鞄(安部公房)のあらすじ//嫌になるほど自由だった…という意味は? | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象

鞄(安部公房)のあらすじ//嫌になるほど自由だった…という意味は?

やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズも、
早くも第36回。
「あらすじ」暴露サービスとしては
第13弾を数えます。

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今回は安部公房の短編小説で、
高校現代文の教科書に採用されている
『鞄』(1976。『笑う月』所収)です。
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さて、一口に「あらすじ」を、といっても、
話の骨子だけでいいという場合から、
テストや読書感想文・レポートの対策
として詳しく見ていかないとという
場合まで、千差万別でしょう。

そこで出血大サービス((((((ノ゚🐽゚)ノ

「ごく簡単なあらすじ」と
「やや詳しいあらすじ」の
2ヴァージョンを用意しましたよ~(^^)у


ごく簡単なあらすじ(要約)

まずはぎゅっと要約した「ごく簡単」
ヴァージョンのあらすじ。

私の事務所に、求人広告に応募する
という青年が現れたが、その広告は
半年以上も前に出したもの。

事情を尋ねると、彼は大きな鞄を
指し示し、この「鞄の重さ」が
行く先を決める結果だと答える。

奇妙な問答の末、鞄を持ち込まない
ことを条件に採用することとし、
下宿さがしのため周旋屋に電話して
やると、青年は下見に出て行き、
鞄が残される。

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鞄を持ち上げ、歩いてみると、
肩や腰にこたえて、急坂などでは
進めず、方向転換して事務所に
引き返そうとしてもうまくいかない。

とにかく歩ける方向へ歩いていると、
どこを歩いているのかも分からなく
なるが、「鞄が私を導いて」いる
と感じて不安も迷いもないので、
私は自由だった。

え? なんだかよくわからん?

ま、それはそうかもしれませんね。
全文をちゃんと読んでも「なんだかよく
わからん」というのが大半の人の反応
でしょうし、むしろその「わからん」
ところこそが持ち味だともいえる
ような作品ですからね。


👜 わからんでも、感じればいい

ですから、これが「わからん」でも
自分はバカなんじゃないか、なんて
気に病む必要はありません;^^💦

      

昔、夏目漱石は、初期の「一夜」という
作品について、やはり「わからん」と
知人に言われましたが、「分からんでも、
感じてもらえばいい」という風に
その人に回答しました。

公房先生も、たとえば愛人として長く
そばにおられた女優の山口果林さんから、
「先生、これわからんよ」ともし文句を
言われても、澄ましてやはり同じように
答えたのではないでしょうか。
👉山口果林さんとの関係については、
こちらをどうぞ。👇
 

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それはさておき、ともかくここは
「分からんでも、感じる」
――という場合の感じ方にもいろいろ
であっていいのですが――
ともかく何かを「感じ」ようという
姿勢で読み込んでいったらいい
と思うんです。

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やや詳しいあらすじ

そこで「やや詳しい」ヴァージョンの
あらすじに移ります。

ただしいこれはよく「わからん」人間が
「でも、こう感じながら読めば楽しめる」
という立場から書いたものですので、
そのつもりで(絶対視しないで)
お読みください。

切れ目のない原作を「起承転結」の4部に
分けていますが、これも上記のような
「楽しみ方」からくる判断です。

「 」内は原文の引用です。


💼【起】

「私」の事務所に、新聞の求人広告を
見てきたという青年が現れたが、
その広告は半年以上も前に出したもの
なので、その非常識さに私はあきれる。

あきらめて帰ろうとした青年を私は
引きとめ、「考慮の余地はある」から、
「なぜ、いまさら応募する気に
なったのか」説明してほしいと要求。

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「一種の消去法」でここしかないと
わかった…とさりげなくいう青年に
私も「妙に素直な気持ち」になる( ̄_ ̄ i)。


💼【承】

具体的に言うよう求めると、彼は足元の
大きな鞄を指し示し、急な坂などでは
「もう駄目」なので、選べる道が
制約されてしまう……つまりこの「鞄の
重さ」が行く先を決めるのだと答える。

それなら、その鞄を持たずにいれば?
との問いには、それは「あり得ない
仮説」で、「いつだってやめられる
からこそ、やめない」などと
不得要領のことを言う。

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採用されなかった場合は?
と問うと、またあらためてお願いする
だろう、地形に変化でもないかぎり……
と答える。


「しばらく、あずかってみてあげよう
か」と提案し、強盗に目をつけられた
場合などに言及すると、青年は無言で
小さく笑い、私も笑って、
鞄を持ち込まないことを条件に
採用を決める。

勤務中の鞄の置き場所は「下宿」になる
だろうというので、周旋屋に電話して
紹介してやると、青年は下見に
出て行き、鞄が残される。

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💼【転】

「なんということもなしに」
鞄を持ち上げ、歩いてみる。

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しばらく歩くと、肩と腰にこたえて
一歩も進めなくなったが、気づくと、
そこは急坂にさしかかっている。

方向転換するとまた歩けはじめるが、
事務所に引き返そうとしてもうまく
いかず、道順を思い浮かべても、
ふだん意識しなかった坂などで
寸断されてしまう。

とにかく歩ける方向へ歩いていると、
どこを歩いているのか分からなくなる。


💼【結】

不安は感じなかった。

「ちゃんと鞄が私を導いて
くれている」。

ただ歩きつづければよく、
「選ぶ道がなければ、迷うこともない。
私は嫌になるほど自由だった」


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「嫌になるほど自由」という逆説

ん? やっぱりよくわからん、
何をどう感じればいいのか……?

現代文の教科書や参考書には「作者の
気持ちになってみよう」などどという
ヒントがよく書いてあるので、なんでも
このやり方で頑張ってしまう人もいますが、
少なくともこの作品に関しては、それは
やめたほうがいいでしょう。


たとえば上の「詳しいあらすじ」の最終行、
「選ぶ道がなければ、迷うこともない。
私は嫌になるほど自由だった」。

これなどは結びに置かれている以上、
話の結論のようでもあり、作者が伝え
たいことをズバリ言っているように
思えますから、これについて作者の
気持ちを考える。

     

たとえば「嫌になるほど自由」という
のは、いわゆるひとつの”逆説”ですね。

なぜなら、「自由」というのは普通は
ありがたいもので、「嫌になる」
ことはない。

「嫌」であれば、そこから逃れようと
するのが自然で、もし今それができない
状態に陥っているのだとすれば、
それはもはや「自由」ではない。

   

というわけで、作者安部公房もこういう
意味での「不自由」の状態にあったの
ではないか。

たとえば妻がありながら愛人の山口さんと
暮らすのは「自由」で結構だったけれど、
やがてその「自由」が「嫌になるほど」
のものになっていた、だからあんな
小説を書いたんだ…とか。

この仮説も面白いかもしれませんが、
まあ、学校に出すのはやめた方が
いいでしょうね(いい点はもらえない
でしょうから;^^💦)


では、どうするか?

もちろん自分の経験を書くのです。

「嫌になるほど自由」という”逆説”的
状況に陥った経験はありませんか?

もし心当たりがあるのなら、その実は
「不自由」なのかもしれない「自由」の
状態についての自分の感じ方を表現して
みてはどうでしょうか。

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まとめ

さあ、どうでしょう。

これだけの情報とヒントがあれば、
もうOKですよね、テストだろうが、
感想文だろうが。

ん? やっぱり無理?

「嫌になるほど自由」なんて感じた
ことないし…?

それではほかのアプローチを
探してみましょう。

たとえば…
👉こちらの記事で、いくつかの問題を
抜き出して解釈を試みています。

ぜひ参考にしてみてください。

安部公房 鞄をどう解釈 ? 主題は? 問題を見つけて感想文へ

     

また同じ作者の『棒』についても、
書いていますので、ご参照ください。

安部公房 棒のあらすじ:このわからない短編で感想文だって?

棒(安部公房)の考察と解説 前衛性を読み取ってテスト対策

    

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安部公房の本:ラインナップ

👉なお当ブログでは、安部公房作品ばかり
でなく、日本と世界の種々の文学作品に
ついて「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事をたくさん書いています。

参考になるものもあると思います
ので、こちらからどうぞ。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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