ヒッチコック『鳥』のあらすじと解説⦅原作の鳥は「特攻隊」と呼ばれた?⦆
なんといっても『鳥』
が有名ですよね。
』など1970年代から続々
と出て来たアニマル・
パニック映画の元祖。
2007年にはリメイクの
話もありましたが、
お流れのようで…
鳥たちが完全に退治さ
れるわけでもない…
というラストが私には
意外でした(🙀)
終わるホラー映画…
そこもまた『鳥』の芸術
品たるゆえんですが、
原作に忠実だった結果
ともいえますね。
あったんですか~
モーリアの短編『鳥』。
ある意味、こっちの方が
もっと怖いかもしれ
ませんよ~
どんな世界なんですか?
とりあえず、この原作を
横目に見つつあらすじを
辿ってみましょう。
ヒッチコックがそれを
どう変えたかを知るには
インタビューを集めた本
『映画術』を覗く必要も
ありますね。
というわけで、おなじみ”あらすじ”暴露
サービスの第169弾(“感想文の書き方”
シリーズ第236回)はアルフレッド・
ヒッチコック監督の名作『鳥』(1963)!
そのストーリーを、原作であるダフネ・デュ
・モーリアの同名小説(1952)との違いや
ヒッチコック自身の発言も押さえながら、
きっちり辿っていきます;^^💦
映画のDVDと原作小説はこちら。
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自作をめぐるヒッチコック自身の発言は、
フランスの映画作家フランソワ・
トリュフォーによるインタビュー集
『映画術』でお読みになれます。
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内容はザッと以下のとおり。
どんな映画?どんな小説?
映画『鳥』をまだ見たことがないという読者のみなさんは、まずこちらの
動画(予告編)をご覧ください。 👇
同時に、魅力的な男女のからむラブ・
ロマンスでもあるらしいということが
おわかりいただけるかと思います。
でもこの”ロマンス”の方はダフネ・デュ・
モーリアの原作小説にはまったくない
要素で、ヒッチコック映画が新たに
盛り込んだものなんですね。
では”色気のない”原作の方はどういう
面白みで読者を引き込む小説になって
いるかといえば、やはり第一には、
理由もなく襲ってくる鳥たちが
引き起こす恐怖(ホラー)!
でも、どうやらそれだけでもないようで…
ご覧ください~;^^💦
かなり詳しいあらすじ
では始めましょう。映画のストーリー展開を、私の判断で
「起・承・転・・結」の4部に分け、
原作小説から大きく改変されている部分や
それらについてのヒッチコック自身の発言
などを👉印の注釈として入れていく
という形で進めていきます。
細かいことはどうでもいいから
ストーリーだけを知りたいという人は
飛ばしてくださいね;^^💦
「 」内や「”」印の白い囲みは
原文(上記の本)からの引用。
ともかくラストまで包み隠さず完全
ネタバレありで参ります!
🐦【起】
大新聞社の社長令嬢で、イタリアで起こした珍騒動が報道されたこともあるメラニー・
ダニエルズ(ティッピ・ヘドレン)は、
サンフランシスコのペットショップで
弁護士のミッチ・ブレナー(ロッド・
テイラー)に初めて出会う。
ミッチは妹の11歳の誕生日プレゼントに
しようとラブバードを買いに来ていたが、
店員になりすましたメラニーとやり取り
するうち、籠から逃げだしたカナリアを
捕まえようとして、ひと騒動。
そのあげく「君も金ピカの鳥籠に戻して
やろうか、メラニー・ダニエルズ」と
相手の名を言い当て(写真入り記事を見て
知っていた)、メラニーを驚かす。
ラブバード(lovebird/ぼたんいんこ)のつがい
あきらめて帰ったミッチのために、
メラニーはラブバードのつがいを買い入れ、
ボデガ湾の彼の住所を探し出し、車と
モーターボートで何時間もかけて訪問。
不在だったので、家の中に手紙と
ラブバードをこっそり置いていく。
👉ボデガ湾はサンフランシスコから
約100キロ北に実在する漁村。
映画はかなりドタバタなロマンチック
・コメディ風の出だしですが;^^💦、ここは
基本的に脚本を委託されたエヴァン・
ハンター(別名エド・マクベイン)の創作で、
原作にはまったくない部分。
そもそも原作はイギリス海岸の農夫と
その家族の話で、家族愛はあっても
恋愛的な要素はありません。
ラブバードも、映画ではこの後、要所要所
(“ラブ〔愛〕”にかかわる場面)で顔を出す
重要アイテムですが、もちろん原作には
出て来ません。
この鳥を出す必要性についてヒッチコックは
「愛はあらゆる試練をのりこえて生きのびる
ものなのだから」などとトリュフォーに
語っています(上記『映画術』)。
ところでミッチの「君も金ピカの鳥籠に
戻してやろうか」というセリフも、
撮影中にヒッチコックが思いついて
言わせたものだとのこと(同書)。
脚本も結果的に何割かはヒッチコック
自身の手になるものへと変形されて
いるわけですね。
メラニーがボートで水上を引き返す
ところを、戻ってきたミッチが見つけ、
陸づたいに追いかける。
その途中、メラニーは突如カモメの
襲撃を受け、髪の生え際に怪我を負う。
対岸でミッチはメラニーを救助し、
夕食まで家に滞在するよう勧める。
🐦【承】
ブレナー家へ連れて来られたメラニーは、妹のキャシーには大歓迎されるものの、
母のリディアは打ち解けない態度。
あらゆる面で依存していた夫を4年前に
亡くしたリディアは、その後はミッチに
ベッタリの生き方になっているらしい。
夕食後はミッチの家にも泊まりにくいので、
宿を探した結果、地元の小学校で教師を
しているアニー・ヘイワースと仲良くなり、
彼女の家に泊めてもらうことになる。
アニーはもともとミッチを追ってこの地へ
来た女性で、母親との確執から結婚は
あきらめたものの、そのまま教師になって
住み着いているのだという。
👉こういう依存性(とその裏返しの支配欲)
の強烈な母親とその息子との密接な関係が
あって、そこに若い女が入り込む…
という設定は前作『サイコ』(1960)を
はじめ、ヒッチコック映画に繰り返し
用いられたパターンとも言えます。
『鳥』ではその若い女が”二人目”だった
わけですね。
『サイコ』についてはこちらで
詳しく情報提供しています。
・サイコ(ヒッチコック映画)のあらすじ//原作小説はもっと怖い?
その夜、アニーの家のドアにカモメが
激突し死ぬという事件が発生。
👉このあたりでようやく原作と
重なってきます。
原作では、傷痍軍人で週3日だけ農場で働く
中年男のナット・ホッキンが、夜中に家の
窓ガラスをコツコツとたたく音に気づいて
窓を開けた瞬間、鳥に突かれて腕を
負傷するというのが発端。
それからどんどん数を増やす鳥たちの攻撃に
人々が怯え、国家的な問題に発展して
いきます。
翌日はキャシーの誕生パーティ。
ブレナー家の戸外に子供たちとアニー、
ミッチとメラニーも加わって楽しんでいる
ところへ、突如、無数のカモメが来襲し、
みな家へ避難。
夜にはブレナー家の暖炉から数百羽もの
スズメが侵入し、室内をめちゃくちゃに。
👉暖炉からの侵入は、原作では終盤近く、
家に閉じ込められた主人公への容赦ない
追い打ちであり、かつ鳥たちの「自殺行為」
として描かれます。
次の日、リディアが様子を見に車で
近隣の農場を訪ねると、家は無残に
破壊されており、室内では農場主が
両眼👀をくり抜かれて死んでいる。
👉原作でこの農場主に相当する人物は
トリッグ氏ですが、死因は鳥に突かれたあと
牛に踏まれたことらしく、目玉を
くり抜かれてはいません。
これも撮影現場での思いつきだったと
ヒッチコック自身が語っています。
まさに撮影当時のボデガ湾でカラスの群れが
子羊を襲うという事件があり、カラスは
羊の眼を狙って急降下していたという
目撃証言を得たことからの発想だと
(上記『映画術』)。
激化する鳥の攻撃に怯えるリディアは
メラニーに学校へ行ってキャシーの
様子を見てきてほしいと頼む。
メラニーが行くと授業中(教師はアニー)
だったので、校庭で煙草を吸っていると、
背後のジャングルジムにカラスが
とまっているのに気づく。
それが、振り向くたびに数を増やし、
やがて途方もない数に膨れ上がる。
メラニーは教室のアニーに知らせ、
子供たちを避難させるために
外へ飛び出す。
逃げ惑う子供たちを容赦なく襲い、
ケガを負わせる鳥たち。
🐦【転】
ミッチとメラニーが落ち合った町の食堂では客たちが、自分の遭遇した異常な情景を
口々に語る。
「世界の終わりだぜ!」と繰り返す
酔っぱらいや、あらゆる鳥がいなく
なればいいと言うセールスマン…。
鳥類学の意識をひけらかす老婦人は、
「違う種類の鳥は一緒に集まらない」し
鳥には「集団で攻撃するような知能は
ない」から、それらの情報は何かの
間違いだと主張する。
👉このへんも時代を感じさせます。
今はカラスを筆頭に鳥たちの知能の高さが
よく知られていますから、同じことを
言ったら、無知なオバハンだな;^^💦
という話になりますが、当時はそうでは
なかったわけですね。
犬・猫にも引けを取らないカラスの
知能についてはこちらを参照。
・カラスの知能は犬以上!この曲者を撃退する裏ワザは?【動画つき】
子連れの母親は、子供たちが不安になる
から、そういう話はやめてくれと何度も
頼むが、ほとんど効果なし。
食堂に近いガソリンスタンドで車に給油
していた男性が鳥の攻撃を受けて倒れ、
ガソリンが道に流れ出す。
そのガソリンに気づかないまま、すぐ近くで
タバコに火をつけようとしている男を見て、
メラニーたちは店内から必死に叫ぶが、
声は届かず、彼はマッチを地面を落とす。
たちまちガソリンに引火して男は炎に
包まれ、ガソリンスタンドは大爆発。
各種入り混じった鳥の大群が人々を襲い、
パニックになる中、メラニーは電話
ボックスに逃げ込んで攻撃を防御。
そこへミッチが駆けつけて救助し食堂へ
戻ると、例の母親がメラニーに詰め寄り、
鳥たちの攻撃はあなたがここへ来てから
のことで、あなたが元凶だと詰る。
袋叩きにあいそうになったメラニーを
かばって、ミッチはこの場を逃れ、
彼女をキャシーがいるはずの
アニーの家に連れていく。
キャシーは室内で無事だが、
アニーは玄関先で死んでいる。
👉アニーのこの死もヒッチコック自身が
あえて改変したもの。
脚本の第一稿では彼女はミッチの家で鳥と
闘って重傷を負いながら生き延びることに
なっていましたが、そういう試練は
メラニーの方こそが受けるべきだとの
考えから、あえて変更したというのです。
こうしてアニーは愛する男の妹を守る
ために「自分の命を犠牲にする」ことに
されたわけですが、この人物について
ヒッチコックはこう説いています。
〔もはやなんの望みもなしに、
ただミッチのそばにいられる
というだけで、この鄙びた漁村の
小学校に赴任して来た〕いわば
すでに死を宣告された人間の
ようなものだと私は感じていた。
〔中略〕
それが彼女の最後の生の
身振りだったわけだ。
(上記『映画術』)
🐦【結】
ミッチは家の窓やドアに板を打ちつけ、メラニーとともに一家で立てこもる。
鳥たちの襲撃は引きも切らず、ドアや窓を
突き破ろうとするが、夜にはそれも収束。
一同が居間に集まって眠るうち、上階からの
物音に気づいたメラニーは、普段キャシーが
寝ている屋根裏部屋へ上がってみる。
と、そこには無数の鳥が屋根を壊して入り
込んでおり、その激しい攻撃にメラニーは
気絶するも、ミッチが駆けつけて救い出す。
額や頬にケガを負ったメラニーを見て、
ミッチは彼女を病院に連れて行く
ことを決意。
家の周りは鳥たちにびっしりと包囲されて
いたが、なんとか車を発進。
カーラジオは鳥の攻撃の拡大を報じ、
市民レベルではもはや対抗不可能なため、
州兵の出動を提案している。
一家とメラニー、そしてラブバードの
つがいを乗せた車は何千羽もの鳥に
包囲されるブレナー家を出て、
ゆるやかに進んでいく。
原作の鳥たちは「特攻隊」?
さあ、これで映画のストーリーはよくおわかりですよね。
そのストーリーに込められたテーマというか、
メッセージ的なものについても
「愛はあらゆる試練をのりこえて生き
のびる」云々のヒッチコック自身の
発言などから、それなりに受け止めて
もらえたのではないでしょうか。
ん? それはいいとしても、疑問が残る?
つまり鳥たちはなぜ突然人間を襲う
ようになったのか?
多くの鳥が死んで行く「自殺的」な集団
行動であるにもかかわらず、彼らがそれを
やめないのは、いったい何に突き動か
されてのことなのか?
この謎に答えることにヒッチコックの興味は
なく、それはそれでもちろんいいわけ
ですが、ただこれは、デュ・モーリアの
原作ではある程度に書き込まれてはいて、
そこがまたこの小説の怖さにもなって
いるんですね。
種類が違えば互いに距離を置くはずの
鳥たちが、今や「団結して」人間社会を
襲い、戦闘機の出動にもひるまない。
プロペラや機体に向かって
突っ込んでくる鳥たちを相手に、
飛行機に何ができるだろう?
墜落するしかないではないか?
主人公のナットはやがて「鳥たちは
上げ潮とともに襲撃してきたのだ」と
彼らの従っている「法則」を発見します。
だからといってそこに潜むれ”目的”や
“動機”が明確になるわけではないのですが、
ただ、ラストにはこのような文章には
それへの暗示(ほのめかし)を読むことも
可能でしょう。
いま本能に従い、機械のように
着々と人類を滅ぼしつつある
彼らの小さな脳のなか、
あの鋭く突いてくるくちばし、
射るような目の奥には、
何百万年分の記憶が蓄積されて
いるのだろうか?
一つの可能な解釈として、彼らを勝手に
支配してきた人類に対する”復讐”の
意味を持つ一斉蜂起…という理解も
不可能ではありませんよね。
さらに気になるのは、この小説の発表年
(1952)が、日本との戦争が終わって
まだたったの7年という時期であること。
ドアや窓に次々と激突してくる鳥たちは
「特攻隊の鳥たち」「特攻カモメ」などの
訳語も示すとおり、鳥たち自身が自らの命を
覚悟で敢行している行為としか見えません。
それを執拗に描いたデュ・モーリアの
念頭に、ほんの数年前まで連合国側の
人々を大いに薄気味悪がらせていた
日本軍の「特攻」があった可能性は
小さくないでしょう。
👉ただし「特攻隊の鳥たち」
「特攻カモメ」…の原語はたんに
“suicide birds””suicide gulls”で、
「特攻」云々は訳者が気を利かせたもの。
これを”名訳”と呼ぶべきか否か、ぜひ
デュ・モーリア研究家のご意見を
伺いたいところです。
まとめ
いかがでしたか?デュ・モーリアの小説、ヒッチコックの
映画ともどもに、なかなか一筋縄で
行かない、したたかな芸術品である
ことがわかっていただけたのでは
ないでしょうか。
どちらも”ホラー”の一級品と言えますが、
この例のように、小説を原作としたホラー
映画が『サイコ』や『鳥』の後、続々と
制作され、ヒット作を生んできたことは
ご承知のとおりです。
👉当ブログでもそういう名作の多くを
扱っていますので、ぜひこれらの記事を
ご参照ください。
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