リチャード三世(シェイクスピア) 15の名言・名台詞⦅英語原文つき⦆
“悪人”をああも活躍
させる劇を書けた
シェイクスピア。
彼自身も”悪人”の素質
十分だったってこと
ではないでしょうか❓
したところで、シェイク
スピアを念頭に「劇作家
は一般にかなり悪人だ」
と書いてますね。
ことを夏目漱石も言って
いませんでした?
中にシェイクスピアは
自分でイアーゴのような
“悪人”になろうと思えば
なれる人だと、変な
ほめ方をしたのです。
『リチャード三世』でも
同じようなことを思った
はずで、独特な読みを
示す書き込みを残して
います。
策謀(プロット)を自ら
実行(アクト)していく
リチャードは彼自身
まさに”劇作家”的とも
いえますもんね。
生まれつきの障害で姿も
醜く、それも関係して
ひねくれて悪いから
嫌われ者だというのも
逆に魅力になって…
吐きかける美女を
その場でたちまち口説き
落としてしまう(💘)
されてみたいな~(😻)
命の保証はありま
せんよ;^^💦
新妻でも消す(🙀)…
自身も史実どおり戦死
するわけですが、ラスト
近くになると、それまで
絶好調だった彼の弁舌も
しぼんでいきますね。
「馬を、馬を!…」が
いちばん有名な名言
として残りました。
というわけでおなじみ”あらすじ暴露”
サービスの第218弾(“感想文の書き方”
シリーズとしては第305回)となる今回は
シェイクスピア歴史劇の最高傑作
『リチャード三世』(1592-93年ごろ)
の名言・名セリフ特集((((((ノ゚🐽゚)ノ
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古来、名言として有名なセリフや、冒頭で
ふれたニーチェの視点を反映する、また
漱石が蔵書に感動や分析を書き込んでいる
部分を計15か所拾い上げ、それぞれについて
⦅英語原文⦆との対訳で解説・考察して
まいります。
内容はザッと以下のとおり。
- 簡単なあらすじと相関図
- 対訳で読む15の名言・名セリフ 【第一幕】~【第五幕】
- ニーチェのシェイクスピア”悪人”説
さて、せっかくの名言も劇のストーリーが
頭になければその深い意味が響いて来ない
ので記憶に残りにくいし、覚えたとしても
ついてくる価値は半分しかありません。
だから全体を読むか観劇するかするに
越したことはないのですが、残念ながら
その時間がない、あるいはもう忘れた…
という人は、まずストーリーの概略を
インプットしておきましょう。
必要のない方は飛ばして、ただちに
「2.対訳で読む15の名言・名セリフ」
の方へ進んでくださいね。
1.簡単なあらすじと相関図
まずはぎゅっと要約したごく簡単なあらすじ。
奪い合う、30年に及んだ薔薇戦争の
最後の数年間を集約的に描く。
ヨーク家のエドワード4世は、
ランカスター家から王権を奪い
取ったものの、病気で精神不安定。
その乱心に付け込んで自ら王たらんと
する末弟のリチャードは、背骨の
曲がった醜い男ながら、巧みに動いて
次兄クラレンスを幽閉、さらには
暗殺し、またかつて自分が殺した
ランカスター家皇太子の未亡人、
アンを口説いて結婚に同意させて
しまう。
行く手を阻む者は次々に消してゆき、
兄王の死で王座に就くや、王座確保の
ため幽閉中の二人の王子を暗殺させる。
さらには幼い王女エリザベスとの
結婚を狙い、アンは重病との噂を
流しつつ、王女の母親(前王妃)を
巧みに説き伏せてしまう。
が、やがて国外にいたランカスター
家のリッチモンド伯が挙兵、上陸。
英国内の反対勢力を糾合して
リチャード軍を撃破し、エリザベス
との結婚によりヨーク・ランカスター
両家の和解を実現する。
ん? 人物の相互関係がややこしくて
わかりにくい?
その場合はこちらの「相関図」(人物
関係の見取り図)をご参照ください。
ストーリーをもっと細かく知りたい
という読者さんは、ぜひこちらを
お読みください。
・リチャード三世(シェイクスピア)のあらすじ【簡単/詳しく+人物相関図】
2.対訳で読む15の名言・名セリフ
お待たせしました。それではそろそろ本式の幕開け。
まず松岡和子訳(上記広告のちくま文庫)で
名言を含む15か所を引用し、次にそれに
対応する英語原文を、さらに👉印で
その背景の解説やニーチェ・漱石に関わる
考察を加えていく…という次第です。
🌹 第一幕/Act Ⅰ
【名言 その1】リチャード (冒頭、開口一番)
我が一族の上に重く垂れこめていた
雲は大海原の底に深く葬られた。
〔第一場〕
Richard Now is the winter of our discontent
Made glorious summer by this son of York.
And all the clouds that low’r’d upon our house
In the deep bosom of the ocean buried
👉30年に及んだ薔薇戦争(1455-85)の
半ば、テュークスベリーの戦い(1471)での
勝利によりヨーク家がランカスター家から
王座を奪還。
その高揚感を「ヨークという太陽(sun)」とも
聞こえる”son of York”(ヨーク家の息子)を
含む華麗な詩句で表現。
【名言 その2】
リチャード (冒頭の長広舌で)
筋書きはもう出来た。その危険な序幕は
酔っぱらいのたわごとめいた予言、
中傷、夢占い、そいつを使って
二人の兄クラレンスと王の仲を裂き、
お互いに死ぬほど憎み合うよう
仕向けてある。 〔第一場〕
Richard And therefore, since I cannot
prove a lover,
To entertain these fair well-spoken days,
I am determined to prove a villain
And hate the idle pleasure of these days.
👉醜く生まれた新王家の三男による悪辣な
権力奪取とその末路を描く悲劇の序幕での
いわば自己紹介の一環。
リチャードの「せむし」は後世の作り話だ
という説もありましたが、2012年発掘の
遺骨から事実であったことが
判明しています。
BBC制作『嘆きの王冠』のリチャード三世(ベネディクト・カンバーバッチ)
👉カンバーバッチはリチャード三世の
末裔とされていますが、背骨の屈曲は
もちろんCGによるもの。
【名言 その3】
リチャード (ロンドン塔に幽閉される
兄クラレンスを見送って) いいぞ、
二度と戻らぬ道を歩いてゆけ。
ばか正直なクラレンス、
〔第一場〕
Richard Go, tread the path that thou shalt
ne’er return.
Simple, plain Clarence!
I do love thee so,
That I will shortly send thy soul to heaven,
👉立派な三段論法──
➊愛する君の幸福を願う
➋天国へ行く者は幸福
➌ゆえに君を天国へ行かせる
──にもとづくリチャードの機知(wit)。
彼の頭の回転の速さ、人を信用させる
演技力、そして冷酷さを一挙に
暴露しています。
【名言 その4】
リチャード (先王の葬列に現れて皇太子
未亡人のアンに絡んで) あなたは
慈悲の掟をご存じない。
悪には善を、呪いには祝福をもって
報いるものだ。
アン 悪党、お前こそ神の掟も
人の道も知らないくせに。
どんな獣でも憐れみのかけら
くらいは知っている。
リチャード
アン 不思議、悪魔が真実を言った!
〔第二場〕
Richard Lady, you know no rules of charity,
Which renders good for bad,
blessing for curses.
Anne Villain, thou know’st no law of God
nor man:
No beast so fierce but knows
some touch of pity.
Richard But I know none,
and therefore am no beast.
Anne O wonderful, when devils tell the truth!
👉「どんな獣でも憐れみのかけらくらいは
知っている」というアンの言葉を裏返せば
「憐れみのかけらもない者は獣ではない」
とも言えることから、瞬時に言葉を返した
リチャードの頓才。
これにまた言葉を返すアンも機知に富む
ようでいて、実は相手の言を「真実」と
認めてしまうことで墓穴を掘りつつある
のかもしれません。
『文学論』(東京帝大での講義録)でこの
対話を引用した夏目漱石は「知力に訴えて
成程と思ふとき始めて面白味を生ずる」
この手法を「成程趣味」と名付けています。
(『漱石全集』第14巻、308頁)
【名言 その5】
リチャード (さげすみの目で見るアンに)
そんなさげすみを唇に教えることはない。
復讐に燃えるあなたの心がどうしても
私を赦せないと言うのなら、
さあ、この研ぎ澄ました剣を
お貸ししよう。 〔第二場〕
Richard Teach not thy lips such scorn,
for they were made
For kissing, lady, not for such contempt.
If thy revengeful heart cannot forgive,
Lo, here lend thee this sharp-pointed sword;
👉憎しみ、さげすみ…というアンの防護壁
(タテマエ)を徐々に取り崩してきた
リチャードが、いよいよアンのホンネ部分
(寂しさ、性愛的な飢え)に切り込む巧言。
漱石は所蔵本のこの部分にこう
書き込んでいます。
Glouster〔リチャードを指す〕ハ
女ノweaknessヲ見抜ケルナリ
最モ巧妙ナル謀計ナリ
(『漱石全集』第27巻、311頁)
【名言 その6】
リチャード (胸に剣を突きつけたアンに)
どうした、ためらうな、
ヘンリー王を殺したのはこの私──
だが、私を駆り立てたのは
あなたの美しさだ。
さあ、早く、若いエドワードを
刺したのはこの私──
だが、私をそそのかしたのは
あなたのその天使の顔だ。
(アンは剣を落とす)
アン 立ちなさい、偽善者。
お前の死を望みはしても
この手にかけるのは嫌です。
〔第二場〕
Richard Nay, do not pause;
for I did kill King Henry,
but ‘twas thy beauty that provoked me.
Nay, now dispatch;
‘twas I thy that stabb’d young Edward,
But ‘twas thy heavenly face that set me on.
Here she lets fall the sword
Take up the sword, or Take up me.
Anne Arise, dissembler:
though I wish thy death,
I will not be the executioner.
👉ここぞとばかりに二者択一を迫ることで
ほとんど相手を篭絡してしまうリチャード。
「Anneハゴマカサレントス」と
漱石の書き込み。(同前、312頁)
⚡
【名言 その7】
リチャード (アンらを見送って)
あの女はものにする。
だがすぐさまお払い箱だ。
〔第二場〕
Richard Was ever woman in this humour woo’d?
Was ever woman in this humour won?
I’ll have her;
but I will not have her long.
👉醜貌にもかかわらず、また本気で
愛し抜いているわけでもないのに、美女を
口説き落としてしまったリチャード。
自分でも意外であるはずのこの成果に
よって自信をつけ、早くも彼女を捨てる
計算までしているところがまた凄い。
このあたりのシェイクスピアの冴えを
絶賛・解析する漱石の書き込みは
後段「4.漱石絶賛の”口説き”とは❓」
で詳説します。
【名言 その8】
マーガレット お前みたいな新入り貴族にも
位を失う惨めさがどんなものか
分かってもらいたいものだ。
いったん倒れれば、
木っ端微塵に砕けてしまう。
〔第三場〕
Margaret O, that your young nobility
could judge
What ‘twere to lose it, and be miserable
They that stand high have many blasts
to shake them;
And if they fall,
they dash themselves to pieaces.
👉フランス王家から嫁いでイングランド
王妃となり、精神的に弱かった夫ヘンリー
六世に代わって男勝りの奮戦をするも
今は囚われの身のマーガレット。
その人生を要約した言葉に「まことに名言」
(Good counsel, marry)とリチャードが
茶々を入れますが、この名言はやがて、
彼自身の末路にも当てはまってくる……
これもまたシェイクスピアお得意の手法。
🌹 第二幕/Act Ⅱ
【名言 その9】ヨーク公爵夫人 (リチャードを信頼する
無邪気な孫を見て)
あれは私の息子、
それが私には恥ずかしい。
でもこの欺瞞は私の乳房から
吸い取ったのではない。
〔第二場〕
Duchess of York Oh, that deceit should
steal gentle shapes,
And with a virtuous vizard hide foul guile!
He is my son; yea, and therein my shame;
Yet from my dugs he drew not this deceit.
👉実母の口から出るこの強烈な否定は
リチャードを生誕以来一貫して嫌っていた
ことを窺わせますが、そのことはその後の
彼女の台詞からさらに明らかになります。
この孫(現王の息子)たちをやがて
暗殺してしまうリチャードの酷薄さは
実はこの母に似た、あるいは母の愛を
受けない幼児期に起因するのかもしれず、
いずれにしろむしろ彼女の「乳房から
吸い取った」ものなのでは?
👑 第三幕/Act Ⅲ
【名言 その10】王子 だけど、公式の記録には残って
いなくても、本当のことは時代から
時代へと遠い子孫まで語り継がれて
いくと思うな。
この世の終わりの日まで。
リチャード (傍白)
〔第一場〕
Prince Edward But say, my lord,
it were not register’d,
Methinks truth should live from age to age,
As ‘twere retall’d to all posterity,
even to the general all-ending day.
Richard [Aside]So wise so young,
they say, do never live long.
👉闇に葬ろうとしている王子の口から出た
言葉の真実性に、さすがのリチャードも
ギクリとしたはずで、この明敏さを
見せつけられてはなおのこと、
生かしておけない。
この心理で出てきたリチャードの台詞に、
漱石もこう書き込みました。
物凄キ言語ナリ。
Glouster〔リチャード〕ノ口ヨリ出デゝ
一種ノeffect〔効果〕ヲ生ズ
(『漱石全集』第27巻、313頁)
ポール・ドラロッシュ画『幼きイングランド王エドワード5世とその弟ヨーク公リチャード』(1831)
🌹 第四幕/Act Ⅳ
【名言 その11】アン (ロンドン塔の前で出会った
エリザベスらに)
おかげで、私の目には今の今まで
安らぎはない。
あの男のベッドでは、ただの一時間も
眠りという黄金の雫を味わうことはない。
あの男が悪夢におびえるたびに
目を覚ましてしまうから。 〔第一場〕
Anne Even in so short a space,
my woman’s heart
Grossly grew captive to his honey words
And proved the subject of my own
soul’s curse,
Which ever since hath kept my eyes from rest;
For neveryet one hour in his bed
Have I enjoy’d the golden dew of sleep,
But have been waked by his timorous derams.
👉久々に登場したアンによって、
リチャードの妻となった自らの、
またリチャードその人の、安らぎのない
惨めな現状が告白されています。
現在のロンドン塔
【名言 その12】
エリザベス
その言葉に羽をのばさせて
やりましょう。
何の役にも立たないけれど、
それでも気持ちは楽になる。
ヨーク公爵夫人 それなら、黙って
いることはない。
一緒においで、毒のある言葉を吐いて、
あなたの可愛い息子を絞め殺した
私の憎い息子を絞め殺してやろう。
〔第四場〕
Queen Elizabeth Windy attorneys to their
client woes,
airy succeeders of intestate joys,
Poor breathing orators of miseries!
Let them have scope:
though what they do impart
Help not all, yet they ease the heart.
Duchess of York If so, then be not
tongue-tied:go with me.
And with breath of bitter words let’s smother
My damned son, which thy two sweet
sons smother’d.
👉二人の息子を暗殺された元王妃が
その実質的殺害者の母を前にしての
「言葉」についての比喩表現。
その諦観にあえて復讐の火をつけようと
する実母の正義感または憎しみ…。
⚡
🌹 第五幕/Act Ⅴ
【名言 その13】エドワード王子の亡霊 明日はお前の
魂に重くのしかかってやる。
思い出せ、テュークスベリーの戦場で、
花の盛りだった私を刺し殺した様を。
〔第三場〕
Ghost of Prince Edward Let me sit on
thy soul tomorrow!
Think, how thou stab’dst me in my
prime of youth
At Tewksbury: Despair, therefore, and die!
👉リッチモンド軍との決戦前夜、
リチャードの夢枕に現れた亡霊の呪い。
この「絶望して死ね」(二人目からは
“Despair, and die!”)は、この後、
リチャードによって死に追いやられた
計10人の亡霊──ヘンリー六世、
クラレンス、王子たち、アンなど──
から次々に投げつけられます。
【名言 その14】
リチャード 俺は悪党だ──嘘をつけ、
悪党じゃない!
馬鹿、自分をほめてやれ!
馬鹿、自分をおだてるな!
俺の良心には無数の舌があるらしい。
その一枚一枚が勝手な話をする。
〔中略〕
絶望だ。誰一人、俺を愛してはいない。
誰一人、俺が死んでもあわれみはしない。
〔第三場〕
Richard I am a villain: yet I lie. I am not.
fool, of thyself speak well: fool, do not flatter.
My conscience hath a thousand several tongues,
And every tongue brings in a several tale,
[ellipsis]
I shall despair. There is no creature loves me;
And if I die, no soul shall pity me:
Nay, wherefore should they,
since that I myself
Find in myself no pity to myself?
👉矛盾したことを言い続け、錯乱気味の
「良心」が見据える、誰にも愛されない
リチャードの末路。
が、すぐ後では「良心」など「強者を恐れ
おののかすためにあみ出されたものだ」と
開き直り、自らを鼓舞して決戦に臨みます。
【名言 その14】
リチャード
〔第四場〕
Richard A horse! A horse!
My kingdom for a horse!
👉『リチャード三世』全編中、最もよく
知られた台詞。
あらゆる犠牲を払ってわがものとした
「王国」も、今のリチャードには馬一頭と
交換できるほどの価値しかないという、
底深いアイロニー。
そこに何を噛みしめるかはあなた次第。
3.ニーチェのシェイクスピア”悪人”説
さて、いかがでした?「劇作家は一般にかなり悪人」だと
ニーチェをして言わしめたシェイクスピア。
その”悪人”ぶりもこれで(ある程度には)
ご理解いただけたのではないでしょうか。
ちなみにニーチェの発言を正確に引用して
おきますと、
モラリストとしてのシェークスピア。
──シェークスピアは情熱に関して
ずいぶん思索をめぐらせていたし、
多分彼の気質からして多くの
情熱にきわめて近しい交渉を
もっていたであろう(劇作家は
一般にかなり悪人である)。
しかし彼はモンテーニュのように、
それについて語ることはできずに、
情念に関するもろもろの考察を
情念につかれた人物の口に託した…
(『人間的、あまりに人間的』176節)
そのことが「彼の戯曲をきわめて思想の
豊かなもの」にしたとニーチェは称賛を
惜しまないのですが、そこで言っている
「情熱/情念」は往々にして「悪」でも
ある…
なぜかって?
そこはそれ、なにしろ『善悪の彼岸』と
題した著を世に問うた人ですから…;^^💦
👉ニーチェの思想や芸術観念に興味を
もたれた場合は、こちらの記事も
ご参照いただけると幸い。
・ニーチェ ツァラトゥストラは読みやすい?訳本選びがカギに
・“結婚生活は長い会話である”とニーチェが言ったって本当?出典は?
4.漱石絶賛の”口説き”とは❓
さて次は漱石先生。所蔵していた原書『リチャード三世』への
書き込みは全編にわたっていますが、詳細に
読み解いた分析的な記述は第一幕第二場、
すなわちアンとのやり取りの場面に
集中しています。
つまり上記の名言集でいえば
【名言 その5】以降の3つ。
特に【名言 その7】に対しては
然リ、女ハイツデモ
此手ニカゝルナリ
と書き込んでいますが、これは
「こんな気分のときに口説かれた女が
いるか? こんな気分のときに口説き
落とされた女がいるか?」という
リチャードの自問に対して「ああ、
いるとも」と答えたもの。
すなわちシェイクスピアに通じ合う
漱石の女性観が表明されたものと解する
ことができるのですが、漱石の感服は
そこにとどまりません。
たとえばアンに唾を吐きかけられる
ところでは
Gloster〔リチャードを指す〕ノ
罵ラルニモ関セズ
怒ラザルヲ見ヨ
アンが落ちてからのリチャードの独白──
「どうやら俺はこれまでずっと自分を
見損なっていたらしい!〔中略〕
あの女には俺が眉目秀麗な素晴らしい
男に見えるのだ」──のあたりでは
此〔この〕成功ハGlousterニハ
revelation〔啓示〕ナリ
彼茲〔ここ〕ニ至ツテ始テ己レノ
醜ヲ忘ルゝコトヲ得
などと自分なりの解読を書き込み、
第二場が終わるとその余白には
こんな総括も。
女ノ心モ一転シ男ノ心モ一転ス
其心理頗ル妥当ニテ
叙事頗ル巧妙ナリ
此〔これ〕自然ナリ小説ニアラズ
女は夫殺しとして憎み切っていたはずの
男を愛してしまい、男は醜貌ゆえ不可能
と思っていた「女に愛される」という
事態を実現させて、自信満々の野心家
となる。
どちらも「一転スル」ところへ「自然」に
持っていくその「巧妙」さが、並みの
小説や戯曲ではとても到達しがたい
神業レベルだと舌を巻いているのですね。
👉漱石独自のシェイクスピア読解を
もっともよく、それこそ手に取るように
読ませてくれるのが東大での『オセロ』の
講義録をまとめた「『オセロ』評釈」
(『漱石全集』第13巻所収)。
講義は漱石がすでに小説家として名を
挙げてからのものでもあり、作家らしい
批評性が光っています。
詳しくはこちらをご参照ください。
・オセロ(シェイクスピア)の名言/セリフ 東大で漱石はどう講じたか
・シェイクスピア オセロのあらすじ:漱石講義のコメントつきで
⦅付録⦆映画『恋におちたシェイクスピア』
さてこれはオマケですが、この傑作悲劇『リア王』など四大悲劇の世界に入って
いく以前のやや若いシェイクスピアが、
『ロミオとジュリエット』執筆と同時進行で
それこそロミオばりの熱い恋をしていた…
という設定のロマンティック・コメディ
映画をご存知ですか?
それが『恋におちたシェイクスピア』
(アメリカ・イギリス合作、ジョン・
マッデン監督、1998)で、なんんとこれ
アカデミー賞では作品賞のほか脚本賞・
主演女優賞・助演女優賞・音楽賞・美術賞
・衣装デザイン賞と7つの受賞に輝きました!
でもこれ、ほとんどの部分がフィクション
ですので、勉強として見る場合には
繭に唾をつけることが必要です。
詳しくはこちらでどうぞ。
・恋におちたシェイクスピア(映画)考察!どこまで実話かネタバレする
まとめ
いかがでしたか?あらためてシェイクスピアという
作家の凄さを思い知っていただけた
でしょうか。
ともかくここまでお付き合いいただき、
本当にありがとうございました!
お付き合いいただいた動機のうちには
感想文やレポートの参考にしようと
いうものもありそうですが、
その場合ももうOKですよね。
これだけの材料があれば…。
ん? これだけではまだまだ?
それならぜひ、ほかの作品にも
どんどんトライしていってください。
当ブログでは沢山のシェイクスピア
作品について「あらすじ」などの
有益情報をどんどん書きためて
いますよ~。
👉当ブログでは、”四大悲劇”をはじめ
喜劇・歴史劇・ロマンス劇など
21作以上について「あらすじ」などの
情報を惜しみなく提供しています。
気になる作品をこちらからお探しください。
・シェイクスピアの本でおすすめは?喜劇・悲劇…各ジャンル21作品の紹介!
そのほか、シェイクスピアの本を早く安く
手に入れたい場合は、Amazonが便利。
こちらから探してみてください。👇
🔱シェイクスピアの本:ラインナップ🔱
さあ、これでもう万全ですよね。
読書感想文だろうとレポートだろうと…。
え? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でも具体的に、どう
進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?
👉当ブログでは日本と世界の多くの
文学や映画の作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。
お役に立ちそうなものをこちらの
リストから探してみてくださいね~(^^)у
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょ~~(^O^)/
こんなコメントが来ています