死神(落語)の元ネタはグリム童話?両方のあらすじを落ちまで確認!
やあやあサイ象です。
おなじみ「あらすじ」暴露サービスも
ついに大台を超えて今回で早くも
第114弾
「感想文の書き方」シリーズ全体では
第173回となります。
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今回はなんと落語に挑戦((((((ノ゚🐽゚)ノ
明治落語の大立者、三遊亭円朝(1839-
1900)大師匠の傑作「死神」!
およびその元ネタと目されているお話の
一つをグリム童話から抜き出し、その
あらすじも紹介していきます。
二つの物語の幕間に、現代の名匠による
落語実演の動画もお目にかけますので、
どうぞお楽しみに~()。
落語『死神』のあらすじ
わかりやすさのため全体を「起承転結」の4部に分け、
👉で私なりの注釈を入れています。
うるさいと思われる方は
スルーしてください。
では、どうぞ。
💀【起】
金が作れないで帰宅した男が女房に「豆腐の角に頭ぶつけて死んじまえ」
などと罵倒され、また家を出る。
ぶつぶつ独り言をいいながら歩くうち、
ふと死ぬという考えが浮かび、死に方を
思案するうち、後ろから薄気味の
悪い声で呼び止められる。
振り返るとそこに、年の頃なら八十以上、
薄汚れた着物をはだけて痩せこけた胸を
出し、汚い竹の杖を突いた爺さん。
自分は「死神」だと名乗った爺さんは
「おまえはまだ寿命があるから、
死のうとしても死ねない」と告げ、
こんな「相談」をもちかける。
「金がないんなら、儲かる商売を
教えてやるから、やってみな。
それは医者だ」
脈の取り方も知らない俺にできっこない
と男は怒るが、死神の説明では…
「死にそうな病人の床には必ず
死神が座っている()。
もしそいつが足元にいればまだ寿命が
あるんだが、枕元ならもう臨終だ。
これからおまえにはそれが見えるから、
足元にいたら「アジャラカモクレン
キュウライス、テケレッツノパア」
と呪文を唱えて柏手を二つ打てば、
死神は消えて病人は助かるんだ」
👉呪文の「アジャラカモクレン…」は
現代では落語家がそれぞれ自分なりの
ものに変形して笑いを取っています。
呪文のほかにも色んな所を変形して
新しい笑いを生み出しているわけですね。
たとえば立川志の輔師匠の噺では、
主人公の男は独身にするという
思い切った改変で大いに笑えます。
男が試しに呪文を唱え手を拍つと、
もう死神は消えている。
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💀【承】
半信半疑ながら家に帰って医者の看板を
出すと、間もなく日本橋の豪商から使い。
「主人が長く患っており、江戸中の
名医に匙を投げられていましたが、
易者に言われたとおりに探すと、
こちらの先生が見つかりました。
どうぞ一つ」と頼む。
行ってみると果たして病人の
足元に死神がいる( )。
しめたとばかりに、教えられた
通りにすると、病人はたちまち
全快して元気もりもり。
これが評判を呼んで往診依頼が殺到し、
たちまち左ウチワの生活。
妻子は離別して、愛人と京阪旅行と
しゃれこむが、女はもともと金めあて、
金を持ち逃げされてスッカラカンで
江戸へ戻る。
医者稼業を再開して稼ごうとするが、
どこへ往診しても死神は枕元にいて
金の儲けようがない。
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💀【転】
ある日、江戸でも指折りの豪商、
麹町の伊勢屋から依頼があり、
出かけると、死神はやはり枕元( )。
「これは無理です」と帰ろうとするが、
「そこをなんとか」と懇願される。
「お助けいただければ○○両差し上げ
ます」と泣きつき、その「○○両」は
どんどんつり上がって、ついに
「一万両」に。
ここで男に妙案が湧く。
力のある若者を四人そろえて蒲団の四隅に
座らせ、スキを見て蒲団を半回転すれば、
死神の位置は「足元」に変わる、その
瞬間に例の呪文を唱えれば…。
四人の若者を加えた五人と死神との
持久戦になったが、やがて死神が居眠り
したとみるや、機敏に計画を実行する。
死神は狼狽しながら消え去り、
病人は元気いっぱいで目覚める。
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💀【結】
一攫千金でホクホクしている男。
そこへ例の儲け方を教えた死神が現れ、
祝いに飲みに行こうというような話に
なり、暗くて奇妙な(家から近いので
よく知ってるはずなのに見たことのない)
場所へ連れて行かれる。
地面に穴があいて、現れた階段を下りて
いくと、広大な空間があって無数の
ローソクが並んでいる。
長くてよく燃えているローソクもあれば、
あと少しで消えそうなのもあるが、
これらはすべて各人の「寿命」を
表していると死神は説明する。
👉この「寿命」ですが、立川志の輔
ヴァージョンでは「運」と言い換えて
はじめの出会いの場面でも言及します。
美貌や知能に恵まれて生まれた人間は
その時点で「運」を大きく使ってしまって
いるが、その点お前はほとんど使って
いない、だからまだ「運がある」、
死ぬことはない……
というふうに死神が説くのです。
「この今にも消えそうなローソクは誰?」
と尋ねると、死神は冷然と
「それはおまえのだ」( )
「約束を破ってあんなインチキをするから
おまえの寿命(志の輔では「運」)は
伊勢屋の旦那に移って行っちまったんだ」
「なんとかしてください」と泣きつく男に
「それなら、特例だが」と死神は
チャンスを与える。
「おまえの火が消える前に、この新しい
ローソクに火を移すことができれば、
おまえは助かる」
男は言われたとおりに試み、
いったんは成功するものの……
👉もちろん成功してメデタシメデタシでは
落語になりません。
結局火が消える、という下げ(落ち)になる
わけですが、その下げ方が円朝の原作でも
ピリッとしていないので、後世の
落語家たちがそれぞれに自分なりのものを
工夫してきました。
死神を演じる古今亭今輔師匠
近年で上手なのが柳家小三治師匠の
「男が風邪気味で…」というものですが、
この設定が「あざとい」という立川志らく
師匠は「第二の誕生」を祝うバースデー
ケーキへというまったく新しい奇想へ
飛びます。
最近では千原ジュニアさんの「家までもって
帰って…」というのもありますが、
それなら、志の輔師匠が前からやっている
「階段を上る途中で死神に言われて…」
という落ちの方が鮮やか、華麗では
ないでしょうか。
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録画・録音で「死神」に震えよう
さあ、いかがでした?
とても面白いストーリーではないですか?
その上、ニセ医者になる男や死神の
キャラクター作りや演じ方、それから
上の👉でもふれた落ちの
工夫などに、落語家の技量が大いに
発揮されることになりますよね。
だから昔から実力ある噺家さんたちが
続々と挑戦してきたネタなんですね。
でははじめの約束どおり、現代の
名匠の口演をご覧いただきましょう。
ここは最もモダンでスピーディな
立川志らくヴァージョンの「死神」です。
名匠の口演のうち現在、手に入りやすい
DVD、CDをいくつか並べておきましょう。
👇
なんとこれが西洋ネタだった
さて、円朝師匠作とされるこの「死神」の
ストーリーですが、西洋ネタを巧みに
落語化したものであることが今では
よく知られています。
そのネタとしてまず挙げられるのが、
19世紀半ばに初演されて世界的に
人気を博したというイタリアの歌劇
『クリスピーノと死神』。
で、グリム童話にもそれに酷似した
ストーリーの「死神の名付け親」
というのがあって、円朝師匠がどちらに
学んだかは調べがついていません。
ただ『クリスピーノと死神』では
「死神」が女性だということもあって
雰囲気としてはグリム童話の方が
近いように思えますね。
👉イタリア語で「死」は”la morte”と
女性名詞(フランス語などラテン系言語では
大概そうですね)だからどうしてもそうなる
わけで、これがドイツ語では”der Tod”と
男性名詞なので爺さんなんですね。
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グリム童話「死神の名づけ親」のあらすじ
というわけで、ここではより近い
グリム童話の方で「あらすじ」を
まとめておきましょう。
💀【起】
貧乏な男に13人目の子が生まれ、
はじめに出くわした者に名づけ親を
頼もうと思い、大通りに飛び出す。
最初に現れたのは神様で、洗礼を
授けてやろうと言うが、男は断る。
「あんたは金持ちにひいきして
貧乏人には知らん顔だから」
次に現れたのは悪魔で、自分を
名づけ親にすれば金と快楽を
約束すると言うが、男は断る。
「あんたは人をだましたり、
そそのかしたりするから」
次に現れたのは死神で、男は
彼に名づけ親を頼む。
「あんたは人を差別しないから」
💀【承】
この男の子が大きくなったある日、
死神が現れる。
男を森へ連れ込んで、そこに生えて
いる薬草を教えて「これでおまえを
評判の医者にしてやる」と言う。
おまえが診察に行った時、病人の
ベッドの頭の方にわしが立っていたら、
「きっと治す」と言ってこの薬草を
のませれば治る。
足の方に立っていたら諦めさせろ。
もしわしの意志にそむいて薬草を
使えば、おまえの身にとんでもない
ことが起こるぞ」
言われたとおりにした男はたちまち
名高い医者となり、金持ちになる。
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💀【転】
そのうち王様の病気になったので
召し出されると、死神が足の方に
立っている。
ここで一計を案じた男は、王様を
体ごと動かして上下を逆にし、
例の薬草をのませて治してしまう。
怒った死神は「名づけ子だから
大目に見るが、もう一ぺんやったら
命はないぞ」と宣告する。
やがて王様の一人娘が病気になり、
救ってくれた者は彼女の婿にし、
自分の跡を取らせると布告。
行ってみると死神はやはり足の方に
立っていたが、王女の美しさと
地位への欲に頭がしびれて、王様に
したのと同じことをしてしまう。
💀【結】
激怒した死神は男をひっつかんで
地下の洞穴の中へ連れ込む。
そこには大小何千ものあかりが
何列にも並んでともっている。
「これは人間どもの命のあかりだ」
と死神が言うので「私のは?」と聞くと
「これだ」と今にも消えそうな
ローソクの燃え残りを指さす。
なんとかしてくれと泣きつくが、
「一つ消えてからでないと新しいのは
燃えださんから、無理だ」と死神。
「それなら古いのを新しいやつの上に
のっけてください」と頼むと、
死神は頼みをきくようなふりをして、
わざとしくじり、ローソクの火は消える。
まとめ
さあ、いかがですか。共通点と相違点、はっきりと
おわかりいただけましたよね。
そしてこの話を日本の風土に根づかせた
三遊亭円朝師匠の手腕のたしかさも…。
円朝の名作には怪談もたくさん…
👉「死神」は江戸落語の古典ですが、
上方落語にはまた江戸とは違った味わいが
あります。
人間国宝として逝かれた桂米朝師匠の
名演はこちらでお楽しみいただけます。
・京都のお茶漬けは「帰れ」の意味?桂米朝師匠の落語に学ぼう
さあ、こう色々とわかってくると、
感想文でもレポートでも、書こうと
すれば難なく書けちゃいますよね。
ん? 書きたいテーマはあるんだけど、
具体的にどう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?
そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね~;^^💦
👉当ブログでは、日本と世界の種々の
文学作品について、「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。
参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらからお探しください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
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