サクラさん
『クリーピー 偽りの
隣人』の香川照之さんの
怪人ぶりには圧倒され
ました(叫び)

でも後半は徐々に”“な
展開が多くなってラスト
もアレ?…って感じ。


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ハンサム 教授
そのへんは芸術派として
独自の世界を築いている
黒沢清監督の作品として
見ないと面白くない
かもね;^^💦

サクラさん
こちらは謎がキレイに
解明されていく推理
ドラマとして見ていた
ので、やはり不満が
残りました(😿)

ハンサム 教授
それもわかります。

ただ原作はなにしろ400
ページ近い長編で、
もっとずっと奥の深い
サイコ・ミステリー。



2時間の映画にまとめ
ようとすれば、”奥”の
方は切り捨てるしかなく
その結果、後半は全く
別物になりましたね。

サクラさん
そうなんだ~。

それにしても、「なぜ
そうなるのか?」の
説明がもう少し
あっても…

ハンサム 教授
たとえば冒頭の警視庁
での事件は原作にない
ものですが、あれはナシ
にして、その時間を原作
の”奥”に入っていく展開
に費やすという方法も
あったでしょうね。

でも、それじゃ黒沢
ワールドにならない
ということかな。

サクラさん
はは~(🙀) そう聞くと、
原作のその”奥”とやらを
ますます知りたくなり
ますね。

ハンサム 教授
それは自分で読め!…と
言うところだけど、君の
ことだから特別に…

オッといかんいかん💦
教授と女子大生のそう
いうアブナイ関係も
原作のサイドストーリー
になってるんです;++💦


というわけで、おなじみ”あらすじ暴露”
サービスの第209弾(“感想文の書き方”
シリーズ総計では第295回)は映画
『クリーピー 偽りの隣人』(黒沢清監督,
2016)とその原作『クリーピー』(前川裕,
2011)((((((ノ゚🐽゚)ノ
  👇 

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さてこの映画、「なぜ?」がきっちり
解明されて安心しないと気がすまない
タイプのファンからすれば、展開が
飛びすぎ、不自然すぎで、それこそ
「突っ込みどころ満載」。

TSUTAYAのユーザーレビューでも不評の
方が圧倒的のようですが、香川さんの
怪演と竹内結子さんの美貌、そして
『CURE』『回路』『スパイの妻』などで
国際的評価の高い黒沢清監督独特の
ホラー的展開はやはりさすが。

見て損のない作品には違いありません。

ここでは映画のあらすじを紹介した上で、
それらの「突っ込みどころ」──”“が
残る部分──について、原作小説との違いに
着目しながら、可能な限りの解答・解明を
試みて参ります。

日本ミステリー文学大賞新人賞を
受賞した原作小説はこちら。
   👇

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というわけで、本日の内容は
ザッと以下のとおり。


映画のあらすじ(完全ネタバレ)

さて、未見の方、また内容をザッと
おさらいしたいという読者さんのために
まずは映画予告編を用意しました。    👇



もちろん、これだけでは内容はわかり
ませんから、これからぐっと切り詰めた
簡単なあらすじを書いていきますが、
当然のことながら完全ネタバレになり
ますので、結末を知りたくない人は
最後までは読まないようにしてください;^^💦

この「あらすじ」では、映画の通りに筋を
追っていきますが、「ん? なんで?」と
突っ込みを入れたくなるような部分に
👉❶のような印をつけていきます。

その下線部をクリックすれば、後半の
「6つの突っ込みどころ(小説が映画と違う
部分
)」でまとめている、原作との違いや
その理由・背景の解説➊~➏に飛んで
いけるという仕組みです。

👿 主な登場人物

ストーリーに入っていく前に、主な
登場人物の紹介をしておきましょう。


(引用元:MY J:COM)

この6人が軸になって話が進んで
いきますが、ただしそれはあくまで
映画での話。

すでにふれていますとおり、原作には
もっと”奥”があり、サイドストーリー
(もちろん後半でメインストーリーと
つながる)もあります。

主人公の高倉と付き合う女子大生や
“奥”の方に出てくる女性ピアニストなど
重要な登場人物はほかにも何人か
いるのです。


「あらすじ」に入る前に、もう一つ、
「クリーピー」というタイトル・ワードの
意味について注釈しておきましょう。

原作本の扉には

creepy (恐怖のために)ぞっと
身の毛がよだつような;気味の悪い

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という辞書からの引用が置かれています。

付け加えますと、語源になっている
“creep”はミミズなんかが「這う」という
意味の動詞なので、その種の動物への
連想を呼ぶことにも…🐛🐛🐛👿;++💦💦

2020年の米国大統領選でトランプ氏が
バイデン氏に投げつけた悪罵の一つに
“Creepy Joe”(キモいジョー)という
のもありました。

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👿【起】

犯罪心理学の知識をもつ警視庁の
高倉刑事は、8人殺しの凶悪犯・松岡を
サイコパス(反社会性人格障害)と見て
粘り強く事情聴取中。

部下の野上刑事に呼ばれ取調室を出た
隙に、松岡が監視の警官をフォークで
殺して脱走し、階段の踊り場で女性を
人質に取りフォークを首に突きつける。

銃を向けた野上を制止した高倉が
説得を試み、松岡の要求通りに背を
向けるや、いきなりフォークで
刺される(叫び)。

女性も首を切られ、松岡は射殺。

   


この事件から👉❶1年後、警察を
退職した高倉は大学教授となり

犯罪心理学を講じている。


郊外の一戸建て家屋に引っ越してきた
高倉夫妻(子はない)と大型犬マックス。

妻の康子は料理上手で、引っ越しの
挨拶用に手作りのチョコレートを
隣家の西野に届ける。

西野は妻と娘がいると言いながら
いつも自分だけ出てくる不愛想で
異様な感じの中年男。

       


それが一転して愛想のよい能弁な男に
なったりする。


高倉は大学で助手の大川が分類している
犯罪事件のうち、未解決の「日野市一家
失踪事件」に興味をもち、大川と二人、
事件があった家を見に行く。

6年前に両親と長男の3人が行方不明に
なった事件で、唯一残された長女・
本多早紀(当時中3)は証言がころころ
変わるので、証言能力なしとされていた。

👿【承】

数日後、👉❷康子は「残ったので」
と相当量のシチューを西野にすそ分け
しに行き
、その際、屋内へ入るよう
勧められるが、薄気味悪く感じて辞去。

西野は高倉のことを「すばらしい方ですね。
モテるでしょう」などと褒め、また妻は
うつ病で自分はその扱いに悩んできて、
もう精根尽きたなどと言って、康子の
同情と歓心を買う。


その後、康子が西野の娘・澪(みお)を
家に入れて料理を教え、高倉が帰宅すると
西野もいる。

4人で食事して交流を深めるが、
この時や電車の中で会った際の会話から、
高倉は西野に疑惑を感じていく。

   


マックスが突然消え、探し歩いた
康子は公園で西野と一緒のところに
出くわす。

「街をうろうろしていたから保護した」
と西野は言い、「奥さんじゃなくて、
康子さんって呼んでいいですか」
「ご主人と僕と、どっちが魅力的
ですか」などと言い出す。

そのころ、高倉が学校帰りの澪に話し
かけると、「あの人、お父さんじゃ
ありません。全然知らない人です」と言う。

戸惑っているところへ西野と康子、
マックスが戻ってきたので
👉❸それ以上のことは聞き出せない

👿【転】

大学に訪ねてきた元部下の野上刑事の
依頼は、すでに関心をもっていた
「日野市一家失踪事件」の再調査だった。

捜査の結果、失踪した本多家の隣人・
水田に不審な点があり、野上が水田家を
調べると、そこには5つの遺体が。

5体は本多家の3人と水田夫妻だとわかり、
犯人とされる「水田」は実は水田の
“なりすまし”(ニセ水田)だったことが
調査の結果、判明。

    

高倉はこの事件での本多家と水田家の
位置関係が、自分の家と西野家の場合と
ほぼ同じであることに気づき、西野を
名乗る男がこの”ニセ水田”と同一人物
である可能性について野上に話す。

野上は事情聴取のため西野家を訪問し、
玄関先で長く待たされたので、
声をかけて家に入る。

進んでいくと👉➍コンクリート露出の
通路の奥に金属の分厚い扉があり



その夜、高倉のもう一つの隣家・
田中家で爆発が起こり家は炎上。

     


高倉を含む近所の人々が周囲に
集まったが、西野家からは誰も
出て来ず、テレビを見ているらしい。


警察の現場検証の結果、田中家の爆発は
ガス漏れによるもので、発見された
3体の遺体のうち2体は田中家の全住人。

👉➎もう1体は野上刑事だった


高倉は日野事件の生き残りである
本多早紀に”ニセ西野”の写真を見せに
行き、彼女が”ニセ水田”のマインド・
コントロール下にあること、”ニセ西野”
と”ニセ水田”が同一人物であることに
確信を深める。


そうこうするうち、康子は”ニセ西野”
に取り込まれ、その腕には多数の
注射痕が…。

西野家の奥の地下牢のような部屋では、
下着姿の西野夫人が布団圧縮袋にパック
された全裸の男の死体(本物の西野)を
処理している。

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👿【結】

“ニセ西野”は、野上を始末した際に
奪っていた拳銃を澪に持たせ、これで
母親を撃てと命じるが、澪ができないで
いると、取り上げて自分で射殺。

その遺体の処理も澪に命じるが、
一人では無理そうなので、康子を
連れてきて手伝わせる。


警察から帰宅した高倉のもとへ澪が
助けを求めて逃げ込み、”ニセ西野”が
彼女を追って訪問。

高倉は入れまいとするが、康子から
入手したらしい鍵で勝手に入ってくる。

澪に警察への通報を指示して”ニセ西野”
を取り押さえたものの、駆け付けた
警察は高倉の方を逮捕。

“ニセ西野”の方が先に警察通報して
いたのだ。


警視庁に連行された高倉は、谷本警部と
いう理解者を得て、共に自宅へ戻り、
西野宅を捜索。

が、谷本は罠にかかって注射を打たれ、
意識を失う。

   


そこにいた康子は高倉に「あなたまで
ここに来る必要なかったのに。私、
もうとっくに諦めちゃったの」と言い、
“ニセ西野”に操られるまま高倉に
注射を打つ。


“ニセ西野”は家族が増えたと喜び、
次の住みかを探そうと車で出発。

運転は目もうつろな康子で、助手席に澪。

“ニセ西野”は後部座席で運転を指示し、
横には窓上の持ち手に手錠で繋がれた
高倉とマックス。

   

閉店したレストランに駐車し、屋上から
望遠鏡で見まわした”ニセ西野”は
「新しい家を見つけたぞ」と喜び、
車をその家まで移動させてから、
高倉以外の全員を降ろす。

マックスを見て「やっぱり邪魔だな、
ごめんね、マックス」と呟いて拳銃を
突きつけたものの、躊躇して車へ戻る。

意識朦朧状態らしい高倉の手錠を外して
👉➏銃を渡し、「これ殺(や)って」
と犬を指さす


犬に銃を向けた高倉は、それを
“ニセ西野”に向け直し、「これが
お前の落とし穴だ」と言いながら射殺。

澪は喜び「ざまあみろ、バカだこいつ」
と嘲り笑いが止まらない。

康子はしばらく後に大きな悲鳴を上げ、
高倉は彼女を抱きしめる。

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6つの突っ込みどころ
(小説が映画と違う部分)

さてここからは、目次に掲げておきました
6つの突っ込みどころ──上記「あらすじ」
中の➊~➏──について、原作小説と
照合しながら多角的な考察を加えて
いきたいと思います。

刑事を辞めて1年で大学教授になれるのか

少しでも大学のことを知る人なら、この
“ありえない”展開に、早くもガクッと
来てしてしまうかもしれません。

一般に大学の教授など専任教員としての
採用に当たっては専門分野での研究業績が
審査にかけられる必要とされるわけで、
これを突破するだけの業績は、40代まで
警察官だった人が1年や2年勉強して獲得
できるようなものではありません。

もちろんノーベル賞でも取ったのなら
話は全然違いますし、また客員教授・特任
教授・非常勤講師とかの非専任は別ですが、
ただの「教授」という肩書を高倉が
どのようにして獲得したのか❓

この疑問に説明は一切ありません。


社会の現実からかけ離れたこの設定は
もちろん映画だけのもの(原作者は自身、
大学教授ですから、こんな現実離れした
話を書かれるはずはありません)。

原作の高倉は犯罪心理学者ではあり
ますが、初めから大学教授であって、
刑事であった過去などないのです。
👉大学教員の職位をめぐっては
こちらをご参照ください。

教授と准教授、講師と助教の違いは?いつから変更されたの?

名誉教授ってただの教授とどう違うの?報酬・給料や条件は?  

         教授 professor_at_board


さて、この野上刑事は原作でも重要人物
なのですが、高倉の部下だったのではなく、
高校時代の同級生というつながりで、
怪事件の捜査に協力することになる
のですね。

映画のこの主人公設定にはかなり無理が
あるわけですが、あえてそうしたのは
冒頭に置かれた例のグロい流血事件で
観客を一気に引き込もうという
狙いからでしょう。

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つまりサイコパスによる怪事件という
メインストーリーを予示する衝撃的な
イントロを入れたいがための苦しい設定と
思われるのですが、このエピソードに
そんな犠牲を払うだけの価値があったか
といえば、これもまた大きな”“です。

このエピソードは抜きにして、原作をより
忠実にたどり、より着実に少しでも深く
その”奥”に入り込む作りにした方が、
怖さも深みを増して傑作ホラーになった
ような気がしますが…
果たして、いかに。

👉あらすじ【起】へ戻る⦆

妻はなぜ大量のシチューをすそ分けするのか

康子のこの行動も、多数のレビューアー
から突っ込まれているところ。

引っ越し挨拶に手作りのチョコを進呈
するというのもそうですが、まだどんな
家族か全然わからないのに「残ったから」
とボールに一杯のシチューをおすそ分け
しに行くなんて、今時そんな奥さんは
いないだろうというのです。

シチューがそんなに大量に残るなんて、
すそ分けを予定して作ったとしか
考えられませんが、そこまで尽くす
必要がどこにあるのか。

「変な人」という印象をすでに持ち、
夫に話していたにもかかわらず、です。

   


察するところ、これらの行動は、彼女が
西野を気味悪く思う半面、心の深い
(無意識の)部分で引き寄せられている
ということを示すのではないでしょうか。

実際、後半では彼の手中に入ってしまう
わけですし。


ところで、原作の妻にこういう経緯は
まったくありません。

そもそも登場回数も少なく重要度の
低い人物で、美人だという記述もなく、
(だから?)西野が接近を試みることは
ないのです。

ちなみに「美人」という役どころは
高倉と微妙な関係にある女子大生に
負わされているのです;^^💦

👉あらすじ【承】へ戻る⦆

少女はなぜすべてを告げないのか

澪が詳しいことを話さないのは、この場面
では西野らが現れたからという事情による
ものと解釈されますが、実はその前にも
後にも、その気になればすべての経緯を
高倉夫妻に告げて助けを求めるチャンスは
いくらでもありました。

康子に料理を習う時なんか、絶好の
チャンスですよね。

それができなかったのは、実は西野(父)に
なりすましている「全然知らないおじさん」
(“ニセ西野”)のマインド・コントロールに
よって、どうしてもそれができない
精神状態に置かれていたから。


この点は原作も基本的に同じなのですが、
このマインド・コントロールの方法として
薬物の注射という手段によっているところ
が原作から大きく逸脱した部分です。

うつ病だから出て来ないことにされていた
妻(澪の母)も実はこの注射による薬物中毒
状態で監禁されており、”ニセ西野”は
この方法によるコントロールの魔手を
康子にも伸ばそうとしていることが
やがて明らかになります。

     


薬物の入手経路などは全く不明のままに
映画は終わりますが、すべてが説明される
原作では、”ニセ西野”はこういう、いわば
安直な手段に訴えることなくマインド・
コントロールを成功させ続けているわけで、
その点、サイコパスとして格が上だとも
言えるかもしれません。
👉そもそもサイコパスとは何か?

この問題をめぐってはこちらも
ご参照ください。

サイコパス(中野信子著) の内容 あの凄い人も実はそうだった!

サイコ(ヒッチコック)のあらすじ 原作小説の犯人は映画と大違い?

         


普通の家屋の奥に地下牢のような空間?

金属の扉の奥には地下牢のような
殺伐たる空間があって、そこに本物の
西野夫人も薬漬け状態で監禁されて(叫び)
いることが、やがて明らかになります。

おいおい、そんな凄い家だったのか…
という話です。

西野一家はごく普通の人々のようです
から、そんな空間が設置されたとすれば、
“ニセ西野”が入り込んだこの何か月かの
間なのでしょうが、工事にかかった
時間と金、また近所の目(👀)なんかは
どうなっていたんだろうな…

等々の大きな”“が浮上しますが、
もちろんなんの説明もありません。

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この場面は、映画が、あくまでリアル
(現実主義的)に展開していた原作から
完全に袂を別って、寓話的と言うか
“夢”的というか、『CURE』『アカルイ
ミライ』などで追求されていた、合理的な
因果関係は度外視した黒沢ワールドに
入っていく分水嶺のようにも受け取れます。
👉またこの”地下牢”など大掛かりな
装置を所有しているところなどは、
アメリカ映画『羊たちの沈黙』
シリーズのスーパー・サイコパス、
レクター博士を連想させます。

有名なこの映画についてはこちらで。

羊たちの沈黙 タイトルの意味は?原作のあらすじと解説【ネタバレあり】

         

👉あらすじ【転】へ戻る⦆

野上はなぜ、どのように死ぬのか
(原作ネタバレ注意)

野上刑事はおそらく、あの金属扉を
あけた瞬間に”ニセ西野”の攻撃を
受け、その後、田中家に運ばれて
自殺を偽装されたのでしょう。

後で出てくる谷本警部(谷本は原作では
若い刑事で、後半で重要な役割を演じ
ます)の説明によれば「野上刑事には
借金があり、その無心に高倉を訪ねたが
留守で、自暴自棄になって田中家に
押し入っての無理心中」というのが
警察の見立て。


これが間違いで、実際は”ニセ西野”に
よる殺害であったことを高倉が暴いて
いく…という基本線は映画も同じ。

ですが、原作ではこの野上という男に、
たんなる借金どころでない”裏”というか
“奥”があって、そこに分け入っていく
ことで後半の凄みが開けていくのです。

つまり映画はそれをすべてカットして、
野上をたんなる元部下に切り下げて
しまったのですね。

つまり原作の”奥”が開かれる後半は
2時間の映画には収まらないという判断が
脚本着手の段階からあったものと思われ
ますが、冒頭に例の警視庁での事件を
入れるよりは、少しでもこの”奥”へ進んで
くれた方が面白くなったという私見は
すでに述べたとおりです。

  


で、ここからいよいよ決定的な
原作ネタバレになります。

野上と高倉が高校時代の同級生だった
ことは既述のとおりですが、野上の妻に
なっていたのがやはり同級生だった
河合園子で、その後、ピアニストとして
名を挙げます。

足の不自由さからイジメにあっていた園子を
助けたことが縁で結婚に至ったものの、
野上の複雑な家庭環境が災いします。

野上が「悪の天才」と呼んで恐れる異様な
異母兄が入り浸って金をせしめますし、
野上自身も父の血を引いて女好きだったり
して、夫婦仲は壊れ離婚に至っていました。


ところで野上のこの異様な異母兄、矢島善雄
こそ、実は”西野”や”水田”になりすまして
いた天才的なサイコパスだったのです。

つまり野上と矢島(ニセ西野)との血縁を
入れるかパスするかが、映画製作上の
大きな岐路だったと言えます。

  


さらにさらに…西野の娘・澪は、映画では
康子から救いの手が差しのべられつつ
あったのですが、原作ではそれはなく、
彼女を救うのがこの河合園子なのですね。

つまり田中家を燃やし、いよいよ警察に
踏み込まれそうになった矢島が澪を連れて
逃走して潜伏したのが、北鎌倉の河合邸。

そこで園子からピアノを習い始めた澪は、
やがて養子となって河合優と改名し、
10年後には若手ピアニストとして
高倉と遭遇します。

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はい、原作は事件から10年後の状況も
描かれており、都合18年にわたる物語に
なっているのですね。

え? 「悪の天才」矢島はどうなった?

ま、そこまでのネタバレは控えて
おきましょう;^^💦

👉あらすじ【転】へ戻る⦆

“❓”だらけでも首尾一貫のラスト
(黒沢映画としては『カリスマ』の再現?)

原作の高倉夫妻に飼っていない犬を
映画で飼わせた理由の第一は、この
シーンでの必要からということだった
のかもしれません。

それはともかく、住宅地で白昼堂々、
銃声が響けば警察が駆け付けるに
決まっているではないですか❓

それに、いかにも重そうな大型犬の
死体の始末はどうするつもりなのか❓

どう考えても、「悪の天才」がこんな
ヘマをやるとは想像できません。

       
さらには例の便利な薬物注射でみんな
“ニセ西野”(矢島)のコントロール下に
入って命令に逆らうことができない
状態になっているはずなのに、なぜ
高倉だけ意識明晰でいられたのか❓

仮にそういうこともあるのだとしたら、
「悪の天才」がなぜその可能性を
疑いもしないのか❓

ちなみに射殺に際して高倉の言う「これが
お前の落とし穴だ」の「落とし穴」とは、
“ニセ西野”が殺人などの犯罪行為について
自ら手を汚すことを避けて、すべて支配下に
ある他者にやらせようとしてきた、
その習性を指したものと思われます。

    


この点も含め、説明は例によって全然なく、
誰でも腑に落ちるような因果関係のある
物語性はすべて放棄してしまったような
ラストシーンですね;^^💦


ただ、そういった細部の合理性をいったん
度外視するならば、高倉が犯人を見事に
射殺するというエンディングは、あの
原作にない導入部で「犯人を撃たなかった」
ことで残ってしまったことへの一種の
オトシマエ(罪過の償い)とも読めます。

その意味では首尾一貫しているわけで、
黒沢映画ファンならば、物語のこの
回収ぶりに1999年作品『カリスマ』
(👇)を想起されるかもしれませんね。



そこでも主人公の刑事(役所広司)は
冒頭で「犯人を撃たない」という
失敗を犯し、ラストではその
オトシマエをつけるのです。

👉あらすじ【結】へ戻る⦆

まとめ

さて、映画『クリーピー 偽りの隣人』を
観て残ってしまった”突っ込みどころ”の
数々、これで大体ご理解いただけた
でしょうか?

まだまだ疑問が残っているという読者
さんは、ぜひ原作小説をお読みください。

日本ミステリー文学大賞新人賞をゲット
しただけあって、さすがによく書けて
いますし、映画が取り込んでいない部分も
読みどころ満載です。

女性ピアニストと「悪の天才」矢島の
絡みとか、美人女子大生と教授のハラハラ
させる関係──もし彼女がセクハラで訴える
気になっていたら高倉は完全にOUT;++💦
でしょう──などなど。
👉この『クリーピー』や上記の『サイコ』
『羊たちの沈黙』など、サイコホラー系
の映画や小説なら、こちらでも詳しく
情報提供しています。

ぜひご参照ください。

黒い家のネタバレ📢)))問題のラストシーンまで映画と原作を徹底比較

          


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さあ、これだけの情報があれば、もう
鬼に金棒👿ですよね。

感想文だろうが、レポートだろうが
その気になれば、さっさと書けて
しまうことでしょう。
👉当ブログでは、そのほか
日本と世界の種々の文学作品に
ついて「あらすじ」や「感想文」
関連のお助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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