サクラさん
『ヴェニスの商人』は
法学博士に化けた美女
ポーシャの名判決で
有名な喜劇。

ただ、悪役シャイロック
がムキになっていく
あたりは喜劇どころか…

ハンサム 教授
作者のシェイクスピアも
ムキになって、喜劇の
はずが悲劇的になって
しまった;^^💦

実際、19世紀ロンドンの
劇場ではシャイロックに
同情して泣いて抗議した
女性客がいたそうです。

サクラさん
「ユダヤ人には目が
ないか、手がないか…」と。

 

こうしてみると、ポー
シャの”名判決”も実際は
屁理屈で、不当なもの
では❓

ハンサム 教授
ええ。でもその不当さも
「世界は舞台だ、誰もが
一役演じなきゃならん」
というアントーニオの
哲学で合理化される❔

というか、まあ喜劇なん
だから、そうムキになる
なという話かな;^^💦

サクラさん
ポーシャが求婚者たち
について「深読みする
馬鹿ばかり」だと言い
ますが、その意味でも
“深読み”はするなと?

ハンサム 教授
いやいや、そこは
読者の自由ですよ。

ともかく色々と”深読み”
もできてしまう『ヴェニ
スの商人』の名言・名
セリフを一つ一つ検討
していきましょう。


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というわけで、おなじみ”あらすじ暴露”
サービスの第197弾(感想文の書き方
シリーズ第279回)となる今回は
シェイクスピア喜劇の傑作にして問題作、
『ヴェニスの商人』(1596~98年)に挑戦!
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その名言・名セリフが英語原文ではどう
言われているのかを、しっかりつきとめ
(ひけらかすこともできるように;^^💦)
勉強しておこうという、少々知的な
セッションになります((((((ノ゚🐽゚)ノ

内容はザっと以下のとおり。


さて、せっかくの名言も劇のストーリーが
頭になければその深い意味が響いて来ない
ので記憶に残りにくく、残ったとしても
ついてくる価値は半分しかありません。

なので、全体を読むか観劇するかするに
越したことはないのですが、残念ながら
その時間がない、あるいはもう忘れた…
という人は、まず以下でストーリーの
概略をインプットしておきましょう。

必要のない方は飛ばして、ただちに
「2.対訳で読む10の名言・名セリフ
の方へ進んでくださいね。

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1.簡単なあらすじと(要約)

ぎゅっと要約した”ごく簡単”
ヴァージョンのあらすじがこちら。

美しい遺産相続人ポーシャとの
結婚を望むバサーニオが、親友の
アントーニオに金の融通を頼む。

全財産が今は海上にあるという
アントーニオは、ユダヤ人の金貸し
シャイロックに借りさせ、自分が
保証人になる。

アントーニオを憎むシャイロックは
保証人の肉1ポンドを担保とする
(期限内の返済がなければ切り取る)
という証文に署名させる(叫び)。

バサーニオはポーシャの心を
射止めたものの、アントーニオの
船が難破し、借金返済は不可能に。

 

裁判となり、シャイロックは
あくまでアントーニオの肉を
切り取らせろと主張するが、
そこへ法学博士になりすました
ポーシャが登場。

審議の末、「肉は正確に1ポンド
だけ取れ。血は1滴も流しては
ならない」との裁定が下り、
さらにシャイロックは
アントーニオの「命を狙った」
罪により財産没収とされる。

実は沈んでいなかったアントーニオ
の船が帰港し、みな幸せになる。
(シャイロック以外は;^^💦)
👉やはりもう少し詳しい経緯がわから
ないとあんまり面白くないし、名言・
名セリフも響いてこない…

という欲求不満の残った場合はこちらの
「かなり詳しいあらすじ」の方を
ご覧ください。

ヴェニスの商人のあらすじを簡単に!傑作喜劇も見方によっては悲劇?

     
     本気で詳しく読みたい方はこちらで
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2.対訳で読む10の名言・名セリフ

というわけで、それではそろそろ
本式の幕開けです。

名言・名セリフを含む10か所の文章を
抜き出し、それぞれ日本語訳、英語原文
の順に並べ、その後に👉印の注釈で
セリフの脈絡や名言たるゆえん、歴史的
背景などについて解説していきますよ~。

なお日本語訳は基本的に上記ちくま文庫の
松岡和子訳を用いますが、部分的に改変し、
また1か所は別の訳者(中野好夫)のものを
使用しています。

💰 第一幕/Act Ⅰ

【名言 その1】
ソラーニオ (憂鬱だと言うアントーニオに)
開びゃく以来、自然の女神は妙な人間を
こしらえてきた
、年がら年中目尻を下げ、
もの悲しいバグパイプの音を聴いても
オウムみたいにゲラゲラ笑うやつがいれば、
酢でも飲んだみたいな渋い顔をして、
あの謹厳なネスターが面白いと断言した
冗談にさえ口をへの字にして
にこりともしないやつがいる。〔第一場〕

Solanio Nature hath framed strange fellows in her time.
Some that will ever more peep through their eyes,
And laugh like parrots at bag-piper;
And other of such vinegar aspect
That they’ll not show their teeth in way of smile
Though Nestor swear the jest be laughable.
👉「世の中にはいろんな
やつがいて面白い」という指摘で、
すぐ後の「世界は舞台だ」という
アントーニオの名言につながって
いきます。

世界をそのように造形した存在として
“Nature”(自然の女神/造化の神)が
想定されているわけですが、この
“nature”(自然/本性)は、もちろん
普通名詞としても使われて、
シェイクスピア劇に頻出します。

『リア王』ではなんと100回も出てくる
とかで、このことについて詳しくは
こちらをご参照ください。

リア王(シェイクスピア) 15の名言/名セリフ!英語原文つき解説
 
           

なお「ネスター」は古代ギリシア軍の
顧問官で、賢明な老人の代名詞。


【名言 その2】
アントーニオ(世の中に気を遣いすぎだと
忠告するグラシアーノに)
私は世界をただ
世界として見ているんだ、グラシアーノ。
つまり世界は舞台だ、
誰もが一役演じなきゃならん

私の役はふさぎの虫だ。 〔第一場〕

Antonio I hold the world
but as a world, Gratiano,
A stage, where every man must play a part,
And mine a sad one.
👉「世界は舞台、人はみな役者」
というこの”劇場”的世界観・人生観は
シェイクスピア劇の多くの登場人物が
口にするもの。

「世界はすべて一つの舞台、そして
人間は、男も女もみな役者」
(『お気に召すまま』2幕7場)

「人生は歩きまわる影、哀れな役者、
出番の間は舞台の上をのし歩き、
わめき散らすが、その後はもう、
音ひとつせぬ」(『マクベス』5幕5場)

そしてリア王いわく「生まれ落ちると
泣くのはな、この阿呆の檜舞台に引き
出されたのが悲しいからだ」(4幕6場)


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【名言 その3】
アントーニオ(利息を取る、取らないで
シャイロックと議論して)
悪魔も
自分の都合次第で聖書を引用する
。 
邪悪な者が神聖な言葉を証拠として
引き合いに出すのは
悪党が頬に微笑を浮かべるようなもの、
見かけはきれいだが芯は腐ったリンゴだ。
           〔第三場〕

Antonio The devil can cite
Scripture for his purpose.
An evil soul producing holy witness
Is like a villain with a smiling cheek,
A goodly apple rotten at the heart.

👉シャイロックが『創世記』30章の
羊飼いヤコブの物語を持ち出して、
才覚による儲けは「天の恵み」
(blessing)だと主張したのに対して、
アントーニオはサタンがイエスを誘惑
する際に聖書を引用したという
『ルカによる福音書』の逸話を
持ってきたのですね。

悪魔(👿)と同一視する、むき出しの
ユダヤ人蔑視がシャイロックの怒りに火を
注ぎ、さらに激しい言葉が返ってきます。


    Jesus Christ and Satan the Devil

【名言 その4】
シャイロック(金を融通してもらえるのか
と問うアントーニオに答えて
中野好夫氏による関西弁訳〕)

〔あんさん、わてのことを〕
罰当たりともいわはりましたで。

人殺しやともいわはりましたで。

あんた、憶(おぼ)えてはりまっか、
このわての着物にな、唾ァ吐っかけた
ことかてありましたんやで。

へん、しょうむない、わてのもの、
わてが勝手に使うのん、なにが
気にくわんいうんやね。

それがどや、今日はわてんとこへきて、
金貸してくれェ言わはんのやろ。

阿呆かいな、ほんまに……
いつかはどや、このわてに痰唾ァ
吐っかけよって、なんのこたない、
ドラ犬でも蹴っ飛ばすみたいにな、
ポーンと足蹴にしよった
あんたやないか?

それがどや、今日?

話は金や、金貸せェ言わはんのやろ?

           〔第三場〕
 (引用元:👇)


Shylock You call me misbeliever,
cut-throat dog,
And spet upon y Jewish gardine,
And all for use that which is my own.
Well then it now appears you need my help;
Go to, then; and you come to me, and you say
“Shylock, we would have moneys” You say so:
You that did void your rheum upon my beard,
And foot me as you spurn a stranger cur
Over your threshhold: moneys is your suit.
👉アントーニオの露骨な侮蔑に激怒した
シャイロックの、胸のすくような啖呵
(たんか)です(👏👏👏😹)

当初の構想では単なる悪役だった
シャイロックが思いのたけを述べて
いくうちに、喜劇に似合わない深刻味を
加えてくる…。

これは作者自身にも想定外の成り行きで、
要するに作者の想像力が「奔出飛躍した
結果、予定の愉快な結末とは調和しがたい
人物を描くに至った場合の一つ」だと
シェイクスピア学の大家、A・C・
ブラッドリー(『シェイクスピアの
悲劇(上)』岩波文庫、p.35)。

つまり「愉快」に終わらせるつもりの
喜劇が、書いていくうちにシャイロックの
“悲劇性”が膨らんできて、シェイクスピア
自身も持て余してしまった…と。


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💰 第二幕/Act Ⅱ

【名言 その5】
ポーシャ(求婚者たちがみな箱選びに
しくじって去り、侍女ネリッサに)

ああ、深読みしすぎの馬鹿ばっかり!
選ぶ知恵を働かせようにも、
持ち合わせは選びそこなうための知恵だけ。
ネリッサ 昔のことわざは嘘じゃ
ありませんね。
縛り首と連れ合い探しは運まかせ
            〔第九場〕

    

Portia O, theser deliberate fools!
When they do choo,
They have the wisdome by their wit to lose.
Nerissa The ancient saying is no heresy:
“Hanging and wiving goes by destiny.”
👉こうして、実際「運まかせ」
となった結果、地位も富も不十分な
バサーニオがポーシャを獲得する…
という幸運な成り行きに。

ただ、うがった味方をするなら、この
結婚もまた後で破綻しないという保証も
ないわけで、結婚にはどうしても
「運まかせ」(goes by destiny)の
部分がつきまとう…
と経験者は知っています。

──なんて言い出すこと自体、ポーシャの
いう「深読みしすぎの馬鹿」ということ
になるのかもしれませんが;^^💦

       ⚡ ドクロ 💘 叫び ⚡


💰 第三幕/Act Ⅲ

【名言 その6】
シャイロック(アントーニオの肉を
切り取って何の役に立つかと問われ)

魚を釣る餌になる。
腹の足しにはならんが、
腹いせの足しにはなる。
〔中略〕
やつは俺の民族をさげすみ、俺の商売に
横槍を入れ、俺の友だちに水をさし、
敵を焚き付けた──理由はなんだ?
俺がユダヤ人だからだ。
ユダヤ人には目がないか?
ユダヤ人には手がないか、五臓六腑、
四肢五体、感覚、感情、喜怒哀楽が
ないのか?
      〔第一場〕

     

Shylock To bate fish withall:
If it feed nothing else, it will feed my revenge.
He hath disgraced me ant hindered me half a million;
laughed at my losses, mocked at my gain,
scorned my nation, thwarted my bargains,
cooled my friends, heated my enemies.
And what’s his reason? I am a Jew.
Hath not a Jew eyes?
Hath not a Jew hands, organs, dimensions,
sense, affections, passions……

👉第一幕第三場での啖呵に続き、
長年受けてきた差別への鬱憤を
ここぞとばかりに晴らす長広舌。

その有名なサワリの部分。


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💰 第四幕/Act Ⅳ

【名言 その7】
シャイロック(金で手を打たず、あくまで
相手の肉を取ろうとする偏屈さを
公爵に疑問視され)

世間にはあんぐり口を開けた豚の
丸焼きが好きでない者がいる、
猫などを見るだけで気が変になる者がいる、
鼻声めいたバグパイプの音を聞いただけで
小便をもらしそうになる者もいる──
なんせ喜怒哀楽を左右するのはその主人の
気質ってやつですからな
。  〔第一場〕

Shylock Some men there are love not a gaping pig;
Some that are mad if they behold a cat;
And others, when the bagpipe singns i’ the nose
Cannot contain their urine; for affection,
Mistress of passion, sways it to the mood
Of what thy likes or loathes.
👉結局は「理由」などない、
自分を動かしているのはアントーニオ
への憎悪だけだというのが「答え」に
なります。

世の中いろんなやつがいるという、
第一幕冒頭のソラーニオの発言内容を
アントーニオたちの側に投げ返し、
俺はそういう変人なのだからと
居直った形ともとれます。

       ⚡ ドクロ 💘 叫び ⚡


【名言 その8】
シャイロック(慈悲を施すしかないと
法学博士〔実はポーシャ〕に言われ)

わたしが、何に強制されて?
うかがいたいものですな。
ポーシャ 慈悲は強いられて
施すものではない、
恵みの雨のように天から降りそそぎ
地上をうるおすものだ。

そこには二重の祝福がある、
慈悲は施すものと受けるものを
共に祝福するのだ。  〔第一場〕

     

Shylock On what compulsion must I?
Portia The quality of mercy is not strained;
It droppeth as the gentle rain from heaven
Upon the place beneath.
It is twice best:
It blesseth him that gives and him that takes.
👉「正義」と必ずしも一致しない
「慈悲」という考え方は、
シェイクスピアの好んだ
テーマの一つでした。

『尺には尺を』のイザベラはアンジェロに
「もし最高の裁判官である神がいまの
あなたをお裁きになる」と仮定すれば
「あなたの唇から慈悲の言葉が漏れる
でしょう」と訴えます。(2幕2場)

この”問題劇”について、詳しくは
こちらをご覧ください。

尺には尺を(シェイクスピア)のあらすじ⦅セクハラ/パワハラの問題劇⦆

           


【名言 その9】
ポーシャ(肉の切り取りを許可されて
勇み立つシャイロックに)

待て、しばらく、まだあとがある──
この証文はお前に一滴の血も
与えてはいない。

ここに明記されているのは
「肉一ポンド」。
従って、証文どおり、肉一ポンドを取れ、
だが、切り取るとき、もしキリスト教徒の
血をたとえ一滴でも流せば、お前の
土地も財産もヴェニスの法律にしたがい
ヴェニスの国庫に没収される。

Portia Tarry a little,
there is something else.
This bond give thee no jot of blood;
The words expressly are “a pound of flesh”:
Take then thy bond, take thou thy pound of flesh
But in cutting it, if thou dost shed
One drop of Christian blood, thy lands and goods
Are, by the law of Venice, confiscate
Unto the state of Venice.

  

👉この劇のターニング・ポイント
をなす、最も有名なセリフ。

少々不思議の感を残すのは、むしろ
シャイロックがすんなりと、この裁定に
異存はないと認め、証書にはあとで署名
すると言い残して消えていくことの方
かもしれません。

ここまでのシャイロックの気合から
すれば、この裁定には「そんな屁理屈は
認められん!」とあくまで抗戦しそうな
ところとも思えるからです。

より実際的に、これを現代の法廷での
ことと仮定するならば、肉を切れば血が
流れるということは「自明の合意事項」
とみなされるはず。

したがって「ポーシャのたくみな屁理屈も、
かならず却下されていたにちがいない」
と、現代の高名な批評家、テリー・
イーグルトンも断定しています。
👇


シャイロックがここで引下がってしまう
のは、その意味では”“で、演出・
演技の問われるところになるでしょうが、
考えやすいのは「ここで正論を主張
しても屁理屈に勝てない」という
諦めの判断でしょう。

とすれば、それが「ユダヤ人」という
彼の弱い立場に関わっていることは
言うまでもありません。


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💰 第五幕/Act Ⅴ


【名言 その10】

ロレンゾー(結婚したばかりのジェシカと
音楽を聴きながら)
 心に音楽を
持たない人間、美しい調べにも心を
動かされない人間は謀反、陰謀、
略奪にしか向いていない。
そういう人間の心の動きは闇夜の
ように鈍く、感情はこの世と
地獄のように暗い。  〔第一場〕

Lorenzo The man that hath no music in himself,
Nor is not moved with concord of sweet sounds,
Is fit for teasons, stratagems, and spoils;
Motions of his spirit are dull as night,
And his affction dark as Erebus.

     

👉ジェシカはシャイロックの娘で
ロレンゾーはアントーニオの
友人の一人。

不倶戴天の敵同士である二人が恋に
落ちるという『ロミオとジュリエット』
ばりの展開がこの劇の脇筋(サイド・
ストーリー)として仕組まれています。

ロレンゾーのこの名言は「世の中には
いろんなやつがいる(だから許容し合
おう)」という劇の冒頭から埋め込まれて
きたメッセージを踏まえていますが、
ここへきて「心に音楽を持たない人間」
だけはダメだと釘を刺したような感じ。

シャイロックのことを言っているようにも
取れますが、シェイクスピア自身の実感が
含まれているには違いありません。


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ハイネらを泣かせた喜劇

さて、いかがでした?

ん? 英語原文の方は古すぎて難読
なのでスルーして、日本語訳の方だけ
拾い読みした?

いや、それも大いに結構。

それだけでも、ただ「あらすじ」を辿る
のでは入り込めないシェイクスピアの
世界──言葉の勢いと華麗さとユーモア、
そして思想的な深み──にいくぶんかは
接してもらえたはずですから。

それぞれに賢く、自分なりの主張と
性格をもつ多様な登場人物のうち、
あなたは誰がいちばん気に入った
(あるいは気になった)でしょうか。

      


やっぱりポーシャ!

という賛美の一方で、聞こえてくるのは
いやシャイロックだ~(# ゚Д゚))という
怒りの声ではないでしょうか。

この人物への作者の入れ込みは【第四幕】の
👉印の注釈でもふれましたが、
ともかく、みんなが(彼の娘を含め)幸せに
なるハッピーエンドの喜劇にあって唯一、
不幸に突き落とされているのがこの人
なのですね。

かれ自身の側から見れば、この物語、
完全な”悲劇”なわけで、この意味で、
『ヴェニスの商人』の2年後の傑作喜劇
『十二夜』で、笑いものにされて一人だけ
不幸なまま終わる人物、マルヴォリオに
通じるともいえます。
👉『十二夜』とその”悲劇”的人物
マルヴォーリオについては
こちらをご参照ください。

十二夜(シェイクスピア)のあらすじ【人物相関図つきで詳しく】

        


シャイロックのこの”悲劇”性にこそ
心を打たれた人は、けっこう昔から
いたようです。

たとえば自身もユダヤ人であるドイツの
詩人・評論家ハインリヒ・ハイネは、
1827年ロンドンでの『ヴェニスの商人』
観劇の経験をこう報告しています。

私の背後の席に、美しい
イギリスの婦人が蒼白になって
立つていた。

四幕の終る頃、彼女は激しく
泣きだした。

そして何度も口に出して『可哀そうに、
あの人は不当な扱いを受けている』
と叫んだ。

彼女はギリシャ風の彫りの深い高貴な
顔立ちで、目は黒く大きかつた。

私はあの目を忘れることはできない。

シャイロックのために涙を流した
あの黒い大きな目を。

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(引用元:一橋大学機関リポジトリ

この女性もまたユダヤ人であったか
どうかは不明ですが、「ギリシャ風の
彫りの深い高貴な顔立ちで、目は黒く
大きかつた」という記述に、多分
ユダヤ人だろうというハイネの推測を
読むこともできそうです。


さてこの”ユダヤ人”ですが、『グリム童話』
にも「いばらの中のユダヤ人」という
悪いユダヤ人が結局しばり首になる物語が
あるくらいで、一般のヨーロッパ人の間では
“金にがめつく悪どい”ユダヤ人への差別は
当然のように見なされてきました。

   

このようなユダヤ人たちをシェイクスピア
自身がどう見ていたのか、正確なところは
わかりませんが、差別の不当性を感じて
いたことは、シャイロックの言葉の
白熱ぶりから明らかですよね。

ともかく、歴史劇から出発して喜劇作者
として名を上げたシェイクスピアが
この傑作『ヴェニスの商人』から『十二夜』
を経た1600年には、ついに『ハムレット』
『オセロー』『リア王』『マクベス』という
四大悲劇を並べる円熟期に入って
行くのです。
👉四大悲劇を含むシェイクスピアの
代表作について、英語原文を参照しながら
じっくり味わいたいと御考えの場合は
ぜひこちらをご参照ください。

ハムレットの名言 英語原文では何と? 生きるべきか死ぬべきかetc.

リア王(シェイクスピア) 15の名言/名セリフ!英語原文つき解説

             


マクベスの名言 英語ではなんと?シェイクスピア最高傑作は何を教える

ロミオとジュリエットの名言・名セリフ 英語原文では何と?

                    


テンペスト(シェイクスピア) 10の名言/名セリフ!英語原文つき解説

十二夜(シェイクスピア) 12の名言/名セリフ!英語原文つき解説

       

👉シェイクスピアの名作は
まだまだたくさんあります。

当ブログでは喜劇・歴史劇・ロマンス劇
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👉それからもしシェイクスピア云々
よりユダヤ人問題の方に関心が
あるという方は、ぜひこちらも
ご参照ください。

キャバレー(映画)のあらすじ ミュージカルを超える名作だ!

夜と霧 あらすじと感想文/レポートの書き方【2000字の例文つき】

              


まとめ

さあ、これでもう大丈夫ですよね、
感想文だろうがレポートだろうが…。

え? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でも具体的に、どう
進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?

👉当ブログでは日本と世界の多くの
作品について「あらすじ」や「感想文」
関連のお助け記事を量産しています。

お役に立ちそうなものをこちらの
リストから探してみてくださいね~(^^)у

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ともかく頑張ってやりぬきましょ~~(^O^)/

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