江戸川乱歩 芋虫のあらすじ~~伏字だらけの問題作を簡単に&詳しく | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象

江戸川乱歩 芋虫のあらすじ~~伏字だらけの問題作を簡単に&詳しく

やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズも
はや第82回。
「あらすじ」暴露サービスとしては
第51弾となります。

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今回はあの江戸川乱歩の代表作の一つ
『芋虫』(1929)で参りましょう。


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さて、「芋虫」といっても
内容は昆虫のお話ではありません。

「芋虫」のようになってしまった
人間…🐛🐛🐛…ですね。

で、その原因となったのが「戦争」
ということで、戦争文学の名作と
見なされることもあるんですね。

  どくろFall-Of-Man-s

ともかくここでは「あらすじ」を
暴露しますが、一口に「あらすじ」を
知りたいといっても、ストーリーの
骨子だけでいいという場合から、読書
感想文を書くんだから分析・解説つきの
詳しいものがほしい、という場合まで、
千差万別でしょう。


そこで出血大サービス((((((ノ゚🐽゚)ノ

「ごく簡単なあらすじ」と
「やや詳しいあらすじ」の
2ヴァージョンを用意しましたよ~~(^^)у

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ごく簡単なあらすじ(要約)

まずは「ごく簡単なあらすじ」。

はじめにお断りしておきますが、
ここではネタバレを避けるという
姑息な配慮は一切せず、
ストーリーは惜しみなく全開しますので、
結末を知りたくない人は絶対に
読まないでください
(◎◎🐛🐛🐛)

「  」内は原文からの引用です。

戦争で両手両足、聴覚・味覚までも
失い、視覚と触覚のみを残して
帰還した須永中尉は、上官だった
鷲尾少将の家の離れで30歳の妻、
時子の介護を受けている。

意思伝達の手段としては、両眼と
体の各部を多少動かすことと、
「鉛筆の口書き」があるだけ。

が、性の営みは旺盛で、時子は
そこに嗜虐的な愉悦を見いだす
ようになっていた。




ある夜、夫が天井の一点を見据えて
いるのが「ひどく憎々しく思われ」、
両手を相手の眼にあてがい「病的な
興奮」のうちにつぶしてしまう(叫び)

医者の処置を受けてようやく静まった
夫に、時子は何度も泣いて謝りながら、
胸に指で「ユルシテ」と幾度も書く。

それでも夫が無表情なので、号泣して
母屋の鷲尾少将を呼びに行くが、
二人で戻ってみると誰もおらず、
枕もとの柱に鉛筆で「ユルス」と
書かれていた。

庭へ出て捜し、古井戸のところへ
行くと、「もがくように地面を掻き
ながら」前進する夫がちょうど
井戸に身を投げようとしていて……

「鈍い水音が聞こえてきた」(ドクロ)

え? なんだかよくわからん?

それはそうでしょうね。

妻そして夫がそれぞれなぜ
あのような行為に走ってしまうのか……
といった心理的に重要な部分が
見えにくいので、読書感想文を
書くような場合には、
ちと困ってしまいますよね。


そこでやはり「詳しいあらすじ」が
必要となるわけです;^^💦

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やや詳しいあらすじ

それでは参りましょう。

本文は行あけによって4つの部分に
分けられていますので、ここではこの
4部に「起・承・転・結」の見出しを
つけて、以下に記述していきます。

それでは、始まり始まり~


🐛【起】

須永中尉は戦争で両手両足、聴覚・
味覚まで失い、かろうじて視覚と
触覚のみを残して帰還した「人間だか
なんだかわからないような廃兵
(傷痍軍人)」。

    

上官だった鷲尾少将のはからいにより、
不便な田舎の鷲尾家の離れの
二階で暮らしている。

世話をする30歳の妻、時子との
コミュニケーション方法といっては、
目、頭、肩、尻を動かすことと鉛筆を
口にくわえてカタカナを書くことだけ。


鷲尾少将は、会うたびに時子の
介護ぶりをほめて「できないことだ。
わしは、まったく感心していますよ」
などと言う。

が、この褒め言葉も最初こそ「誇らしい
快感をもって、時子の心臓をくすぐった」
ものの、今ではむしろ責められて
いるようで恐ろしかった。

というのは、時子の心のうちに
いつか「身の毛もよだつ」ような
欲望がふくらみ、夫の身体を
「けだもの」か道具のように見なして
いるという自覚があったからだ。




そばを離れて3時間もすると
夫は機嫌を悪くするが、その
「和解の手段」はいつも、いきなり
かがみ込んで夫に迫まっていくこと。

その「物狂わしい」行為には、この
憐れな夫を「勝手気ままにいじめ
つけてやりたい」という「弱い者
いじめの嗜好」も含まれていた。

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🐛【承】

夫の負傷の知らせを聞いたとき、
時子は戦死でなかったことに安堵した
ものだが、病院でその姿を見たとき
には「ほんとうに悲しくなって、人目
もかまわず、声を上げて泣き出した」。

新聞には武勲を書き立てられ、
金鵄勲等も授与されたが、それから
3年以上経った今、時子に両親は
なかったし、彼女側も夫の側も親戚は
「皆薄情者」だった。

   
時子の思いつきで「鉛筆の口書き」での
会話を始めたとき、夫が最初に書いた
言葉は「クンショウ」と「シンブン」
(自分の記事の切り抜きのこと)の2つ。

それらに見入って自分の「名誉」に
浸るようであったが、やがて夫は
それにも飽きていった。

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やがて夫婦の営み以外に生きがいも
なくなったようで、完全に無力なくせに
その種の欲求だけ旺盛な塊がただその
「つぶらな両眼」で喜怒哀楽を表す……

その奇妙さが時子には不思議に
「限りなき魅力」となってゆく。

と同時に、相手の「意にさからって
責めさいなむこと」に「この上ない
愉悦」を感じるようにもなっていた。

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🐛【転】

夜中に夫が天井の一点を見据えて
いたりすると、「仔細らしく物思いに
耽っている様子が、ひどく憎々しく
思われ」「例の残虐性が彼女の
身内に湧き起こってくる」。

突然、飛びかかって肩をゆすぶると、
夫は叱責のまなざしで睨みつけるが、
時子は「怒ったの? なんだい、
その眼」とどなって「いつもの
遊戯を求めて」行く。

    
あるとき、夫がいつまでも天井を
見据えつづけるので「なんだい、
こんな眼」と叫んで両手を相手の
眼にあてがい「病的な興奮」と
ともに無意識の力を加える。

夫は踊り狂い、両眼から
まっ赤な血が吹き出す。

 

夫の「物言う両眼」が「けだものに
なりきる」ことが邪魔っけだったから
だろうか、それともいっそ「ほんとうの
生きた屍にしてしまいたかった」のか……

種々の考えを一秒のうちに意識
しながら、時子は医者の家へ走った。

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🐛【結】

医者が痛み止めの注射などの処置を
して帰ると、時子はようやく静まった
夫の胸をさすって、「すみません」と
何度も泣いて謝り、胸に指で
「ユルシテ」と幾度も幾度も書く。

それでも一向に身動きもせず、表情も
変えない夫に、時子はワッと子供の
ように号泣し「取り返しのつかぬ
罪業と、救われぬ悲愁」に打たれ、
「世の常の姿を備えた人間が見たく
て」鷲尾少将のいる母屋へ駆け込む。

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ところが、少将と二人で戻ってみると、
離れには誰もおらず、枕もとの柱に、
鉛筆で「ユルス」と書かれていた。


鷲尾家の召使いたちも出てきて
「古井戸」があったことを思いだし
時子と鷲尾少将がそこへ行くと、夫が
「胴体の四隅についた瘤みたいな
突起物で、もがくように地面を掻き
ながら」前進しているのを見つける。

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次の瞬間、からだ全体が消え、
「遙かの地の底から、トボンと、
鈍い水音が聞こえてきた」。

放心して立ち尽くす時子は闇夜に
一匹の芋虫が枝の先から
「まっくろな空間へ、底知れず
落ちていく光景を、ふと幻に
描いていた」。

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妻にも「いやらしい」といわれた問題作

どうでしょう。
楽しんでいただけましたか?

え? 気持ち悪いだけ(゚_゚i)?

まあ、そうかもしれません。
作者の乱歩自身も奥さんに見せたら
「いやらしい」と言われたそうですし、
作品を読んだ芸妓の何人もが「ごはんが
いただけない」とこぼしたとのこと。


でもこの作品、歴史的意義も芸術的価値も
決して小さくないと思いますよ。

現在でも伏せ字のままの文庫本がある
くらいで(購入時には要注意! 上記
「新潮文庫」ならOK)発表当時は伏せ字
だらけ、その後も全面削除などの
憂き目を見た作品です。


掲載誌自体も、反戦的傾向や勲章軽蔑の
表現が禁忌にふれることを恐れ、当初
予定されていた『改造』から『新青年』
に回されたといういわくつき。

発表されるや、左翼からは「この様な
戦争の悲惨を描いた作品をこれからも
ドンドン発表してほしい」との賞賛が
届きました。

  

ただ乱歩自身はこういう評価には興味が
なく、左翼から賞賛されたものが右翼に
嫌われるのは当然で、「夢を語る私の
性格は現実世界からどのような扱いを
受けても一向に痛痒を感じない」
とうそぶいていました。
(創元推理文庫での乱歩自身の解説)

ただ、作者本人がどのような意識で書いた
にせよ、この作品がすぐれた「戦争文学」
の一つとなっていることは争われません。
👉戦争文学・戦争映画にも様々あり、
多様な世界が広がっています。

そのいくつかについては下記で
詳しく情報提供していますので、
ぜひご参照ください。

愛を読む人(泣ける映画と原作) ハンナはなぜ怒った?他5つの”なぜ”

    


シンドラーのリスト 赤い服の女の子の意味は?詳しいあらすじ(原作照合)




黒い雨(井伏鱒二)のあらすじ:簡単/詳しくの2段階で

夏の花(原民喜)のあらすじと解説🌸感想文で抜け出すには?

      106714

火垂るの墓(野坂昭如)のあらすじ… 簡単/詳しくの2段階で


まとめ

さあ、どうでしょう。

これだけの情報があれば、感想文を
書こうという人も、もう書けない
ことはないんじゃないですか? 

「探偵型」と「犯罪者型」と両方面の
才能を併せ持ち、自在に使い分けた
偉大なエンターテイナー、乱歩。

書けるネタはいくらでもあるはず。

👉この作品での読書感想文の書き方、
またこの作品に関係の深い映画、
『キャタピラー』と『ジョニーは
戦場へ行った』をめぐっては、
こちらの記事をご覧ください。

江戸川乱歩 芋虫で感想文◎◎映画『キャタピラー』も鑑賞して

      


👉この大エンターテイナー乱歩の
世界をめぐっては、かなりの記事を
書きためています。

あなたのお気に入りを
こちらから見つけてください。

江戸川乱歩の本でおすすめ!初心者向きからR18+の淫靡世界まで13作

               


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👉また当ブログでは乱歩以外にも
多くの作家・作品をとりあげて、
「あらすじ」や「感想文の書き方」の
記事を量産しています。

こちらのリストをどうぞご覧ください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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