北風と太陽の話 その意味は?4通りの解釈を原作に照らすと… | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象

北風と太陽の話 その意味は?4通りの解釈を原作に照らすと…

サクラさん
「北風と太陽」という
歌がヒットして「北風と
太陽の法廷」とかいう
ドラマもありましたが、
なんで”北風”と”太陽”
とがペアになるんで
しょうか?

ハンサム 教授
イソップの「北風
と太陽」という寓話を
踏まえてますね。


Sponsored Links

サクラさん
はは~、韓国なんかの
「太陽政策」のという
のもそこから?

ハンサム 教授
ええ。”北風”みたいに
厳しく向き合っても
ラチがあかないから、
ここは一つ”太陽”で
行ってみましょうと。




サクラさん
なるほど…。”太陽”さん
って優しいんですね。

ハンサム 教授
う~ん。でもほんとに
優しいのかどうか
わかりませんよ。

旅人はしまいに暖まり
すぎて川に飛び込んで
しまうんですから;^^💦

サクラさん
それで溺れる?(叫び

ハンサム 教授
そこまでは書いてない
けど、そういう可能性も
あるじゃないですか;^^💦

サクラさん
これはイソップの原典
を押さえておく必要が
ありそうですね(🙀)


というわけで、”あらすじ”暴露を得意と
してきた”感想文の書き方”シリーズですが、
228回となる今回は”あらすじ”に
するほど長い話ではないので
全編掲載しちゃいます((((((ノ゚🐽゚)ノ

原作そのままを忠実な翻訳で読んでもらった
上で、この寓話の意味するところについて、
世間で流布している解釈(これを分類すると
4通りになりそうで)を吟味・検討して
いきたいと思うんです。

ザッとこんな内容になります。



1. 原作全文はこれだけ!

では参りましょう。

「北風と太陽」とはそもそも
どんなお話か。

ただこれを、子供向けの絵本やアニメで
語られていることをそのまんまに受け
取っていたのでは、本来の正確な意味を
つきとめることはできません。

ここはひとつ、古代ギリシア語の原典に
最も忠実な日本語訳かと思われる下記の
本に依拠して全文を押さえておきましょう。
   👇


ではさっそくその全編をどうぞ。

 北風と太陽がどちら強いかで
言い争いをした。

道行く人の服を脱がせた方を
勝ちにすることにして、
北風から始めた。

強く吹きつけたところ、男が
しっかりと着物を押さえるので、
北風は一層勢いを強めた。

 

男はしかし、寒さに参れば参る
ほど重ねて服を着こむばかりで、
北風もついに疲れ果て、
太陽に番を譲った。


 太陽は、はじめ穏やかに
照りつけたが、男が余分の
着物を脱ぐのを見ながら、
だんだん熱を強めていくと、
男はついに暑さに耐えかねて、
傍(かたわら)に川の流れるのを
幸い、素っ裸になるや、
水浴びをしにとんで行った。

 説得が強制よりも有効なことが多い
とこの話は解き明かしている。

Sponsored Links


【解釈1】太陽のように優しくあれ

さてこのお話、近ごろでは小学校の国語
教科書にも載っていて、そのせいなのか
どうか、以前よりよく知られるように
なっているようです。

そのことと連動してか、歌の世界でも
「北風と太陽」と題した楽曲が少なくとも
4つはあるようなんですね。


そのなかで、若者にいちばん
人気なのがこれ。

E-girlsの「北風と太陽」です。

まずはこの歌でイソップの寓話がどう
解釈されているかをよくお聴きください。👇


おわかりですね。

この歌のリフレインされるサビは
こういう歌詞。

どんなに激しい北風が吹いても
負けはしなかった

あの人は背中に太陽を浴びて
コート脱いだのよ

私も陽だまりになっていたいんだ
真冬さえ照らせるような

Sponsored Links


(引用元:J-Lyric.net)

つまり彼は強くてステキだから、私は
彼の「陽だまり」=「太陽」になって
優しく支えたい…というような恋愛の
心理を歌い上げています。


要するに「太陽」を「優しさ」のたとえ
(比喩、象徴)のように見ているわけです。

こういう解釈が優勢のようですが、それは、
小学校などでもそういう風に教えられる
ことによるのかもしれません。


それを間違いだと決めつけることも
できませんが、でも原文の結びで明快に
延べられている教訓からすると…
う~ん、どうなんでしょう?:^^💦

Sponsored Links


【解釈2】強制より説得が有効

というわけで、上記引用文の末尾を見直して
ほしいのですが、そこにはまったく明快に
この話が「解き明かして」いるのはこういう
ことだ…と書かれているわけですよね。

すなわち「説得が強制よりも有効なことが多い」と。


つまり「強さ」を競う北風と太陽は「道行く
人の服を脱がせた方」を勝ちとするゲームを
始めたのですが、これに勝って「より強い」
ということになったのは、「強制」で服を
脱がせようとした北風でなく、「説得」に
訴えた太陽の方だった…というのです。

まあ、太陽は言葉で説き伏せたわけでは
ありませんが、加熱によって本人が自分から
脱ぎたくなるように仕向けた…この作戦を
「説得」と称しているのですね。

 

要は、人に何かをさせたければ「こうしろ」
と強制するよりも、本人がそうしたくなる
ように環境を整えてやることの方が有効だ
という教訓。

これが「正解」だということは、本文にも
そう明記されている以上、まず逆らう
わけにはいきません。


ではありますが、それでもそこの「正解」と
微妙にズレる、いわば創造的(クリエイ
ティヴ)な解釈も提出されていて、それらも
なかなか面白いので、立ち入って検討して
おきましょう。

Sponsored Links


【解釈3】北風勝利編:手段は状況次第

一つは、いや北風が(も)勝っているのだ
という解釈です。

この説の根拠は《「旅人の服を脱がす」
という勝負は実は2ラウンド目であって、
第1ラウンドは「旅人の帽子を取る」こと
だった》、そしてそこでは北風が
勝っている…

つまり「太陽がいくら日差しを浴びせ
かけても、旅人は逆に帽子をしっかりと
被り直すだけだった」というのです。


で、その言わんとするところ(つまり
「寓意」ですね)は、人に何かをさせる
場合の手段も状況によって判断すべきだ
(場合によっては「強制」もアリなんだ)
といったところになります。

なるほど…と思わされてしまいそうですが、
でも、上記の引用を読まれた読者には
明白なとおり、原典には「帽子を取る」
勝負なんかないんですよね。

      

いつどこで加わったのか不明ですが
(知ってる人は教えて!)、この
第1ラウンドが後世の付け足しである
ことは間違いありません。


ただ、勝負を2ラウンド制にしたこの
(おそらく近代の)ヴァージョンも
それなりに意味深いものではあります。

説得手段も状況によるわけで、太陽の
採った手段が常に正しいとは限らない
…という教訓。
    
そういう視点から読むと、しまいに旅人が
暖まりすぎて川に飛び込んでしまう
(溺れるかもしれない;^^💦)という
エンディングには「必ずしも太陽の一方的
勝利ではない」という相対化の意図が
込められているようにも思えます。

さらに深読みすれば、こうして勝ち負けを
ウヤムヤにしていくことで、そもそも
「強さ」を競うゲームなんかすることの
愚かしさ(人間の競争心のアホ臭さ)を
教えられるようでも…ありませんか?;^^💦

Sponsored Links


【解釈4】旅人の服はメンタルブロック

もう一つの解釈はさらに近代的というか
現代的なもので、この寓話のポイントは
北風と太陽の勝負自体よりむしろ両者が
脱がせようとした「服」の方にある…
というんですね。

この「服」は人が無意識に固着している、
「メンタルブロック」の象徴だと。

      

「メンタルブロック」はその人に
こびりついた心の癖のようなもので、
対人関係においていろんな形を取る
といわれます。

たとえば恋愛的な関係に入り込むことを
恐れてどうしても消極的・防御的になって
しまう姿勢とか…。

こういう「ブロック」が出てしまうことで
すぐそこまで来ていた幸せの青い鳥を
逃してしまう…
という場合もあるわけですよね。

   

だからこれ、もし異性を落とそうとする
側に立つなら、相手の「メンタルブロック」
をなんとかして解除してあげることが
戦略上のポイントになって来ますよね。

で、その具体的な方策ということになると、
結局、北風的なものと太陽的なものとが
あるという…
前と同じような話になってくるんですが、
どっちにせよ、「服=メンタルブロック」
を脱がすことを説いた寓話だ、というのが
第4の解釈ということになります。

Sponsored Links


まとめ

さあ、いかがでしょうか。

イソップ寓話の原文をしっかり押さえた上で
めぼしい解釈を4つににまとめて、それぞれ
立ち入って検討してきました。


原典に即したオーソドックスな正解はやはり
【解釈2】の「強制より説得が有効」という
ことになるでしょう。

でも、それ以外の3つを正しいと思っている
人も世間には多いわけですし、またそれらも
それなりに面白く有益な考え方を含んでは
いますから、知っておいて損はありません。


さあこれでもう、「北風と太陽」という
寓話に関する限り、どこをどう突かれても
OKですよね;^^💦

これだけの知識・情報があれば、読書
感想文だろうとレポートだろうと、
もうバッチリでしょう。

    

さて、すでに指摘していますが、この
「北風と太陽」のように、動物などを
キャラクターにしてドラマを作り、その
背後に主張したい意味・教訓(つまり寓意)
を込めていく物語のことを「寓話」といいます。

400以上もあるイソップ寓話の作者とされる
イソップ(アエソーポス)は2600年以上も
昔の人ですが、寓話といわれるお話がどれも
これもそんなに古いかといえば、そうとは
限りません。

Sponsored Links



いま現在も、世界のどこかで新しい寓話が
誕生しているかもしれませんし、あなた
自身だって作ろうとすれば作れるのです。

そのようなものとして有名な”現代の寓話”に
ベトナム戦争中に発生したといわれる
「サソリとカエルの話」があります1ね。

これがまた痛いほど面白く、
考えさせられるお話なんですね~;^^💦
👉この寓話の詳細はこちらで情報提供して
いますので、是非ご参照ください。

サソリとカエルの話 その意味は?🐸自らの自然(ネイチャー)を知れ?

      


👉そのほか”寓話めいた”部分のある童話として
以下のようなものがあると思いますので、
そちらもご参照ください。

青髭(童話)のモデル ジル・ド・レの実話とあらすじ(ペロー/グリムの違い)

星の王子様のあらすじ【最後まで詳しく】🌠キツネの秘密とは何?

ピーターパン原作のあらすじ 怖いのは子供が○○されるから?

      


👉当ブログでは寓話や童話から小説・映画脚本
まで、日本と世界の種々の文学作品について
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

「感想文の書き方」一覧

ではまた~~(^O^)/


(Visited 6,216 times, 1 visits today)

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ