やあやあサイ象です。
“感想文の書き方”シリーズもはや第38回,
“あらすじ暴露”サービスとしては第15弾。
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今回は、高校の教科書にも採用されている
井上ひさしの傑作短編小説、
『ナイン』(1983)でやってみます。
さて、一口に「あらすじ」をといっても
話の骨子だけでいいという場合から、
読書感想文を書くんだから
もう少し詳しくないと…
という場合まで、千差万別でしょう。
そこで出血大サービス((((((ノ゚🐽゚)ノ
「ごく簡単なあらすじ」と
「やや詳しいあらすじ」の
2ヴァージョンを用意しましたよ~(^^)у
まずは原作(👇)をぎゅっと要約した
「ごく簡単なあらすじ」から。
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ごく簡単なあらすじ(要約)
はじめに作品全体の構成について言って
おきますと、「わたし」という語り手
(井上ひさし本人を思わせます)が、
20年近く前に間借りしていた中村畳店を
訪ね、そこで店主の中村さんと息子の
英夫からあいついで聞かされる話が
小説の内容になっています。
そのころの町内の少年野球団が新宿区の
少年野球大会で準優勝するほど強かった
という話題から「あの九人はいまどうして
いますか」とわたしが問い、それへの回答
として物語が展開されていくんですね。
そのチームで投手だったのが中村さんの
息子の英夫で、捕手で主将で四番打者
だったのが正太郎。
この正太郎が物語の中心になるのですが、
彼について、まず中村さんが語り、
ついで、中村さんのいないところで、
息子の英夫が語るという構成です。
では、二人の話の内容をどうぞ。
【中村さん】
正太郎には「昔の友達から寸借詐欺を
して歩いている」という噂があったが、
それは事実だった。
2年前には、英夫が畳を大量に騙し
取られ、去年は、やはりナインの一人、
常雄の経営する自動車学校の事務員に
なったが、現金ばかりか常雄の
奥さんまで持ち逃げした。
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【英夫】
自分が仕事で腕を上げたのは、
正太郎の詐欺であけてしまった
穴を早く埋めようとしたからだし、
常雄の奥さんもあの問題以降、
別人になった。
あの大会では、準決勝も決勝も
ベンチは三塁側で、猛烈な日差しに
「灼(や)かれて」いたが、決勝戦、
ベンチでぐったりしているぼくの前に
正太郎が立ち、それにならってナインが
みなぼくの前に立って日蔭をつくった。
また常雄がふらつくと、正太郎は
「常雄も入れ。これはキャプテン
命令だぞ」といった。
正太郎はいまも「ぼくらのキャプテン」。
パレードで泣いたのも、そのことが
うれしかったから。
どう解釈すべき?
どうでしょう。
どんな話かだいたいわかりましたよね?
え? ストーリーは一応わかったけど、
感想文を書くとなると、
どこをどう突っ込んでいいものか……
主題はなんだと解釈したらいいのか、
考え出すと、よくわからん?
そうですねえ…。
そのへんを突っ込んで考えるには、
もう少し詳しい内容を知る必要が
あるでしょうね。
というわけで、主題に切り込んでいくために
「やや詳しい」ヴァージョンのあらすじを
これから書いていきます。
また原作に切れ目はありませんが、
私なりの解釈で「起承転結」の
4部に分けてみますね。
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⚾【起】
東京五輪大会の年(1964年)から3年間、
わたしは四ッ谷駅前の新道商店街にある
畳屋の中村さんの家の二階に
間借りしていた。
ある日(小説の発表年は1983年)、
仕事の帰りに立ち寄って話すうち、
話題は、わたしがそこに住んでいたころ
中村さんの息子の英夫が投手だった
町内の少年野球団のことになる。
「新道少年野球団は強かったねえ」
新宿区の少年野球大会で準優勝まで
行って、パレードで泣いていた、
とひとしきり昔話に花を咲かせたあと、
「あの九人はいまどうしていますか」
とわたしが尋ねる。
中村さんはナインの現在について
語るが、「四番打者で、捕手で、
主将の正太郎」については
「口にしたくないんだよ」という。
⚾【承】
とはいいながら、むしろ能弁に語った
ところによると、2年前、いまは
不動産会社で働いているという
正太郎が現れて、「建売五軒分の畳を
都合してはくれまいか」と依頼した。
「昔の友達から寸借詐欺をして歩いて
いる」という噂を聞いてはいながら、
英夫が「正ちゃんを信じてやって
ください」と頼むので、一肌脱ぐ気に
なったのだが、案の定、詐欺だった。
去年は、やはりナインの一人で
自動車学校を経営している常雄に
泣きついて事務員にしてもらったが、
金庫から400万円余の現金を持ち出し、
しかも常雄の奥さんまで連れて
姿を消した。
常雄は服毒自殺を図ったが未遂に
終わり、奥さんは「ぼろぼろになって
戻ってき」て、その後は常雄に
尽くしているので「それはめでたい」。
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⚾【転】
そこへ英夫が来て、畳の仕上がりを
見てほしいというので、
中村さんが去り、二人で話す。
英夫は、自分が畳職人として一人前に
なれたのは「正ちゃんのつくった
穴を一日でも早く埋めなくては」
と仕事に精を出したからだという。
常雄の奥さんもあの問題以降、
別人のような良妻になった。
「正ちゃんは一見、悪(わる)の
ように見えるけど、やはりぼくらの
キャプテンなんですよ。
結局は、ぼくらのためになることを
して歩いているんだ」
⚾【結】
「う~ん、わかるような気がする」
とわたしがいうと、いや、あなたにも
父にもわからない、と英夫は強い
口調で否定し、あの大会で正太郎の
したことを語りだす。
準決勝も決勝もベンチは三塁側で、
一塁側と違い「いつも陽(ひ)に
灼(や)かれて」いた。
決勝戦の6回ごろ、ベンチに戻って
ぐったりしていると、正太郎が
「ぼくの前に立って日蔭をつく」り、
それにならってナインがみな
ぼくの前に立った。
ぼくが完投できたのは
これが12回まで続いたおかげ。
途中、常雄がふらつくと、正太郎は
「常雄も入れ。これはキャプテン
命令だぞ」といった。
パレードで泣いていたのも
うれしかったからだ。
日蔭などありえないところに日蔭を
つくったこのナインに、できない
ことはなにもないんだ……
という気持ちで。
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正太郎の「悪さ」について
さあ、どうでしょう。
これでもう書けますよね、
感想文だろうが、レポートだろうが…。
突っ込めるポイントはいろいろある
でしょうが、メインになってくる
ものの一つは、正太郎という人物を
どう見るか、ということかな?
詐欺師の女たらしであることは明白で
彼を「悪(わる)」でない
と言うことはむずかしい。
それでも彼は今なお「ぼくらのキャプテン」
で、「結局は、ぼくらのためになること
をして歩いているんだ」とまでその
「悪」の被害者に思わせることが
できている。
う~ん、これはスゴイ。
これこそ漱石のいう「白砂糖の悪人」
かもしれない。
👉 「白砂糖の悪人」をめぐっては、
こちらを参照してください。
・シェイクスピアのオセロを講義:漱石の名言「白砂糖の悪人」?
また視点を変えれば、正太郎は
旧友にこれだけ愛されている以上、
なんらかの面では「いい奴」でもあるに
違いないですね。
それがなぜ「悪人」になってしまったか……
この問題を考えるのも、学校向けの
読書感想文には好適でしょう。
👉 その具体的な方法については、
こちらの記事を参照してくださいね。
・ナインで感想文 “だから”どう書く?⚾800字/400字の例文つき
正太郎が施した「恩」
ひるがえって、英夫や常雄、すなわち
正太郎の「悪」の被害者となってしまった
者たちの側に立つと、どうでしょう。
ひどいことをされながら、なお「ぼくらの
ためになる」なんて思えるのは、彼らと
正太郎との間に何があるからなのか。
これについては色んなことが言えそう
ですが、「恩 」という概念で考えて
みても面白いんじゃないでしょうか。
👉 日本語の日常的表現にも根を張っている
「恩」の感覚をめぐっては、こちらも
ご参照ください。
・させていただく”が間違い敬語になる場合:恩ない人への恩表現
👉 井上さんのもう一つの傑作短編、
『握手』についてはこちらで情報提供
していますので、是非ご参照を。
・握手(井上ひさし)のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説
・握手(中3国語)で批評文どう書く?【400字の例文つき】
また井上さんは劇作家としても有名。
中でも異色の大作『天保十二年のシェイク
スピア』は『天保水滸伝』などの侠客談義に
シェイクスピア諸作品の設定や人物像、
名言・名セリフを絡み合わせた、複雑怪奇、
波瀾万丈、痛快無比の壮大な作品です。
こちらで詳しく分析していますので、
ぜひ覗いて見てください。
・天保十二年のシェイクスピア あらすじ⦅井上ひさし大作舞台を詳しく⦆
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ほーら、いろいろととっかかりは
あるでしょ?
こういうふうにして、どこかに
突破口を見つけて掘り進んでいけば、
感想文なんかへっちゃらですよ。
ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、具体的にどう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?
そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。
👉 当ブログでは、日本と世界の種々の
文学作品について、「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。
参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらのリストからお探しください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
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Wow! This could be one particular of the most
useful blogs We’ve ever arrive across on this subject.
Basically Magnificent. I’m also an expert in this topic therefore I can understand your hard work.