サクラさん
『もののけ姫』って
謎だらけなんですが、
いちばんわからないのが
エミシの村を追放される
アシタカにカヤが渡す
玉(ぎょく)の小刀。

アシタカはなんとこれを
サンにあげてしまうん
ですが、これって、
ひどい裏切りでは?

ハンサム 教授
カヤとサンの両方の声優
石田ゆり子さんが宮崎
監督から言われたのは
男なんてそんなものさ

サクラさん
ガ~ン(叫び) 男って
そうなんですか?

ハンサム 教授
いやそれは人によるし、
時代にもよるさ;^^💦

玉(ぎょく)の小刀は北方
のエミシの国から南の
シシ神の森へと渡される、
この空間的な移動に意味が
あるんじゃないかな。




サクラさん
あ~ そういう問題なん
ですか(🙀)

でも、そもそも『ものの
け姫』の舞台って一体
どこなんですか?

ハンサム 教授
宮崎さんが作画する
上でのイメージは屋久島
や白神山地だったよう
ですが、ストーリーは
また別の話。

サクラさん
シシ神の森とタタラ場の
戦いにエミシから来た
アシタカが介入し、
さらに政府軍のような
勢力もあって、かなり
複雑ですよね。

ハンサム 教授
そのあたり、地勢図で
示しながら解きほぐして
いきましょう。


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というわけで、日のテーマは、アニメ映画の
歴史を塗りかえたといわれるジブリの超大作
『もののけ姫』(1997)がふりまいてきた
謎の一つ、「玉(ぎょく)の小刀」の意味を
追いながら、そもそもどいういう舞台設定に
なっているのかを明らかにしていきます。

「玉の小刀」とは冒頭近くで村の娘、カヤが
アシタカに贈り、後半でアシタカはサンに
与えてしまうという不思議な移動をする
ことで、一部ファン(主に女性)の不評を
買ってもいる問題の小道具です!

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というわけで以下のような内容で参ります。


1.カヤが小刀に吹き込む”息”の意味

『もののけ姫』の物語は、アシタカが
エミシの村を追放される経緯を語る
ところから始められます。

そこで「いいなづけ」らしいカヤが
アシタカに渡すのが玉の小刀なんですね。

で、アシタカがこれを死守せず、事も
あろうにエミシ以外の部族の女(しかも
山犬の娘)に贈与してしまう…(叫び) 。

この決して無意味とは思われない謎に
迫っていきたいのですが、その上で
欠かせないのが、物語の舞台となって
いる場所や、そこで争う人々の
地勢的な関係を理解すること。

そこで作成しましたのが下記の
「人物・地勢相関図」です。



なお、この複雑な関係について
さらに詳しくはこちらの記事を
ご参照願います。

もののけ姫 エボシ御前の腕はなぜモロにもがれる?裏設定を探ると…

          


ともかく村を出る恋人を不意打ちし、
小刀を差し出すカヤとアシタカは
このように会話します。

「カヤ!見送りは禁じられているのに…」

「お仕置きは受けます。
これを私の代わりにお伴させて下さい」

「大切な玉の小刀じゃないか」

「お守りするよう息を吹き込めました
これからもずっとあなたのことを
思います」

「私もだ。いつまでもカヤを思おう」

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つまりここでカヤがアシタカに伝えている
小刀の役割は、あなたを「お守りする」
ものということ。

その石製の小刀に息を吹き込める
というのも現代人にはわかりにくい
ところで、謎といえば謎ですね。

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でもというものを生命や魂の象徴の
ように見なすのは、古代ではあちこちに
あった信仰なんです。

心や魂の意味で「サイコロジー(心理学)」
など多くの英語の接頭語になっているのが
「サイコ(psycho)」ですが、そのモトに
なっている古代ギリシア語の「プシュケー
(Ψυχή)」もモトは「息」の意味でした。

日本でも、たとえばひな祭りの起源は
人形(ひとがた)を川に流すことでしたが、
流す前に息を吹きかける習わしでしたし、
賭博でサイコロを振る前に息を吹きかける
という習俗は今に残っています。

カヤが小刀に息を吹き込むことにも
もちろん意味があるわけで、これによって
「お守り」が生命ないし精神性を帯びて
効力を強めることを彼女は信じている
はずなのです。

       

とはいえ、これは些細といえば些細で
ストーリー展開からいえばなくても
かまわないセリフに見えますよね。

実際、心にとめる観客もほとんどいない
かもしれないのですが、にもかかわらず
そのような細部にいちいち意味
持たせていく…

宮崎監督のこの作品へのこだわりが、
このあたりにも読み取れるわけです。

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2.お守りとしてなぜ小刀?

さてそれならば、カヤが「お守りになる」
ものを渡すのはよいとしても、それは
なぜ「玉」(黒曜石)で、かつ「小刀」で
なければならなかったのでしょうか?

まず、「大切な玉の小刀じゃないか」
とアシタカも驚くとおり、黒曜石が
貴重なものだという点があります。

では、それが「小刀」の形をしている
ことにはどんな意味が?
👉この「玉の小刀」も今や
商品として出回っています。


    
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黒曜石はその切れ味のよさから古来、
刃物に加工されてきた石で、かつ小刀の
ような武器をかたどったものは、
「身を守る」という意味でお守りに
に使われることが多い。

だから「小刀」が選ばれた?


ただ、もらった人は鞘もない抜き身の
刀を身につけることになるわけで、
これは体を傷つける危険性はない
のでしょうかね?

つい心配になりますが、それは余計な
お世話かもしれません。

  
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ともかくアシタカがその小刀をサンに
与えるのは、タタラ場での戦闘で傷ついた
体をサンの岩屋での静養で癒した後のこと。

岩屋の外で待機していたらしい山犬に、
首からはずした小刀を渡し、人間との
戦闘に向かったはずのサンに届けるよう
頼みます。


その山犬が走っている間、サンは
モロの君(育ての母である巨大な山犬)
に抱きついて人間との戦いに向かう
覚悟を告げています。

それが決死の戦いである以上、それは
永別の挨拶でもあるのですが、モロが
それに対して「お前にはあの若者と
生きる道もあるのだが…」と口にした
ところで山犬が到着します。

山犬の口から例の小刀を受け取った
サンは「きれい…」と女性らしく目を
輝かせ、ただちにネックレスよろしく
首にかけて戦いにおもむくのですね。

   
    こちらは黒曜石の”矢じり”のネックレス


この経緯はとっても意味深です。

アシタカとサンとがすでにしっかりと
結ばれている(それをモロも知っている)
ことが、注意深い観客には十分に
伝わるはずですね。

そしてその結ぼれに性的な関係も
含まれていることは、宮崎作品を長年
フォローしてきた”オタク評論家”
岡田斗司夫さんも指摘されるところです。
👉「必要なことは全て描くけども、
わかるようには描かない」という
制作方針を含め、岡田さんからの
情報提供はこちらの動画で
お聴きになれます。




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3.眠るサンの脚から見えるもの

でも、なぜそう(性関係が出来ていると)
言えるのか?

岩屋で何日か静養して傷の癒えた
アシタカが、目覚めて起き上がる
場面を思いだしてください。

アシタカのすぐそばで彼の側を向いて
眠るサンはとても安らかな寝顔で、
女性らしいきれいな両脚がしっかり
見えています。

    

この場面の絵コンテを見た鈴木敏夫さんは、
すぐにピンと来て、この時点での二人の
関係について問いただしたそうです。

その時は答えようとしなかった宮崎さん
ですが、その後、鈴木さんがしつこく
問い詰めると、ついに口を開いて
こう言ったそうなんですね。

「そんなの、わざわざ描かなくても
わかりきってるじゃないですか!」
(岡田さんの報告による)

  
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「必要なことは全て描くけども、
わかるようには描かない
というポリシーのこれも一環。

もうおわかりですよね。

子供にはわからないし、わからなく
てもいいけれど、大人には読み取って
ほしいと思いながら描かれている部分。


要するに性的な意味で”深い仲”に…
それ以外にないのです。

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4.小刀は男性を象徴している?

さて、このような見方が認められるなら、
アシタカとサンが”深い仲”になるのと
二人の間で「小刀」が受け渡されるのは
ほぼ同時だということが言えます。

そうであれば、「小刀」の役割はこの
“深い仲”と密接な関係があるものと
考えざるをえないのでは?……


ここでご登場を願うのが精神分析の祖、
ジグムント・フロイト先生です。

その著書『夢判断』などを覗いたことの
ある人ならもうピンと来ているでしょうが、
夢に「小刀」のような刀剣類が出てきた
場合、その意味として考えられている
のは”危険性”と、もう一つ、”ファロス”
(男根)があるんですね。
   👇



『もののけ姫』でカヤ→アシタカ→サンと
受け渡されるものが「小刀」であることの
深層の意味として考えられるのは、結局、
これなのではないでしょうか。

つまりそれは”男性”の象徴であり、
それをアシタカに渡すカヤの行為には、
「これはもう私には不要(無縁)なもの
だから持って行ってください」という
意味を読むことができます。


この時のカヤが泣いたりせず、むしろ
すがすがしく送りだすことができて
いるのは、それまで彼女が所有していた
アシタカの”男性性”がすでに役割を
終えているからではないでしょうか。

すなわち、彼女はすでにアシタカの
子を身ごもっており、その子との
未来が思い描けているがゆえに、
絶望的にはならないのです。
👉だとしたら、カヤはその後、
一体どんな生涯を送る
ことになるのか?

それについては別の記事で
徹底考察していますので、
どうぞそちらをご覧下さい。

もののけ姫 カヤとアシタカの関係は?その後どうなる4つのシナリオ

「アシタカとサンに子供は?」で小説を!二次創作へ3つのシナリオ案

       
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ともかくその流れで見れば、この小刀を
サンに与えるというアシタカの行為には、
彼の”男性性”が向かう対象がカヤから
サンに移り、サンもそれを受け入れた…
という経緯を読むのが自然です。


ついでに言うと、そもそもアシタカは
なぜこれを、岩屋にいる間に直接サンに
渡すことをしないで(それは十分可能
ですよね)、山犬の口にくわえさせ
激走させる…
という展開になっているのでしょうか。

    

これも、フロイト的な見方をするならば、
たとえば乗馬のような、体を揺らしながら
走るという動きに性的な交わりが象徴されて
いるという解釈もかなり一般的です。

ここは日本人には通じなくても欧米人には…
と宮崎さんが期待した気配もある、
その意味ではわかるように描いた部分。

つまりその前に岩屋で行われたはずの
行為をダブらせている(確認する、あるいは
反芻している…などいろんな取り方が
できます)ということではないでしょうか。

  

だとしたら、アシタカは性の対象を
イージーに取り替えているように
見えなくもないわけで、そこが不愉快で
納得できない…というのもわかります。

でもそれは、一夫一妻制という現代の
常識を絶対視し、それを前近代の王族の
世界にまで波及させる、あまりに”現代的”
な批評であって、作品の深い理解には
妨げになるものかもしれません。


ただ、もちろんそういう反応は宮崎さんも
織り込み済みだったに違いありません。

諸部族の統合による平和の実現に男女の
性的な結合や別れのドラマがつねに
伴ってきた…いうことは、世界の神話が
示す歴史的事実でしょう。

『もののけ姫』をたんなる甘っちょろい
メロドラマに落とすことなく、人間の
真実を描くものにしようとした芸術家の
気迫が伝わってきます。

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5.テーマは”愛”を超えて”哲学”に?

ジブリのプロデューサー、鈴木敏夫さんに
よれば、そもそも制作中から「難解」と
見られ、公開自体も危うかった冒険作が
この『もののけ姫』。

これが、イチかバチか公開に押し切るや、
たちまち世界的な成功を収めてしまった
要因としては、ゲイリー・カーツ(『スター・
ウォーズ』などのプロデューサー)のこんな
発言に背中を押されたということが
あったそうです。

すなわち『スター・ウォーズ』の登場に
よって、映画の最大のテーマはもはや
“ラブ”(愛)ではなく”フィロソフィー”
(哲学)になっている…と。
(『ジブリの教科書10 もののけ姫』
文春ジブリ文庫)


そういった背景もあって、『もののけ姫』
での宮崎監督がこれまでの作品とは違う
制作方針として打ち出していたのが
「必要なことは全て描くけども、
わかるようには描かない
ということでした。

その一環がここにも見て取れるのです;^^💦

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まとめ

さあ、いかがでした?

一見しただけではわかりにくい、カヤ⇒
アシカタ⇒サンと渡る玉の小刀の、性的
にして地勢的・神話的な意味・役割について
理解を深めていただけたのではないでしょうか。

なにしろ『もののけ姫』は「必要なことは
全て描くけども、わかるようには描かない
という制作態度の貫かれた芸術品。

謎はまだまだわんさとあって、残念ながら
ここではこれ以上、語ることができません。
👉『もののけ姫』にちりばめられた
諸々の謎については、こちらの
記事もご参照ください。

もののけ姫の謎に迫る!サンのお面は土偶?カヤの小刀の意味は?…

             

また宮崎駿のほかの作品や
発言をめぐってはこちらもどうぞ。

千と千尋の神隠し ハクの本当の名前は?漢字でどう書く?

方丈記冒頭(原文)早わかり!漱石の英訳/宮崎駿の言及をヒントに

風立ちぬ 菜穂子は小説と映画でどう違う?あらすじを比較すると

     


さあともかくこれで『もののけ姫』に
関してはOKですね。

感想文でもレポートでも、書こうと
すればスイスイと書けてしまうでしょう。



ん? 書けそうなテーマは
浮かんできたけど、具体的に
どう進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、当ブログで書きため
ています「感想文の書き方」シリーズ
記事のどれかを参考にしてくださいね。

👉当ブログでは、日本と世界の
種々の文学作品について、
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょ~~(^O^)/


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