ダヴィンチコード⦅シラスがかわいそう?鞭の意味は?⦆小説&映画のあらすじ

ダヴィンチコード⦅シラスがかわいそう?鞭の意味は?⦆小説&映画のあらすじ

サクラさん
映画『ダヴィンチコー
ド』は死者が残した暗号
(コード)をやっと解くと
そこにまた暗号があり、
それを解いてまた次に…
とどんどん深みに
はまっていくスリリング
な映画でしたが、どうも
理解しきれなった点も…

ハンサム 教授
なにしろ文庫で全3冊も
ある長編小説を150分の
映画に詰め込もうと
していますからね。

わからなかったのは
どのへんですか?


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サクラさん
ネタバレになりますが、
犯人のシラスという男は
トゲ付きの鎖をももに
巻いて肉に食いこませ、
さらに自分で自分の背中
を鞭打ったりして…




かわいそうで見ていられ
ないし、なんのためか
意味がわかりません。

ハンサム 教授
彼が服従している司教の
命令なのか、自主的なの
か不明ですが、ともかく
信仰に基づく行為の
ように見えますね。

サクラさん
信仰と言えば、後半で
カギになってくる
マグダラのマリア
という人物扱いもよく
分かりませんでした。

ハンサム 教授
彼女とイエスの関りを
どう見るかをめぐる
争いが底流にある。

そのへんの理解は原作を
読むのが早いんですが、
とりあえずここでも
(安直ながら)情報提供
していきましょう。


さてさて、おなじみ”あらすじ暴露”
サービスも今回で第195弾!
(感想文の書き方シリーズ総計 第278回)

今回は、現代のキリスト教世界を騒然と
させた問題作、ダン・ブラウンの
ベストセラー『ダ・ヴィンチ・コード』
(Da Vinci Code, 2003)((((((ノ゚🐽゚)ノ
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わずか3年後(2006)に映画化されるや、
「キリストへの冒涜」だとしてローマ・
カトリック教会がボイコットを呼びかけた
ほか、上映禁止やR-18指定の措置を取った
国もあり(性的な場面も一瞬出ますが軽度
なものなので、それが理由になったのでは
ありません)、あちこちで上映反対運動
も発生しました。

そこに、聖書に登場する人物、マグダラの
マリアがイエス・キリストにとって
どういう女性だったとみるか…
というかなり由々しい問題が絡んで
いるのですね。

このことも絡んで監督ロン・ハワードは
ゴールデンラズベリー(ラジー)賞の
最悪監督賞にノミネートされるなど
酷評も受けましたが、興行収入は記録的
だったとかで、成功作には違いありません。
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以下ではまずはこの映画の展開に沿って
あらすじを辿りながら、映画と小説とで
異なる部分をチェックしていきます。

そして後半ではその改変の理由や背景に迫り、
さらには”犯人シラス”と”マグダラのマリア”
という二人のキーパーソンについて
謎を解いていきたいと思います。

内容はザッと以下のとおり。


映画のあらすじ
(完全ネタバレ)

さて、ごく大まかなあらすじだけで
いいという人はまず、映画予告編を
ご覧ください。      👇


いや、これだけでは何が何やらわからない、
もっと細かくストーリーを知りたいという
人にはこれからサービスを提供しますが、
当然のことながら完全ネタバレになり
ますので、結末を知りたくない人は
最後まで読まないでください;^^💦

では参りましょう。

以下では、映画の通りに筋を追っていき、
原作と違う部分に👉❶のような印を
つけていきます。

その下線部をクリックすれば、後半の
「小説が映画と違う部分」でまとめている
原作との違いやその理由・背景の解説
➊~➏に飛んでいけるという仕組みです。

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🌹 主な登場人物

話はかなり複雑で、人物関係もややこしい
ので、ストーリーに入る前に、主な
登場人物の紹介をしておきましょう。

混乱しそうになったら、ここへ
戻って確認してください。

ロバート・ラングドン:宗教象徴学者
(ハーヴァード大学教授)

ジャック・ソニエール:ルーヴル
美術館長(“シオン修道会”総長)

ソフィー・ヌヴー:フランス警察の暗号
解読官でソニエールの孫娘

シラス:ソニエールらを殺害した
“オプス・デイ”信徒

ファーシュ警部:フランス警察のトップ

リー・ティーピング:ラングドンの
友人で学識ある英国人富豪


🌹【起】

講演のためパリに来ていた宗教象徴学者
(ハーヴァード大学教授)のロバート・
ラングドン(トム・ハンクス)は深夜、
フランス警察に事件捜査への協力を
求められ、ルーヴル美術館へ。

ファーシュ警部(ジャン・レノ)に迎えられ
入口広場の新モニュメント、ルーヴル・
ピラミッドの横を歩きながら、ラングドンは
👉❶警部の胸に光る”〇に十字”のバッジ
に目をとめる。

展示室内には、その晩会う約束のあった
館長のジャック・ソニエール(76歳)が
ダヴィンチが残した「ウィトルウィウス
的人体図」(👇)を模した全裸の姿で(叫び)
死んでいた。

   

自らの血で書いたダイイング・メッセージに
「ラングドンを探せ P.S.…」などとあること
から、ファーシュはラングドンを犯人と
見込んでおり、呼んだ目的は逮捕のための
証拠を取ることだった。


現場へ駆けつけた暗号解読官のソフィー・
ヌヴー(オドレイ・トトゥ)がラングドンと
秘密に連絡を取って事情を知らせる。

警察には隠しているが、自分はソニエール
の孫娘で、”P.S.”はプリンセス・ソフィー
(祖父がかつて自分をそう呼んだ)の意味
だと言う。


二人は警部らを出し抜いてもう一度
美術館内を探り、死体のそばに書かれて
いた「1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21…」という
フィボナッチ数列をアナグラム(文字の並べ
替えで別の意味を出す)として読み解く。

そこから館内の『モナ・リザ』の裏に
書きつけを見つけ、その暗号を読んで
『岩窟の聖母』の裏を調べると、
百合の紋章の入った鍵が出てくる。

その鍵を手に二人はソフィーの
二人乗りスマートカーで脱出し、
👉❷派手なカーチェイスを繰り広げる

米大使館がすでに封鎖されている
と知ると、ブーローニュの森を
抜ける道路を行くことに。

   
    ブーローニュの森──夜の一情景


🌹【承】

ソフィーは車を停め、野外テーブルで
👉❸薬物をスプーンで焙る男に
金を払って立ち退かせ
、そこで
ラングドンの話を聞く。

鍵にある百合の紋章を秘密結社「シオン
修道会」のものと見たラングドンは、
ソニエールがその総長だったのでは?
と推理。

シオン修道会は、「聖杯」の秘密を握る
ことで強大化したために、14世紀初頭、
ローマ教皇により解体させられた
「テンプル騎士団」の流れをくむ一派。

その秘密を受け継ぐがゆえに教皇には
敵視されているという。

その歴代総長にはダヴィンチのほか、
ボッティチェリ、ニュートン、ユゴー、
ドビュッシー、コクトーなど錚々たる
著名人が名を連ねている。


実はソニエールと相前後してシオン修道会の
三人の参事も殺害されており、犯行はすべて
シラスというアルビノ(色素欠乏症)の大男に
よるものなのだが、ラングドンらはまだ
それを知らない。

シラスはローマ教会内で特異な地位にある
宗派「オプス・デイ」の敬虔な信徒で、
「苦痛は善だ」と信じ、日々このような
苦行に励んでいる。  👇


👉これが冒頭の対話でも話題に上っていた
シラスの苦行(原作文庫本では「中」の
46章参照)。

誰に強制されるでもなく進んでやっている
ように見えますが、なぜこのように自分を
苦しめなくてはならないのか?

謎解きはこちらで。
👉シラスはなぜ自分を苦しめるのか❓


ラングドンとソフィーは例の鍵に
刻まれた暗号を読み解いて、
チューリッヒ保管銀行へ直行。

暗証番号などは暗号から割り出し、
ソニエールの口座の金庫に保管されて
いた、ダヴィンチ発明の秘密保管器具
「クリプテックス」を取り出す。


ダヴィンチコード・クリプテックス(用途多様)
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警察はすでに銀行を包囲していたが、
ラングドンらは銀行支配人の運転する
輸送車に隠れて脱出に成功。

やがて事件を知った支配人と争うが、
巧みに彼を降ろし、二人で逃走を
続ける。

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🌹【転】

ラングドンは友人のリー・ティービング
(イアン・マッケラン。爵位をもつ富裕な
英国人で聖杯の探求のためにパリに住む
宗教史学者)を頼ることにし、その
豪邸へ直行。

事情を聞いたリーは、最新の技術で修復
された『最後の晩餐』の映像を見せ、
イエスの右にいる、従来、使徒ヨハネと
されてきた人物は実は女性で、マグダラの
マリアにほかならないと解説する。


『最後の晩餐』修復前(左)と修復後
⦅イエスの右隣りの人物は女性的で、イエスと手を重ねているようにも見えるが…⦆


👉イエスの右の人物が髭もなく金髪で、
マグダラのマリアと同じ朱色の衣装を
まとっていることは事実ですが、
使徒ヨハネをそのように描くことは
以前からの伝統であって、ダヴィンチに
始まることではないようです。

この点で「小説『ダ・ヴィンチ・コード』
の記載は適切な解釈ではない」と
Wikipedia「マグダラのマリア」。
(👉Wikipedia)


「あの、娼婦の?」とソフィーが口を
はさむと、リーは「それはローマ教会が
捏造した神話にすぎず、実際はイエスの
妻だったのだ」と怒気を含んで言う。

イエスは「神」ではなく人間であり、
マリアとの間にサラという女児を生み、
その血統はメロヴィング王家となって
今も存続している。

探し求められている「聖杯」もカップの
ようなものではなく、ある女性すなわち
マリア自身のことなのだという。
👉そもそも映画のタイトルも”THE
DΛ VINCI CODE”とデザインされていて
(上記広告参照)、Λ型とV型との対照が
暗示されています。

Λ型とV型は映像上もルーヴル・ピラミッドと
その地下空間(逆さピラミッド)を映し出す
ことでほのめかされてきましたが、
そのことの意味がここでようやく
明かされるのですね。



つまり、リーに促されてラングドンが
身振りで示すとおり、Λは男性を、
Vは「聖なる子宮」としての女性を
象徴するというのです。

ともかくこのような象徴解釈を重んじ、
三位一体論により「イエス=神」とする
ローマ教会に反して、イエスをあくまで
人間と見る異端の一派がシオン修道会。

その壊滅を狙って動き始めたのが「オプス
・デイ」という特異な宗派で、その背後には
ローマ教会が……
という事件の背景もほぼ明らかになります。


ソフィーの素性を知ったリーは、
クリプテックスの中に「聖杯」すなわち
マリアを葬った棺に辿り着く地図が
あるはずだと教える。


その時、リー邸に忍んでいたシラスが
出現して、クリプテックスを奪おうと
ラングドンに襲いかかる。

が、リーがつねに身に着けている杖で
シラスの痛めている腿(もも)を強打し、
シラスは倒れる。

なおも銃を使おうとするシラスを、
すかさず駆け寄ったソフィーが
その頭髪をつかんで、
👉➍頭を床に二三度叩きつける

駆けつけた執事のレミーがシラスを縛り、
リーは衣服をめくって、「シリス」と
呼ばれる棘付きの鎖に縛られた腿を
示して「オプス・デイだ」と言う。

ラングドンがこれに応じ、「ファーシュ
警部もそうだ。同じバッジをつけて
いた」と指摘する。
👉そもそも👉➊で言及しているバッジが
原作に出て来ない以上、ラングドンの
このセリフも映画でのつけたしではあります。


警察はすでにリー邸を包囲していたが、
ファーシュの命令で待機するうち、
リーの自家用機がラングドンとソフィー、
レミー、シラスを乗せてロンドンへ飛ぶ。

機上でラングドンは、クリプテックスの
箱から反転文字のプレートを取り出して
鏡を使って読み取る。

教皇の葬った騎士がロンドンに眠る。
その墓を飾るべき球体を探せ。それは
バラの肉と種宿る胎(はら)を表す

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👉「バラの肉と種宿る胎」について
映画ではそれ以上のことは話されませんが、
小説ではこれがかなり深められます。

「薔薇」は「杯」とともにマグダラの
マリアの変名として使われたもので、
“rose”はギリシア神話の愛の神、エロス
(Eros)のアナグラムでもあるとラングドンが
指摘すると、リーはさらに「薔薇が女性器に
似ていて、この崇高なる花を通ってすべての
人間が生まれてくるという事実」に注意を
促します。

   

かつてキリスト教界で薔薇がその過度の
美と芳香──つまり誘惑性──ゆえに
タブー視されていたことは事実。
(👉日本知的財産協会

中世のキリスト教世界を描いたウンベルト・
エーコの小説およびその映画化『薔薇の
名前』にもこの問題が絡んでいます。

詳しくはこちらで。

薔薇の名前 映画のあらすじ(ネタバレ)//原作との違いはどこに?

    



ロンドンに着いたラングドンらは、
巧みに警察をまいてテンプル教会へ。

が、なぜか縛りを解かれていたシラスが
突然ソフィーを拘束し、レミー(実は
オプス・デイの一員)がクリプテックスを
奪おうとする。

乱闘となるも、ラングドンとソフィーは
隙を見て逃げ出し、リーは密かにレミーを
殺害し、警察にシラスの居場所を通報。


一方、ラングドンは暗号文中の「葬られた
騎士」がニュートンを指すことに気づき、
ソフィーと共にニュートンを埋葬する
ウェストミンスター寺院へ。

が、寺院に待ち構えていたのはリーで、
実は彼もオプス・デイに属していたのだ。

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🌹【結】

シラスは警官との銃撃戦で射殺され、
彼を操っていたアリンガローサ司教も
逮捕される(オプス・デイに利用されていた
ことに気づいたファーシュ警部の指揮で)。


教会堂で、リーにクリプテックスを開ける
よう迫られたラングドンは、ついにそれを
天井へ向けて投げ上げる。

落下したクリプテックスは壊れ、
絶望するリーは、駆けつけた
ファーシュに逮捕される。

が、実はラングドンはクリプテックスを
すでに開いて内部のパピルスを取り出して
おり、「聖杯は古(いにしえ)のロスリンの
下で待つ」と暗号を読み解いていた。


ラングドンとソフィーがスコットランド
の「ロスリン礼拝堂」へ直行すると、
ソフィーは以前にここへ来た記憶を
よみがえらせ、二人は礼拝堂の地下で
マグダラのマリアの棺のあった場所を
発見するが、棺自体はすでにない。

   
   ロスリン礼拝堂


礼拝堂に残された史料を調べたラングドンは
ソフィーが話していた両親と弟を死なせた
交通事故の新聞記事を見つけたが、そこには
「家族全員死亡」とあり、驚く。

やがて二人の前に現れたのはシオン修道会の
面々で、主導する老女マリーは、故ジャック
・ソニエールの妻だという。

ソフィーとその弟はメロヴィング王家の
子孫として命を狙われていたため、
一家全員事故死を偽装し、姉弟を
分断してかくまい育てることにした
のだと秘密を明かす。


ソフィーはこの地にとどまって修道会に
保護されることになり、ラングドンは
彼女を抱きしめ、👉❺額にだけキスして
別れる


ラングドンはパリへ戻り、ルーヴルの
👉➏逆さピラミッドの底にマグダラの
マリアの棺を見て
、その場に跪く。

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小説が映画と違う部分

さて、ほぼ原作に忠実に制作された
映画でしたが、例外的に異なっている
部分について、上記「あらすじ」中の
➊~➏に即して考察して参りましょう。

➊警部の胸に光る
“〇に十字”のバッジ

“〇に十字”といえば、日本人に連想され
やすいのは薩摩・島津家紋章で、現在も
鹿児島市の誇りとなっているもの。

 

ファーシュが背広の襟につけている
バッジもこれに似たデザインで、
「オプス・デイ」を表すものだと後で
わかりますが、原作のファーシュは
オプス・デイとの裏の関係などないので、
バッジにも言及がありません。

小説のファーシュが不可解な動きを示す
のは政治的な野心などから来ていますが、
映画はそれをオプス・デイとの関係に
よるものに改変したのですね。

これによって話を分かりやすくするとともに
フランスの大スター、ジャン・レノの顔を
立てる(存在感を強める)ことを意図した
ようですがが、ファーシュ自身の信仰や
オプス・デイへの関与の経緯などは描かれ
ないので、ただの愚鈍で粗暴なボスの
ようにも映ります。
👉あらすじ【起】へ戻る⦆

➋派手なカーチェイスを
繰り広げる

そもそもカーチェイスは映像で見るから
スリリングなのであって、小説で面白く
読ませるのは至難の業。

   

もちろん原作にはないのですが、映画に
入れる必要があったかどうかも疑問。

作品全体から浮き上がっている
感じもあります。
👉あらすじ【起】へ戻る⦆

➌薬物をスプーンで焙る
男に金を払って
立ち退かせ

ブーローニュの森を貫通する道路を
走っていくことは小説も同じですが、
二人は車内で話し続けていて、
停車することはありません。

ですから、立っている商売女の描写
などはあっても、こういう男は
出て来ないのです。

映画の意図としては、ストーリー上の
カギになってくる会話を車内でだけ
続けては観客を飽きさせる恐れがあること、
またこの森のいかがわしい現状をより
視覚的にアピールすることなどが
考えられます。
👉あらすじ【承】へ戻る⦆

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➍頭を床に二三度
叩きつける

やや小柄で”可愛い”系のオドレイ・
トトゥのこのハッスルにはそれなりに
目を見張らせるものがありますが、
原作はもっとすごくて、

ふたたび構えて撃つより早く、
顎を女の足が直撃した
      (中、p.217)

      

ソフィーも警察官である以上、この程度の
ワザを身につけていても不思議はない
わけですが、なぜそれをオドレイに
させなかったのでしょうか?

そこは色々と楽しい憶測を呼びそう
ですが、ちなみに言っておくと原作の
ソフィーは学校時代「どの男の子より
大きかった」という大柄な女性。

オドレイでなくミラ・ジョヴォヴィッチ
あたりを起用していたらどうだったかな
なんて想像してみるのも一興;^^💦
👉ミラ・ジョヴォヴィッチの強さは
こちらでご堪能いただけます。

ジャンヌダルク(映画)のあらすじ 姉の悲惨な最期も史実通り?

      
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👉あらすじ【転】へ戻る⦆

➎額にだけキスして別れる

ここはなぜか、小説の方がむしろ映画的。

別れの挨拶で口ごもっているラングドンに
ソフィーの側から頬にキスし、「こんどは
いつ会える?」と訊いてくるのです。

その瞳の虜(とりこ)になって「一瞬
めまいを覚え」ながら、来月、講演の
ためフィレンツェに滞在すると告げる。
    
「招待してるつもり?」と勝手に解釈
したソフィーは「フィレンツェで会える
なんて最高よ」、でも条件として
「美術館も、教会も、お墓も、芸術も、
遺跡もおことわり」だと言う。

   

フィレンツェに一週間もいて「ほかに
何をするというんだ」と問うと、

ソフィーは体を前に寄せ、もう一度、
こんどは唇にキスした。
ふたりの体がそっと近づき、
やがてひとつになる。
ソフィーが体を引いたとき、
その目は確信に満ちていた。
「わかった」ラングドンはようやく
言った。「それで決まりだ」


小説ではこれが結末──最後の1行
となります。
👉あらすじ【結】へ戻る⦆


➏逆さピラミッドの底に
マグダラのマリアの
棺を見て

ラングドンの「それで決まりだ」で
小説は終わりますから、このラスト
シーンは当然、映画のつけたしと
いうことになります。

ただ結末近くでマリーは、ソニエールの
総長としての大仕事は「聖杯」(=マグダラ
のマリアの棺)を「フランスへ帰して女神に
ふさわしい場所に安置することだった」
と告げていました。

その「大仕事」は成功したのかという
ラングドンの問いに明確な答えは帰って
こないのですが、映画はそれが成し遂げ
られていたことを映像によって明確に
示したわけですね。
👉あらすじ【結】へ戻る⦆


シラスはなぜ自分を苦しめるのか❓

さてさて、おわかりでしょうか。

原作に忠実だと主張しているこの映画も、
小説を大きく改変している部分がやはり
多々あり、あるいは忠実であっても説明を
急ぎすぎているために、かえって難解に
なってしまった嫌いもあり…

ともかく150分に盛り込むには”謎”も
情報もいささか過多で、キリスト教に
なじみの薄い日本人にはついて行くのに
骨の折れる映画だとは言えそうです。

冒頭に掲げた2人の”謎”人物のうち、
まずシラスですが、色素欠乏症のこの
大男がどういう考えのもとにあのような
苦行を実践しているのはか、原作でも
明確に記述されているわけではありません。

ただ、それが苦しむことを善しとする
(たとえば試練とみなして)キリスト教の
基本的な考え方に関連していることは
間違いないでしょう。




何世紀にもわたってヨーロッパ人を支配し
弱らせてきた(彼によれば)この宗教思想に
対し、根底的な批判を繰り広げてきた
果敢な哲学者がフリードリヒ・ニーチェ
でした。

ここではそのニーチェの言説を借りながら
シラスの謎に迫りたいのですが、彼が
すすんでこの苦行を行うのは、そこに
なんらかの喜びを見出しているからに
違いありません。


いわゆるマゾヒズムの一種として見る
ことができるわけですが、この語の語源に
なったレオポルド・フォン・ザッヘル=
マゾッホの傑作小説『毛皮のヴィーナス』
(1870)にはニーチェも微妙に反応して
いました。

  


この写真がその証拠で、左の女性(ルー・
ザロメ)が手にしている鞭がマゾッホの
世界へのほのめかしになっています。

『毛皮のヴィーナス』の2年後にニーチェは
処女作『悲劇の誕生』を出版しますが、
そこでの主張の一つが、古代ギリシア悲劇の
観客は主人公の苦悩と破滅に「カタルシス」
(浄化作用:アリストテレスの説)を受ける
のではなく、それを見守ることに「いっそう
高い、はるかに強烈な快感を予感」する
喜び」を享受していたという洞察
でした(岩波文庫[秋山英夫訳]、p.238)。

そしてこの快感は、動物としての人間に
備わっている「残酷さにつきものの快感」、
残虐性に昂揚してしまう「本能」=「自然」
なのだという議論がその後の著作で
繰り返されます。

その構造が最も明快に解析されているのが
『道徳の系譜学』(1887)で、この本には、
キリスト教が根付かせてきた「禁欲的な
理想」の強固さによって、人々が自身に
向けられた残酷さとその苦痛
むしろ求めるようになった…
その経緯が詳述されています。

人々はもはや痛みをなくして
ほしいと
嘆くことはなかった。

むしろ人々は痛みがほしいと
渇望したのである。

もっと痛みを! もっと痛みを!

彼〔ルター〕の弟子や聖別された
人々は、幾世紀ものあいだ、
こう求めて叫んだのである。
    (第三論文、20節。光文社
    古典新訳文庫[中山元訳])


痛みをあえて求めるこのような宗教的姿勢が
性的な嗜好に転化する場合があっても
なんの不思議もありません。

シラスの場合は、その極端な例といって
よさそうで、どういう契機からそこへ
のめり込んだのかは不明ですが、
生まれつきの色素欠乏症によって
受けてきた差別や虐待…
といったところが容易に想像されます。
👉ニーチェのキリスト教批判、および
それに絡んでくるマゾヒズムとマゾッホを
めぐっては、こちらで徹底的に追求して
いますので、ぜひご参照ください。

マゾの心理??? そのゲーム(契約)的構造を映画・文学から解き明かす

“結婚生活は長い会話である”とニーチェが言ったって本当?出典は?



マグダラのマリアとは❓

さてもう一人のキーパーソン、マグダラの
マリアに入っていく前提として、ストーリー
のおさらいをしておきますと、要するに
物語の底流にある対立軸は、イエス・
キリストを神とするローマ教会(オプス・
デイを含む)と一個の人間と見るシオン
修道会との間にありました。

ソニエールとその孫ソフィー、および
彼女と協力するラングドンがシオン側で、
オプス・デイ側にシラスやレミー(映画では
ファーシュ警部も)がいるという次第ですね。




後者の主張には「マグダラのマリアが
産んだイエスの子の子孫が存続している」
ということまでが含まれ、それは歴史学的
にはどうであれ、ローマ教会にとっては
およそ認められるものではないわけです。

上映自体への反対運動などで騒然とした
のも、カトリック勢力の強い地域では
当然の結果だったのでしょう。

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ただ、マグダラのマリア像の見直しは
決して『ダヴィンチ・コード』のみに
とどまらない現代の潮流ともなっています。

最近のアメリカ映画『マグダラのマリア』
(2018)でもマリアは決して娼婦ではあり
ませんし、使徒たちに混じってイエスに
帰依し、愛した(性愛を含んだかは微妙)
女性として描かれているのですね。

   
   映画『マグダラのマリア』のイエス(ホアキン・フェニックス)とマリア(ルーニー・マーラ)


まとめ

さて、これであらかたご理解いただけた
ましたよね?

ん?

まだわからんのがリー・ティーピング?

最後のどんでん返しでこれもオプス・
デイだったとわかるあの老人ですね。

この男は結局、ソフィーらに対して自分の
信仰に反する(はず)のことを本気としか
見えない熱狂をもって説く…
という、実際はどっちを本気で信じている
のかよくわからない”謎中の謎”…。

きわめて特異で、作品中いちばん面白い
キャラクターといえるかもしれません。


さて、以上の説明でもまだ「なんだか
なあ…」という向きはDVDを何度も
見直して…

いや本当は三巻にわたる文庫本を
じっくりお読みいただくのがいちばん
いいんですけどね;^^💦
👉この『ダ・ヴィンチ・コード』のように
西洋の歴史や宗教が絡むために日本人には
多少とも難解な小説の映画化作品は、
上記の『薔薇の名前』や『ジャンヌ・
ダルク』のほかにもたくさんあります。

こちらで詳しく情報提供していますので、
ぜひご参照ください。

カミュ 異邦人のあらすじ//太陽のせいで殺人!その”不条理”とは?

    


時計じかけのオレンジ(小説)のあらすじ 原作は映画とどう違う?

  


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ゲーテ ファウストのあらすじ 👻名言「時よ止まれ」の意味は?

戦争と平和(映画&原作小説)のあらすじ【登場人物相関図つき】

  


ともかく「あらすじ」に加えてこれだけの
情報が補給されれば、もう怖いものなし。

読書感想文だろうがレポートだろうが、
どんどん書いていけるでしょう。

    

以上の情報と考察があなたの参考に
なればと願う次第です。

👉当ブログでは、そのほか日本と世界の
多様な文学や映画の作品について
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/



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