サクラさん
『愛を読むひと』には
号泣してしまいました。

ケイト・ウィンスレット
のアカデミー主演女優賞
は当然すぎるくらいだと
思いましたが、考えて
みると邦題の意味がよく
分かりません(😿)

ハンサム 教授
私もわかりません。

英語題はThe Reader

ドイツ語原作の
日本語版タイトルは
『朗読者』。


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サクラさん
ふ~む。日本語版には
どうしても”愛”を入れた
かったのかな。

ハンサム 教授
そうしないとお客が
入らないと思われている
のだとしたら、ちょっと
情けないよね;^^💦

サクラさん
一つのラヴ・ストーリー
には違いないんですが、
それより私には、
そこでなぜ怒るの?
なぜ事実を言わないの?
等々、なぜそうなるの?



という疑問がいくつか
残りました。

ハンサム 教授
ええ。解釈のむずかしい
部分も結構ありました
よね。

でも、それらも原作に
照らし合わせると、
だいたい答えは見えて
くるんです。

サクラさん
それは面白い!(叫び)

では”なぜ”という謎を
一つ一つ解きほぐして
いってもらえますか(😹)


というわけでおなじみ”あらすじ暴露”
サービスの第229弾(“感想文の書き方”
シリーズとしては第316回)となる今回は、
ケイト・ウィンスレットが見事に
オスカーをゲットしたアメリカ・ドイツ
合作映画『愛を読むひと』(The Reader,
スティーブン・ダルドリー監督、2008)
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第81回アカデミー賞では主演女優賞の
ほか作品賞を含む5部門にノミネート
された話題作にして問題作。

まずどんな世界かというあらましを、
映画予告編でご覧いただきましょう。👇 
   


というわけで、本日の内容は
ザッと以下のとおり。


簡単なあらすじ(ネタバレなし)

まずは、これから見ようかとお思いの
方のために、ごく簡単なあらすじを
ネタバレなしでお届けしておきます。

1958年、ドイツの高校生マイケル
(15歳)は下校中に急病を発し
嘔吐しているところを、通りすがり
の市電の車掌ハンナ(36歳)に
助けられる。

1週間後、お礼を言いに行った
ことが機縁で二人は深い仲に。

彼が高校で様々な本を読んで
いることを知ったハンナは、
性行為の前後などに本の朗読を
させては熱心に聴き入る。




やがてハンナは上司から事務職への
昇進が言い渡されるが、その日の
うちに姿を消してしまい、
マイケルとはそれっきりになる。

1966年、法学部生になっていた
マイケルは研究のため傍聴に行った
ナチス戦犯の裁判で、被告席に
ハンナの姿を見る(叫び)。

強制収容所の看守の一人であり、
また火災の際に収容所を開錠
しなかったせいで300人の
ユダヤ人を死なせてしまった
ことについて責任を問われて
いたのだ…

ん? その先どうなるの?

どうしても早く知りたいという人は
この先の「やや詳しいあらすじ」の
方に進んでいただくしかない
わけですね;^^💦

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やや詳しいあらすじ(ネタバレあり)

まず映画のあらすじをやや詳しく【起】
【承】【転】【結】の四部構成で述べて
行きます。

その途中、”なぜ”そうなるの❔
と思われそうなところとか、原作では
どうなっているの❓といった疑問の
湧きそうなところには、👉❶
のような印をつけていきます。

その下線部をクリックすれば、後半の
原作照合で見えてくる5つの”なぜ”」で
まとめてある違いの理由・背景の
解説➊~➎に飛んでいけるという
仕組みです。

その原作は冒頭で紹介しましたとおり、

ドイツの作家ベルンハルト・シュリンク
の小説『朗読者』Der Vorleser、英訳題は
映画と同じThe Reader
   👇 

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ともかく徹底検証の記事ですから、
ネタバレは承知でお読み願います。

📖【起】若き朗読者

1958年、西ドイツ、ノイシュタット。

15歳の高校生マイケル(Michael。
原作ではミヒャエル。ダフィット・
クロス)は、下校中の電車内で気分が
悪くなって下車し、ある集合住宅の
出入り口のところで嘔吐する。

ちょうど仕事から帰ってきたきた
住人のハンナ・シュミッツ(36歳。
ケイト・ウィンスレット)はその場で
彼の面倒を見てから、自宅近くまで送る。

猩紅熱(原作では「黄疸」)との診断で
しばらく学校を休んだマイケルは、
回復すると、母の助言もあってハンナの
アパートに花束を持ってお礼を言いに行く。

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ハンナに心惹かれたマイケルは1週間後に
彼女のアパートを訪ね、石炭運びを
手伝って顔が汚れたことから入浴しろと
言われ、そこから男女の関係になる。

その日から彼は毎日のように彼女の
アパートに通い、二人はベッドで
愛し合う。

が、学校をさぼって来ていることを
告げると彼女はいきなり「出ていき
なさい」と怒りだす。
👉この経緯、映画では詳しく描かれ
ませんが、原作でのハンナの怒りには
すさまじいものがあります。

「勉強しないんだったら、
もう来ないで。
勉強がバカみたいだって?
あんた切符を売ったり穴を
あけたりすることがどんな
ことかわかってるの」
 彼女は立ち上がり、裸のまま
台所で車掌をやって見せた。
〔中略〕
「バカだって?
バカってのがどういうことだか
わかってないのね?

彼女のいう「バカ」には「非識字者」
(原作日本語訳では「文盲」と明記)
という自分の現実、そしてそのせいで
車掌しかできない(車掌ができるという
こと自体も疑問に感じますが、当時の
ドイツではありえたのでしょう)
境遇への苛立ち、やるせなさが
込められているようです。

ハンナが非識字者であることを暗示する
伏線は、映画にもたくさん張られて
いますが、原作のほうが明確で
わかりやすくなっていることの
好例です。

マイケルは謝り、今後はまじめに
勉強すると約束して和解。

ベッドでの会話は、やがて彼の勉強の
ことに及び、ラテン語やギリシャ語の
暗唱を少しやると、ドイツ語も習うのか、
それなら少し読んでみてくれという。

持ってくるから自分で読めばと言っても
「あんたはいい声をしてる」から
読んでほしいのだと言い、その後は
性行為の前後に彼の朗読に彼女が
熱心に耳を傾けることが習慣になる。
👉マイケルが朗読する本として
映画には『ハックルベリー・フィンの
冒険』『犬を連れた奥さん』『タン
タンの冒険旅行』『チャタレイ夫人の
恋人』などが出てきますが、これらは
原作には出ません。

ドイツ外の有力国(米・ロ・仏・英)への
配慮かと思われますが、浴槽に二人で
つかりながら『チャタレイ夫人の恋人』
の性描写場面が読まれるとハンナが
「けがらわしい」などと怒りだすのは、
彼女の根の生真面目さが表現された
(その意味で伏線的でもある)笑える
場面です。


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ある早朝、マイケルは予告なしに
ハンナの勤務する市電の始発の2両目に
乗り込んで驚かそうとするが、無視され、
その日、帰宅後に会ってもまだ
👉❶ハンナは怒っている

やがてハンナは市鉄の上司から
事務職への昇進を言い渡される。
👉これが原作では「事務職」でなく、
「運転士」で、その「資格を取らせて
あげようと提案したんだが、彼女は
何もかも放り出してしまったんだ」
と、ハンナの失踪後にマイケルは
市電の管理課の人から聞かされます。

「事務職」の方が「識字」の必要性が
はっきりするという判断での改変
でしょうか。

だとすると世の運転士さんには失礼な
話かもしれませんが(ま、これを言い
だすと、そもそも車掌さんにも失礼な
設定になっているわけですが)…


その日のうちに、ハンナは荷物を
まとめてアパートを退去してどこかへ
行ってしまい、それきりマイケルは
彼女に会えなくなってしまう。

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📖【承】裁かれるハンナ

1966年、ハイデルベルク大学法学部に
進んでいたマイケルはゼミの教授らと
ナチス戦犯の裁判を傍聴に行き、
その被告席にハンナの姿を見つける。

アウシュヴィッツ強制収容所の元囚人の
著書には、ハンナはクラクフ近郊の
強制収容所の女性看守の一人として
裁かれていたのだ。

容疑は、いったん収容した囚人を「選別し」
順次アウシュヴィッツへの「死の行進」に
送りだしたこと、また連合軍の爆撃による
収容所の火災の際、開錠しなかった結果
300人の囚人が焼死したことについての、
未必の故意による殺人。

   
   現在のアウシュヴィッツ収容所


公判でハンナは、看守としての責任を
果たしていただけだと主張し、裁判長に
「あなたならどうしますか」「そもそも
就職したこと自体が悪いのか」などと
反論もする。

が、他の5人の元看守たちはハンナが
責任者格であり、夜にはお気に入りの
か弱い娘らを部屋に呼び、物語を朗読を
させていた、またアウシュヴィッツ送り
にはそういう弱者を優先的に選んでいた
などと証言し、ハンナの心証は悪くなる。


火災の報告書についても、6人の看守での
共同作成だというハンナに対して、他の
看守らはハンナが一人で書いたものだ
と証言し、裁判長は筆跡鑑定をしようと
ハンナにペンと紙を渡す。

ハンナはここで👉➋一転して
報告書は自分が書いたと認める

  
    

ハンナが文盲であることを初めて知って
愕然としたマイケルは、このことを
裁判で証言すべきかに悩み、ゼミの
教授に相談もするが、それは彼女の
望まないことだろうと考え、
思いとどまる。

無期懲役の刑が画定し、収監された
ハンナにマイケルは面会を申し込み、
刑務所まで行くが、雪のちらつく中、
その場で行列から離脱し、
👉➌面会しないまま帰ってしまう

📖【転】中年の朗読者

司法修習生になったマイケルは、大学で
同じゼミにいたガートルード(原作では
ゲルトルート)と結婚。

ガートルードは検事となり、一女を
もうけるも、法史学者の道を歩む
マイケル(レイフ・ファインズ)は
やがて彼女と離婚。
(ハンナ収監から8年後)

引っ越した住居で本の整理をするうち、
昔ハンナに読んで聞かせたホメロスの
『オデュッセイア』を見つけると、
思わず微笑んで読み始め、やがて
👉➍その朗読をテープに吹き込んで
刑務所のハンナに送る



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そのほかにもかつて彼女に読んで
聴かせた本を次々に朗読・録音して
送り続ける。

4年後にようやくハンナからつたない
文字の礼状が届くが、それは彼女が
刑務所の図書館から借りた本の文章と
テープ録音とを照合することで、
少しずつ独学で文字を学び覚えた
ことの成果だった。

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📖【結】ハンナの遺したもの

服役20年を経た1988年、ハンナに
仮出所が許され、刑務所長(女性)は
唯一の連絡先であるマイケルに電話し、
身元引受人を依頼する。

出所後の住居や仕事について手配した
マイケルは、出所1週間前になって
刑務所でハンナと面会する。

30年ぶりの再会に感動して皺だらけの
手を差し出すハンナだが、マイケルは
それに軽くふれるのみで、挨拶と
事情説明を終えると、翌週の出所時に
また来ると言って立ち上がり、
ハグもないまま立ち去ってしまう。

出所の日、マイケルが花束を持って
迎えに行くと、👉➎ハンナの
首吊り自殺(叫び)
を知らされる。

彼女の独房にはマイケルにあてた遺書が
あり、小さな紅茶の缶に入れてある
お金と銀行にある七千マルクを、あの
収容所の火事で母とともに生き延びた
ユダヤ人の娘さんに渡してほしい
とあった。

       


ハンナの遺志を果たすべく、マイケルは
アメリカで会議があった折に、今では
富裕なその娘さんを訪ね事情を話すが、
彼女はお金は拒否し、紅茶の缶だけ
もらうという。

お金は二人で相談の結果、識字推進
関係の団体に寄付することにする。

1995年、マイケルは久々に会った
娘をハンナの墓へ案内し、彼女と
自分との物語を始める。

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原作照合で見えてくる5つの”なぜ

さてここからは、上記「あらすじ」中の
ところどころ、➊~➎のに印をつけて
きました映画と原作とはこう違うという
5つの注目部分について、その違いの内容や
変えられたことの意味・理由について
多角的な考察を加えていきます。

➊ハンナはなぜ怒ったか

映画ではアパートでハンナが「市電の
車両でセックスする気だったの?」
などと激怒します。

同様のセリフは原作にもありますが、
実は出て来る状況が違うのですね。

まずマイケルが2両目に乗ったのは
「抱きしめあったり、キスすることも
可能だと思ったから」ですが、
アパートで会ってからハンナが言うには
マイケルこそ「わざわざ後ろに乗って」
無視したことに腹を立てているよう
なのですね。

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「君を侮辱する気なんてなかった」と
謝っても、「侮辱されてたまるもん
ですか、あんたなんかに」と怒りが
収まらず、いったんは追い出してしまう
のですが、マイケルが戻ってきて色々と
言葉を重ねると、やがて
「そう、ちょっと傷ついちゃったのよ」。

二人は和解し、愛し合ってから彼女が
「市電の中でまでわたしとやりたかった
のね、坊やったら!」とからかうのです。

いずれにしても、彼女が怒った理由には
非常に繊細な部分があって、理解しにくい
ことはたしかです。

これについてハンナを演じたケイト・
ウィンスレットはこういう解釈を
しています。

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非識字者の行動パターンについて
たくさんリサーチしたわ。
秘密を持つ人間はそれを押し隠す
ために鎧をまとうものだけど、
怒りもその防御の一つだというのね。
マイケルが勤務中の自分を見ていた
と知って怒るのも、防御の表れ
ということなの。

(引用元:Yahoo!知恵袋

➋なぜ報告書を書いたと認めたのか

この経緯は原作もほぼ同じですが、
原作のミヒャエルは、様々に思い
めぐらしてから、こういう結論に
至っています。

彼女がその子たちを選んで
朗読させたのは、どっちみち
アウシュヴィッツに送られて
しまう前に、最後の一か月だけ
楽をさせてやりたかったからだ。
〔中略〕
彼女には計算や策略はなかった。
自分が裁きを受けることには
同意していたが、ただそのうえ
文盲のことまで露頭するのは
望んでいなかったのだ

彼女は自分の利益を追求したの
ではなく、自分にとっての真実と
正義のために闘ったのだ。

     

法廷で「文盲の私に書けるはずがあり
ません」と言ってしまえば、彼女の
刑期は他の元看守と同じ4年程度に
なっていたはずで、「無期懲役」は
免れていたにちがいないのですが、
それでもそれは言いたくなかった。

ひょっとすると(これは原作にも
書かれていないことですが)、法廷で
ハンナはマイケルの存在に気づいて
いましたから、文盲であることを
ほかでもないマイケルに知られる
ことが絶対にいやだった、という
可能性もありなのかな?

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それにしても、そもそも彼女は耳から
入るドイツ語の理解力は十分で、頭は
悪くないはずなのに、なぜ読み書きが
できないまま成人したのか?

これについては西部邁さんが「ロマ族」
出身のせいで教育を受けられなかった
のではないかという解釈を
述べられています。

つまり法廷でハンナは出身地を「ヘルマン
シュタット」(Hermannstadt。字幕では
「ハーマンシュタット」と安直に英語読み
しており、残念!)と証言します。

が、これは現在ルーマニアのトランシル
ヴァニア地方(ドラキュラ城もある!)に
ある「シビウ」(Sibiu)のドイツ名で、
シビウには今も”FCヘルマンシュタット”
というサッカー・クラブの名前などに
生き残っているのでうすね。
Sibiu, Transilvania, Romania

そんなわけで、ハンナは「ロマ族」
(かつて「ジプシー」と呼ばれた
流浪の民)ではないかと。

ともかくその言い分をお聴きください。



どう思います?

問題は、ご本人もちらっとふれられて
いるように、ハンナが金髪で青い目を
していることで、これは原作にも
そう明記されています。

これに対して「ロマ族」は「ジプシー」
(Gypsy)の語源が「エジプト」(Egypt)
由来とされていることも示すように
中東またはインドあたりから流れて来た
人々で、金髪・碧眼の人はまずいない
はずなんですね。

なので「ロマ族」は無理だと思いますが、
いわゆる純粋のドイツ人ではない
少数民族出身のせいで教育を受けられ
なかったというのは、ありうること
かと思われます。
👉トランシルヴァニア地方の民族に
ついてはブラム・ストーカーの小説
『ドラキュラ』からも学びがあります。

こちらで詳しく情報提供していますので、
ぜひご覧ください。

ドラキュラのあらすじ【簡単&詳しく】原作小説と日本の意外なつながり

        


➌なぜ面会しなかったのか

映画で最も印象的なシーンの一つ
ですが、これは映画での付け加えで、
原作にこの経緯はありません。

原作ではその代わりに、疎遠になって
いた父(哲学の教授)と話したり、
最寄りの強制収容所であるシュトゥ
ルートホーフを見学したり、ハンナを
裁いた裁判長に面会したり…
というミヒャエルの彷徨が描かれます。

映画でこの場面が設けられたのは、
マイケルの苦悩や迷いよりむしろ、
面会室で待ちながら結局、待ちぼうけ
で帰らされてしまうハンナの失望を
描くところに主眼があったのではない
でしょうか。

   

この一連のシーンでのケイト・ウィン
スレットの表情には、面会者の名は
知らされていないけれどもマイケルに
ちがいないという確信と期待感、
そしてそれが水泡に帰した時の落胆が
見事に表現されています。
👉それにしても、マイケルの
ハンナへの愛が強くあり続けて
いたならば、面会を取りやめる
ことはなかったのではないか?

ハンナ受刑後も、彼女の手紙に
たまには返事を書いてやっても
よかったのではないか?

このあたりは、彼の人生において
ハンナが占めた位置がどのような
ものであったかという大局的な
問題につながります。

その問題はこちらで。
👉➎ハンナはなぜ自殺したか

➍なぜテープを刑務所に送るのか

映画ではぼかされていますが、
ミヒャエルが法史学の研究者である
ことは原作では重要。

作者シュリンクはもともと法律学の
大学教授で、余技に小説を書き始めた
人だそうで、『オデュッセイア』の
再読も法史学的な考察から思いついた
ことになっているのですね。

つまり歴史上、法律はより良いものへと
進化してきたようでいて、実は結局
「もとの振り出し地点」に戻るという
ことの繰り返しなのではないか、
と考えるところから『オデュッセイア』
に向かったのです。

そこに描かれている「運動」は「目的が
あると同時に無目的でもあり、成功
すると同時に無駄でもある」と。

そしてハンナに送ることにした
動機はこう語られています。

ぼくは自分の結婚のこと、
娘のこと、人生のことを考えた。
混乱し、思い出や夢が混入し、
苦しい悪循環をくり返す夢うつつの
ぼくの思考でもハンナが中心的役割を
演じていたので、ぼくはハンナの
ために読んだ。
ぼくは朗読をハンナのために
カセットに吹き込んだのだ。


映画でもガートルードとのベッドシーン
前後なども暗示されているとおり、
彼の人生はその後もハンナに支配されて
しまったということでしょうか。


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➎ハンナはなぜ自殺したか

映画の描き方からすると、最後になった
面会でのマイケルの態度があまりにも
素気なく、もっと温かいものを(ことに
よったら性愛の再開さえ)期待していた
かもしれないハンナを絶望させて
しまったという解釈もできそうです。

マイケルが愛してくれないのなら、
娑婆(しゃば)へ出ても何のよいことが
あるでしょうか。

でもマイケルからすれば、昔のように
愛するなんて問題外でしょう。

ケイト・ウィンスレットのように
美しければまだしも(老女に見せる
メイクをしていても、そこはやはり
美人女優!)…




原作のハンナは、所長の話ではここ数年
「めったに身体を洗わなくなり、肥満
して匂うように」なってもいたのです。

ミヒャエルは「ぼくは彼女を小さな
隙間に入れてやった」だけだと思う。

その隙間はぼくにとって重要だったし、
ぼくに何かを与え、ぼくもそのために
行動はしたが、隙間は隙間であって、
人生の中のちゃんとした場所では
なかった。


ハンナは最後の面会でミヒャエルに
こう語っていました。

わたしはずっと、どっちみち誰にも
理解してもらえないし、わたしが
何者で、どうしてこうなってしまった
かということも、誰も知らないんだ
という気がしていたの。
誰にも理解されないのなら、誰に
弁明を求められることもないのよ。
裁判所だって、わたしに弁明を
求める権利はない。
ただ、死者にはそれができるのよ
死者は理解してくれる。
その場に居合わす必要はないけれど、
もしそこにいたのだったら、
とりわけよく理解してくれる。
刑務所では死者たちがたくさん
わたしのところにいたのよ。

 

娑婆へ出れば、この「死者たち」の
ような理解者もなく、頼りにできるかも
しれない唯一の知己も、所詮は人生の
「隙間に入れて」くれただけ…
とわかってしまったのでしょう。
👉この、老女になってからの一連の
場面を含め、ケイト・ウィンスレットの
演技は文句のつけようのない完璧さ。

オスカー3つぐらいあげてもいいでしょう。

彼女の出演する映画としては、こちらも
素晴らしいので、ぜひご覧ください。

タイタニック(映画)4つの”なぜ”⦅ローズはフロイトを読む悪い娘?⦆

   


コンテイジョン(2011年映画) 陰の主役は豚とコウモリ?⦅ネタバレ⦆

       
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まとめ

さて、これでもう十分ご理解
いただけましたよね?

映画『愛を読むひと』の5つの”なぜ”。

やはり原作小説『朗読者』をきっちり
読みこむことで見えてくるものが多い
ということもまた、よくわかって
いただけたのではないでしょうか。

   


ともかくこれくらいの知識・情報が
あれば、もうバッチリでしょう。

誰かさんにちょいと知ったかぶりを
してやろうかという場合も、あるいは
読書感想文やレポートを書こうか
という場合も。

ともかくテーマは愛であるのと同時に
戦争、そしてその事後処理、責任追及
…という重い、重い問題です。

ほかの戦争映画と比較してみるという
のも、レポートなどを書くには
よい方法ですね。
👉『シンドラーのリスト』など、
第二次世界大戦を扱った映画や
『夜と霧』などの記録文学を
めぐっては、これらの記事で
詳しく情報提供しています。

ぜひご参照ください。

シンドラーのリスト 赤い服の女の子の意味は?詳しいあらすじ(原作照合)




戦場のメリークリスマスは意味不明?なぜキス?原作を見なきゃ謎な映画 

    
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夜と霧 あらすじと感想文/レポートの書き方【2000字の例文つき】

 

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ん? 書けそうなことは浮かんで
きたけど、具体的にどう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、ぜひこちらを
ご覧くださいね。
👉当ブログでは、日本と世界の
文学や映画の作品について
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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