タイタニック(映画)4つの”なぜ”｟ローズはフロイトを読む悪い娘？｠

というわけでおなじみ”あらすじ暴露”
サービスの第230弾(“感想文の書き方”
シリーズとしては第317回)となる今回は
なんと、公開後25年を経過しても一向に
人気の衰えないアメリカのロマンス災害
映画『タイタニック』(Titanic,1997)に
挑戦で～す((((((ﾉﾟ🐽ﾟ)ﾉ
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2億ドルという巨大な製作費を投じて制作
されたこの映画(ジェームズ・キャメロン
脚本・監督)、アカデミー賞ではなんと、
作品賞・監督賞をはじめ、撮影賞、美術賞、
主題歌賞、音楽賞、衣裳デザイン賞、
視覚効果賞、音響効果賞、音響賞、編集賞の
11部門での受賞という記念碑的作品。

まだ観ていないという人はこちらの
予告編をご覧ください。👇　
　　　
というわけで、本日の内容は
ザッと以下のとおり。

簡単なあらすじ

それではまずごく簡単なあらすじから。

「ごく簡単」とはいっても”なぜ“を
探っていくための記述ですから、
ネタバレを含むのは当然です。

そのつもりでお読み願いますが、途中、
なぜそうなるの❔
というポイントになってくるところに
👉❶のような印をつけています。

その下線部をクリックすれば、後半の
「4つの”なぜ“」でまとめてある理由
・背景の解説➊～➍に飛んでいける
という仕組みです。

4つの”なぜ“

さてここからは、上記「あらすじ」中の
ところどころ、➊～➍のに印をつけて
きました４つの”なぜ“について、
多角的な考察を加えていきます。

➊ローズはなぜフロイトに言及するのか

どうでもいい場面のようでもありますが、
意外に重要で、映画に芸術的な奥行きを
与えた痛快なシーンです。

タイタニック号の未曾有のスケールを
話題にする男たち(婚約者を含む)を冷笑
するようにジグムント・フロイトの説
(より具体的には大きなペニスを持ちたい
という男の願望)にあえて言及したのですが、
「フロイトって誰？　乗客？」という
社長の反応が笑えます。

この経緯で、社長の無知(彼は遭難後は
真っ先にボートに乗る、人格的にも疑問な
人物)に対して際立つローズの知性や
反抗心または悪い女ぶり(この席でタバコを
吸い始め、母と婚約者に制止される)が
示されています。

精神分析の始祖フロイトは1908年に渡米
して講演などを行っていますので、
すでに英語圏でも有名人。
👉フロイトが人間心理を海上に浮かぶ
氷山にたとえたこともよく知られています
ので、ここでフロイトを出すことは、
後半の遭難の原因となる氷山出現への
伏線と見ることもできます。

　　
　　フロイト説による心理構造図
　 　(画像出典👉 Wikipedia フロイト)


ローズが知っていても不思議ではないの
ですが、性器に関わるきわどい話題を
持ち出すなど、上流階級の娘としては眉を
ひそめられる行為には違いありません。

おそらく当時のイギリスで数を増やしていた
「新しい女(New Woman)」としての自覚、
またはその影響がーズにもあったものと
思われます。
👉「新しい女(New Woman)」はブラム・
ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』
(Dracula, 1897)にも出て来る当時の新語で、
日本の「新しい女」第一号とみなされたのが
平塚らいてうでした。

これらについての詳しい情報は
こちらでご覧いただけます。

・ドラキュラのあらすじ【簡単&詳しく】原作小説と日本の意外なつながり

　　　　　　　 　　　 　　　　


・平塚らいてうがホントにすごいのは？若き美才女の不倫心中逃避行…なぜ？

　　　

➋キャルドンはなぜあんなに悪いのか

上記➊で見たように、ローズは知的である
反面、反抗的な悪い娘としての側面も
あるのですが、その彼女がそう悪いように
見えないのは、婚約者キャルドンの
悪さがそれを補って余りあるもの
だからでしょう。

まだ結婚していないのに完全な亭主関白を
気取り、ローズの口からタバコを取り上げ
たり、料理の注文を彼女のぶんも勝手に
決めたりするので、同席した新興成金の
モリー・ブラウンに皮肉を言われたり
しています。

それだけならまだしも、ローズが従順で
ないことに怒ってテーブルをひっくり
返したり(ちゃぶ台返し！)、ついには
平手打ちも食わせます。

　　　　

さらには、ローズのジャックの仲に気づいて
からは、用心棒的な使用人に命じ、次々と
卑劣な手段を繰り出して二人の仲を
裂こうとし、ついにはジャックを犯罪者に
仕立て、柱を抱かせて手錠をかけ、
身動きできなくしてしまうのです。

さらにさらに、沈没が始まってからは、
ローズより自分が大事のようで、親と
はぐれた幼い女の子を抱き上げたので、
助けようとするのかと思いきや、これも
自分がボートに乗るために利用した
だけなのでした。



なぜ彼はこんなにも悪いのか❓

キャメロン監督の狙いとして考えるならば、
ローズとジャックの”悪くなさ”を引き
立てるため、というのが第一の理由
でしょう。

実際には二人とも多少は悪い部分が
ありますので(ジャックも他人の上着を
勝手に着たり、不良とギャンブルして
いたりしていて、善良一方ではない)、
それを目立たなくしてあげる方が観客は
より感情移入しやすくなるでしょう。

これを裏から見れば、キャルドンは
あまりにも悪く卑劣で、役者の顔も
憎たらしい(ビリー・ゼイン)ので、彼に
同情する観客はまずいないわけですが、
でも、考えてみると彼はツラい立場に
置かれた”かわいそう”な男ですよね。

　　　

キャメロン監督の脚本・演出はキャルドンを
単純な悪役に仕立て上げることで、彼の
“かわいそう”な部分を見えなくしてしまう
方針に立っています。

この部分がややマンガチックというか
通俗的で、作品の底を浅くしてしまった
感もあり、アカデミー賞11部門を総ナメ
しながら脚本賞はもらっていないことも
うなずけます。
👉それならば、同じような意味で
“かわいそう”な男をキャルドンのような
単純な悪役に仕立てることなく、
深みのある悲劇を創造した傑作として
何があるのか？…

と問われれば、まず指を屈するべきは
シェイクスピアの『オセロ』でしょう。




日本からは、この『オセロ』を詳しく
読みこんでいた夏目漱石の『こころ』
がまず浮上します。

この2作をめぐってはこちらで詳しく
情報提供していますので、ぜひ
ご参照ください。

・オセロ(シェイクスピア)のあらすじを簡単に/&詳しく漱石コメントつきで

・こころのあらすじ【上中下】を簡単に/&詳しく掘り下げて解説します

　　　　　　　　　　　　　　

➌ローズはなぜジャックをドアに乗せなかったのか

これについては、ローズはやはり自己チュー
で悪いのではないかといった疑問の
声が公開当初から寄せられ続けて
きたようです。

つまりローズが乗せてもらったドアには
ジャックも乗れるだけの余地があったの
ではないか❓…と。

　　
　　『ロミオ＋ジュリエット』でのレオナルド・ディカプリオ


『ヴァニティ・フェア』誌でこの点を
問われたキャメロン監督は、それは
「芸術的な選択」だったと繰り返して
います。

公開から20年も経ってそんな議論を
するのは「馬鹿らしい」とは思う一方で、
それは「観客がジャックを愛おしく思い、
彼の死をそれだけつらいと感じたという
こと」で、よく理解できる。

しかしながら、

彼が生き残っていたら、映画の
結末はまったく無意味なものと
なってしまっていたでしょう。

この映画は、死と別れについての
ものです。

彼は死ななければなりませんでした。

それがあのような形であっても、
煙突が落ちてきたというような
ものであっても、彼は死ぬ必要が
あったんです。

これが芸術なんです。

物事は芸術的な理由で起こるもので、
物理的な理由で起こるわけでは
ありません

（引用元：Esquire）

いやいや「物事は物理的な理由で起こ」
りますよ、と突っ込みを入れたくなる
かもしれませんが、ここは文脈を
読まないといけません。

映画など芸術作品の制作においては、
人が死んだり生きたりは芸術的な理由で
決められるものだと言っている
わけです。

まあ、『タイタニック』には実在の
人物も多く登場しますが、ジャックも
ローズも架空の人物ですので、
生かすも殺すも作者の自由❕
ということになりますね;^^💦

➍老ローズはなぜダイヤを海に沈めるのか

101歳のローズは、これまで亡き夫を
含めて誰にも話したことがなかった
というジャックとの数日間の思い出を
トレジャー・ハンターの一団や孫娘の
前ですっかり語り終えてから、甲板に
出てきます。

ここで手すりの柵に足をかけるので、
あわや飛び込みかと、ひやりとさせ
られますが、飛び込むことはなく、
首にかけていた”碧洋のハート”を
海に放って沈めてしまうのですね。

　 　
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なぜそんなモッタイナイことをするのか❓

これもまた芸術的な理由で起こる
ことに違いありません。

“碧洋のハート”が海底に沈んでから
何が起こったかといえば、若いローズが
階段を上って普段着のジャックに迎えられ、
乗員・乗客のみんなが拍手で二人を祝福
するという、奇跡(ローズの見た夢とも
解釈できますが)のようなラストシーン
ですよね。

なぜそうなるのかという理由については
キャメロン監督も観客各自の自由に
ゆだねているはずです。

それでこそ芸術なのですから。

だからこれ以上とやかく言うのはまさに
蛇足なのですが、しいて理由をつけるなら
こんなところかな、と思います。

1. 老ローズは自分も海底に沈むことで
   ジャックと一緒になりたい、
   と一瞬は思った。


2. が、思い直して自身の分身とも
   いえる”碧洋のハート”を代わりに
   沈めた。


3. “碧洋のハート”はジャックの
   魂に届いて彼はよみがえり、
   タイタニックの乗員・乗客全員
   とともにローズを迎えた。

まとめ

さて、これでもう十分ご理解
いただけましたよね？

映画『タイタニック』の４つの”なぜ”。

その理由や背景を理解した上で見直すと
さらに面白い発見がいろいろと出て来る
かもしれません。

俳優陣は誰もオスカーには届かなかった
とはいえ、主演の二人はゲットして
いてもおかしくない好演でした。
👉デイカプリオもさることながら、
ういういしく溌剌としたケイト・
ウィンスレットの素晴らしさ。

彼女の演技はその後、ますます磨き
がかかり、2008年には『愛を読むひと』
で見事、アカデミー主演女優賞を
獲得します！

この映画とさらにその後の『コンテイ
ジョン』については、こちらで詳しく
情報提供していますので、
ぜひご参照ください。

・愛を読む人(泣ける映画と原作) ハンナはなぜ怒った？他５つの”なぜ”

　　　


・コンテイジョン(2011年映画) 陰の主役は豚とコウモリ？｟ネタバレ｠

　 　　　
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また歴史上の事実としてのタイタニック
沈没事件を調べて映画のフィクション
部分を考察するのも面白いでしょう。

なにしろ日本を含む世界中の人々に
大きなショックを与えた事件ですから。
👉強く反応した日本人作家としては
宮沢賢治がいます。

『銀河鉄道の夜』にこの事件がどう
採り入れられているかについては、
こちらをご参照ください。

・銀河鉄道の夜にタイタニックが出て来る？詳しいあらすじで確認しよう

　　　　　
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ともかくこれくらいの知識・情報が
あれば、もうバッチリでしょう。

誰かさんにちょいと知ったかぶりを
してやろうかという場合も、あるいは
読書感想文やレポートを書こうか
という場合も。
👉愛と死を扱う名作映画はほかにも
沢山あります。

たとえば下記の記事で紹介している作品の
どれかと比較してみるというのも、
レポートなどを書くにはよい方法ですね。

ぜひご参照ください。

・アンナカレーニナのあらすじ 原作本と映画(2012)【相関図つき】

・セブン(映画) はグロい傑作？つまらない？海外での評価を探ると…

　　　　


・ジョーカー(映画)の妄想はどこまでで現実は…？あらすじを押さえて考察

・シンドラーのリスト 赤い服の女の子の意味は？詳しいあらすじ(原作照合)

　　


・ダヴィンチコード｟シラスがかわいそう？鞭の意味は？｠小説&映画のあらすじ

・戦場のメリークリスマスは意味不明？なぜキス？原作を見なきゃ謎な映画　

　 　　　
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ん？　書けそうなことは浮かんで
きたけど、具体的にどう進めていいか
わからない(￣ヘ￣）？

そういう人は、ぜひこちらを
ご覧くださいね。
👉当ブログでは、日本と世界の多様な
文学や映画の作品について
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

・「あらすじ」記事一覧

・≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/