フランケンシュタインのあらすじ 原作小説をネタバレありで
やあやあサイ象です。
おなじみ「あらすじ」暴露サービスも
ついに大台を超えて今回でなんと
第116弾((((((ノ゚🐽゚)ノ
「感想文の書き方」シリーズ全体では
第175回となります。
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今回はあのフランケンシュタイン((((()
心臓の弱い方はお読みにならないことを、
はじめにお願い申し上げます。
あの顔は映画から
ところでフランケンシュタインって誰?あの不気味な顔をしたツギハギ
だらけの怪人!
はい、世界中のたいていの人がそう
思っているわけですが、でもほんとは
(原作では)そうではないんですね;^^💦
フランケンシュタインは実はその怪人を
発明・製造した科学者の名前(姓)で、
怪人には名前がなかったので、便宜上
そう呼ばれるようになってしまったんです。
そしてあの顔も、1931年のアメリカ映画
『フランケンシュタイン』の大ヒットに
より、怪人を演じたボリス・カーロフの
顔がすっかり定着してしまったわけで、
原作ではああいう顔に描かれている
わけではありません。
(「醜い」とはされていますが)
実際、1994年の米・英・日合作映画
『フランケンシュタイン』(F・F・
コッポラ監督)では名優ロバート・デニーロが
怪人を演じましたし、2014年の豪・米合作
『アイ・フランケンシュタイン』
((I,Frankenstein,2014)でも
かなりイケメンの俳優さんがやってますね。
まずはその予告編をチラ見してください。
さて、原作は当時19歳のうら若く美しい
乙女、メアリ・シェリーによって書かれた
『フランケンシュタイン、あるいは現代の
プロメテウス』(Frankenstein: or The
Modern Prometheus, 1817)。
1931年版『フランケンシュタイン』の内表紙
メアリ・シェリー
「プロメテウス」は、もともと神々世界に
しかなかった「火」を盗んで人類に与えた
たために罰せられるギリシャ神話上の人物。
科学者フランケンシュタインは、作者に
よってこのプロメテウスに重ねられている
わけで、実際、善意からコトを起こしながら
厳罰を受けてしまう悲劇的な存在なん
ですね。
その悲劇性など、「あらすじ」では十分に
伝えにくいところですので、全文を通して
読まれるに越したことはありません。
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さて、原作の長編小説はいずれ読んで
いただくこととして、ここではその
「あらすじ」をできるかぎり詳しく正確に…
ということは、もちろんネタバレありで
記述して参ります^^💦
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入れ子構造の小説
さて、この小説をなるべく正確にお伝えするには、その語りがかなり複雑な
「入れ子構造」になっていることを、
まずわかっていただく必要があります。
つまり小説は、海洋冒険家ロバート・
ウォルトンが姉にあてた手紙という形で
始まるのですが、そのウォルトンの語りを
大きな箱に見立てますと、そこに「入れ子」
としてフランケンシュタインの自伝的な
語り(1~24)が入ってきます。
さらにその「入れ子」に入れた「入れ子」
(入れ孫?)として怪物自身の語り(11~16)
が挿入される、というわけで、この構造を
図にすると、下のようになるわけなんですね。
ウォルトンの語り
(手紙Ⅰ~Ⅳ)
「ウォルトンの続き」
(手紙Ⅰ~Ⅳ)
フランケンシュタインの語り
(1~24)
(1~24)
怪物の語り(11~16)
「ウォルトンの続き」
かなり詳しいあらすじ
それでは、上に見た「入れ子構造」に即して「かなり詳しいあらすじ」を
たどっていきましょう。
「 」内と「”」印の白い囲みは
上記”創元推理文庫”の和訳(森下弓子)
からの引用で、時折、英語原文を
はさんで行きます。
👿 【手紙Ⅰ~Ⅳ】
「ぼく」こと北極探検隊隊長ロバート・ウォルトンから姉のサヴィル夫人にあてた
「手紙Ⅰ」(ペテルブルグから)に始まり、
「手紙Ⅳ」でフランケンシュタインとの
遭遇が語られる。
ある日、陸地から何百マイルも離れた海の
氷の上を、巨大な野蛮人のような生き物が
犬ゾリで滑ってゆくのを目撃。
翌朝、前日のとそっくりのソリに乗って
流れ着いたらしい欧州人を救助し、
話を聞き始める。
目の色は「狂気じみて」さえいながら
親切を受けたりすれば「慈愛のほほえみ」
を浮かべる…「これほど興味ぶかい
人物は初めてです」。
彼は前日ぼくらが目撃した巨人を
追いかけているのだと言い、それを
彼は「悪魔」(daemon)と呼んだ。
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ぼくの側で、探検に賭ける
「魂を焦がす熱い思い」を語ると、
「不幸な人だ! わたしの狂気が
あなたにもとりついているのか?」
と彼はひどく興奮する。
やがて気をしずめ、あなたは私と
「同じ危険に身を晒している」から、
自分の身の上話から「教訓をひきだして
もらえる」かもしれないと、それから
毎日、自分の来歴を語りだす。
👉もちろんこの人こそ誰あろう
フランケンシュタインなのですが、自分に
似たところのある若い後進のために自分を
語り始めるという形の「入れ子構造」の
小説は、当時は新奇だったものの、
今では珍しくありません。
日本でこれに先鞭をつけたのが
夏目漱石の『こころ』ですね。
詳しくはこちらで。
・夏目漱石こころのあらすじ 💙簡単/詳しくの2段階で解説
👿 【フランケンシュタインの語り
:前半】
私はジュネーヴの、スイス屈指の名門フランケンシュタイン家の長子ヴィクター。
家に引き取った美しい孤児のエリザベスや
親友のヘンリー・クラーヴァルとともに
幸福に育つ一方で、「魂」を科学的に
解明したいという欲求を強くもっていた。
17歳で母が死ぬと、インゴルシュタット
(ドイツ)に留学し自然科学(natural
philosophy)を学んでいた。
ある講義で教授が発した「新しい科学の
力で、不可視の世界に本物そっくりの影を
造ってみせることもできる」という言葉に
衝撃を受け、これが私を滅ぼす「宿命の
言葉」となる。
その「影」のような存在を実際に創造したい
という野望に突き動かされ、狂気じみた研究を
重ねた末、「理想の人間」の設計図を完成。
神に背く行為であるとは自覚しながら、
解剖室や屠殺場から手に入れた人間の
死体をつなぎ合わせ、これに電気を流して
「生命」を与えることで、新しい人間の
創造についに成功した。
が、動き始めたその人間は「容貌も美しく
選んであった」はずなのに、現実に誕生した
のは、おぞましい醜さの「破廉恥な怪物」
(miserable monster)だった。
私を見て何か言おうとするようだったが、
私は逃げ出してしまい、やがて怪物は
いなくなってしまう。
郷里からクラーヴァルが来て旧交を
温めるが、私は怪物の妄想にさいなまれ、
神経性の熱で数か月間寝込んでしまう。
二年近くたって健康を取り戻したころ、
父からの手紙で、幼い末弟ウィリアムが
何者かに惨殺されたとの知らせ。
すぐに帰郷して殺害の現場へ行ってみると
「わたしが生命を与えたあの穢らわしい
悪魔」が現れ、彼こそが弟の殺害者だと
確信する。
が、犯人としては私たちが兄妹同然にして
きた女中のジュスティーヌが挙げられ、
結局、彼女が処刑されてしまう。
二人の死の「事実上の真犯人」は自分だ
と苦しみ、私は怪物を求めてモンブランの
氷河に近い山を上る。
そこへ怪物が現れ、自分はもともと
「優しく善良だった」のに「みじめさが
おれを鬼にした」、だから「幸せに」して
くれれば「徳に立ちかえる」などと訴える。
「失せろ!」「呪われろ!」と私は拒むが、
話だけは聞けという怪物の冷静な要求に
「不憫さ」も感じて山小屋で長い話を
聞くことにする。
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👿 【怪物の語り】
自分の意識の始まりについて記憶は定かでないが、気づくと歩いて外へ
出ていた。
何昼夜か歩いてから、ある家の裏側に
あった小屋に忍び込み、そこから
その家の家族の暮らしぶりを観察する
ことで、言葉や人間の生活習慣を
学びとっていった。
家族の人々を美しいと思い、
自分の姿を池の水面に映した時は、
その恐ろしい容貌に絶望した。
ある日、地面に置き去られていた旅行鞄を
開くと『失楽園』『プルターク英雄伝』
『若きウェルテルの悩み』の3冊の本が
あったので持ち帰り、覚えたての
言語で読み始めた。
3冊とも強い印象を自分に残したが、
なかでもウェルテルは「もっとも
すばらしい人物」だと思い、
彼の死に涙を流した。
👉『若きウェルテルの悩み』のウェルテルは
人妻への不倫の恋に苦しんで自殺してしまう
知的かつ純情な青年。
作者ゲーテの『ファウスト』は第一部1806年、
第二部1831年の刊行でまさに同時代の
作品ですが、そこにもホムンクルスという
名の”人造人間”が登場します。
ぜひこちらをご参照ください。
・ゲーテ ファウストのあらすじ:名言「時よ止まれ」の意味は?
ファウストを誘惑するメフィストフェレス
ある日、森のふちで小さな女の子が
急流に落ちるのを見たので、救出し、
意気を吹き返させようとしていると、
男が現れて、子供をもぎ取った上、
自分に発砲した。
この時、自分は「人類すべてに永遠の
憎悪と復讐の誓いをたてた」のだ。
傷が癒えてまた旅を続け、ジュネーヴ
近郊に来た時、目の前に現れた美しい
男の子を自分の仲間として育てたい
という気になって接近した。
が、子供は抵抗し「怪物め、離せ、
パパはフランケンシュタイン判事だぞ」
などと叫んだので、偶然にも怨敵の
一族とわかり、喉をつかんで殺した。
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それからおれはあんただけが
満たすことのできる情熱に
身を焦がしつづけたのだ。
〔中略〕
自分と同じくらいに醜く
恐ろしい生き物なら、
自分を拒むことはないだろう。
〔中略〕
そういう生き物を創って
もらわなくてはならぬ
👿【フランケンシュタインの語り
:後半】
「誰かがおれに善い感情を持ってくれさえしたら」、おれは「全種族と和解も
しよう」と訴える怪物に心を動かされ、
「怪物の要求をのむ」ことが「正義に
かなっている」と私は思う。
要求どおり「伴侶」を創ってやれば、
人の住む土地には永久にいっさい
近づかないと誓うか、という私の
問いに、怪物は「誓うぞ」と叫ぶ。
父が望むエリザベスとの結婚は帰国後
ということにし、私は「伴侶」創造の
ため、自分なりの研究を進める
クラーヴァルと二人で渡英。
友とはスコットランドで別れ、
一人で北部の離島に実験室をもち、
製造の作業を始めた。
が、これに成功したとしても、怪物
同士で嫌悪し合うかもしれず、またもし
逆に愛し合ったら「悪魔の一族」が
地上に繁殖して、人類そのものが危うく
なってしまうかもしれないと悩む。
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ふと気づくと窓辺に(尾行してきたのか)
怪物がいて私の仕事ぶりを見守っている
ので、私は激情にかられて作りかけの
「伴侶」をズタズタに引きちぎった。
「もうけっして創るものか」と破約を
告げると、嘆く怪物は、それでも
「復讐は残るぞ」「お前の婚礼の夜に
会いにゆくぞ」と言って去った。
「伴侶」の残骸を海底に沈めてしまおうと
ひとり舟を出すと、眠ってしまい、
アイルランドに漂着する。
そこで殺人の嫌疑をかけられるが、
被害者はなんとクラーヴァル。
ついに親しい者を3人も死なせたと思うと
引きつけを起こし、熱病になって
2か月間、監獄で生死の境をさまよう。
呼ばれて駆けつけた父に見守られ、
病も癒え嫌疑も晴れたので、二人で帰国し、
「お前の婚礼の夜に…」という怪物の
予言を恐れはしながら、予定通り
エリザベスと結婚。
新婚旅行の宿でも怪物がひそんでいは
しまいかと、廊下を見回るが、その
すきに新妻は殺害されてしまう。
<
ジュネーヴへ戻ると憔悴のあまり
父が死に、私は狂ったと見られて
何か月も牢獄に入れられていた。
理性を取り戻して治安判事に事情を
話すと釈放されたので、怪物への
「尊い復讐をとげる」ための
旅に出た。
時折り目にする怪物の姿や「残忍な
高笑い」を頼りにどこまでも追跡
したあげく、ついにこのような極地に
まで来てしまたのだ。
もし私が死んだら、代わりにあいつを
探し出して殺すと誓ってくれ。
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👿 【ウォルトンの続き】
フランケンシュタインの物語を涙なしに聞けなかったぼくには、おちぶれた現在の
彼も「気高く神のような人物」に見える。
話の途中で、彼の創った生き物の構造を
詳しく聞こうとすると、彼は
「あなたも極悪の敵を創りたい
というのですか」と激しく拒絶。
👉ウォルトンもまた人造人間を創り出すことに
強い興味をかきたてられてしまった
わけですね。
このような願望とその被造物によって
滅ぼされることへの恐れ
(フランケンシュタインが実際に経験)
とが入り交じった複雑な感情が、現代では
「フランケンシュタイン症候群」
(フランケンシュタイン・コンプレックス)
と呼ばれることがあります。
(SF作家アイザック・アシモフの命名)
ロボットに対するこの潜在的な恐怖が
「ロボット工学三原則」を生み出した
といわれています。
船は氷山に囲まれて現在動けなくなって
いるが、動けるようになったら諦めて
帰国しようと乗組員たちが要請する。
はたで聞いていたフランケンシュタインは
起立して「諸君!男になりたまえ」と鼓舞
するものの、結局退却することになる。
そう告げると、「わたしは戻らない」と
言って気を失い、死の床につく。
「怪物を滅ぼす」という自分に果たせ
なかった「仕事」をあらためて頼み、
「平穏のなかに幸せを求め、野心を
お避けなさい」と語る。
真夜中の物音に驚いて駆けつけると、
寝室に怪物がいて「彼を殺しておれの
罪は完成された」と叫ぶ。
フランケンシュタインの近親者5人もの
死を引き起こしたことについても語り、
エリザベス殺害の際には「感情はすべて
投げ捨て」、その時から「悪が自分の
善になった」(Evil became my good.)
おれは愛と友情をいつも望み、
いつもおれははねつけられた。
これが不当なことじゃないと言うのか?
全人類がおれに対して罪をおかして
いるというのに、おれひとりが
犯罪者とみなされるのか。
だが心配するな、「わがおこないの
成就はまぢか」とも言う。
焼身自殺の意志を告げて「今は死が
たったひとつの慰めだ」と船室の窓から
身をおどらせて氷の塊におりたつと、
波に運ばれて消えていった。
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誰が悪いともいえない”悲劇”
さあ、いかがでした?ただのホラーや怪奇物でない、シリアスな
純文学でもあることがおわかりいただけた
のではないでしょうか。
「入れ子」状に構成された物語の
悲劇的な展開には目を見はるものが
ありますね。
「怪物」が重ねていく復讐殺人は本人も
言うとおり「悪」にはちがいないのですが、
それを始めたきっかけには不運な偶然も
ありました(ウィリアムの場合)。
2回目、3回目もそれぞれに創造主の側の
反応・行動に彼がまた反応するという
形で、彼からすれば当然だと正当化しうる
ような事情・心情が発生しているのです。
そうなると元凶はやはり、本人も死の床で
認めるとおり、人造人間を創造しようという
神をも恐れぬ不当な「野心」を起こした
フランケンシュタインにあった、悪いのは
彼だ…ということにもなりそうです。
ただこれも、上記あらすじ中の👉印の
「フランケンシュタイン症候群」の解説
でもふれましたが、こういう探求心に
取り憑かれれてしまうのもまた人間の
性(さが)ではないでしょうか。
この意味でヴィクター・フランケン
シュタインこそが悪だと一方的に
責めを負わす気にもならない。
少なくとも小説はそのように読まれます。
事情は悪い方へ悪い方へと坂道を転げる
ように展開していくわけですが、その動因に
なっているのは、人間が意志的に逆らい
きれない「不運」と、生まれ持った
「性(さが)」のようなもの…。
これを「悲劇」と呼ばずして、
なんと呼ぶべきでしょうか。
👉人間の生まれ持った性(さが)または
本性(nature)を動因とする悲劇。
その原形のようなシンプルな物語を
こちらでお読みいただくことができます。
・サソリとカエルの話◎◎その意味は?自らの自然(ネイチャー)を知れ?
ともかくこの小説、たいへんよくできた
ホラー・サスペンスで、しかも深く
考えさせる悲劇に仕上がっています。
この作品が1810年代に、しかも弱冠
19歳の乙女によって書かれたことには
(1831年版でだいぶ手を入れたとしても)
大いに驚いてよいと思います。
なにしろ『ドラキュラ』も『ジキルと
ハイド』も70年以上あとに書かれた
ものなんですから。
👉『ドラキュラ』や『ジキル博士とハイド氏』に
ついてはこちらをご参照ください。
・ドラキュラ 原作のあらすじ👻興味つきない吸血鬼小説の金字塔
・ジキルとハイドのあらすじ:スティーヴンソン原作を簡単に…
👉また『フランケンシュタイン』によって
先鞭をつけられた「人造人間」的なテーマは
その後の文学でも様々な形で採り上げ
られています。
たとえばこちら。
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