村上春樹 鏡のあらすじと解説//”影”(もう一人の自分)への愛憎…
やあやあサイ象です。
「感想文の書き方」シリーズ第27回の
今回は「あらすじ」暴露サービスの
第4弾となります。
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とりあげる作品は村上春樹さんの初期短編、
高校現代文の教科書にも採用されている
『鏡』(1983。『カンガルー日和』所収)。
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さて「あらすじ」を知りたいといっても、
要するに話の要点を知りたいだけという
場合から、読書感想文を書くんだから
多少詳しくないと…という場合まで、
色々でしょうから、ここは大サービス!
「ごく簡単」と「やや詳しい」の
2ヴァージョンで提供したいと思うんです。
ごく簡単なあらすじ
まずは「ごく簡単」ヴァージョンから。
ある中学校で夜警の仕事をしていた
僕が、木刀を持って見回りしていた
ときのこと。
玄関の暗闇の中で何かの姿が
見えたように思い、懐中電灯の
光をかざすと「僕がいた」()。
昨日までなかったはずの鏡が
そこにあり、鏡の中のもう一人の
僕が僕をひどく憎んでいることが
わかった。
「やがて奴の手が動き出した」ので、
大声を出して木刀を鏡に投げつけて
逃げた。
鏡ははじめからなく、
僕が見たのは僕自身だった。
僕が、木刀を持って見回りしていた
ときのこと。
玄関の暗闇の中で何かの姿が
見えたように思い、懐中電灯の
光をかざすと「僕がいた」()。
昨日までなかったはずの鏡が
そこにあり、鏡の中のもう一人の
僕が僕をひどく憎んでいることが
わかった。
「やがて奴の手が動き出した」ので、
大声を出して木刀を鏡に投げつけて
逃げた。
鏡ははじめからなく、
僕が見たのは僕自身だった。
ん? これではなんだかよくわからん
から、小説全体の構成や語り口なども
解説つきで紹介しろ?
そうですよね。
それでは以下に「やや詳しい」ヴァー
ジョンの「あらすじ」を掲げましょう。
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やや詳しいあらすじ
文庫本でちょうど10ページの短い小説ですが、実は3部に分かれています。
上の「ごく簡単なあらすじ」で紹介した
主要部分を最初の「まえがき」的な
導入部分と最後の「あとがき」的な
部分とがはさむ…つまり箱に入れる
ような形になっているんですね。
そこで、こちらの「やや詳しいあらすじ」
では、その構成を尊重して、やはり
3部構成で参ります。
【まえがき部分】
「うん、さっきからずっとみんなの体験談を聞いているとさ…」という
書き出しで、この家の主人である「僕」が
これから話そうとすることの前置きが
述べられる。
こうした話は、幽霊を見る場合のような
「生の世界と死の世界がクロスする」経験を
語るものと、予知夢や虫の知らせなど
「三次元的な常識を超えた現象や能力」の
話とに二分されるが、僕にはどちらの
経験もない。
でも、一度だけ心底怖い経験をしたので、
それをこれから話す。
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【主要部分】
10年以上前、すなわち60年代末のことだが、学園紛争の波に呑みこまれた
僕は大学に進まず、高校卒業後は
何年間か肉体労働をしながら
放浪生活を送っていた。
放浪の2年目の秋、新潟県の小さな町に
ある中学校で夜警の仕事をしたが、
木刀を持って夜中の三時からの
見回りをしていた時に事は起こった。
「嫌な夜」で、プールの仕切りの戸が
不規則に開閉して「うん、うん、いや、
うん、いや、いや、いや……っていった
感じだったよ」((((((ノ゚🐽゚)ノ
廊下のまん中あたりにある玄関で、
暗闇の中で何かの姿が見えたような気が
したので、木刀を握りなおし懐中電灯の
光をかざすと、光を投げかけた先に
「僕」がいた。
昨日までなかった鏡がそこにあった。
煙草を3回くらい吹かしたあとで、
鏡の中の僕は外見はすっかり同じでも、
「僕がそうあるべきではない形での僕」
だと気づいた。
理解できたのは「相手が心の底から僕を
憎んでいる」ことで、やがてその手が
動き出し、「僕を支配しようと」するので、
大声を出して木刀を鏡に投げつけると、
鏡の割れる音がした。
部屋に駆け込んで布団をかぶったが、
「うん、うん、いや……」という
プールの戸の音は朝までつづいた。
【あとがき部分】
鏡ははじめからなく、僕が見たのは「僕自身」だった。
「君たちはもうこの家に鏡が一枚も
ないことに気づいているよね」
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鏡の中の「僕」は
さて、いかがでした?ん? なんだかやっぱりよくわからん?
鏡の中の「僕」は外見は同じでも「僕が
そうあるべきではない形での僕」で
「心の底から僕を憎んでいる」って…❓
このへんはなんとなくピンと来る人と
全然なんのことやら…
という人とに分かれそうですが、
これはまあ、文学の世界にはよく現れる
自己の”分身”(ドッペルゲンガー)と見る
ことができるでしょう。
西洋文学でこれを追求した人としては
エドガー・アラン・ポーとか
ドストエフスキーとかの名前を挙げる
ことが出来ます。
👉ドストエフスキーについては
こちらをご参照ください。
・ドストエフスキー 罪と罰のあらすじ 簡単版と【詳細版 前編】
日本では、明確な”分身”を登場させる
というわけではないながら、随所に
「鏡」を出してゾッとさせる作家として
夏目漱石を挙げることもできます。
👉村上春樹「鏡」の読書感想文を漱石の
そういう部分と絡めて書くこともできます。
その実例がこちら。
・村上春樹 鏡で感想文【800字の例文つき】自分に向き合う?
で、これらの作品に登場する”もう一人の
自己”とか、”分身”(ドッペルゲンガー)
とかの心理現象全般について、心理学者
C・G・ユングが与えた総称が”影”
というやつなんですね。
👉この意味での”影“への愛と憎しみ…
その表現を追求している小説として
ヴァン・デル・ポストの『影の獄にて』
があり、その映画化が大島渚監督の
『戦場のメリークリスマス』でした。
この両作品についてはこちらで詳しく
検討していますので、ぜひご覧ください。
・戦場のメリークリスマス⦅映画&原作⦆のあらすじと主題//”影”って何?
まとめ
さあ、どうでしょう。読書感想文やレポートを書こうと
いう人も、もうOKですよね、
これだけの情報があれば。
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村上春樹のほかの小説やその映画化作品を
見て比較検討してみる、というのも
面白いでしょう。
👉村上春樹作品やその映画化については、
こちらの記事もご覧ください。
・ドライブマイカーあらすじ⦅原作との違いを考察⦆ラストはなぜ韓国?
・村上春樹 沈黙のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説
・村上春樹「恋するザムザ」とロシア映画『変身』
👉そのほか村上春樹の本を早く安く手に
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こちらから探してみてください。
村上春樹の本:ラインナップ
え? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?
そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。
👉当ブログでは、日本と世界の多様な
文学や映画の作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。
参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
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