病者のように
「自由」に歩いている間、心は”ハイ”
というか、恍惚に近い快感に浸かって
まさに愉悦の状態。

でも、術または夢から醒めれば、ゾッと
冷や水を浴びせられる(叫び)という意味
ではとても恐ろしい体験でもあります。

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「選ぶ道がなければ、迷うこともない」、
だから「私は嫌になるほど自由だった」
という結びこそ、上記のような意味で
“暗示”を受けてしまった者における
「自由=不自由」の逆説を見事に
凝縮している……

サクラさんの解釈はざっと、
そんなところだろうと思われます。


これはまあ”暗示”の力、その空恐ろしさの
方向へ行こうとしている点で精神分析的
(フロイト的)な流れに棹さす解釈と
見られるかもしれませんね。

精神分析とフロイトに大きな影響を受けて
成長した芸術運動が「シュルレアリスム」
で、日本語の「シュール」はここから
来ています。
👉シュルレアリスムに関してはこちらを参照。

シュールの意味と使い方:お笑いの世界から芸術的”超現実”へ

原民喜 夏の花で感想文:夢が交錯する”超現実派”の文体を解説



👉また特に”暗示”の力については、
その恐ろしさを描ききった傑作が
シェイクスピアの『オセロ』も
参照してください。

シェイクスピア オセロのあらすじと名言:漱石の解説つきで

       

シェイクスピアのオセロを講義:漱石の名言「白砂糖の悪人」?


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映画化もあるにはあるが…

さて、以上はサクラさんの感想文が
どういう解釈にもとづいているかの
解説でした。

解釈はもちろん、それが絶対という
ことはありませんから、あなたは
あなたで、新しい解釈を打ち出す
ことを自由に考えてよいのです。


そのヒントとして、おそらく唯一かと
思われる、映画化作品を鑑賞して
おきましょうか。👇




まとめ

さあ、どうでしょう。

いくつかの解釈例をお見せし、
関連作品とその論の紹介もしました。

それらのうち、どこか気に入った部分を
参考にすれば、なんとか自分なりの
ものが書けそうではないですか?
👉安部公房のもう一つの、やはり
謎めいた短編小説『棒』と照らし
合わせてみるのも、よい方法かも
しれません。

こちらの記事をご参照ください。

安部公房 棒のあらすじ:このわからない短編で感想文だって?

棒(安部公房)の考察と解説 前衛性を読み取ってテスト対策

         


そのほか安部公房の本を早く安く手に
入れたい場合は、Amazonが便利です。
こちらから探してみてください。

👜安部公房の本:ラインナップ👜

さあ、これだけの情報があればもう
バッチリですよね、読書感想文。

ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…

だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?


う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦

そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。

    

各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。


だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。

さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を
知るには、実際に出品され大臣賞などを
受賞している感想文をじっくり読んで
分析してみるのがいちばんです。

こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。

読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から

セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ

                 

アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ

    

そちらで解説している「書き方」を
踏まえて、当ブログでは多くの感想文例を
試作し提供してきましたが、このほど
それらの成果を書籍(新書)の形にまとめる
ことができましたので、ぜひこちらも
手に取ってご覧ください。
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という人は、こちらでどうぞで。

読書感想文 書き方の本はこれだ!サイ象流≪虎の巻≫ついに刊行!!!

            


👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。

気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/





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