サクラさん
現代文の授業で『棒』
(安部公房)の感想文を
書けと言われています。

教える先生もしどろ
もどろで、結局ワケが
わかんなかったのに、
生徒に何が書けると
いうんでしょう(😼)

ハンサム 教授
先生もわかんないから、
生徒に教えてほしい
のでは?;^^💦

授業で特にわからな
かったのは、どの
あたり?

サクラさん
最後に教授が「すな
わち、この棒は、棒で
あった」なんて言い
ますが、そんなの何も
言ってないに等しい
ではないですか。

ハンサム 教授
う~ん。そこは主語の
「棒」と補語になってる
「棒」とは別のものを
指していると考える
しかありません;^^💦

この小説、劇化した時の
タイトルは「棒になった
男」でした。

  

つまり主語の「棒」は
「棒になった男」の方を
意味しているのでは?

サクラさん
はは~ なるほど(🙀)。 

で、補語は文字通りの
「棒」だとすると、
結局、実は人間である
棒に対して、やっぱり
お前は「棒」だと宣告
したことになる。

人間ではなく…??

ハンサム 教授
それが一つの解釈。

ほかにも色々と考え
られるでしょうから、
自由に考えて感想文を
でっちあげていき
ましょう;^^💦


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というわけで、おなじみ”感想文の書き方”
第22回は高校現代文の教科書に採用されて、
生徒も教師もホトホト困らせている難物、
安部公房の短編小説、『棒』(1955。
『安部公房全作品 5』新潮社所収)に
挑戦します。


え? 実はまだ読んでない?

読んだけどサッパリ筋がわからん?
👉そういう人はまずこちらで
「あらすじ」を仕入れてくださいね。

安部公房 棒のあらすじ:このわからない短編で感想文だって?

                 



感想文の例(800字)

はい、ストーリーがしっかり理解できたら、
さっそく感想文に取り組みましょう。

まずは800字(400字詰め原稿用紙2枚)
以内という想定で、サクラさんがハンサム
教授の添削を受けながら書き上げた
読書感想文例をお目にかけます。

よくある感情に流された感想文と違い、
論理的・批判的な切り口で書かれています
ので、「批評文」や「読書レポート」
などを求められている場合も十分に
通用するんじゃないでしょうか。

安部公房の短編小説『棒』は雑誌発表後
何年かしてから『棒になった男』と改題して
ラジオドラマや舞台劇になったそうだが、
この改題により、主題はより明快に
なったと思う。

つまり、これは1メートルほどの一本の棒が
教授や学生たちにこづき回され、勝手な
ことを言われ続ける話で、その意味では
「棒」という題もぶっきらぼうでよさそうな
感じもするが、その棒がもともとは人間
(男)であったこと、棒になってなぶられて
いる間も人間としての意識を持ち続けている
というところに作品のテーマがありそうで、
そのことの方が重要に思えるからだ。

            

 このことが気になるのも、実は私が
この小説に、とてもひとごととは思えない
ような恐怖を感じてしまったからなのだ。

すなわち「棒になった男」とはまさに
私自身のことなのでもあって、私は夜、
寝床の中で棒のようになって、動くことも
言葉を発することもできないまま何分かを
すごす、いわゆる「金縛り」の状態を
何度も経験しているからである。


 そういう人間として、この小説の
「棒になった男」のつらさは、
ほんとうに痛いほどよく伝わってきた。

自分の素性や心理について、どんなに
勝手な推測をされ、きめつけられ、
さげすまれ、疎略に扱われるなどして
反抗や怒りの感情をもっても、それらを
外に出して異議申し立てすることが、
どんな形においてもできない…
というもどかしさ、苦しさを私も一緒に
感じたのである。



 終幕近くでは、「この棒は、ぼくらの
云うことを聞いて、なにか思ったでしょう
か?」という学生の声が聞こえ、また棒に
なる前に面倒を見ていた子供の「父ちゃん、
父ちゃん、父ちゃん……」という叫び声も
耳に入ってくるのだが、それらに対する
感情的な反応ももう記述されない。

「すなわち、この棒は、棒であった」
という教授の結論の通り、人間としての
感情も認識もない、完全な棒になって
しまったことを暗示するような結末で、
大いにぞっとさせるものだった。
           (798字)

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どうです?

うまくまとまっているでしょう。

これをそのままコピペすることは
もちろん厳禁ですが、適宜、自分らしい
ものに文章を変えて使ってもらうのは
かまいませんよ~;^^💦


この感想文のポイント

さて、上記の感想文は一つの解釈に
すぎないわけで、これにとらわれる
必要はありません。

こういう小説なら、解釈はすべて
読者に開かれているわけで、無数に
あるといっても過言でないことは
冒頭でハンサム教授もふれていた
とおりです。


だから自由であり、何を言ってもOK
という話になりそうですが、ただいくら
なんでも、作品内で言われていることと
矛盾していたり、フツーに考えてとても
あり得ないようなことを言い出したり…

というのでは説得力がありませんので、
そこはやはりよく練っていく必要が
あるでしょう。

以下では、実際にネット上に出されて
いる解釈について検討しながら、
より説得力のある感想文の書き方を
考えていきましょう。


「でくのぼう」だから棒になった?

まず「Yahoo!知恵袋」から((((((ノ゚⊿゚)ノ

その回答者の一人、「kmkr69218」さんは
「棒は社会で疎外された人間を象徴して」
おり、墜落は「自殺」によるもの、という
明快な解釈を下しています。

男を棒といっているだけです。
おそらく「でくのぼう」
(必要のない人間)とかけて
いる
んでしょう。
屋上から落ちる瞬間と最後にも
子供の叫び声がありますよね。
あれで自殺ということが
強調されています。
〔中略〕
主題は社会に必要とされない人、
無用な人が溢れている社会を
危惧しているのでしょう。
また、男自身も自殺をする
ということは、生きる意味を
見出せていないということです。

           

う~ん……
でも、なんだかなあ( ̄ヘ ̄)❓

この解釈に納得しきれない人は、
もう少し考えてみましょう;^^💦 

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何かの「寓意」と解釈すべき?

まず、墜落が「自殺」だったとは
どうしてわかるんでしょうか。

「ふわりと体が宙に浮き、『父ちゃん』
という叫び声を聞きながら、私は墜落し
はじめた」とあるわけですが、その直前の
「私」は「ぐっと上半身をのりだしていた」
とはいえ、「危険なほどだったとは
思えない」と明記されています。

この場合「危険」をあえて犯さなければ
死ねないはずなので、自殺するつもり
だったとは読めないと思うんですけどね。

    weatherman-849792_640  
 

また教授と学生が「生きる意味など」に
ついて考えていたとしても、それが
「自殺した」ことの証拠になるん
でしょうかね?


「私」は動けない「棒」でも意識はあって、
意識内容を記述し続けているわけですから、
「自殺」であれば、その経緯や現在の
状況との関係などについてまったく
語らないのも不自然ではないですか?


ともかく「kmkr69218」さんの解釈は、
「棒」のイメージは「でくのぼう」という
慣用句から発想されたもので、要するに
「必要のない人間」の隠喩(メタファー
=類似性に依拠した比喩)である…
という認識に基づいています。

この認識の網を作品全体にかぶせることで
見えてくる「意味」のシステム(つながった
まとまり)を物語の「寓意」と解釈し、
それがを作品のメセージ(主張)であり
主題だとする立場ですね。

          

あるいはあなたの先生も、そういう
説明をされたかもしれません。

それで納得できる人はその線で感想文も
でっち上げればいいですし、もしテストに
出たら、その線で回答すればいいと思います。


でも、どうもしっくり来ない、違うような
気がする……という人には、この先をお読み
いただきたいと思うんです。

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語りの流れの異様さ

「棒」に目をとめた白ひげの先生と二人の
学生は「この棒から、どんなことが分るか」
考えてみよう、と分析を始めます。

はじめ、「棒」をあくまで棒として扱って
いますが、「なにか一定の目的のために、
人に使われていた」という分析のあたりから、
学生の言葉は、いわばねじ曲がってゆき、
先生もその流れに乗ります。

「しかも捨てられずに使いつづけ
られたというのは、おそらく
この棒が、生前、誠実で単純な
心をもっていた
ためでは
ないでしょうか」
「君の云うことは正しい。
しかし、幾分、感傷的になり
すぎているようだね」



つまり「棒」をあたかも「人間」である
かのように見る意識はここではじめて
発生しているのであって、それ以前には
なかったものです。
(棒は棒としてしか認識されていなかった)

「棒=人間」というこの新しい意識で
二人の学生が議論を進めてゆくと、
やがて先生が笑い出します。

「君たちの言っていることを要約
すれば、つまりこの男は棒だった
ということになる。
そして、それが、この男に関しての
必要にして充分な解答なのだ…
すなわち、この棒は、棒であった」


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ここでは、もはや「棒」でなく「この男」の
方が主語になってしまったところが、
いささかショッキングです。

上記のサクラさんの感想文はこの
ショックを起点として書かれた
物のようにも見えますね。

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安部公房の前衛作家たるゆえん、その芸術
としての新しさを鑑賞することが求められて
いるのなら(教科書に採用される理由が
それ以外にあるんでしょうか?)、味わう
べきはこのような語りの流れの異様さ、
それを仕掛ける意匠の新奇性といった
ところではないでしょうか。

寓意を読むとしたら、むしろそういう作品の
構造自体に見るべきなんじゃないかと。

「棒=必要のない人間」という隠喩として
読むだけなら、そこになんの新しさも
ないわけですから。

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新しい文学として読む

なので、すぐれた感想文やレポートを書こう
という志のある人なら、この異様な語りの
構造に自分がどう反応したか、どんな感じを
もったか、といったところをなんとか言葉に
して行きたいですね。

たとえば……登場人物の言葉や思考は、
他の人物の言動や状況からなんらかの
「暗示」を受け、それに突き動かされる
ように移動していっているようにも見えます。

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その動きは「シュルレアリスム」的でも
あり、語りは「意識の流れ」を直接に
映し出すようでもあります。

この「シュルレアリスム」とか「意識の流れ」
とか、20世紀に入って生まれた新しい
文学の考え方が採り入れられていることは
明らかですので、そのあたりを調べてから
読み直せば、また新しい発見があるはずですよ。
👉「シュール」という日本語を産み
落とした芸術運動、シュルレアリスム
に関しては、こちらもをご覧ください。

シュールの意味と使い方:お笑いの世界から芸術的”超現実”へ

原民喜 夏の花で感想文:夢が交錯する”超現実派”の文体を解説
  
    

又吉直樹 火花で感想文・批評文を☆火花を散らす”ボケ”師弟


また『棒』の世界にも顕著なのが「暗示」を
受けてしまうことの恐ろしさ。

これを描ききった傑作の一つに
シェイクスピアの『オセロ』があります。

👉詳しくはこちらで。

シェイクスピア オセロのあらすじと名言:漱石の解説つきで

シェイクスピアのオセロを講義:漱石の名言「白砂糖の悪人」?

           


むずかしいかもしれませんが、
やりがいのある仕事ではないですか。

なんにせよ、全文をじっくり
読みなおすところから始めるしか
ないかもしれませんね……( ̄_ ̄ i)

多少とも突っ込んだ感想文やレポートを
書こうという人は、そのへんを調べて
みるといいんじゃないでしょうか。

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まとめ

さて、いろいろと情報提供してきました。

これでもう大丈夫ですよね。

テストだろうが、感想文だろうが、
はたまた授業のための指導案だろうが。



安部公房の作品ではもう一つ、『鞄』を
載せている教科書もあり、これについても
記事を書いていますので、多少は参考に
なろうかと思います。

👉こちらです。

安部公房 鞄のあらすじ… 簡単/詳しくの2段階で解説

安部公房 鞄をどう解釈 ? 主題は? 問題を見つけて感想文へ

      バッグ images


👉そのほか安部公房の本を早く安く手に
入れたい場合は、Amazonが便利です。
こちらから探してみてください。

👌安部公房の本:ラインナップ👌


さあ、これだけの情報とヒントが
あればもう大丈夫。

高校生、あるいはそれ以上でなければ
ちょっと書けない、”高度”な内容の
感想文の出来上がりですねY(^0^)Y  

   

ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…

だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?


う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦

そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。

    

各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。


だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。

さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を
知るには、実際に出品され大臣賞などを
受賞している感想文をじっくり読んで
分析してみるのがいちばんです。

こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。

読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から

セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ

                 

アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ

    

そちらで解説している「書き方」を
踏まえて、当ブログでは多くの感想文例を
試作し提供してきましたが、このほど
それらの成果を書籍(新書)の形にまとめる
ことができましたので、ぜひこちらも
手に取ってご覧ください。
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買う前にその「予告編」が見たい
という人は、こちらでどうぞで。

読書感想文 書き方の本はこれだ!サイ象流≪虎の巻≫ついに刊行!!!

            


👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。

気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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