青髭のモデル ジルドレの実話!童話のあらすじはグリムとペローで違う
男なんてホントに
いるんですか?
大金持ちの貴族なので
次から次へと美女を
妻に迎えては殺して
いました(
気をつけなさいという
教訓物語として語り
つがれたんでしょう。
ような男がホントに
いた…ってこと?
何百人もの子供たちを
嗜虐的に殺害し続け、
ついには公開処刑された
ジル・ド・レ男爵。
むしろイケメンで、
髭も青くはなかった
ようですけどね;^^💦
ジャンヌ・ダルクを助け
フランスを救った救国の
英雄でもあって、弱冠
25歳にして元帥に任命
されるという栄光に
包まれていたんですよ。
最低・最悪の行為に
走るとは(
これはやはり”なぜ❔”を
問わずにいられません。
というわけで、おなじみ”あらすじ”暴露
サービスの第159弾(“感想文の書き方”
シリーズ第224回)は”超”問題作
童話『青髭』(La Barbe Bleue)に挑戦
で~す((((((ノ゚🐽゚)ノ
『ペロー童話集』(1695)で形が整い、
『グリム童話』にも採録されましたが、
こちらは初版(1812)のみで第二版以降は
削除されていますので、お買い求めの
際はご注意を!
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内容はザッと以下のとおり。
ジル・ド・レとは誰か
さて、青髭のモデルについて確実なことはいえないんですが、多くのフランス人に
よって多分この人だろうと思われている
実在の貴族がジル・ド・レ(Gilles de Rais,
1404-1440)男爵です。
この人が青髭だったとすると、青髭も
はじめから悪かったわけではなくて、人生の
前半ではむしろ”神”の領域にありながら、
後半でとんでもない”悪魔”の世界に転落
してしまったと見られるわけですね。
いったい何が彼を”神”から”悪魔”へと引きずり
下ろしたのかといえば、一般に言われている
のが、オルレアンの戦いなどの戦線で大いに
助けて戦った聖少女ジャンヌ・ダルクが
ついにイングランド王によって火あぶりの
刑にされてしまったこと。
👉“神の声”を聴いてフランスを救いながら
裁判で「魔女」にされ、火あぶりになって
しまったジャンヌ・ダルク。
リュック・ベッソン監督の映画『ジャンヌ
・ダルク』(後で動画もお見せします)を
含め、詳細はこちらをご参照ください。
・ジャンヌダルク(映画)のあらすじ 姉へのグロい仕打ちも史実通り?
ジルは元来、信仰にも芸術にも至高のものを
求めたディレッタント(趣味人)で、ジャンヌ
の死の4年後にも「オルレアン攻防の秘蹟劇」
という豪壮な祝典劇をプロデュースした
ほどでした。
その心の空洞ににやがて”悪魔”が入り込んで
しまった…ということなのかもしれません。
道を狂わせてしまったのは錬金術師に誘導
された「黒魔術」だと見られています。
もともと両親の早逝により祖父のもとで
我儘放題に育ったという成育歴や、また
もともと持っていたらしい同性愛的傾向も
彼の逸脱を後押ししたようです。
👉同性愛は今でこそ広く受け入れられて
きていますが、当時のヨーロッパでは
立派な犯罪。
サド侯爵(1740-1812)とかオスカー・
ワイルド(1854-1900)とかはその罪で
投獄されたことで有名です。
ただジルの時代、騎士同士の男色はむしろ
奨励されていたともいわれます
(東方女性との接触による病気の
予防のため)。
金目当てで取り入ってきた錬金術師の勧めで
「黒魔術」を実践するようになったジルは、
やがて男の子を誘拐しては惨殺するという
“悪魔”の所業を楽しむようになって
しまいます。
その地方で突然消える少年の数が
とんでもないことになってしまい、
いくらなんでもそりゃバレるわな…と。
👉「黒魔術」とか「黒ミサ」とかは要するに
通常のキリスト教信仰における”神”を
その陰画としての”悪魔”に入れ替えて
しまう背教的・涜神的行為。
サドを含む西洋文学の世界に連綿と流れ、
映画でも追求されているテーマですね。
関連する作品について情報提供しています
ので、こちらなどをご参照ください。
・ゲーテ ファウストのあらすじ 名言「時よ止まれ」の意味は?
・ローズマリーの赤ちゃんのネタバレ 戦慄の結末は原作でしか読めない!
・オーメンのあらすじ【ネタバレあり】映画も小説も全部丸わかり
・エクソシスト(映画)のネタバレ ❔…な部分を原作小説で補うと
さてそんなわけで、ジルの場合は惨殺の
対象が妻でなく男の子たちだったわけ
ですが、童話ではもちろん、そこまで
同じにして子供を怖がらせたりは
しません。
子供向けである以上、性的嗜好を含め、
あくまで「正しい」ことを教える
ストーリーになっている必要があります。
だから童話『青髯』はむしろ女の子の
生き方を教えるお話になっている次第で、
特に1話ごとに「教訓」がつけられる
『ペロー童話集』の方では終わりに
《女性は「好奇心」に負けてはいけない》
という教訓がつけられています。
つまり新妻が青髭との約束を破って小部屋を
あけてしまったのは「好奇心」に負けた
からで、そこがよくなかったんだ
と教える物語になっているわけですよね…
といっても『青髭』を読んだことのない
人にはピンと来ないかもしれません。
というわけで、「あらすじ」の方へ
進むことになります;^^💦
ペロー版『青髭』のあらすじ
話の流れは『ペロー』と『グリム』とで大差ありませんが、人物設定などの細部に
それぞれの特色が出ていますので、そこに
目をつけると興味が増すと思います。
つまり『ペロー』の語りが上でふれた
「好奇心」云々のテーマでまとめられている
のに対して、『グリム』ではまたそれとは
微妙に異なる点が強調されているのです。
ともかく以下では物語を「起承転結」の
4部に分け、文章の引用は上記広告の
『ペロー残酷童話集』(澁澤龍彦訳)に
準拠していきます。
『グリム』の方とで異同がある場合などは
👉印で注釈を入れていきますが、
不要と思われた場合は飛ばしてください。
🔑【起】
巨万の富をもつ男がいたが、不幸にして髭が青く、そのために
たいへん醜いので、彼を見て
逃げ出さない女はないほどだった。
その近所に身分の高い貴婦人と
美しい二人の娘が住んでおり、
青髭はそのどちらかを嫁に
ほしいと申し入れた。
👉この家族、男っ気のな母子家庭のよう
ですが、実は騎士になっている2人の兄弟も
いて、後半で妹の危機を救いに登場します。
青髭がこれまでに迎えた何人もの妻たちの
所在が不明だということもあって、
娘たちは気が進まない。
が、青髭の別荘に家族ごと招待され、
友達も呼んで1週間楽しく過ごさせて
もらうと、妹娘の方は青髭を立派な
人と思い始め、結婚の話が決まる。
👉『グリム』ではこの家族が「父親+3人の息子
+娘」という設定で、兄たちの存在ははじめから
明らかにされています。
青髭は「王様」で、この家を訪問して求婚。
娘は気が進みませんが、「私が呼んだら
助けに来て」と兄たちに約束させて嫁ぎます。
🔓【承】
1か月後、青髭は新妻にこれから6週間留守にするので、友達を呼んで遊んで
いてもいいと告げ、倉庫や金庫などの
鍵を次々に見せながら説明する。
最後に「一階の長廊下のはずれにある
小部屋」の鍵を示し、この部屋だけは、
「けっしてはいってはいけない」と
命じて、旅立つ。
ギュスターヴ・ド・レによる挿絵
やってきた友達や近所の女性に豪邸を
ほめそやされても、妻は例の「小部屋」
に何があるのかという「好奇心」に
とらわれていて、ちっとも楽しくない。
ついに鍵を入れて扉を開け、中を見ると、
「壁にぶらさがった大ぜいの女」
つまり青髭が殺してきた前妻たちの
死体が目に入る。
恐怖のあまり、抜こうとした鍵を
取り落とし、拾うと血がついていて
いくら拭っても取れなかった。
🔑【転】
その夕方、予定より早く青髭が帰宅。渡された小部屋の鍵を見て、なぜ
血がついているのかと尋ねる。
知らないという妻の答えに、青髭は
「おれはちゃんと知ってるぞ。
おまえは小部屋へはいろうとしたんだ!
よろしい、奥さん、はいりたければ
はいりなさい。
はいって、お前がその目で見た
ご婦人方のそばに、お前の
席を見つけるがいい」
妻が泣いて謝っても青髭は赦さず、
神に祈るための数分間の猶予だけ与える。
階上でひとりになると、妻は姉を呼び、
「兄さんたちが今日、うちへ来る約束に
なっている」から、塔へ上がって
見張りをしてと頼む。
姉はその通りにするが、兄たちは見えず、
階下では大きな包丁を手にした青髭が
「早くおりてこい。さもないと…」
と叫ぶ。
👉兄たちがなかなか見えず、青髭がいら立って
「早くおりてこい」と怒鳴るという反復が
3回続いて、サスペンスを盛り上げます。
そこは『グリム』も同様ですが、そもそも
「姉」はいないので、妻自身が窓から
乗り出して「兄さんたち、早く来て!」
と大声で叫びます。
森の中でワインを飲んでいた兄たちに
この声が届き、【起】での約束が
果たされることになるわけですね。
🔓【結】
ついに兄たちが見えたと姉が告げ、妻は降りていき身を投げ出す。
青髭が髪の毛をつかみ、包丁で首を
切ろうとしたその瞬間、扉が開いて
二人の騎士が入って来る。
青髭は逃げようとするが、
つかまって刺し殺される。
青髭の財産をすべて相続した妻は、
それらの一部を姉の結婚や兄たちの
昇進のために用いた。
また自身もその後、立派な男と幸せな結
婚をし、青髭の記憶を忘れ去ることが
できた。
グリムは悪人に厳しい?
さて、楽しんでいただけましたか?(あんまり楽しんでもいけない話か;^^💦)
ん?
「あらすじ」を始める前に『ペロー』では
「好奇心に負けてはいけない」云々の
「教訓」が軸になっているという話があり、
それはよくわかったけれども、そのへん
『グリム』ではどうなのか?
なるほど、ごもっともな疑問です。
お答えするにはエンディングにもう少し
立ち入る必要があるのですが、『ペロー』
では青髭の莫大な遺産をどう使ったかが
詳しく語られるのに対して、『グリム』には
それがなく、代わりに言われているのが
こうして青髭は、自分が
殺した女たちとならんで、
血の部屋の壁に掛けられる
ことになりました。
さすがグリム、悪人をしっかり懲罰して
おかないと収まらない…というふうに
感じてにやりとした人もおられる
かもしれませんね。
ディズニーなどの再話しか知らない人は
驚くかもしれませんが、たとえばシンデレラ
の姉たちは、グリムの初版ではラストで
足をナイフで削られ、第二版では鳩に
目玉をえぐり取られます(
白雪姫の母親も最後は赤く焼けた靴を
穿かされて、躍り続けさせられるん
ですよ~(
悪事を働いた者がラストで受ける懲罰に
かけては相当スゴいのが『グリム童話』。
その過激さはもちろん、『青髭』自体も
消えた第二版以降、削除されたり
緩められたりして一般には忘れられて
いったわけですけど。
👉『グリム童話』の特に初版でのこの傾向に
ついては、こちらの記事でも言及して
いますので、ご参照ください。
・赤ずきんのあらすじ: グリム童話とペロー童話でどう違う?
・シンデレラの原作は怖い!足を切断しても靴に入れる執念…そのルーツは?
・白雪姫は怖い?こんなに違う原作(グリム童話)とディズニー映画
・眠れる森の美女 原作のあらすじ:グリム版にない後日談とは?
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グリム童話の本・絵本:ラインナップ
ジル・ド・レを描く現代文学・映画
さて『青髯』物語についていえば、ともかく『グリム』では「好奇心」は怖いぞという
ペローのテーマも受け継ぎながら、
それよりは「悪い事をすればやればお前も
同じ目にあうぞ」という因果応報的な
教訓がより前面に出ている感じが
強いですね。
それはよいとしても、モデルと目されて
いるジル・ド・レ自身はどうだった
のでしょう。
大量の子どもを虐殺していくことに
罪悪感はなかったのでしょうか。
これが実はなかなか深い文学的テーマ
としてフランスの作家たちの興味を引いて
きたところで、19世末のユイスマンスの
『彼方』や、20世紀ではジョルジュ・
バタイユの『ジル・ド・レ』などがジルに
深入りした著作として有名です。
映画でも上でふれたベッソンの『ジャンヌ・
ダルク』(1999年。ミラ・ジョヴォヴィッチ
主演)で演じたのはヴァンサン・カッセル
ですが、彼はあくまでジャンヌを支える人で、
“悪”の側面はまったくノータッチです。
ヴァンサン・カッセルは2018年には
“オランジーナ”のCMで”バイきんぐ”の
小峠英二さんと共演もしていた
フランスの名優;^^💦
こちらの予告編では、開始後30秒あたりで
チラッと出ますので、見逃さないよう
ぜひ目を凝らしてご覧ください。
としては大作家ミシェル・トゥルニエの
中編小説『聖女ジャンヌと悪魔ジル』
(1983)があります。
そこで最も興味深い登場人物はといえば、
ジルを黒魔術に導くフィレンツェ出身の
錬金術師、プレラッティでしょう。
ジルが魅了されてしまうのはこの男が
ジャンヌ・ダルクそっくり(ジャンヌは
もともと男勝りの中性的な娘)だった
からでもあり、結局、逮捕されて、
裁判で言うこともまた面白い。
名女優サラ・ベルナール演じる
ジャンヌ・ダルク(グラセ画, 1900年前後)
つまりジルにやらせた子ども殺しについて
問われると、しかし「神はアブラハムに
その子ヤコブを犠牲(いけにえ)にするよう
要求したではありませんか」と反論し、
「サタンは神に生き写しです」と悪魔を
讃え続けるのです。
だから信仰において揺らいでいないジルは
従容として火刑台に上り、「ジャンヌ!
ジャンヌ!」と叫びながら死んでいく
ことになります。
イングリッド・バーグマン主演
『火刑台のジャンヌ』(1954)ポスター
興味をもたれた方は是非お読みください。
👇
アーサー王伝説も絡む?
これはオマケですが、『青髭』物語の形成には、イギリスの「アーサー王伝説」
も絡みあっているという説もあります」。
下記の動画に簡単な解説がありますので、
ご参照いただければと思います。
前半は童話のおさらいですので、
後半の11分あたりからご覧になれば
よろしいかと。
どう書く? 感想文
どうでしょう?『青髭』に関してこれだけの情報があれば、
感想文だろうとレポートだろうと、
もうバッチリではないですか?
そうそう、青髭のような怪物的存在に
囚われてしまうとか、また悪事を働いた
者が最後に受ける懲罰の凄まじさという
あたりはアンデルセン童話などでも顕著。
比較・対照すると面白いかもしれません。
👉アンデルセン童話については
こちらで情報提供しています。
・雪の女王(アンデルセン)のあらすじ💛アナ雪”原作の怖い童話
・童話 人魚姫(アンデルセン)のあらすじ💛本当は怖い恋物語
・赤い靴(アンデルセン童話)原作のあらすじ:怖いのはどこ?
・親指姫のあらすじを簡単に 蝶やツバメならよくてモグラは…
ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、具体的にどう進めて
いいかわからない( ̄ヘ ̄)?
👉当ブログでは日本と世界の多くの
文学や映画の作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。
お役に立ちそうなものをこちらの
リストから探してみてくださいね~(^^)у
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょ~~(^O^)/
こんなコメントが来ています