こころの先生とKとはBL?腐女子による漱石新解釈で名言も見直すと… | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象

こころの先生とKとはBL?腐女子による漱石新解釈で名言も見直すと…

サクラさん
夏目漱石の『こころ』
「下」では学生時代の
“先生”が親友のKを
同じ下宿に強引に入れ
こんだ結果、そこの
御嬢さんとの間に三角
関係が生じます。

ハンサム 教授
Kに親切にしてやって
くれと頼んでおいた結果
なのだけれど、その効果
が期待以上だったのか、
先生は「私のKに対する
嫉妬」を自覚し始め
ますね(下 27)。


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サクラさん
「Kに対する嫉妬」が
発生するのは先生が
Kを愛していたから❔

ハンサム 教授
いやいや、お嬢さんを
愛していたから
でしょう;^^💦

以前からお嬢さんには
「ほとんど信仰に近い
愛をもっていた」ほど
です(下 14)。

サクラさん
でも彼女に対してはその
笑い方などについて
「嫌いでした」とも
何度か言っています。

お嬢さんに心を動かされ
た時期があったとしても
やがてKへの、より深い
愛を知るのでは❓

友情images

Kからお嬢さんへの恋を
打ち明けられた時には
「魔法棒」で「化石に
された」ようでしたが
(下 36)、それはまさに
Kへの失恋のショック…

ハンサム 教授
う~ん、そんな解釈は
初めて聞いた;^^💦

サクラさん
私たち”腐女子”の間
では有力な説です。

ハンサム 教授
なるほど。ではその
証明になる部分を指摘
してもらえますか。

サクラさん
いいですとも。それを
やると「名言」とされて
いた言葉たちも新しい
ニュアンスを帯びて
きますよ(😹)


というわけで、感想文の書き方シリーズ
275回は自称”腐女子”のサクラさんに
夏目漱石の『こころ』からBL(ボーイズ
ラブ/男性同性愛)的に読める部分を
挙げて行ってもらい、それらの解釈に
ついて検討することから始めます。

つまり『こころ』の「悲劇」の核心に
あるのは、実は二人の男の一人の女への
愛ではなく、むしろ二人の男の間の愛
だった((((((ノ゚🐽゚)ノ
という驚天動地の新解釈にははたして
どれだけの妥当性があるのか…❓

そして引用していく文・セリフに
『こころ』の「名言」として記憶したい
ものが含まれている場合は、紫の太字
示し、【名言1】のように注記していきます。

濃い青の太字にしている部分は、それ自体
「名言」にはなっているわけではない
けれども重要と思われるので強調したい
部分です。

素材となるテクストはもちろん
夏目漱石の『こころ』(1914)。

高校現代文の教科書に載っている部分を
見ただけで、全文通読はまだ…
という人は、こちらでどうぞ。
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それでもまだ面倒だという人は;^^💦
せめてこちらで「あらすじ」を頭に
入れておいてください。

夏目漱石 こころのあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説
          
     
     『朝日新聞』連載第1回の冒頭部分  
              

それでは始めましょう。

ザっと以下のような分類で進めていきます。

💞 もくじ

  1. 先生のKへの愛
  2.    【名言1~3】

  3. 先生の女性嫌悪
  4.    【名言4~5】

  5. 先生の同性愛傾向
  6.    【名言6~7】

  7. Kの先生への愛
  8.    【名言8】
まとめ


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1.先生のKへの愛

そもそも先生はなぜKを自分のいる下宿へ
強引に引き入れようとしたのでしょうか。

奥さん(お嬢さんの母親)には「止せ」と
反対された(下 十八)にもかかわらず、です。
👉なぜ「止せ」と言うのかについて
「筋の通った理由はまるでなかった」と
先生は書いていますが、それはその時の
先生に見えなかっただけの話で、
Kの死という「悲劇」があってからは、
彼も理解したはず。

奥さんはそこに「悲劇」の芽を感じ取って
いた(というか、そういう伏線として
漱石が置いた)のです。


学問でかなわないばかりでなく、
「意志の力を養って強い人になる」
というKの向上心に釣りこむような
強い「力」を感じた先生は、彼に
こうもちかけます。

最後に私はKと一所に住んで、
一所に向上の路(みち)を辿って
行きたいと発議しました。

私は彼の剛情を折り曲げるために、
彼の前に跪(ひざ)まずく事を
敢(あえ)てしたのです。
           (下 二十二)

      


前半に出た「向上の路」というのが
後に二人が互いにぶつけ合うことになる
例の格言めいた言葉につながっている
ことは言うまでもないでしょう。

精神的に向上心のない者は馬鹿だ。
【名言1】
        (下 三十、四十一)

また逆に後半の「彼の前に跪(ひざ)まずく
云々は「上 先生と私」で先生が学生の
「私」に与える格言めいた言葉に
呼応するものと読めます。

かつてはその人の膝の前に跪ずいた
という記憶が、今度はその人の頭の
上に足を載せさせようとするのです。

【名言2】

     

私は未来の侮辱を受けないために、
今の尊敬を斥けたいと思うのです。

自由と独立と己(おの)れとに充ちた
現代に生れた我々は、その犠牲として
みんなこの淋しみを味わわなくては
ならないでしょう。
【名言3】
           (上 十四)

それはさておき、Kはもともと母の愛を
知らずに育ち、今も女性を軽蔑している
というか、興味のない男のようでしたが、
先生の懇願を受け入れて入居し、奥さんと
お嬢さんの女性らしい優しさに接します。

それは先生が頼んだ通りの行為だったと
いえますが、当人にイヤなことがそうそう
続けられるわけもないので、その親切には
自発的な好意も交じっていたと
見なくてはなりません。

実際、Kは先生より長身で「容貌」も
また「性質」も「Kの方が女に好かれる
ように見えました」から(下 二十九)、
お嬢さんのKへの親切はすべて自発的――
つまりはKへの恋愛的感情による――
のではないかという疑惑が先生を悩ます
ことになるのです。

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その一方で、Kがお嬢さんについて話す
のを聞くと「依然として女を軽蔑して」
おり、したがってお嬢さんのことも
「物の数とも思っていない」ように見え、
ホッとする先生。

ところが、そうはいっても…

今から回顧すると、私のKに対する
嫉妬
は、その時にもう充分萌(きざ)
していたのです。
          (下 二十七)

さて、これが問題の「嫉妬」です。

「御嬢さんを物の数とも思」わない、
つまりKに恋愛的な感情はないと見て安堵
したわけですが、手記を執筆する現在の
先生は、そのように感じること自体、
私のKに対する嫉妬」がすでに潜在
していた証拠だと言うのです。

つまり「悲劇」を生む三角関係がすでに
成立しており、先生はKについて、
お嬢さんをターゲットとする愛のライバル
として意識し始めている…

と見るのが『こころ』発表後、100年
以上にわたって、おそらく誰一人
疑うことのなかった構図でしょう。


ところが、そうではないというのが
“腐女子”と呼ばれる新人類の見方です。

つまり「私のKに対する嫉妬」とは実は
Kをターゲットとする愛においての
ライバル
(または邪魔者)として
お嬢さんを意識し始めたことによるもの…
というのです。

   

面白さ抜群の新解釈ですが、反論・反証も
ゾロゾロ出てきそうですから、本気で
主張するのはなかなか大仕事になる
かもしれません;^^💦


ともかく一般的な読みでは、上記の引用
(下 二十七)の時点では気づかれなかった
Kのお嬢さんへの恋心はやがて燃え上がって
しまい、なんとそれを先生に告白します。

この行為もまた二人の間にBL的な
絆があったからこそである❓

なるほど。そういう議論もできそうですが、
その場合も先生は結局それを裏切り、
Kを出し抜く形でお嬢さんとの結婚を
決めてしまうわけです。
👉この結婚は「宜(よ)ござんす、
差し上げましょう」という奥さんの一言
(下 四十九)で、あっけないほど簡単に
決まってしまいますが、その背景には
この母子のターゲットが初めから
財産持ちの先生の方にあって、
無一文のKは問題外だった…
という実情を想定するのが妥当でしょう。


そしてKの自殺という「悲劇」が彼らを
襲い、めでたく(❔)お嬢さんを妻にした
先生は、その後、おそらく十年以上もたって
から、一人で死ぬことに決めます。

先生の遺書には決意に至るまでの思いが
種々に語られていますが、”腐女子”的
視点から重要になるのは「Kの死因を
繰り返し繰り返し考えた」という部分。

事件直後は「失恋のため」としか思い
ませんでしたが、それでは「解決が
着かない」と考え始めたのです。

私は仕舞にKが私のようにたった一人で
淋しくって仕方がなくなった結果、
急に所決したのではなかろうかと
疑い出しました。


そうして又慄(ぞつ)としたのです。

私もKの歩いた路を、Kと同じように
辿っているのだという予覚が、折々
風のように私の胸を横過(よぎ)り
始めたからです。

           (下 五十三)

    

「死後の世界でKに会える」と思ったか
どうかは書いてありませんが、ともかく
自殺を決めたKの心理をはじめて理解
した気になり、「私もKの歩いた路を、
Kと同じように辿る
」ことで自分をKに
重ね合わせることにしてしまうのです。

これが愛でなくて何なのか❔…

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2.先生の女性嫌悪

でも、それなら残していかれる奥さん
(モトお嬢さん)はどうなるのか?

これがまた微妙な問題になってくる
わけですが、遺書の末尾で先生は、
「私は私の過去を善悪ともに他(ひと)
の参考に供する積(つも)り」だが、
「妻だけはたった一人の例外だと承知
して」ほしいと釘を刺しています。

妻が己れの過去に対してもつ記憶を、
なるべく純白に保存して置いて遣(や)り
たいのが私の唯一の希望なのです

(【名言4】)から、私が死んだ後でも、
妻が生きている以上は、あなた限りに
打明けられた私の秘密として、
凡(すべ)てを腹の中にしまって
置いて下さい。
            (下 五十六)

『こころ』全編を締めくくる最後の一文が
これですが、”腐女子”的視点で読めば、
ここにもやはり一種の”女性疎外”
──「結局、分かり合えるのは男同士だけ
なんだから…」というホモソーシャル
(または同性愛的)な絆が浮かび上がる
のではないでしょうか。

ともかく先生の主張を整理すると、

  1. 彼女が「己れの過去」に対して
    もつ記憶は「純白」である。
  2. その「純白」さを保存したい。
  3. 「私の過去」は他の参考に
    供するが、彼女にだけは
    告げてはならない。
ということになるでしょう。

      袴055018

先生の死後、彼女と学生の「私」とが結婚
ないしそれに近い関係になるという説も
一時、流行しましたが、もしそれが実現
すると、たいへん苦しい結婚生活に
なりますね。

「私」は先生の重大な「秘密」をズ~ッと
一人で抱えながら妻を「純白」に保た
なければならないのですから。
👉奥さんと「私」とのこの新説を唱えて
有名になったのが小森陽一という人で、
その議論はこちらの文庫本の「解説」に
入っています。


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それにしても「純白」とはどういう
状態のことなのでしょうか❔

Kが自殺したことは知っていても、
そこに至る経緯については頭が真っ白
(まったくの無知)なままである…
といったところかと推定されます。

では、なぜ先生はそれを純白に保存して
おいてやりたい
と思うのか?

その理由として最も考えやすいのは、
事実を知れば、Kの死に自分も責任が
あるとわかって苦しむだろう
から、
それがないようにしておきたい
ということでしょう。
    
それは一つの優しい”思いやり”のようにも
見えます。

が、見方を変えれば、それは”思いやり”
というよりむしろ”心を分かち合わない
こと”――つまり人を”疎外する”こと
だということにならないでしょうか。

そしてもしそれが、彼女が女だからという
趣旨の”思いやり”だったなら、それは
女性差別だとも言えますし、先生においては
Kや「私」との男だけの絆(ホモソ-シャル
〔同性社会的〕な関係)の方が強かったのだ
という議論も可能になってきます。

先生のこの女性排除または女性嫌悪の傾向は
、実はその「遺書」に自ら何度も書きつけて
いるものなのです。

つまり先生は御嬢さんを愛すると同時に
「嫌って」もいたのであって、そのことは
彼女が笑うたびに書きこまれています。


ある日、大学から帰宅した先生が、奥さんが
いないので「急用でも出来たのか」と
尋ねると、御嬢さんは「ただ笑っている」
のです。

私はこんな時に笑う女が
嫌(きらい)でした。


若い女に共通な点だと云えばそれ迄かも
知れませんが、御嬢さんも下らない事に
能(よ)く笑いたがる女でした。
            (下 二十七)

御嬢さんの「笑い」は先生の嫌悪の対象
としてこの後も何度も言及を受けます。

    

ある雨の日、彼女とKが二人で街を
歩いているところへ出くわしてしまう
のですが、帰宅後に先生がそのことに
ついて尋ねても…

すると御嬢さんは私の嫌な例の笑い方
するのです。

そうして何処へ行ったか中(あ)てて見ろ
と仕舞に言うのです。

その頃の私はまだ癇癪持でしたから、
そう不真面目に若い女から扱われると
腹が立ちました。
            (下 三十四)

お嬢さんの「笑い」に腹を立てる先生は
そういう態度が「知ってわざと遣(や)るのか
知らないで無邪気に遣る」ものなのか判別に
迷い、ともかくこういう「若い女に共通な
私の嫌なところ」はKが入ってきてから
「始めて眼に着き出した」と言います。

私はそれをKに対する嫉妬に帰して
可(い)いものか、又は私に対する
御嬢さんの技巧と見なして然るべき
ものか、一寸(ちょっと)分別に
迷いました。
〔中略〕
これは余事ですが、こういう嫉妬は
愛の半面じゃないでしょうか。

【名言5】

私は結婚してから、この感情が
だんだん薄らいで行くのを自覚
しました。

その代り愛情の方も決して元の
ように猛烈ではないのです。
          (下 三十四)

結婚後のことはさておき、愛情が「猛烈」
であったころも、それはKに対する嫉妬
よって掻き立てられた側面があり、そこに
御嬢さんの技巧がいくぶんか関与していた
ことも、現在の先生には明白のようです。
👉お嬢さんの「笑い」は「無邪気」な
ものなのか、それとも意識された
「技巧」なのか❔

この問題はこちらで追求しています
ので、ぜひご参照ください。

こころ(漱石)のお嬢さんはなぜよく笑う?先生はそれが嫌いだった?

    


ともかくこういう構造を不快に感じる先生の
心情が頻出する「嫌い」という言葉に
込められていたわけで、これらマイナスの
感情と「猛烈」な愛情というプラスの
感情とは危ういバランスを取るような
状態にあった…

というあたりが実情だったのだとすると、
何かの拍子でもしこのバランスがマイナスの
方に傾いていたならば、あの「悲劇」も
避けられたのに…
という想定も可能になってきます。


それがなぜ「愛⇒求婚」の方へと一気に
傾いてしまったのか❓

    

その引き金になったのは、すでにふれた
通り、Kから直接に恋心を打ち明けられて
焦ったことですが、Kの恋のこの急激な
膨張は、お嬢さん側からの積極的な働きかけ
(上記の「笑い」もその一環)なしには
およそ発生不可能なことでした。

お嬢さん自身にその意図があったか否かは
不明ながら、そういった働きかけの最後の
一押しとして機能したのが、正月に一家で
遊んだ百人一首で、不調法なKに対して
「お嬢さんが眼に立つようにKの加勢を
し出し」たこと(下 三十五)。

これもまた、もしこれがなければ「悲劇」は
起こらなかったかも…
と想定させる経緯の一つですが、お嬢さんの
側にはそんな意識はみじんもないようです。

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例の「笑い」について先生は「知ってわざと
遣るのか、知らないで無邪気に遣るのか」
判別に迷っていたわけですが、結婚後に
振り返って「悲劇」との関係を意識するか
どうかというところでは「無邪気」としか
見えないのです。
👉お嬢さんは「無邪気」どころでなく、
強引にKの手を胸に当てさせ、自ら彼の
布団にもぐりこむ(隣室には先生がいる
のに!)ところまで行っていたという、
大胆きわまりない改変をほどこしたのが
『青い文学シリーズ こころ』(小畑健原案)。
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それにしてもこの作品でのKが長身
(というかほとんど巨大)なのはいい
としても、「容貌」で「女に好かれる
よう」には私には見えないのですが、
女性読者のみなさんはまた違う見方を
されるのでしょうか❓


お嬢さんに接近されたK(出典:twitter;ゆの



3.先生の同性愛的傾向

要するに『こころ』の「悲劇」は、例えば
《Aさんのちょっとした行為にBさんが
どんな意味を読んで行動し、その行動に
Cさんがどう反応するか》といった
成り行きにおいてのちょっとした行き違い、
意志の不疎通(ミスコミュニケーション)の
積み重ねの結果が生んだものと読めます。

それにしても、この軽微な行き違いが
なぜとんでもない「悲劇」にまで膨張・
暴発してしまうのか❓


その説明として、先生自身をはじめ、K、
お嬢さんともその境遇と持ち前の性格が
前もって細かく描かれているわけですが、
やはり時代背景に通じていない私たち
現代人には不分明な部分が残ります。

その不明部分の一つとして、ズバリ
先生のBL(同性愛)傾向を持ち込むのが
“腐女子”的な読みだということに
なるでしょう。

    


ともかく三角関係など微妙な人間関係に
あって生じがちな「こころ」のはずみ
というか…ちょっとした動きがその人の、
また関係者のその後の人生を決定づけ
てしまう…

この恐ろしさを意識する時、「上 先生と
私」で先生が若い「私」に三度も繰り返す
あの格言めいた言葉も、はじめて生きて
くるのです。

然し君、恋は罪悪ですよ。【名言6】
解っていますか。
              (上 十二)

「何故ですか」と問う「私」に先生は、
「もう解っている筈です。あなたの心は
とっくの昔から既に恋で動いている」
と指摘し、「それは恋とは違います」
と抗弁すると、以下のような言葉を
並べます。

恋に上る階段なんです。

異性と抱き合う順序として、まず同性の
私のところへ動いて来たのです。

〔中略〕
然し気を付けないと不可(いけ)ない。
恋は罪悪なんだから。

私のところでは満足が得られない代りに
危険もないが、――君、黒い長い髪で
縛られた時の心持を知っていますか。
〔中略〕
とにかく恋は罪悪ですよ。
そうして神聖なものですよ。
【名言7】
            (上 十三)

「抱き合う」ことはないという前提に
おいて、「私のところ」では「満足」も
「危険」もないが、「(女の)黒い長い
髪で縛られ」たらオシマイだよ、君……

この言い方には女性嫌悪と、それと
表裏一体のホモソーシャルな感情への
肩入れがほのめかされていそうです。

     
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      『こころ』とは直接関係ないBLマンガですが;^^💦
 

👉「恋は罪悪で、かつ神聖だ」という
この【名言7】─は、もちろんBLや同性愛と
無関係なものとして解釈することも
可能──というかそちらが主流──です。

「罪悪」と「神聖」は矛盾するようにも
思えますが、漱石文学の名言の多くは、
これに近い矛盾を含んでいるようです。

詳しくはこちらで。

恋は罪悪で神聖?宇宙的の活力?男女は一つになるか…【漱石の恋愛名言12】

    ƒvƒŠƒ“ƒg

さて、それでも、もし「抱き合う」ところ
まで行ってしまったら❓
という想定に”腐女子”なら当然
進んでいくでしょう。

その手がかりとなりうるのが、「上」の
冒頭、鎌倉の海水浴の情景なのかも
しれません。

そこで「私」がはじめて目にした先生は
「丁度着物を脱いで」海へ入ろうとする
ところで、その連れらしい西洋人の「猿股
一つの外(ほか)何物も肌に着けていな」い
裸体に、「私」は視線を奪われます。

女は殊更(ことさら)肉を隠し勝ち
であった。

大抵は護謨(ごむ)製の頭巾を被って、
海老茶や紺や藍の色を波間に
浮かしていた。

そういう有様を目撃したばかりの私の
眼には、猿股一つで済まして立ってい
る西洋人が如何にも珍しく見えた。

            (上 二)

    

こうした記述に「私」の同性愛的傾向を
読むべきか否かは微妙なところですが、
男性の裸体に無関心な人ではなかった
ということの証明としては十分でしょう。

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4.Kの先生への愛

ところで、Kが自殺してしまった理由を
十何年も考え続けた先生は、結局「Kが
私のようにたった一人で淋しくって仕方が
なくなった結果、急に所決したのでは」
というところに落ち着いたようです。

つまりお嬢さんを先生に取られたことに
よる辛さや生きがいの喪失などという
ことではないと思えてきたのですね。

本文にはそれ以上のことは書かれて
いませんが、この時点で出てくる最も
大胆な”腐女子”的仮説が、Kの死は実は
(お嬢さんにでなく)先生に捨てられた
ことの絶望によるものだ
というもの。

  

もしこれを証明できたら、驚天動地の
新説ということになろうかと思いますが、
少し捻じ曲げればそう取れなくもない
Kの言葉を最後に挙げておきましょう。

先生とお嬢さんとの婚約をKが知るのは
結局、やや遅れて奥さんの口から、
という結果になりました。

その際の会話について奥さんが先生に話す
のですが、それによると、その報告を
「最も落付いた驚(おどろき)」で聞いた
Kはまず祝辞を述べ、挙式の日を尋ねます。

それから『何か御祝を上げたいが、私は
金がないから上げる事が出来ません

(【名言8】)と云ったそうです。

奥さんの前に坐っていた私は、その話を
聞いて胸が塞(ふさが)るような苦しさを
覚えました。
            (下 四十七)

ここは読者もまた「胸が塞るような苦しさを
覚え」る場面で、その「苦しさ」は、
失恋の辛さに耐えるKとそれを察する
先生の自責への共感によるものと
考えるのが一般的でした。

それが実はそうでなく、Kの苦悩は先生を
お嬢さんに取られた
ところにあり、先生の
「胸が塞る」のもそれについて自覚が
あるからだ…というのです。

さてみなさん、どうお思いでしょうか❔

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まとめ

いかがでした?

“腐女子”的着眼による『こころ』の新解釈と
その落とし子としての名言の数々。

もちろんそれはBL好きな”腐女子”の
視線からするもので、それなりの偏りが
あるのは当然です。

『こころ』に出てくる名言なら、挙げる
べきものがまだまだ残っていることは
もちろんです。
👉関心おありの方は上記の「こころ
(漱石)のお嬢さんはなぜよく笑う?
先生はそれが嫌いだった?」のほか、
これらの記事もご参照ください。

漱石の名言でたどる恋愛💛『吾輩』猫が読み直す『こころ』etc.

シェイクスピアのオセロを講義:漱石の名言「白砂糖の悪人」?

漱石「月が綺麗ですね」の出典は?I love youはこう訳せ 
 
      046281    

👉そのほかの漱石作品や漱石論・
漱石伝については、まずこちらで
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そしてもちろん、”腐女子”的視点による
読み直しが可能な作家は漱石ばかりでは
ありません。

自身バイセクシュアルだった三島由紀夫や
その三島が尊敬していた谷崎潤一郎、
さらには江戸川乱歩など何人も挙げる
ことができるでしょう。
👉三島や谷崎のBL系作品に関連しては、
こちらの記事もご参照ください。

三島由紀夫 仮面の告白のあらすじ LGBT文学の先駆作を解説

谷崎潤一郎 少年のあらすじと感想 その妖しいSM/BL的世界

江戸川乱歩 孤島の鬼はBLの世界)))ネタバレありで結末まで

       


さあ、いかがです?

“腐女子”的視点から読書感想文や
レポートを書いてやろうという場合も、
これだけの情報があればまず十分
でしょう。


ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…

だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?


う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦

そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。

 

各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。


だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。

さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を
知るには、実際に出品され大臣賞などを
受賞している感想文をじっくり読んで
分析してみるのがいちばんの早道。

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ぜひご覧ください。

読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から

セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ

    

アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ

 

そちらで解説している「書き方」を踏まえて
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当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。

気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/


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