サクラさん
『夏の花』って、
どんな花のお話
なんですか?

ハンサム 教授
主人公が奥さんの墓に
そなえる、名もない
小さな黄色い花ですが、
それは、それが原爆の
原子雲という巨大な花に
重なってくるのかな。

 


サクラさん
あ~それは悲惨な世界
なんでしょうね(😿)

ハンサム 教授
悲惨にして醜悪。

とても正視できない
ような惨状がたんたんと
描かれていきます。

サクラさん
ええ~(叫び) 実はこれで
感想文を書かなきゃ
いけないんですけど、
それじゃあ読むのも
イヤだな~。

ハンサム 教授
いやいや、読みだせば
面白いんですよ。

描写の文章が本物の
“シュール”で、申し訳
ないぐらい楽しく
読めるんです;^^💦


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というわけで、おなじみ”感想文の書き方”
シリーズ第104回となる
今回、とり上げるのは、原民喜の名作
短編小説『夏の花』(1947)((((((ノ゚⊿゚)ノ



”原爆文学”としてあまりにも有名な作品
ですが、内容は被爆の経験をたんたんと
つづっていったもので、特に小説らしい
ストーリーがあるわけではありません。

でも、だからといって内容を知らないで
感想文が書けるわけもありませんので、
一応のストーリーは、こちらで押さえて
おいてもらえればと思います。

夏の花(原民喜)のあらすじ シュールに描かれた被爆の朝

          黄色い花 marigold-123301__180      

800字の例文

さて、ストーリーが頭に入ったら、
さっそく感想文に取り組みましょう。


まずは一つのお手本というか例として
800字(原稿用紙2枚)以内という想定で
サクラさんが試作し、ハンサム教授が
添削したものをお目にかけます。

大学生などの読書レポートとしても
通用するレベルになっていて、あるいは
高校生には少々高度かもしれませんが、
わからないということはないはずです
ので、ひとつ挑戦する気持ちで
読んでみてください。

 『夏の花』に描かれた原爆投下
直後の広島の情景は、ほとんど
壮絶なまでの醜さで、私は実際、
吐き気を催した。

それほど気分の悪くなる本なら
私はたいてい、途中で投げ出して
しまうのだが、なぜかこの小説は
最後まで読み通していた。

なぜ読めてしまったのかを考えて
みると、戦争の悲惨さを学ぶとか、
感想文を書くとかの学校から受ける
圧力のせいではなく、作品自体の力、
特にその文章の良さに引き込まれて
いたのだと思う。


 息子の死体から爪をはぎ取るなど
した兄の「涙も乾きはてた遭遇」に
立ち会った「私」は、さらに歩いて
「赤むけの膨れ上がった屍体」の
配置を見て「これは精密巧緻な
方法で実現された新地獄に違い」
ないと感じる。

  ゾンビ zombies-skeletons-s

 硬直した肢体は「一種の妖しい
リズムを含んで」おり、乱れ落ちた
電線や破片の重なりには「虚無の
中に痙攣的な図案が感じられる」。

さらに転覆した電車や「巨大な胴を
投げ出して転倒している馬」を見ては
「どうも超現実派の画の世界では
ないか」とも思う。

そしてこのへんの印象は「どうも
片仮名で描きなぐるのが応(ふさ)
わしい」としてこう書く。

アカクヤケタダレタ 
ニンゲンノ死体ノ
キミョウナリズム

スベテアッタコトカ  
アリエタコトナノカ

パット剥(は)ギトッテ
シマッタ
アトノセカイ

テンプクシタ電車ノワキノ
馬ノ胴ナンカノ 
フクラミカタハ
プスプストケムル電線ノニオイ

    041425

この膨らんだ「馬ノ胴」から、私は
まさに「超現実派」のサルバドール
・ダリの絵画を連想して美しくも
妖しいイメージをかきたてられたし、
この詩自体の「キミョウナリズム」を
とても快く感じてしまった。

これ以上ひどく醜い世界はない、
だから決して再現してはならない
というメッセージを伝えながら、
その文章は美しく、読者を楽しませて
しまうという意味で芸術的である。

偉大な芸術とはこういうものを
いうのではないかと感じさせ
られた次第だ。 (769字)


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どうです?

なかなかよく書けているでしょう。

いやいや、上出来だからって
これをそのまま丸コピ(全文まるごと
コピペ)するのはNGですよ。

それは剽窃(つまりパクリ)で立派な犯罪
ですから、使うなら部分的にアイディア
だけ盗んで、あくまで自分の文章で書く
ようにしてくださいね。

“超現実派の画の世界”って?

さて、上記のサクラさんの感想文は
なかなか高度なものでしたが、
どこが高度かといえば、その一つは
作品内の「超現実派の画の世界」という
語句に目をつけ、そこに自分の感想を
絡ませたところでしょう。

ではこの「超現実派」とは何か?

「超現実主義」といっても同じで、
現代では「シュルレアリスム」とか
「シュールリアリズム」とかカタカナ
表記されることの方が多い…
つまりよくいう「シュール」の語源に
なった言葉なんですね。
   
  explosion-284562_640

これについての説明をやりだすと長く
なりますので、ここではとりあえす、
この主義の親玉だったアンドレ・
ブルトンの「超現実」についての
説明を引用しておきます。

私はと現実という、
外見はいかにもあいいれない
二つの状態が、一種の絶対的現実、
いってよければ一種の
超現実のなかへと、いつか将来、
解消されてゆくことを信じている。

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(『シュルレアリスム宣言』
Manifeste du Surrealisme,
1924。巌谷國士訳)
   👇



この境地を目指して色んな分野に
挑戦したのがシュルレアリスムの
芸術家たち。

『夏の花』で「巨大な胴を投げ出して
転倒している馬」を見て原民喜が
「超現実派の画」を連想するのも
十分ありそうなことですが、それが
何だったかといえば、最も考えやすい
有名な作品がこちら。



はい、サルバドール・ダリの
『聖アントニウスの誘惑』ですね。
👉いわゆる「シュール」と
シュルレアリスムの違いについては
こちらをご参照ください。

シュールの意味と使い方:お笑いの世界から芸術的”超現実”へ

      


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どう書く? 感想文

さて、「超現実派の画」にスポットを
当てたサクラさん作は、もちろん
一つの例文にすぎません。

あなたはあなたりに問題を発見して
攻めていってくださいね。


「戦争は悲惨だ。あってはならない」
云々の趣旨でももちろん結構なんですが、
それではありきたりで、書く気がしない?

それならどこに突っ込んで行けばいいか。

     


一つの方法として(学校側には期待
されていない行き方かもしれませんが)
記述されていることの内容よりむしろ
文章そのものにこだわって、「感想」を
書いていってもいいんじゃないでしょうか。

つまりこの散文が美しいとしたら、
その「美しさ」はなぜ、どこから
生み出され、構成されているのか、
といったことの考察ですね。


たとえば、上記記事「あらすじ」の
【起】で、被爆直後の現実について、
作者は「夢のなかの出来事に似ていた」
と書いていましたね。

あたりがおぼろに見えて来ると、
「今度は惨劇の舞台の中に立って
いるような気持ちであった」とか、
映画で見たことがある、とか。  

    

このような目で観察され記述された
光景は、読む側にもまた、一種
「夢のなか」のような感じ、あるいは
なんとなく”ひとごと”というか、もう
一人の冷めた自分が上から見守っている
ような感じを引き起こす……

と思いますが、どうでしょう?


ともかくこれは、シロウトには決して
書けない文章であって、おそらく
原民喜という作家が長年にわたって
(それこそ「超現実派」も勉強しながら)
磨き上げてきた技法の一つの結実なのです。

この技法がさらに徹底されてほとんど
”神の領域”ともいいたい冴えを見せて
いるのが、文字通りの遺書として
書かれた絶筆、『心願の国』(1951。
上記「新潮文庫」所収)でしょう。

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絶筆『心願の国』へ

だから、僕には僕の上にさりげなく
覆いかぶさる夜空の星々や、
僕とはなれて地上に立っている樹木の姿が、
だんだん僕の位置と接近して、
やがて僕と入替ってしまいそうなのだ。

とか、

一ふきの風でへし折られてしまう
細い神経のなかには、かえって、
みごとな宇宙が潜んでいそうにおもえる

といった、なんだか自己がすでに
自己でなくなっているとでもいうか、
”幽体離脱”さえ思わせる
フワフワした文章が重ねられていきます。

そして結びは、亡妻と重ね合わされた
「雲雀(ひばり)」を描くこんな文章です。

雲雀は高く高く一直線に全速力で
無限に高く高く進んでゆく。

そして今はもう昇ってゆくのでも 
墜ちてゆくのでもない。
ただ生命の燃焼がパッと光を放ち、

遂に生物の限界を脱して、
雲雀は一つの流星となっているのだ。

(あれは僕ではない。
だが、僕の心願の姿にちがいない。
一つの生涯がみごとに燃焼し、
すべての刹那が美しく充実していたなら……。)

      飛鳥 images

心洗われる文章とはこのことでしょう。

しかもそれは、たんに亡妻をいとおしむ
センチメンタルな記述ではなく、
シュルレアリスムのみごとな結実と
なっています。

まとめ

さて、以上、主として原民喜の文章の
特異性について考える方向の感想文を
検討してきましたが、そのほかにも
色々と目の付けどころはあると思います。

ぜひしっかり読み込んで、自分ならではの
ポイントを見つけてもらえたらと思います。

👉当ブログではこのほかにも
「戦争文学」関連の記事を書いて
いますので、見てもらえると、
参考になるかもしれません。

黒い雨(井伏鱒二)のあらすじ:簡単/詳しくの2段階で

黒い雨(井伏鱒二)で読書感想文∥今村昌平映画も参考に

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さあ、これでもうOKですね、感想文
だろうが、読書レポートだろうが。


ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…

だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?

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う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦

そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。

    

各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。


だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。

さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を
知るには、実際に出品され大臣賞などを
受賞している感想文をじっくり読んで
分析してみるのがいちばんです。

こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。

読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から

セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ

                 

アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ

    

そちらで解説している「書き方」を
踏まえて、当ブログでは多くの感想文例を
試作し提供してきましたが、このほど
それらの成果を書籍(新書)の形にまとめる
ことができましたので、ぜひこちらも
手に取ってご覧ください。
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買う前にその「予告編」が見たい
という人は、こちらでどうぞで。

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👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。

気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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