沈黙(村上春樹)のあらすじ 簡単/詳しくの2段階で解説
やあやあサイ象です。
「感想文の書き方」シリーズ第34回の
今回は「あらすじ」暴露サービス第11弾。
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とりあげるのは、村上春樹氏の作品
としては『鏡』につづく『沈黙』(1991)。
これも高校現代文の教科書掲載の
”学校小説”ともいえるすぐれた短編小説
(文庫本で35ページほど)で、
この短編集に入っています。
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でも、一口に「あらすじ」を知りたい
といっても、骨子だけでいいいう場合から、
読書感想文を書くんだから多少詳しく
ないと…という人まで色々でしょう。
そこで、出血サービス((((((ノ゚⊿゚)ノ
「ごく簡単」と「かなり詳しい」の
2ヴァージョンで提供したいと思うんです。
ごく簡単なあらすじ
まずは「ごく簡単」ヴァージョンから。
ボクシングをしている31歳の僕
(大沢)がこれまでに一度だけ
人を殴り、それを起点にくぐり
抜けた苦しい経験を語る。
中高一貫の男子校で中2のときに
もともと嫌いだった青木に不快な
ことをされ、僕は彼を殴り
倒してしまう。
高3の夏に青木はこの事実を
利用して僕を陥れ、その結果、
僕は警察で取調べを受け、
その後は誰からも無視される
苦しい生活となる。
青木への憎しみはつのったが、
ある朝、満員電車で青木と顔を
合わせたとき、「どうだ」と
冷笑するような青木の目をみて、
この男はこんなことで本気で
満足しているのか……
とむしろ「悲しみと憐れみ」を
感じる(iДi)
すると、もう青木のことなど
どうでもよくなり、むしろ
「人生そのものに負けるわけには
いかない」という前向きな考えが
湧いてきて、卒業までの”我慢”の
日々を乗り切ることができた。
(大沢)がこれまでに一度だけ
人を殴り、それを起点にくぐり
抜けた苦しい経験を語る。
中高一貫の男子校で中2のときに
もともと嫌いだった青木に不快な
ことをされ、僕は彼を殴り
倒してしまう。
高3の夏に青木はこの事実を
利用して僕を陥れ、その結果、
僕は警察で取調べを受け、
その後は誰からも無視される
苦しい生活となる。
青木への憎しみはつのったが、
ある朝、満員電車で青木と顔を
合わせたとき、「どうだ」と
冷笑するような青木の目をみて、
この男はこんなことで本気で
満足しているのか……
とむしろ「悲しみと憐れみ」を
感じる(iДi)
すると、もう青木のことなど
どうでもよくなり、むしろ
「人生そのものに負けるわけには
いかない」という前向きな考えが
湧いてきて、卒業までの”我慢”の
日々を乗り切ることができた。
さて、この「ごく簡単なあらすじ」で
じゅうぶん(^^)という方にはそれで
結構なんですが、これではよくわからん、
という読者さんのために、これから
「やや詳しい」ヴァージョンの
「あらすじ」を掲げますね。
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導入部のあらすじ
その前に小説の構成についていっておくと、前に採り上げた『鏡』もそうでしたが、
漱石の『こころ』なんかに似ていて、
「大沢さん」という31歳の男性が、
語り手の「僕」に自分の物語を語る、
という枠組みの形になっているんですね。
冒頭から6ページほど(*〔アステリスク〕
で切られるまで)は、「大沢さん」の
自伝的な物語を引き出すための導入部
(イントロダクション)で、ちょうど
『こころ』の前半で「私」が「先生」の
過去を聞き出そうとするのと同じですね。
(『こころ』よりだいぶ短いですが)
冒頭でいきなり「僕」は「大沢さん」に
「喧嘩をして誰かを殴ったことは
ありますか」と尋ねますが、それは、
中学2年から31歳の現在までボクシングを
していると聞いたからです。
実は一度だけある、
と答えた大沢さんが、さあ語りだす……
というのがこの導入部の「あらすじ」で、
そこからあとの部分、すなわち大沢さんの
話の内容が以下の「やや詳しいあらすじ」
ということになります。
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かなり詳しいあらすじ
では参りましょう。「起承転結」に4分していますが、
それは私の勝手な判断によるものです。
✊【起】
僕(大沢)は中高一貫の私立男子校にいたが、殴った唯一の相手はそこでの
クラスメート、青木だった。
僕は意味もなく他人を嫌ったりする
人間ではないが、青木は、生まれて
初めての経験として、一目見たときから
嫌いになった人間だった。
青木は成績はトップでもさばけていて、
教師にも生徒にも人望があったが、
背後に見える「要領の良さと、本能的な
計算高さのようなもの」が僕には我慢
できなかった。
頭は切れる。
でも「自分っていうものがない」……。
僕だけがそう見抜いていることに
気づいている青木が僕を嫌っている
こともわかっていた。
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✊【承】
中2のとき、英語のテストで僕が一番を取り、いつも一番の青木が教師の言葉で
恥をかくということがあった。
何日か後、僕がカンニングをしたという
噂を青木が流していると聞いたため、
本人に問いただしたが、不快な
問答の末、青木が僕を軽く押しのけ
ようとした瞬間、殴り倒してしまった。
すぐ謝ろうかとも思ったが、
その気になれず、そのまま立ち去った。
その後はお互いに無視していたが、
高校3年でクラスが同じになり、
その夏休みに、松本という目立たない
クラスメートが自殺した()。
2学期に入るとクラスの空気が奇妙で、
5日ほどして僕は職員室に呼ばれた。
ボクシング・ジムに通っていること、
中学2年の時に青木を殴ったことを確認
されたあとで、「それで君は松本を
殴ったことはあるか?」と身に覚えの
ない嫌疑を受けて僕は驚き、この件に
青木が絡んでいることを直感した。
教師の予告どおり、3日後に僕は警察で
取り調べを受けたが、それ以来、
クラスメートの僕を見る目は激変し、
教師にも無視されるようになった。
それからは「地獄のような状況」。
部屋にこもって空想にふけっては、
たびたび青木を殴りつづけたが、
はじめは爽快でも、しまいには逆に
気分が悪くなって吐いてしまうことも。
みなの前で弁明することも考えたが、
青木のいうことを鵜呑みにした連中が
信用してくれるわけがないし、青木と
同じ土俵に上がりたくないとも考え、
何もできないでいた。
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✊【転】
1か月ほどたって、登校の満員電車で青木と顔を合わせ、にらみ合いの
形になる。
「どうだ」と言わんばかりに冷笑する
ような青木の目をみているうちに、
僕は不思議な気持ちになった。
「これくらいのことで、この男は本気で
満足し、喜んでいるのだろうか?」
この男には「本物の喜びや本物の誇り」
など永遠に理解できないだろうと
思うと、むしろ「悲しみと憐れみに
近い感情」を感じたのだ。
その顔を見つづけているうち、青木の
ことなどどうでもよくなり、卒業までの
あと5か月「この沈黙に耐えよう」
と思えてきた。
「人生そのものに負けるわけには
いかない」
「自分が軽蔑し侮蔑するものに簡単に
押し潰されるわけには行かない」と。
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✊【結】
こういう強烈な経験をすると、良くも悪くも人間は変わる。
僕はいまでは妻子持ちだが、僕の言う
ことを誰も信じないという日がまた
突然やってくるかもしれないという
思いがつねにある。
実際、その日が夢に出てくるのだが、
そんな時は妻を起こし、
しがみついて泣く。
僕が夢に見る、本当に怖いと思う人間は、
青木のような人間の言い分を無批判に
信じてしまう連中であり、彼らは
「顔というものを持たない」。
夢の中には沈黙しかなく、それが
あらゆるものにしみこんで、どろどろに
溶け、僕も溶けていきながら、叫んで
も誰も聞いてくれない……。
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なんで「沈黙」?
さあ、どうでしょう。感想文やレポートを書こうという人も、
もうこれで大丈夫ですよね。
え? やっぱりなんだかよくわからん?
お前なりの解釈とか考察を出してみろ、
たとえば、この作品、なんで「沈黙」
というタイトルなのか……ですって?
はい、それは大変よい着眼。
すぐれた問題設定と思います。
「沈黙」つまり「黙っていること」が
主題かというとそうはいいにくいわけで、
これは、物語の内容を直接に言い表わす
のではなく、多少ずらしたタイトルの
つけ方ですよね。
この点は、以前扱った中島敦の『山月記』が
内容は「人が虎になる」話で、「山」や
「月」が主題であるわけではないのと同じで
「詩的」なタイトリングだともいえます。
👉それがなぜ「詩的」かについては、
こちらの記事をご参照くださいね。
・夏目漱石「月が綺麗ですね」の出典は?I love youはこう訳せ?
・中島敦 山月記の創作意図は?虎になった理由と原典『人虎伝』
ただ、『山月記』の場合よりは、
もう少し明示的というか、思想的な
タイトルだともいえそうです。
というのも、この「沈黙」の語は、
「やや詳しいあらすじ」でも拾って
おいたとおり、作品中の2箇所に出現し、
いずれにおいてもやや特殊な意味づけが
なされてますよね。
それをタイトルにもってきたのですから、
その意味づけに作者の強い思い入れが
叩き込まれていることは明らかでしょう。
その部分だけでもよく読んで、
これについて、自分なりの考察を
書いてみたらどう?
きっとすぐれた感想文になりますよ。
え? でもやっぱり、どういうふうに
書いていいかわかんないし……?
👉それなら、こちらの記事も覗いてみて
ください。『沈黙』で感想文を書く場合の
考え方を具体的に解説しています。
・村上春樹 沈黙で感想文:”なりきって”考察する3つの方法
👉村上春樹さんのほかの小説やその映画化
作品を見て比較検討してみるというのも
面白い方法でしょう。
こちらの記事もご覧ください。
・ドライブマイカーあらすじ⦅原作との違いを考察⦆ラストはなぜ韓国?
・村上春樹 鏡のあらすじと解説//”影”(もう一人の自分)への愛憎…”
・村上春樹の名言💛恋するザムザとロシア映画『変身』から
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👉当ブログでは、日本と世界の多様な
文学や映画の作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。
参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
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