サクラさん
夏目漱石の『三四郎』で
感想文を書かないと
いけないんですが、
面白くないので困り
ました…(😿)

ハンサム 教授
ストーリーを追おう
として早読みして
いませんか?

じっくり腰を据えて
読まないと人物の魅力も
伝わってきませんよ。

サクラさん
美禰子は美人として
たしかに魅力的ですが、
三四郎をひきつけて
おきながら、結局なん
だかわからない男と結婚
してしまうなんて、
やっぱりわかりません。

ハンサム 教授
その「わからない」
ところが魅力;^^💦



そこに三四郎たちが翻弄
されるからこそ、話が
面白くなるんですから。

サクラさん
う~ん。そう言われても
納得がいかない。

根底に女性への偏見が
あるんじゃないで
しょうか。

ハンサム 教授
あ、それいい!

その疑問をぶっつけて
いけば、すぐれた感想文
またはレポートになると
思いますよ。


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というわけで、「感想文の書き方」
シリーズ第84回は漱石の長編小説
『三四郎』(1908)で行ってみま~す。
   


明治41(1908)年に東京・大阪の両『朝日新聞』
(当時は『東京朝日』『大阪朝日』が別でした)
に連載され、2015年にはその『朝日新聞』が
『こころ』につづいて異例の百年ぶり
再連載
を行うという驚異のロングセラー。

翌年の『それから』、その次の年の『門』とともに
「三部作」をなすとされる、その発端の
物語ということになります。

👉まだ読んでなくて内容を
知らない人は、まずこちらで
「あらすじ」を仕入れて
くださいね。

夏目漱石 三四郎のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説

        




感想文の例(1200字程度)

はい、ストーリーがしっかり理解でき
ましたら、さっそく感想文に
取り組みましょう。

まずはこの私、サイ象が字数制限
1200字(400字詰め原稿用紙3枚)の
感想文を作成してみましたので、
じっくりお読みいただければと思います。

 「面白くない」という感想のよく
聞かれる『三四郎』だが、私は
面白く読んだ。

結局、この物語を要約しているのは
ボケ役のようで実は案外賢い友人、
佐々木与次郎が吐く、この名言では
ないだろうか。

廿(はたち)前後の同じ年の
男女を二人並べて見ろ。

女の方が万事上手(うわて)だあね。

男は馬鹿にされるばかりだ。
         (十二)


 こう教えられた三四郎が意識する
「男」はもちろん自分で、「女」は
美禰子以外にないのだろう。

つまり『三四郎』はこの二人の間の
恋愛ゲームというか、熊本から出てきた
ばかりの23歳の大学生、三四郎が
“東京の美女”美禰子に翻弄される経緯を
主筋とする小説である。

  

 だが、三四郎を翻弄する女は、
実は美禰子ばかりではない。

開巻早々、熊本から上京する汽車に
京都から乗り合わせた女性と、名古屋の
旅館で相部屋することになるという
際どいエピソードが置かれているのだが、
ここですでに三四郎は「馬鹿にされ」て
いるのだ。

この女性、風呂場では「ちいと流し
ましょうか」と平気で入って来ようとし、
結局、同室に寝ながら全く手を出さない
三四郎に、翌朝、別れ際に「あなたは
よっぽど度胸のない方(かた)ですね」
と言って「にやりと笑う」(一)。

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 この挿話は、東京に落ち着いてから
美禰子との間で展開されるドラマの
予告編のようなものとして置かれて
いると思う。

つまり、進むべきところで進めば、
意中の女性を自分のものにする
ことができる。

ところが「度胸のない」こととか、
様々な要因に妨げられて、チャンスを
逃してしまえば、それっきり女性は
自分の手を離れ、別の男のものに
なってしまう。


 『三四郎』に教訓を読むとすれば、
そういったことになると思う。

これはたぶん、若くて未経験な男に
よくある話であって、ありきたりで
つまらないという批評があっても
無理はない。

だが、そのような男の生態を同年配の
女性と並べ「女の方が万事上手だあね」
という実態を浮かび上がらせるというか、
そのような男女観を表現したストーリーに
なっているところが、この小説の独特な
ところではないだろうか。


 また、女性のこのような見方の
根底には、男にとって女は信用の
ならないもので、男同士の絆こそ
大事にすべきだという、伝統的な
発想があるとも考えられる。

そのことは、たとえば美禰子が三四郎と
一緒に行った展覧会で、やはり美禰子に
気のある野々宮の姿を見や三四郎に
何やら耳打ちする場面などに顕著だ。

   whisper-408482_640 


聴き取れなかった三四郎が後でそれに
ついて尋ねると「用じゃないのよ」と
答え、「野々宮さん。ね、ね」と美禰子。

その「意味」を理解した三四郎が彼女に
向ける言葉は「野々宮さんを愚弄した
のですか」であり、美禰子の回答は
「あなたを愚弄したんじゃないのよ」
である。


 つまりこういう場合に、「愚弄」
された友人の方をこそ思いやる
三四郎の思考経路と、それを全く
理解しない美禰子。

このあたりにも漱石らしい男女観が
読めるようで、私には面白かった。
           (1213字)


どうです?

うまくまとまっているでしょう。

これをそのままコピペすることは
もちろん厳禁ですが、適宜、自分らしい
ものに文章を変えて使ってもらうのは
かまいませんよ~;^^💦


ん? 400字とか800字とかの制限が
ある場合は、不要と思える部分をカットし、
逆に2000字とか、もっと書く場合は、
それこそ自分の思うことをどんどん
入れ込んでいけばいいんですよ。

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代助の前身は美禰子?

さて、もちろん感想文の内容としては、
上記例文のようなことばかりでなく、
いろいろとテーマが考えられます。

たとえばこの『三四郎』、次作の
『それから』、さらにその次の『門』へと
続く「三部作」だということになって
いますから、それらも読んでその連続性に
ついて考える…
なんてのもいいテーマです。


ただ、登場人物の名前は三作すべて
違いますし、完全な続き物として
読めるわけではありません。

「三部作」というのは、漱石自身が
銘打ったわけではなく、周りで勝手に
言い出したことですね。


いわれるようになった最大の要因は、
ズバリ、第三作の『門』で語られるのが、
友人から妻を奪った男のその後の経緯で、
これがまさに前作『それから』の後日談
として読めること。

でも、『三四郎』と『それから』の間に
そういった緊密なつながりがあるかというと、
それを見つけるのはちょっと苦しいんですね。

  OLYMPUS DIGITAL CAMERA
  東大構内の心字池(通称”三四郎池”)

第一、主人公の三四郎と『それから』の
代助とがあまり似ていない。

23歳だった三四郎が7年後に代助のように
なるというのはちょっと想像しにくい。

家庭環境などの境遇も、頭の切れも、
女性への受けもずいぶん違いますよね。


このアポリア(難問)を解く一法として
出てくるのが、代助の前身を三四郎でなく
むしろ美禰子に求めるという説なんです。

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不「自然」な恋愛行動

つまり『三四郎』の美禰子は三四郎との
間に恋愛に近い関係を築きながら、
他方で野々宮さんとの間でもそれに近い
ことをしていたようでもありました。

上記の感想文でも問題にしていた、
野々宮さんに見せつけるために三四郎に
耳打ちすることなどは、まさにそれ。

つまり潜在的な三角関係を活用した    
コケットリー(嬌態)がとっさに
出るんですね。

     audrey original

そして結局は、突然現れた第三の男と
そそくさと結婚してしまいます。

この男を愛しているのかどうかも、
それ以前の段階では三四郎と野々宮さんの
どちらにほんとは気があったのかも、
ついにわからずじまい。


一方、『それから』の代助は物語が始まる
三年前に、好きだった三千代を「義侠心」
から親友の平岡に譲るという不自然を
あえてしており、結局そのことで
「自然に復讐(かたき)を取られ」ます。
👉この経緯はこちらの記事などで
詳しく検討していますので、
ぜひご参照を。

漱石 それからのあらすじ:簡単/詳しくの2段階で解説

それから(漱石)で感想文【読書レポート2000字の例】愛の言葉は…

        


つまり、このような視点からしますと、
恋愛や結婚にかかわる局面で「自然」に
反した行動をとってしまうという点で、
美禰子と代助が共通していることが
見えてくるんです。

だから、代助の前身は三四郎より
むしろ美禰子だ、と。

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漱石自身が語る「美禰子」の性格?

それなら、書けるんじゃないですか?

代助を絡ませても絡ませなくてもいいので、
美禰子のコケティッシュな振る舞いと
その反「自然」性について……

どう? 魅力的でしょう?


もちろん必ずしも否定する必要は
ありません。

美禰子の行動になんら不正はなく、
女性としてまったく「自然」に振る舞った
だけだ、と論じていくのも面白い。


ともかくここでは、この美禰子という
女性の性格について、作者の夏目漱石
自身が語っていた言葉をすこしばかり
紹介しておきましょう。

美禰子のモデルになった女性も何人か
考えられるんですが、その一人が
「元始、女性は太陽であった」で有名な
平塚らいてう(明〔はる〕子)。

この人がまだ女学生のころ、漱石の弟子の
森田草平と塩原温泉郷で心中未遂をする
という事件で世を騒がせました。
    
     

草平は漱石の世話により、この事件を
素材とした『煤煙』という小説を
『東京朝日新聞』に連載させてもらう
ことになるのですが、その直前に『朝日』に
連載されたのがこの『三四郎』。  

執筆前に、平塚明の特異な性格について
たくさん話したので、それが美禰子に
反映しないはずはない、と草平。

現に漱石は「どうだ、君が書かなければ、
ぼくがそういう女を書いて見せようか」
とも口にしたというのです。
(森田草平『漱石先生と私』)
     


👉平塚らいてうとこの事件について
より詳しくはこちらで。

平塚らいてう塩原事件:才ある美人の不倫心中逃避行…なぜ?

         らいてうyjimage



無意識の偽善者?

ただ、漱石は平塚明に会っていませんし、
そもそもそう多くの女性と恋愛経験を
重ねた人ではありませんでしたから、美禰子の
人物造型にはブッキッシュな(書物からの
知識による)部分も大きいと考えられます。

草平の話す明子について「どうもわからん」
としながら、漱石は当時読んでいた
ドイツの作家ズーダーマンの『消えぬ過去』
Es War, 英訳題The Undying Past
)のヒロインを引き合いに出して、明子も
こういう女だとすれば「それで解釈ができ
ないこともない」と言ったというのです。

ああいうのを自ら識らざる偽善者
(アンコンシャス・ヒポクリット)

というのだ。

ここにいうヒポクリットとは
いうところの偽善者ではない。

つまり自ら識らざるあいだに
別の人になって行動する
という意味だね。

自ら識らずして行動するんだから、
その行動には責任がない。

(森田草平『漱石先生と私』。
    下線部は原文では傍点)

        vintage-1077954_640
         よくわからない女…… 
   

どうでしょう。 

代助も三千代を譲るという不自然を
あえてしたとき、この「自ら識らざる」
すなわち無意識の偽善
陥っていたのでしょうか。

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それはともかくとして、美禰子もそのように
「解釈」できるかどうか、じっくりと
読み直してみてはどうでしょうか。
👉三部作の終点である『門』、
またその後の”後期三部作”の
終点である『こころ』を
考え合わせるのも一法ですね。

こちらをご参照ください。

門(夏目漱石 )の簡単なあらすじと小論文へのヒント

門(夏目漱石)の詳細なあらすじ:登場人物に入り込んで解説

夏目漱石 こころのあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説

夏目漱石 こころ:”感想は書かない”感想文《虎の巻》

                 



女は早く年を取る?

ところで、漱石の代表作といわれる
『こころ』の「下 先生の遺書」を
じっくり読んだ人なら、若き日の「先生」と
「K」の両方ともが、ある意味でお嬢さんに
翻弄されていたことがわかるでしょう。

これは三四郎・野々宮さん・美禰子の
三角関係の反復でもあります。

漱石の小説での男女関係は、だいたい
これが基本だともいえるんです。

  


『それから』では「自然に復讐される」
ということが主題になっていましたが、
その「自然」(nature)の対義語として
漱石がしばしば繰り出すもう一つの
キーワードが「技巧」(art)。

この対立を男女差にからめた場合、
女たちがより多く「技巧」的であり、
それは彼女らが無意識の偽善を繰り出す
ことにおいて男よりはるかに巧みである
ことからも明らかだ……

この見方に反対してもいいわけですが、
ともかく漱石自身はこの認識を保持して
いたはずで、それはほとんどの小説に
表出しています。



同年齢なら「女の方が万事上手」…というか、
いろんな意味で女性は早く年を取るので、
のんびりしている男どもが女性からは
どうしても「馬鹿」に見えてしまう…。

これって、実はおそらく世界中で多くの
男女が感じている普遍的な現象。

それを極度に象徴的に表現した童話が
『ピーターパン』ではないでしょうか。
👉『ピーターパン』と『三四郎』の
比較対照なんてのも面白い
テーマかもしれません。

『ピーターパン』については
こちらを参照してください。

ピーターパン原作のあらすじ:怖いのは子供が○○されるから?

ピーターパンで感想文?永遠の子供を愛したウェンディ…💚

    



そしてこの男女観は、これも漱石文学に
一貫するといわれる「恐れる男と
恐れない女」という男女観にも当然
重なってきます。

👉そのあたりを考える上では、
こちらの記事も参考にしてください。

夏目漱石名言集『こころ』etc.に滲む独特の恋愛観とは?

漱石『こころ』のお嬢さん問題と河合奈保子「けんかをやめて」


さあ、これだけれの情報があれば
もうOKですよね。

感想文だろうが、読書レポートだろうが。

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ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…

だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?


う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦

そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。

    

各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。


だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。

さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を
知るには、実際に出品され大臣賞などを
受賞している感想文をじっくり読んで
分析してみるのがいちばんです。

こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。

読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から

セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ

                 

アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ

    

そちらで解説している「書き方」を
踏まえて、当ブログでは多くの感想文例を
試作し提供してきましたが、このほど
それらの成果を書籍(新書)の形にまとめる
ことができましたので、ぜひこちらも
手に取ってご覧ください。
  👇


買う前にその「予告編」が見たい
という人は、こちらでどうぞで。

読書感想文 書き方の本はこれだ!サイ象流≪虎の巻≫ついに刊行!!!

            


👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。

気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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