ラプンツェルのあらすじ//グリム原作初版は何がヤバかったの?
やあやあサイ象です。
「感想文の書き方」第137回の今回は
「あらすじ」暴露サービスの第85弾!
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今回はディズニーアニメのヒット映画
『塔の上のラプンツェル』(2010)
の原作、グリム童話のなかでもいちばん
…う~ん、なんというか……きわどい
「ラプンツェル」です。
何がきわどいかって?
そこがまあ、絵本や映画だけ見ていたんでは
わからないところなので、ここはぜひとも
原作の、それも初版(1812)を読んで
いただく必要があるんですね。
どんどん変わっていったグリム童話
というのも、『グリム童話』に収められた物語の多くは初版から第5版(1857)までの
間にどんどん削除(カット)や書き変えが
なされていったわけですが、そのように
変えられた童話のうち代表的なものが
この「ラプンツェル」。 👇
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そもそも『グリム童話』で変えられて
いったのは、どんな部分だったのかと
いいますと……
一つは暴力的で残酷すぎるところ。
もう一つは……オホン( ̄ヘ ̄)
もうお分かりですよね。
ともかく徐々にお上品に…というか
子どもの純潔が重んじられるように
なっていく19世紀ヨーロッパの時代の
流れを反映しているわけですね。
(逆にいうと、以前は下品まる出しで
子どもに配慮などしていなかった
ということですが…;^^💦)
そのあたりの事情を見てもらうためには
「かなり詳しい」あらすじが必要に
なるんですが、それに入る前に、映画の
予告編をご覧いただきましょうか。
(もちろんお上品です。もう結構
という人はスルーしてくださいね)
かなり詳しいあらすじ
それでは参りましょう。以下のあらすじ中、「”」印の白い囲みは
吉原高志ほか訳『初版グリム童話集1』
(白水社)からの引用で、そのほかの
部分もこの訳にもとづいています。
もちろんネタバレありですので、
結末を知りたくない人は絶対に
読まないようにしてください。
「起承転結」の4部に分けていますが、
それは、私の勝手な判断によるものです。
それでは、始まり始まり~
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👿 【起】ラプンツェルが食べたくて
昔、子どもがほしいと願いながら、長い間さずからない夫婦がありました。
ある時やっと妻が身ごもり、隣家の妖精の
庭に植わっている野菜のラプンツェルを
食べたくてたまらなくなりました。
👉『グリム童話』の初版では「妖精」
ということになっていたこの老女ですが、
第2版以降では「魔女のゴーテルばあさん」
に変更されました。
これによって「悪い人」というイメージが
ぐっと強くなったように思われますが、
それにしても、そもそも「魔女」とは
一体どういう存在だったのでしょうか?
この問題はこちらで探求していますので、
ぜひご参照ください。
・ヘンゼルとグレーテル ⦅魔女の正体⦆ホントはいい人で怖いのは子供?
食が細ってやつれた妻が
「ラプンツェルが食べられなければ
死んでしまう」と言うので、夫は
高い塀をのりこえてラプンツェルを盗み、
妻に食べさせます。
妻はあまりのおいしさに、次の日は
3倍も食べたいと言い、夫がもう一度
忍び込むと、妖精(魔女)に見つかって
しまいます。
👉今ではありふれた野菜として市場に
出回っているラプンツェルですが、グリムの
時代ではまだ非常に貴重な植物で、グリムが
採取した原話ではこの「妖精」にとっては
魔術を使って育てた宝物でした。
この夫婦が命がけでほしがり、結局、
生まれた子をラプンツェルと交換して
しまうという現代ではありえない事態には
そういう背景があったのです。
ドイツで売っているラプンツェル:出典 megimigi.blog.so-net.ne.jp
👿 【承】生まれた子をくれるなら
夫が必死になって弁解すると、妖精(魔女)は言います。
「それなら好きなだけ持っていけ。
ただし生まれる子を私にくれるなら」
夫は恐ろしさのあまり()承知して
しまい、生まれた女の子をラプンツェル
と名づけて妖精(魔女)に渡して
しまいました。
太陽の下でいちばん美しい子どもに
なったラプンツェルは、12歳になると、
森の中に築かれた入り口も階段もない
高い塔に閉じ込められました。
👉これも現代では信じられない暴挙であり
児童虐待ですが、12歳という成年近い娘
(当時のドイツでは15歳で成人)の
処女喪失を恐れて屋内に閉じ込めてしまう
という教育方針は別段「魔女」的なことでは
なく、普通に行われていたとのことです。
詳しくはこちらで。
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妖精(魔女)が下から呼ぶとラプンツェルは
見事な長い金髪を窓から垂らし、妖精
(魔女)はそれをつたって登ってくるのです。
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👿【転】王子と愛し合う
そんなある日、森を歩いていた王子が塔の上のラプンツェルを発見し、美しい
歌声のとりこになってしまいました。
塔に登れないのでがっかりしますが、
何度も来るうちに、妖精が登るところを
ひそかに目撃し、その方法を学びます。
「ラプンツェル、ラプンツェル!
おまえの髪をたらしておくれ!」
ある夕暮れ、妖精と同じ言葉で呼びかけると
長い髪がおろされ、王子がそれにつかまると
塔の上へ引き上げられました。
ラプンツェルは驚きますが……
👉赤字部分は第2版(1815)以降ではけれどまもなく、ラプンツェルは
この若い王子がたいへん好きに
なったので、毎日来てください、
引いてさしあげますから、
と約束しました。
そうしてふたりはしばらくの間、
ゆかいに楽しく暮らしました。
妖精はそのことに
気づきませんでした。
ところがある日のこと、
ラプンツェルが妖精に
こんなことを言いだしました。
「ねえ、名づけ親のおばさん、
わたしのお洋服きつく
なっちゃって、わたしの
からだに合わなくなっちゃたの。
どうしてかしら」
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「おばあさんを引き上げるのは
王子さまよりずっと重い」。
つまり男が出入りしていることがバレて
しまうのは、そう口を滑らせたからで、
妊娠の事実からではないことにされた
わけです。
カットされたといっても、性描写という
ほどのものがあったわけではないのですね。
期待してた人にはすみませんけど;^^💦
だまされていたことに気づいて
激怒した妖精は、ラプンツェルの髪を
切り落とし(((゜д゜;)))、荒れ野に
追い払いました。
ラプンツェルは荒れ野でみじめに暮らし、
やがて男女の双子を生みました。
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👿 【結】塔から身を投げる
何も知らぬまま訪ねてきた王子は、妖精が垂らしたラプンツェルの髪に
つかまって搭の上に登ります。
そこですべてを聞かされて絶望し、
塔から身を投げ、命は助かりましたが、
両目👀が抜け落ちてしまいました(
何年か後、荒れ野にやってきた王子は
ラプンツェルの声を聞きつけ、
二人は抱き合います。
ラプンツェルの涙が王子の目に入ると、
王子の目はもとどおり見えるように
なったのでした。
きわどくなくて、すみません
さあ、いかがでした?え? ぜんぜんきわどくないじゃん、
つまんないの…┐( ̄ヘ ̄)┌…ですって?
ハハハ、申し訳ありません。
肩すかしになっちゃいましたかね?
でも原作はほんとにこうなんだから
仕方ありません。
実際、映画『塔の上のラプンツェル』では、
王子が大泥棒のフリン・ライダーに
変えられていて、「妊娠」もはっきり
描かれてなはいないものの、まあ
あっても不思議はない展開。
それらはまあ現代だからこそで、
泥棒がいい目を見たり、娘が妊娠したり
という展開は、ヨーロッパの童話では、
19世紀にはどんどん消されていった…
というところがポイントです。
その結果、現代人には”ものたりない”
話になっちゃったので、ディズニー映画を
含めいろんなヴァージョン(変形)で、
刺激的な尾ひれがつけられてもいますよね。
たとえば「最後にラプンツェルが魔女の
もとに戻って王子を殺してしまう」とか…
👉そこまで過激な変形ではありませんが、
太宰治の短編『ろまん燈籠』は、兄弟5人が
『ラプンツェル』の続編を書き継いでゆく
という、変わった趣向の楽しい小説です。
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勧善懲悪は昔話の文法
原作に戻れば、ともかくも王子は塔から落とされて両目が飛び出してしまうわけ
ですから、ずいぶん苛酷な懲罰が
下されたものです。
ラストのラストで健常に戻るとはいえ、
やっぱり未婚の娘を妊娠させるなんて
けしからんことをした以上、罰を
受けさせる必要があるんですね。
(すくなくとも物語の中では)
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もちろん、妊娠は一人でできることでは
ありませんから、受け入れたラプンツェルも
追放に加えて断髪という懲罰を受けます。
これもキビシイですよね。
髪は女の命よ(/_;)/~~
なんて言いますし……
悪いことをした人が最後に罰として
なんらかのひどい目にあうという
法則(勧善懲悪)は、どこの国でも
まあ、昔話の文法といっていいもの。
だから「シンデレラ」や「白雪姫」の
継母や姉たちはほとんどエゲツナイ
罰をうけていますよね。
(これも現代の絵本などでは
消されていますが)。
👉アンデルセンばかりでなくグリム童話でも
そうですが、ヨーロッパの童話が「怖い」
のは一つには「懲罰」の内容がスゴイから。
詳しくは、こちらで。
・赤い靴(アンデルセン童話)原作のあらすじ👠怖いのはどこ?
・シンデレラの原作は怖い!足を切断しても靴に入れる執念…そのルーツは?
・童話 人魚姫(アンデルセン)のあらすじ💛本当は怖い恋物語
・白雪姫は怖い?こんなに違う原作(グリム童話)とディズニー映画
・赤ずきんのあらすじ:グリム童話とペロー童話でどう違う?
・青髭(童話)のモデル ジル.ド.レの実話とあらすじ(ペロー/グリムの違い)
ん? 「ラプンツェル」では 妖精
(魔女)も悪いのに罰を受けないのか?
うーん、そこは微妙ですね。
魔女だと人間ですが、もともとの「妖精」
(fairy)というのは神に近い存在で
人間ではないですし、人間たちの物語を
進めるために登場する存在なので、
罰を受ける必要はなかったんでしょうね。
妖精にもいろいろありまして…これは「エルフ」
とすると、これがなぜ「魔女」(witch)
に変えられたのか、という問題も
浮上しますね。
ホラホラ、問題はゾロゾロ出て来ます。
こんなふうにいろいろとひっくり返して
見たら、グリム童話もけっこう面白い
世界ではないですか?
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上記の『初版グリム童話集』を含め、
グリム童話の本なら沢山出てますよ~。
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こちらから探してみてください。
グリム童話の本・絵本:ラインナップ
どう書く? 感想文
どうでしょう?感想文もレポートも、もうこれで
バッチリではないですか?
ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、具体的にどう進めて
いいかわからない( ̄ヘ ̄)?
そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。
👉当ブログでは、日本と世界の多様な
文学や映画の作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。
参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらからお探しください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
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