夢十夜 全篇のあらすじと第三夜の感想文【1000字の例文つき】
で読書感想文を書こうと
思うんですが、10個もの
別々の夢の話がまとめて
あるので、どう書いて
いいか困ってます(😿)
いい感想文にはなら
ないでしょうから、
一つだけ選んで全体を
代表させるような形に
してはどうかな。
じゃ、第ナン夜にすれば
いいでしょうか
入った、というか心に
ド~ンと響いたのは?
こんなにゾッとする
ホラー・ストーリーは
初めてでした(
ゾッとしたのか、
自己分析してみると
いいんじゃないかな。
というわけで、おなじみ”感想文の書き方”
シリーズ第114回、”あらすじ暴露”
サービスとしては第69弾。
今回は夏目漱石が「こんな夢を見た」と
はじまる10個の夢語りを並べて見せた
異色作『夢十夜』(1908)に挑戦!
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まずはその10個の夢語りの⦅あらすじ⦆を
紹介・解説した上で、なかでも代表的な
傑作といえる「第三夜」を採り上げて
読書感想文の例文をお見せするという
出血大サービスです(
『夢十夜』全篇のあらすじ
10篇の夢語り。
女の遺言を男が守り、ついに
白い百合に出会う。
「百年待って」という
挑発を受けながら公案が解けず
苦しむ男。
「悟れ」という老師の
歩く男が、ついにその子を殺害
した記憶をよみがえらす。
盲目の息子を背負って
飴売りの爺さんが、まっすぐ進んで
河に入ったきり、出てこない。
子供に取り巻かれる
処刑される武士が、愛する女を
待ち続ける。
捕えられて夜明けには
もともと木に埋まっているのだ
と聞いた明治の男が、自分も
やってみる。
運慶の彫り出す仁王は
海へ飛び込むが、空中で
後悔し続ける( )。
船上の男が絶望して
鏡に映る女に注目するが、
外へ出るといない。
床屋に入った男が
妻が、泣く子を神社の拝殿の
欄干に括りつけてお百度参りする。
戦地の夫の無事を祈る
絶壁で、飛び込まないと豚に
舐められると言われた男が、
出て来る豚を叩き続ける。 美女に連れていかれた
それぞれの夢物語について学者からは
色々と深刻な解釈が提出されていますが、
そういうものは気にせず、上に並べた
あらすじの気に入ったものから読んで
みればよいと思います。
目のつけどころとしては、たとえば
こんなところがあるでしょう。
- 相手が「こうだ」と言えば、
すぐにその通りになってしまう
夢の世界の気持ち悪さ(第一夜、
第三夜、第四夜、第八夜など)。 - はた目にはたやすく傑作を
仕上げるが、まねのできない
名人芸の不思議さ(第六夜)。 - 鏡の気持ち悪さ(第八夜)。
- 焦燥、罪悪感、孤独、死の
恐怖などのリアルな表現(第二夜、
第三夜、第五、七、九、十夜)。
1000字の例文
それでは感想文です。まずは一つのお手本というか例として
1000字(原稿用紙2枚半)程度という想定で
サクラさんが試作し、ハンサム教授が
添削したものをお目にかけます。
大学生などの読書レポートとしても
通用するレベルになっていて、あるいは
高校生には少々高度かもしれませんが、
わからないということはないはずです
ので、ひとつ挑戦する気持ちで
読んでみてください。
“夢小説”は、自分が見た「夢」の話
だとはじめに断られているだけあって、
どれもつかみどころがないというか、
AともBとも考えられるというか、
いろいろに解釈できてしまう
ところが特徴だと思った。
そのような、いかにも夢らしい
曖昧さが極大になっている作品が
「第三夜」だと思えたので、これに
ついて論じることは『夢十夜』全体の
感想にもなると思っている。
素直に解釈すれば、この夢での
「自分」は「人殺し」だという
ことになる。
なぜなら、ラストで百年前に
「一人の盲人を殺したという
自覚が忽然として頭の中に起」り、
「おれは人殺しであったんだなと
始めて気が附いた途端に、背中の
子が急に石地蔵の様に重くなった」
とはっきり書かれているから、
というわけだ。
あくまで夢の中でのことなのだから、
仮にそうであっても罪に問われる
ことはないし、大きな問題ではない。
だが、私はこの「自分」がほんとうに
人を殺した記憶のある人のようには
どうも思えないので、そこに
こだわってみたい。
ではなぜ「おれは人殺しであった」
と納得してしまうのかといえば、
その直前に、背中に負ぶっている
盲目で大人びた不気味な小僧から
「御前がおれを殺したのは今から
ちょうど百年前だね」と宣告され、
その瞬間に、ああそうだったと
思い込まされてしまったから。
人を殺した記憶も、その瞬間に
捏造されたと考えるべきだと
思うのである。
なぜそう考えられるかといえば、
この小僧の言葉と「自分」の意識の
流れは、はじめからこのパターンを
なぞっているからだ。
つまり、小僧が「鷺が鳴くじゃないか」
と言えば鷺の鳴き声が聞こえ、
「石が立ってるはずだがな」と言えば
立っており、「ちょうどその杉の
根の所だ」と言えば杉の木が見えて
「うん、そうだ」と答えてしまう。
で、何が「そう」なのかといえば、
百年前の殺人現場がそこだという
ことで、そのことにも「自分」は
言われた直後に同意してしまうのだ。
万事がこの調子で、「自分」の
記憶は小僧の言葉によってどんどん
作られていっている。
この作品の主題は、作者にあった罪の
意識だとか原罪感とかであるよりは、
「意識」そのものが他者の言葉に
暗示を受けて推移していく、その
家庭で記憶さえ捏造されていく
ことの恐ろしさにあるのでは
ないだろうか。
同じことが「第一夜」など、ほかの
いくつかの作品にも指摘できると
思うのだ。 (991字)
どうです?
なかなかよく書けているでしょう。
いやいや、上出来だからって
これをそのまま丸コピ(全文まるごと
コピペ)するのはNGですよ。
それは剽窃(つまりパクリ)で立派な犯罪
ですから、使うなら部分的にアイディア
だけ盗んで、あくまで自分の文章で書く
ようにしてくださいね。
催眠術師の暗示のように
サクラさんの上記感想文はもちろん、一つの例にすぎません。
どれか一作で『夢十夜』を代表させようと
する場合も、特にそうではない場合も、
とにかくあなたがいちばん面白いと
思ったもの、いちばん心に残ったものに
ついて、感じたことを書いてみるしか
方法はないと思います。
ん? それはそれとして、サクラさんの
感想文は面白いので参考にしたいけど、
イマイチわかりにくい?
なるほど。
それでは多少の補足説明を試みて
参りましょう。
サクラさんも「第三夜」との類似性を
指摘していたのが「第一夜」ですが、
こちらのロマンティックな世界から見ると、
「第三夜」は完全な「悪夢」(nightmare。
「夢魔」とも訳す)ですよね。
夢を見ている間の人間は意識に「自由」が
きかず、催眠術をかけられたのと
似た状態になっています。
この点、「第一夜」も同じですが、こちらの
男は、女の遺した言葉があたかも催眠術師の
暗示であったかのように、まったく抵抗なく
忠実に行動していく、その流れが当人の
望むところに近かったと言えます。
(おそらく女を愛していたので)
それが「第三夜」の場合、言われるとおりに
していくという点では同一ながら、その
行動の内容は、自分の望みとはまったく逆。
いやでいやで、怖くて怖くて、逃げたくて
しようがないにもかかわらず、逆らえず
言われるがままになってしまう
という状態。
これすなわち典型的な「悪夢」ですね。
このような心理の動きについて、
自分の経験とも照らしながら書いて
みるのも面白いんじゃないですか。
またこの独特な『夢十夜』の心理描写は、
漱石以後のすぐれた作家たち──宮沢賢治、
安部公房、川上弘美など──によって発展
させられたものと見ることもできるので、
これらの作家の作品と比較対照すると
いうのも高度な方法となるでしょう。
👉このことに関しては下記の記事を
参照してくださいね。
・注文の多い料理店(宮沢賢治) 読書感想文の書き方◎猫の視点から
・安部公房 鞄をどう解釈 ? 主題は? 問題を見つけて感想文へ
・川上弘美 神様(+神様2011)で感想文?くまの解釈はコレで
👉『夢十夜』のほかの回──「第一夜」
「第二夜」「第六夜」──で書こうか
という場合は、こちらも参考に
してください。
・夏目漱石 夢十夜の第一夜をこう解釈💛美しい短篇で感想文を!
・夢十夜(漱石)を解説🌛 第二夜でついに現前しない「無」とは?
・夏目漱石 夢十夜 第六夜のあらすじと解説:運慶が生きている?
『こころ』につながるもの
というわけで、「第三夜」のかなめとなるポイントは…
「自分」が心に思うことがすべて背に
負ぶっている小僧に見透かされること、
そればかりか、世界全体がこの子に加勢
するかのように、すべて彼の予言する
とおりに変容していくこと。
だからこの子は「自分の過去、現在、未来を
悉く照ら」す「鏡」のようにも思えるわけ
ですが、漱石の代表作『こころ』(1914)を
読んだ人なら、この言い方から次の一節を
連想するかもしれませんね。
「下 先生の遺書」で「私」こと先生が
Kの死体を発見した直後。
もう取り返しが付かないという
黒い光が、私の未来を貫いて、
一瞬間に私の前に横(よこた)わる
全生涯を物凄く照らしました。
そうして私はがたがた
顫(ふる)え出したのです。
これを書いたときの漱石の背中にも
過去・現在・未来を照らす「鏡」の
ような子が張り付いていたのでは……
そう思わせるほどに、6年を隔てた
この二つの文章は質が似ていて、
互いに呼び交わすようです。
そこで、感想文のもう一つのヒント
としては、「第三夜」の主題を自分の
過去の行為についての罪責感(罪の意識)
と解釈し、これを『こころ』など漱石の
他の作品や情報につなげていく
ということがあります。
👉『こころ』についてはこちらを
ご参照ください。
・夏目漱石 こころのあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説
・こころ(漱石)のお嬢さんはなぜよく笑う?先生はそれが嫌いだった?
・こころの先生とKとはBL?腐女子による漱石新解釈で名言も見直すと…
👉『夢十夜』『こころ』にとどまらない
漱石の世界全般に興味が湧いてきたという
人は、ぜひこちらをご覧ください。
・夏目漱石のおすすめの本は?小・中学生からシニアまで人生経験の段階別
👉そのほかの漱石作品については
こちらでお探しいただければと思います。
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夏目漱石の本:ラインナップ
「第三夜」の詳しいあらすじ
さて、「第三夜」をよく読んでいないのでやっぱりわからないという人のために、
“より詳しい”あらすじを書いておきます。
「序破急」の3部構成、「 」内と
「”」印の囲みは原文(仮名遣いは変更)
の引用です。
👿 【序】
「自分」は6歳の「自分の子」を背負って歩いているが、その子の
「眼が潰(つぶ)れて」いるので、
「何時(いつ)潰れたのかい」と
聞くと、「なに昔からさ」と答える。
「田圃(たんぼ)へ掛かったね」
と言うので、なぜわかるのか聞くと、
「だって鷺が鳴くじゃないか」と答え、
すると鷺が二声(ふたこえ)ほど鳴く。
わが子ながら怖くなり、
どこかへ捨てようと考えると、
大きな森が見える。
そちらへ歩くと、
「石が立ってる筈だがな」と
子が言うので、見ると実際、
八寸角の石が闇の中に立っていて、
イモリの腹のような赤い字で
道案内が書かれている。
「左が好(い)いだろう」と言われる
ままに進みながら、盲目のくせに
何でも知ってるなと考えると、彼は言う。
「どうも盲目は不自由でいけないね」
「親にまで馬鹿にされるからいけない」
👿 【破】
いやになった「自分」が早く捨てようと急ぐと、「丁度こんな晩だったな」と言う。
「何が」と尋ねると「知ってるじゃないか」
と答え、実際、知っているようにも思える。
はっきり「分かっては大変だから」
早く捨てようと雨の中を夢中で歩く。
只背中に小さい小僧が
食附(くっつ)いていて、
その小僧が自分の過去、現在、
未来を悉(ことごと)く
照らして、寸分の事実も
洩らさない鏡のように
光っている。
しかもそれが自分の子である。
👿 【急】
「ここだ、ここだ、丁度その杉の根の所だ」と子が言い、「うん、そうだ」
と思わず答える。
「文化五年辰年だろう」
「御前がおれを殺したのは今から
丁度百年前だね」と言われ、実際、
その年のこんな闇の晩に一人の盲人を
殺したという自覚が「忽然として
頭の中に起こった」。
おれは人殺しであったんだなと
始めて気が附いた途端に、
背中の子が急に石地蔵の
様に重くなった。
映画『ユメ十夜』も面白い
ともかくこの作品、一つの「怪談」にちがいなく、読者を怖がらせる効果が
狙われていることは間違いないですね。
ですから、10人の監督が結集して作った
オムニバス映画『ユメ十夜』(2006)でも
「第三夜」を担当したのは『呪怨』などの
ホラー映画で評価の高い清水崇。
一度これを鑑賞して、どういう部分が
原作と違うのかをチェックすると、
感想文のネタも出てくるかもしれませんよ。
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で、この映画もなかなかコワイんですが、
いやー、これなら原作の方がもっと
コワイと言う人もいることでしょう。
だとしたら、原作はどこがコワイのか、
その分析があなたの腕のみせどころに
なってくるわけです。
さあ、これだけの情報があればもう
バッチリですよね、読書感想文。
ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…
だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?
う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦
そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。
各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。
だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。
さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を
知るには、実際に出品され大臣賞などを
受賞している感想文をじっくり読んで
分析してみるのがいちばんの早道。
こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。
・読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から
・セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ
・アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ
そちらで解説している「書き方」を踏まえて
当ブログでは多くの感想文例を試作し
提供してきましたが、このほどそれらの
成果を書籍(新書)の形にまとめることが
できましたので、ぜひこちらも
手に取ってご覧ください。
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買う前にその「予告編」が見たい
という人は、こちらでどうぞで。
・読書感想文 書き方の本はこれだ!サイ象流≪虎の巻≫ついに刊行!!!
👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事のほんの一部
でして、載せきれていない記事もまだまだ
沢山あります。
気になる作品がありましたら、こちらの
リストから探してみてください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
解説が分かりやすかった。
すき すき すき すき すき すき すき笙。
お役に立ててうれしいです。
こっちもすき すき すき…
いや、迷惑かな?