童話 人魚姫(アンデルセン)のあらすじ 本当は怖い恋物語
やあやあサイ象です。
「感想文の書き方」シリーズもはや
第76回。
「あらすじ」暴露サービスとしては
第47弾となります。
今回はぐっと対象年齢をひろげて、
小学生の読書感想文としても、また
大学生や社会人のレポートにも好適な
本当は怖い、大人の童話、
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの
『人魚姫』(1836)で行ってみましょ~。
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いうまでもなく、ディズニー映画
『リトル・マーメイド』の原作です。
はじめにそのサワリをちょっと
ご覧いただきましょうか。
(もう結構という人はスルーしてね)👇
明るくない物語
さて、この映画を見てるからって、『人魚姫』を知ってるとは
思わないでくださいね。
アンデルセンの原作からは
ストーリーも、全体的なムードも
大違いなんですから。
『人魚姫』の世界には『リトル・
マーメイド』のような明朗さも、
ユーモアも(ほとんど)ありません。
そこで追求されるのが恋愛……というか
片思いのツラさ、そして怖さであることは
はっきりしていますから、どちらといえば
大人の童話だということにもなるでしょう。
そしてまた長い物語でもあって、以下に
記述します「かなり詳しいあらすじ」も
決して完全版ではないわけですが、
子ども向けではカットするような
怖い部分は残していますので、
どうぞお楽しみに~。
かなり詳しいあらすじ
では始めましょう。文章は基本的に楠山正雄訳によっており、
原作に切れ目はありませんが、
わかりやすさのため、私の判断で
「起承転結」の4部に分けています。
気になるかもしれない部分には👉印で
注釈・解説を入れていますが、
うるさいと思う人は飛ばしてください。
では、原作に忠実で本当は怖い
(((゜д゜;)))物語のはじまり、はじまり~
🐠【起】
海底の「人魚の王国」の王さまの御殿に美しい6人の姫が住んでいました。
お妃(きさき)は早くに亡くなった
ので、姫たちのお世話はおばあさまが
してきました。
いちばん下の姫はとびぬけて美しく、
また姉たちとちがい、ものしずかな、
かんがえぶかい子でした。
海の上にある人間の世界の話を
おばあさまからきいて胸をときめかせ
ますが、15歳になるまでは、海の上へ
浮かび出ることがゆるされませんでした。
やがて15歳になった姉から順に
一人ずつ海上に上がって来ては、
おみやげ話をします。
今では夕方に姉たち5人で手を組んで
水の上へあがり、嵐が来かけると、
船のそばへおよいでいって
「海の底は美しいから沈むのを怖がら
なくていいのよ」という意味の歌を
うたってやるのでした。
👉ここはセイレーン〔シレーヌ/
サイレン〕伝説を踏まえていますね。
末の姫も15歳になって、水の上へ
のぼっていきますと、夕やみの
なかに大きな船が見えます。
船室の窓の所まで泳いでいき、
窓ガラスをすかして中をのぞきますと、
おおぜいの着かざった人がいましたが、
とくに目立って美しいのは、目の大きな
若い王子で、この王子のお誕生日の
お祝いをしているのでした。
やがて嵐になり、船は横たおしに
なって、人々は海に投げだされました。
船がふたつにわれて、王子が沈んで
いくところを見た姫は、おぼれかけて
いる王子をすくい、砂浜で介抱
(かいほう)します。
やがて近くの白い建物から娘たちが
出て来たので、岩かげにかくれますと、
ひとりの若い娘が王子さまを見つけ、
おどろいて人々をつれて来ます。
そのうち王子は目ざめて、とりまいて
いるひとたちに、ほほえみかけました。
姫は、たすけたのは自分であることを
王子さまに知ってもらえなかったことを
ずいぶん悲しく思いながら、海底の
御殿へかえっていきました。
🐠【承】
人魚の国に王子のことを知っている娘がいましたので、姫は王子の御殿への
行きかたもわかり、それからは毎晩の
ように、近くまで行って王子のすがたを
見まもります。
りょうしたちからも、王子のよい
うわさをきくにつけ、自分がすくった
ことを思ってうれしくなり、また
人間というものが、とうとく思われ
自分も人間のなかまにはいれたら、
とねがうようになりました。
おばあさまは、人間と人魚とは
このようなちがいがあると教えます。
・人魚は三百年まで生きられる
けれども、死ねば水の上の泡
(あわ)になるだけ。
・人間は人魚ほど長く生きない
けれども、死んでも『たましい』が
いつまででも生きている。
J.Waterhouse, “Mermaid”(1900)
これをきいて姫はかなしみます。
「なん百年の寿命なんてみんな
やってしまってもいいわ。
そのかわり、たった一日でも
人間になれて、死んだあとで、
その天国とやらの世界へのぼる
しあわせをわけて
もらえるなら」
すると、おばあさまは、こんな
言い伝えもあると言います。
「ひとり人間がある人魚を
ありったけのまごころで
愛して結婚するときには、
その人間のたましいが
ながれこんで、その人間の
しあわせを分けてもらえる
ことになる」
「でもそんなことはありっこない」、
わたしたちの「おさかなのしっぽ」を
人間たちはみにくいと思っているから、
とおばあさまはつけくわえます。
人魚の国の舞踏会の晩、姫は御殿を
ぬけだし、海の魔女(まじょ)の
ところへ行ってみます。
魔女は、姫が来たわけをすべて
お見通しで、しっぽが消えて二本足に
なる薬を調合するとうけあいます。
でもそれを飲めば、「するどい剣を、
体につッこまれるよう」に痛い()
と魔女。
👉この「剣を体につッこまれるよう」
云々の表現はこの後、何度も出てきます。
大人の(深いところは大人にしかわからない)
童話だと言われるゆえんですが、
それにしても、海底にもいるとされる
この「魔女」って、いったい何?
この問題はこちらで探求していますので、
ぜひご参照ください。
・ヘンゼルとグレーテル ⦅魔女の正体⦆ホントはいい人で怖いのは子供?
それに「いちど人間のかたちを
うけると、もう二どと人魚には
なれない」、しかも
「もし王子がほかの女と結婚
するようなことになると、
もうそのあくる朝、心臓が
やぶれて、お前さんは泡に
なって海の上にうくのだよ」
「かまいません」と姫が青ざめた顔で
答えますと、では「その舌をお出し、
それを代金にはらってもらう」と
魔女は姫の舌を切り取って、
声の出ない体にしてしまいます。
👉「人魚姫像」は大阪のマーメイド広場を
はじめ、世界各地にありますが、
どれも同じ型からの複製のようです。
コペンハーゲン空港の人魚姫像
よく見てください。
腰から下はすでに2本の脚に分かれ、かつ
ヒレが付いていますね。
人魚姫は、そこで薬をのむと、
気がとおくなってたおれました。
朝、目がさめとたんに切りさかれる
ような痛みを感じましたが、もう
そのとき、目のまえに美しい王子が
立っていました。
あなたはだれで、どこから来たのかと
たずねられながら、口をきけないまま、
お城へと案内されます。
ひと足ごとに刄ものの上をふんであるく
ような痛みでしたが、お城のなかでは、
だれひとりおよぶもののない美しさ。
歌をうたうことはできませんが、
痛みに耐えながらの踊りはすばらしく、
この世ならぬ美しさが目をひきます。
王子は姫を馬にのせて森をいっしょに
歩いたりして楽しみました。
やがて人魚の姉たちが海上に出て来て、
海底のみんながどんなにさびしがって
いるかを毎晩、話すようになります。
日がたつにつれて、王子は人魚姫が
好きになりましたが、お妃にしよう
というようなことは思いません。
王子が人魚姫を腕にかかえて、ほおを
よせるとき、「わたくしを、だれよりも
かわいいとはお思いにならなくて?」
目がそうたずねるようでしたので、
「そうとも」と王子はこたえました。
「ぼくが船で難破(なんぱ)したとき、
浜でいのちをたすけてくれたちばん
若い子だけが、ぼくのこの世の中で
好きだと思ったただひとりの娘だった」
そして「その娘にきみは
そっくりなんだ」と。
「おいのちをたすけてあげたのは、
このわたしだということをお知りに
ならないのね」
人魚には泣く能力もないのでした。
🐠【転】
王子とおとなりの王国の姫との縁談がもちあがり、その姫に会うための船旅で
「でも、ぼくはそのお姫さまが好きには
なれないだろうよ」と王子は人魚姫に
いって、キスしました。
ところが、その姫の顔を一目見て王子は
あのとき自分をすくってくれたのが
まさにこの姫だと、おどろきます。
王子は花よめをだきしめて「ああ、
ぼくはあんまり幸福すぎるよ」
と人魚姫にいいます。
「最上の望みがかなったのだもの」
人魚姫は王子の手にくちびるを
あてましたが、心臓はいまにも
やぶれそうでした。
結婚式で人魚姫は花よめの介添
(かいぞ)え役をつとめ、その夕方、
花よめ花むこが船で海へ出るのに
ごいっしょしました。
痛みに耐えながら踊りまわりますと、
みんなやんやとさわいでほめました。
そのとき波のなかから出てきた
姉たちは、みな髪を切りとられて
いましたが、それは髪とひきかえに
魔女がくれたふしぎな短刀のためでした。
「日がのぼるまでに、これで王子の
胸をぐさりとやれば、その血が足に
かかって、おさかなの尾になるの。
あんたはもとの人魚にもどって、
このさき三百年生きられるでしょう」
🐠【結】
寝室にしのびこんだ人魚姫が、花よめの頭を胸にのせてねむっている王子の
ひたいにそっとくちびるをつけますと、
王子は夢をみながら、花よめの
名をよびました。
人魚姫の手のなかで短刀がふるえ、
つぎの瞬間、姫はそれを遠くの波間
(なみま)に投げ入れました。
投げた所に赤い光がして、そこから
血のしずくがふきだしたようでした。
もういちど王子をみてから、身を
おどらせて海へとび込みますと、
みるみる、体が泡になってとけていく
ように思いました。
日がのぼりますと、ただよう空気の
ようなものが、泡のなかから出て、
だんだん空の上へあがって行きます。
「どこへいくのでしょう」とたずね
ますと「大空の娘たちのところへね」
と空気の精の声が答えます。
「あなたもわたしたちと同じく
まごころこめて、同じ道に
つとめたから、いま、空気の
精たちの世界へ、自分を引き
上げるまでになったのですよ。
やがて死ぬことのない
たましいがさずかることに
なるでしょう」
そのとき、人魚姫は、日の神さまに
むかって光る手をさしのべ、生まれて
はじめての涙を目に感じました。
船の上では王子と花よめが人魚姫を
さがして、かなしそうに、わき立つ
海の泡をながめまていました。
姫は王子に目には見えないキスを
おくり、大空の娘たちとともども、
たかくのぼって行きました。
「三百年たてば、わたしたち神さまの
お国までものぼって行けるのね」
と姫がききますと、そう待たないでも
行けるかもしれないという答え。
「わたしたちは、こどもたちの
いるところなら、どの人間の
家にもただよっています。
いいこどもをみて、つい
よろこんでほほえみかける
とき、三百年が一年へります。
けれど、そのかわり、いけない
こどもをみて、かなしみの涙を
ながさせられると、そのひと
しずくのために一日だけ
のびることになるのです」
キリスト教的な説教臭?
さあ、いかがでした?いやー、とっても切ないですよね。
ラストは死ぬとはいえ、救われますから、
一応、ハッピーエンドなんでしょうけど……
やはり悲しみの余韻は残ります。
そしてそのラストのキリスト教的な
説教臭こそ、いかにもアンデルセン。
この傾向は『赤い靴』ではもっと強烈
でしたし、アンデルセン童話の先行者、
グリムの場合も懲罰は苛酷でした。
👉グリム童話での懲罰の過酷さは、
1世紀半前のペロー童話と比較しても
よくわかります。
それについてはこちらの記事などを
ご参照ください。
・赤ずきんのあらすじ: グリム童話とペロー童話でどう違う?
・シンデレラのガラスの靴:小ささの意味は?原作は中国起源?
・青髭(童話)のモデル ジル.ド.レの実話とあらすじ(ペロー/グリムの違い)
👉また『マッチ売りの少女』『赤い靴』
『裸の王様』などのアンデルセン童話や
グリム童話のいくつかについては
こちらで詳しく紹介しています。
・マッチ売りの少女は火で何を見せる?本当は怖い童話の現代的”真実”とは?
・赤い靴(アンデルセン童話)原作のあらすじ:怖いのはどこ?
・“裸の王様”の意味は言う人によって違う?原作に戻って教訓を考察!
・雪の女王(アンデルセン)のあらすじ💛アナ雪”原作の怖い童話
・眠れる森の美女 原作のあらすじ王子の母は人食い女だった?
・ラプンツェルのあらすじ💛グリム原作初版は何がヤバかったの?
・白雪姫は怖い?こんなに違う原作(グリム童話)とディズニー映画
アンデルセンの作品ならまだまだ
いろいろとありますよ~。
早く安く手に入れたい場合は
Amazonが便利。
こちらから探してみてください。
アンデルセンの本・絵本:ラインナップ
まとめ
そんなわけで、感想文やレポートなどを書く場合は、恋愛物語がキリスト教的な
道徳観とどのように結合・調和されて
いるか、その結合に自分は納得できるか
どうか…
といったところを考えてみれば、
高度な文章が書けるかも、ですね。
👉いや、あまり納得できない、
「人魚」についてはむしろ笑いたい、
という方はこちらの記事もご覧
いただけたらと思います。
・人魚の肉を食べると不老不死に?では交わると?八百比丘尼伝説&アメリカ小説etc
👉それから、人魚(マーメイド)は
夏目漱石の『三四郞』にも
出てくるんですね。
それについてはこちらで。
・夏目漱石 三四郎のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説
・漱石 三四郎で感想文:美禰子の愛は?”無意識の偽善者”とは?
ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、具体的にどう進めて
いいかわからない( ̄ヘ ̄)?
そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。
👉当ブログでは、日本と世界の種々の
文学・映画作品について、「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。
参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらからお探しください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
こんなコメントが来ています