サクラさん
『もののけ姫』に出て
くるエボシ御前って
悪者ですよね。

ハンサム 教授
シシ神が正義でなら
その首を取るエボシは
もちろん

でも売られた女たちや
ハンセン病患者を引き
取って働かせるなんて
そのものでは?

サクラさん
でも正義の”もののけ
姫”サンは彼女をひどく
憎んでいます!(😾)

ハンサム 教授
サンは正義?

彼女は人間をみんな
憎んでいるだけでは?

タタラ場で鉄を作ること
は森の破壊という
生むとしても、人間の
生活にいろんな
もたらすはず。

立場の違いがある
だけでは?

サクラさん
それなら、なぜ一人だけ
あんなに綺麗に着飾って
いるんですか?

ハンサム 教授
彼女はかつて倭寇(海賊)に
売られながら、そこで
のし上がって権力者に
なった白拍子(遊女)。


(葛飾北斎画「白拍子」)

発想の源は金屋子神(かな
やこがみ)という女神で、
この神が”山の神”サンと
戦うのが『もののけ姫』
の世界なんです。

サクラさん
そうだったのか(叫び)

でも最後はなぜモロの
君に腕を食いちぎ
られるんですか?(🐱)


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さて、本日のテーマは、アニメ映画の
歴史を塗りかえたといわれる宮崎駿の
『もののけ姫』(1997)のミステリー。

数ある謎の中でも最大級のものの一つ、
エボシ御前という人物の不思議です!


映画を見ただけではわかりにくく
どうしても謎が残ってしまう部分に
ついて、確かな資料にもとづいて
いわゆる”裏設定”を明らかにしながら
分析・考察を進めていきたいと思います。

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以下のような内容になります。


1.エボシが死なないワケ

シシ神の首を取ってしまうエボシ御前。

神をも恐れぬ…とはこのことで、
(少なくともサン側から見れば)とんでも
ない悪者に違いありません。

エンターテインメントの物語としては、
ラストで罰を受けて死ぬというのが
定石というか、王道でしょう。

   
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実際そのように終わらせるべきだと
鈴木敏夫プロデューサーからは強く
言われながら、宮崎監督は結局これを
押し切って生かすことにしたらしい
のですね。

ある雑誌のインタビューで監督は
こう語っています。

エボシという女なんですが、
鈴木プロデューサーは
「絶対壮烈に死んでもらわなけ
りゃ困る」と言い出しまして。

でも生き残るんです。

生き残る方が大変だと思って
いるもんですから。
〔中略〕
壮烈に闘って死ぬ方が、結構
よくあるなとも思ってね。
〔中略〕
猪たちはことごとく死んでいるしね。

山犬も少しは賢いモロは
死んでますから。

子犬たちはバカなんです。
(『TECH WIN』別冊『VIDEO DOO!』
 1997年10月、アスキー)



なんだかつかみどころのない説明ですが、
要は、神をも恐れず人間社会の変革に
突っ走る”革命家”エボシは殺すにしのびず、
「バカ」な子犬たちとともに、次の時代も
生きて頑張らせたかった…
というところではないでしょうか。

     

「片腕を失ったエボシ御前は、大変な
情勢下でどんな村を作るのでしょうね」
という質問には、やはり次代を生きて
いくアシタカに絡めて、宮崎さんは
こんなふうに答えています。

エボシは革命家ですからねぇ、
何とかするでしょう。
〔中略〕
まぁ、色んなことをやるでしょうが、
これから本当に大変になる。
〔中略〕
「死の棘」をアシタカは体内に
入れて生きていくわけですよ。

それが21世紀の人間の運命ですよ。
〔中略〕
幸せな明るい未来が待っているとか、
そういう根拠のない希望を
謳ったってしょうがない。

だからと言って生きるに価しない
のかというと、そうじゃない。

      
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というようなわけで、一つには死なすのは
エンディングとして安直・陳腐だという
芸術的観点もあり、また他方には、まだ
頑張ってほしいという、生みの親の愛も
あって、エボシは生き残ることになった
ようです。

ただ、死は免除しつつも、片腕をもぎ
取るという厳罰が下されることに
なった次第……。

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2.人物・地勢相関図

おっと、ゴメンナサイ。

ここまでの話、まだちゃんと映画を
見ていない人にはチンプンカンプン
だったかもしれませんね。


実際、出てくる人物は(オっと、動物や
神々を含めてですが)多種多様で数多く、
しかも複雑に関係づけられています。

一度見た人でも十分にはのみ込めない
というのがむしろ普通のようです;^^💦


そこで、まだ見ていない人にも一目で
理解してもらえるような「人物・地勢
相関図」を作成しましたので、混乱
しそうな時はこちらをご参照
いただければと思います。



ホ~ラ、よくわかったでしょう。


さて、そこでエボシ御前に下される
懲罰の話に戻りますが、上記のような
作者の意向が主だったのであれば、
その罰はどんな形で降ってきても
かまわないのではないでしょうか。

でも、ここで執行人に抜擢されるのが
モロの君でその刑罰は”腕もぎ”。


すでに死んでいたかと思われたモロが
突如、首だけ復活してロケットのように
飛んでエボシの腕に噛みつくのですね。

なぜここでモロ…なのでしょうか?


3.エボシはサンの実母?

ところで”もののけ姫”サンは、もともと
人身御供として山犬に差し出された
人間の子ということになっています。

それに関して、その子を産んで捨てた
実母がエボシで、だから『もののけ姫』
は実は母と子の戦争だ…という説も
流布していますね。

  

もしこれも”裏設定”としてあったのなら、
ラストのモロの噛みつき・腕もぎは、
捨て子という悪を犯したエボシへの
懲罰と解することもできて、面白い
かもしれませんね。

でも、そのように考えられていた形跡は
どこを探しても見つかりませんから、
これは都市伝説以上のものでは
ないのでしょう。

エボシをサンの実母と見るのは
年齢的にも苦しいですし、顔の系統も
ハッキリと違う(似ていない)造型に
なっていますしね。


それならなぜ、懲罰役はやはりモロ…
ということになったのでしょうか❓

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4.エボシはモロに乗っていた?

さて、ここからは公認の”裏設定”では
なく、わたくし、サイ象の推理として
語らせていただきます。

まず、『もののけ姫』を一見するや
「よく勉強している」と賛嘆された
有名な歴史家が網野善彦さん。

その網野さんの見方では…

(シシ神の森に)サンという女の子を
住まわせたのは、宮崎さんが
山の神が女性であることをよく
ご存じで意識的に設定された
のでしょうね。
〔中略〕
その森に戦いを挑むタタラ場の
頭領・エボシは、衣装からすると
白拍子、遊女だと思いますが、
宮崎さんは金屋子神という製鉄や
鉄器を扱う人たちの神様が女性
であることを意識されてこの
エボシを設定されたのでは
ないかと思います。
(『ジブリの教科書10 もののけ姫』
  文春ジブリ文庫)


さて、この「金屋子神」という女神ですが、
これは古代からタタラ場の多くあった
出雲地方の金屋子神社(島根県安来市)
の祭神で、このような絵画で表現
されてきたものです。

  

ギョギョギョ~(叫び)
女神が乗っている白い山犬(狼)。

これはどこをどう見てもモロの君…
でなければ彼女の子犬、つまり
サンの兄弟分ではありませんか!


ほかの絵を見ても、金屋子神に
従う山犬はなぜか白いのです。

『もののけ姫』の山犬一家がみな白い
ことの由来は、実はここにあるのでは?

つまり、そもそも宮崎さんが”白い山犬”
を主要キャラにしようと着想したのも
これらの絵にインスパイアされての
ことだったのではないでしょうか?


もっともエボシが「金屋子神」を体現して
いるのだとすると、モロが最後に噛みつく
のは、いわゆる「飼い犬に手を噛まれる」
を地で行ったことになりますが、それも
実際、世の中にままあることですし…。

よくも長いこと私を酷使しやがって…
とかですね;^^💦

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5.エボシはなぜ美しいのか

ところで、映画を見ながら、”可愛い”系の
サンとも、またカヤ(郷里でアシタカを
見送った少女)とも異質の、エボシ御前の
美しさにうっとりしてしまった人も
少なくないことでしょう。

まなじりはきびしく上がり、唇はつねに
紅で縁取られ、そして戦いに臨む場でも
なお身にまとうゴージャスな装束……。

      

そもそも「エボシ御前」という呼び名は
「悪路王をしずめた立烏帽子(たてえぼし)
という絶世の美女の伝説」から来るもの
だと、網野善彦さんとの対談で宮崎監督
自ら語っています。
(網野善彦『歴史と出会う』新書y)

立烏帽子は鈴鹿にいたので鈴鹿御前とも
呼ばれ、魔王の娘ながら征夷大将軍
坂上田村麻呂将軍と結婚して夫婦で
日本平定に尽くしたとされています。

   
   坂上田村麻呂

エボシのこういう人物造型が、白拍子
(遊女)という彼女の過去を暗示している
わけですが、それもただの遊女ではなく、
人身売買で海賊に売られた結果という
悲惨な生い立ち……

というのが映画では明白に語られる
ことのない”裏設定”なのですね。


制作中のジブリスタジオ美術部の
壁に貼ってあった「プロット」に
よれば、エボシは

辛苦の過去から抜け出した女。

海外に売られ、倭寇の頭目の
妻となり、頭角を現し、ついに
頭目を殺し、その金品を持って
自分の故郷に戻ってきた。
〔中略〕
侍の支配から自由な、強大な
自分の理想の国を作ろうと
考えている。
   (浦谷年良『「もののけ姫」は
   こうして生まれた。』徳間書店)


のでした。

森のもののけたちとの戦いに用い、
シシ神の首もぶっ飛ばしてしまうあの
石火矢(いしびや=原始的な火縄銃)も
倭寇が明から強奪した金品の一部
だったわけです。

神をも恐れぬ(叫び) ……といえば、少し時代を
下れば出てくるはずの織田信長も想起
されますが、信長さえ思わせる”美しき
革命家”エボシは作者に深く愛される
ところとなって、とても殺すには
忍びなかった…

ということではないでしょうか。

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まとめ

さあ、いかがでした?

謎だらけの『もののけ姫』の中でも、
とりわけ謎に満ちた魅力いっぱいの
キャラクター、エボシ御前について、
これで大方のところはご理解いただけた
のではないでしょうか。


なにしろ『もののけ姫』は「必要なことは
全て描くけども、わかるようには描かない
という制作態度の貫かれた芸術品。

謎はまだまだわんさと残されて
いますけどね…;^^💦
👉『もののけ姫』にちりばめられた
諸々の謎については、こちらの
記事もご参照ください。

もののけ姫 サンのお面の意味は?縄文人/弥生人の戦いが背景に?

もののけ姫 玉の小刀の役割は?カヤ/アシタカ/サンと渡るのはなぜ?

    
    (お求めはジブリグッズから)


「アシタカとサンに子供は?」で小説を!二次創作へ3つのシナリオ案

もののけ姫 カヤとアシタカの関係は?その後どうなる4つのシナリオ


また宮崎駿のほかの作品や
発言をめぐってはこちらでも
情報提供していますので、
ぜひご覧ください。

千と千尋の神隠し ハクの本当の名前は?漢字でどう書く?

方丈記冒頭(原文)早わかり!漱石の英訳/宮崎駿の言及をヒントに

風立ちぬ 菜穂子は小説と映画でどう違う?あらすじを比較すると

     


さあともかくこれで『もののけ姫』に
関してはOKですね。

感想文でもレポートでも、書こうと
すればスイスイと書けてしまうでしょう。



ん? 書けそうなテーマは
浮かんできたけど、具体的に
どう進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、当ブログで書きため
ています「感想文の書き方」シリーズ
記事のどれかを参考にしてくださいね。

👉当ブログでは、日本と世界の
種々の文学作品について、
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょ~~(^O^)/

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