サクラさん
村上春樹さんの『沈黙』
で感想文を書こうとして
るんですが、「沈黙」
というタイトルって
重要でしょうか?

ハンサム 教授
というと?

サクラさん
ラストにその意味の
説明になる文章が出て
来るんですけど、小説
全体はそういうことより
青木という悪役と主人公
との葛藤が中心ですね。

ハンサム 教授
ふむふむ。その問題が
作品の主題のようでも
あるし、その二人を囲む
みんなの「沈黙」こそが
主題だとも読める…。



まあ、どちらでも自分に
ピンと来る問題の方で
考えていったらいいん
じゃないかな。

サクラさん
じゃ、青木の方で行こ。

悪い奴だから徹底的に
批判してやります!

ハンサム 教授
でも「悪い」という
ことにたしかな根拠は
あるんですか?

青木にも言い分があるん
じゃないのかな。

小説はすべて主人公側の
視点で語られているから
見えてきませんけど。

サクラさん
なるほど。じゃ、その
視点で書いてみよう
かな()


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というわけで、”感想文の書き方”
シリーズ第80回は村上春樹さんの
短編小説『沈黙』(1991)。

高校現代文の教科書にも掲載されている
“学校小説”ともいえる作品(文庫本で
35ページほど)で、この短編集に
入っています。
👇



もちろん全文を読んでいることが前提
ですが、めんどっちくって読めないとか、
いちおう読んだけどポイントがわからない
とかいう読者のために、「あらすじ」を
用意してありますので、必要な方は
こちらをご覧ください。

村上春樹 沈黙のあらすじ:簡単/詳しくの2段階で解説

              


1200字の例文

はい、ストーリーがしっかり理解でき
ましたら、さっそく感想文に
取り組みましょう。

まずは高校の読書感想文として800字
(原稿用紙2枚)程度で書く場合を想定し、
まずサクラさんが試作して、これに
ハンサム教授が手を入れたものを
サンプルとしてお目にかけます。

では、どうぞ。

 この小説は、現在31歳の「僕」
(大沢さん)が、中学・高校時代に
ひどく苦しんだ経験を回想して語って
いく形の、一種の学校小説である。

「僕」の苦しみの原因になった”悪役”
的な人物が同級生の青木で、彼との
間に起こった事件とそれによる心理の
葛藤や変化が小説の主筋となっている
のだが、「沈黙」という題名は、この
青木のでも「僕」のでもなく、二人を
囲んでいた”その他大勢”の「沈黙」を
指して言われたものだ。

     


 ほぼ語り終えた「僕」は、長い話の
結論のような感想を述べる。

「吐き気」を催すような青木だが、
その能力は「それなりにたいした
ものだ」と認める。

むしろ「本当に怖いと思うのは、青木の
ような人間の言いぶんを無批判に受け
入れて、そのまま信じてしまう連中」
であり、「僕が真夜中に夢をみるのも
そういう連中の姿」なのだという。

夢の中には沈黙しかないんです。

そして夢の中に出てくる人々は
顔というものを持たないんです。

沈黙が冷たい水みたいに
なにもかもにどんどん
しみこんでいくんです。

そして沈黙の中でなにもかもが
どろどろに溶けていくんです。

そしてそんな中で僕が溶けて
いきながらどれだけ叫んでも、
誰も聞いてはくれないんです。

         

 タイトルの意味として、最後に
こういうことが言われるのは、
私には意外だった。

物語はそれまで「僕」と青木の関係を
主軸にしてきていたから、第三者
である”その他大勢”の問題に作品の
主題があることを暗示するかのような、
この部分に驚いたのだ。

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 このことに気づいてから読み直すと、
この小説で最も強く否定されているのは
この「沈黙」を続ける”その他大勢”の
方であって、青木は彼らよりはましな
存在であり、作者によってそれほど
憎まれているわけではないという
気がしてきた。

考えてみれば、物語の流れは青木の
性格や陰謀についての「僕」の推定に
基づいて進められている。

最初に一緒のクラスになった時の
「体から発散するエゴとプライドの
匂いが、もう本能的に我慢できません
でした」という反応も、後半の松本の
自殺事件の際に「僕」が彼を殴った
という噂を流したのが青木だという
断定も、また最後に電車の中で
出会った時の「冷笑」にしても、
節目節目に出て来る「僕」のこうした
判断は、いずれも主観的な推理に
すぎず、客観的な証拠は挙がって
いないのである。

       
 
 それら「僕」の判断を語る文章を
もし青木が読めば、「いや違うんだよ、
それはこうこうで…」と彼の側での
主観的事実を語りだすかもしれないのだ。

「ある種の人間には深みというものが
決定的に欠如しているのです」と作品の
キーワードの一つである「深み」の語を
用いて「僕」は青木を批判するが、
この見方も「僕」の主観にすぎない。

もし青木にも発言のチャンスが与え
られる設定になっていたなら、この
小説はもって「深み」を増したのでは
ないだろうか。     (1158字)

どうです?

なかなかうまいと
思いませんでした?


これをそのままコピペすることは
もちろん厳禁ですが、ところどころ
つまみ食いして、自分らしい文章に
変えて使ってもらうのはかまい
ませんよ~;^^💦

400字とか、もっと短い字数で書く
場合は、あらすじを書いているところ
とか、必要なさそうな部分を
切り捨ててスリム化してください。

逆にもっと字数がほしい場合は、
自分の経験や考えをどんどん入れて
膨らましていけばいいわけです。

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感想文へのいろんなアプローチ

さて、青木の”悪さ”について見直そう
とした上記の感想文は、一つの解釈に
すぎないわけで、もちろんこれに
とらわれる必要は全然ありません。

そのほかのアプローチ(接近方法)に
ついて、可能性をいくつか
考えておきましょう。

“悪漢”青木の魅力

青木が悪くないなんてありえない。

この男の”悪さ”は明々白々、やっぱり
疑いをいれないいところだ。

という立場から、そう言える理由を
一つ一つ挙げながら検討していっても
面白い感想文になりそうです。

   

その場合は、青木という人物の”悪漢”
としての完璧さ、極悪であるがゆえの魅力を
指摘していく――つまり『沈黙』を”悪漢小説”
(ピカレスク・ロマン)として読む――
ということにもなるかもしれません。

いやー、ますます面白いですね。

もし自分が青木なら…

あるいは、主題はやはり青木よりは
“その他大勢”の「沈黙」の方にある
はずだから、彼らの振舞いについて
よく注意しながら全体を読み直して
みるのもいいかもしれませんね。

松本の自殺事件のあと、流された噂の
せいで関与を疑われて警察に呼ばれた
「僕」をクラスメイトたちは、それ以降
完全にシカトするようになります。

彼らが何を考え、何を感じてシカトして
いるのかは、視点人物の「僕」に見えない
以上、小説には全然書かれないまま
進むわけですが、彼らの心理について
想像力を働かして推理してみるのも
面白いのではないでしょうか。

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その場合は、「もし自分なら、どう
したろうか…」と考えてみるのが
感想文の常道ですね。

後半をこういう形での「生活反省文」
にまとめていくことができれば、
読書感想文コンクールなどでの
入賞も見えてくるわけです。
👉「コンクール」での入賞などの
高い評価を狙おうと思う人は、こちらで
その考え方や秘訣を指南していますので、
ぜひご覧ください。

読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から

            


作者もつらかった

さて、感想文もいろいろに書けることを
示してきましたが、どれでやるとしても
本気で取り組めば、決して楽なことばかり
ではなく、なんらかの”つらさ”を伴う
ことは当然です。

そもそもが”つらい”内容の小説には
ちがいないのですから。


しかも作者の村上春樹さん自身が、その
“つらさ”が自分が実際に経験したことを
下敷きにしていると自ら語っても
いるんですよね。

自身のホームページの読者からのメールに
村上さんはこう答えたそうです。

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僕がこの作品を書いたのは、
僕自身、自分の気持ちをなだめ、
癒すためでした。

僕もこの時期に主人公と同じような
ずいぶんつらい思いをしました。
     
〔中略〕
(それについて言い訳したりするの
ではなく)沈黙を守ったまま
この短編小説を書きました。

そういう意味では、これはとても
個人的な、そして実効的な小説
だったのです。
(『「ひとつ、村上さんでやってみるか」
と世間の人々が村上春樹にとりあえず
ぶっつける490の質問に果たして村上
さんはちゃんと答えられるのか?』
朝日新聞社, 2006)


なにしろこれは作者自身の発言ですから、
たいへん貴重です。

感想文に採り入れることも
じゅうぶん可能でしょう。


それにからんで、村上さん自身が
「作家になったワケ」を述べたことばを
下記の動画で見ていただくと、これも
また参考になりそうです。



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それと、もう一つ。

ラノベやマンガ・アニメなどの世界で
いわれる「セカイ系」の親にあたる存在が
村上春樹だというユニークな説を展開して
いる哲学者、東浩紀さんのお話も
面白いですよ。 



👉ほかの村上春樹作品、『鏡』や
『恋するザムザ』についての
記事もご覧ください。

村上春樹 鏡のあらすじ:簡単と詳しくの2ヴァージョンで解説

村上春樹 鏡の感想文を簡単に(or漱石・オルフェに飛んで高度に)

            

村上春樹の名言💛恋するザムザとロシア映画『変身』から

👉そのほか村上春樹の本を早く安く手に
入れたい場合は、Amazonが便利です。
こちらから探してみてください。

村上春樹の本:ラインナップ
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まとめ

さあ、どうでしょう。

読書感想文・読書レポートを書こ
うという場合も、これだけ情報が
あればもう十分ですよね。     


ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…

だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?

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う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦

そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。

    

各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。


だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。

さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を
知るには、実際に出品され大臣賞などを
受賞している感想文をじっくり読んで
分析してみるのがいちばんです。

こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。

読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から

セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ

                 

アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ

    

そちらで解説している「書き方」を
踏まえて、当ブログでは多くの感想文例を
試作し提供してきましたが、このほど
それらの成果を書籍(新書)の形にまとめる
ことができましたので、ぜひこちらも
手に取ってご覧ください。
  👇


買う前にその「予告編」が見たい
という人は、こちらでどうぞで。

読書感想文 書き方の本はこれだ!サイ象流≪虎の巻≫ついに刊行!!!

            


👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。

気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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