もののけ姫 サンはなぜあんなお面を?その意味は縄文/弥生人の戦いに?

もののけ姫 サンはなぜあんなお面を?その意味は縄文/弥生人の戦いに?

サクラさん
『もののけ姫』って、
見れば見るほど
謎だらけ。

ヒロインのサンは山犬
(狼)に育てられた娘
ですが、タタラ場(製鉄
所)を襲撃するのになぜ
あんなヘンテコリンな
お面をつけるんです?




山犬とは似ても似つか
ない顔では?


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ハンサム 教授
作者(宮崎駿)の言葉から
すると、もともとサンが
生まれたのは、実は山犬
云々ではなく、あの
お面のイメージから。

サンは「縄文期のある
種の土偶に似て」いなく
てはならず、要は
“縄文人”ということが
基本的な条件でした。

エミシ(蝦夷)から来た
アシタカと結ばれるのも
縄文人という共通性が
前提だったんですよ。

サクラさん
ほほ~(🐱) だから
タタラ場襲撃は《中央の
弥生人vs.辺境の縄文人》
の戦いだと?

それも謎めいた話ですが
ともかくそこで両サイド
に引き裂かれるアシタカ
はその後、玉(ぎょく)の
小刀をサンに渡します。

でもこれ、もともと郷里
の恋人、カヤが別れ際に
贈ったもの。

ちょっとひどくない
ですか?(😾)

ハンサム 教授
それも謎ですが、解く
カギは刀にどんな意味が
託されているか。

そういった謎があちこち
に埋め込まれているから
こそ『もののけ姫』は
面白い。

一つ一つ解きほぐして
みませんか。


そこで本日のテーマは、宮崎駿の傑作
映画『もののけ姫』(1997)の謎を解く!

エボシ御前のタタラ場での戦闘シーンで
サンがつけている仮面、アシタカから
譲渡される黒曜石の小刀…などなど。

ちりばめられた謎のいくつかについて
背景をさぐり、その意味を解きほぐして
行こうとというのが本日のテーマです!

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👆サンが手にさげているお面に注目 

というわけで以下のような内容で参ります。



1.サンのお面の意味と背景

襲撃場面でサンがつけている仮面は、
いかにもひょうきんで、激しい戦闘の
シーンにはそぐわない感じが強いですね。

そこにまたヘンテコリンな面白みが
あってか、今やコスプレやハロウィーン
などでの扮装アイテムとしても大人気。

商品も多く出回っているようです。



      
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よく見ると、目と目が離れすぎていて、
サンがかぶった場合、視界はゼロだった
のではないかと思われますが、それでも
あれだけ戦うのは、サスガ”もののけ”…

それはさておき、あまり実用的でない
この奇妙なお面のイメージは一体
どこから来ているのでしょうか?

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その手掛かりとなる唯一の文書と
いわれるのが、宮崎監督自筆の企画書
「荒ぶる神々と人間の戦い」の次の一文。

少女は類似を探すなら縄文期の
ある種の土偶に似ていなくもない。

   (『ジブリの教科書10 もののけ姫』文春ジブリ文庫)

映画公開時のパンフレットなどにある
「森へ捨てられ山犬に育てられた」という
設定はむしろ後付けで、サンの原点
(オリジナル・イメージ)が「縄文期の
ある種の土偶」にあったことは間違い
ないようです。


ではその「ある種」とは? と問うなら、
サンのお面に似たものとしては、関東地方
から多く出土し、みみずく土偶と呼ばれる
タイプのものが挙げられます。

   

こちらの「合掌土偶」(青森県風張1遺跡)
なども顔の系統は近いようですね。👇

           
            (画像はWikipedia:土偶から)


ともかく出来あがった登場人物としての
サンは、いわば2つの顔をもつ”双面神”。

つまり身に着けている毛皮などで「山犬」
としてのアイデンティティを、土偶の
ような仮面(宮崎さんは「土面」と呼ぶ)で
「縄文人」としてのアイデンティティを
それぞれ表現していると。


ともかくサンの戦いのモチベーションに
ついて、宮崎監督はベルリン国際映画祭の
インタビューでこう回答しています。

サンは、自然を代表している
のではなくて、人間の犯している
行為に対する怒りと憎しみを
持っている。

つまり今現代に生きている
人間が人間に対して感じている
疑問を代表しているんです。

   (上記『ジブリの教科書10 もののけ姫』)

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「人間の犯している行為」のうちサンの
「怒りと憎しみ」が直接的に向けられて
いるのが、エボシ御前と彼女に統率
されるタタラ場。

そこは火を使って鉄を作る(縄文人は
しなかった行為)場所なのですから、
「自然との共生」という宮崎アニメに
一貫するテーマを『もののけ姫』も
やはり踏んでいる…
というかその集大成という感も
あるわけなのです。
👉「縄文人」と「弥生人」の違いや対立といった
話がそもそもよくわからない…
という人はこちらの記事を覗いてみてください。

熊本に美人が多いのはなぜ?『吾輩』猫が人類学的に解明!

      縄文
                 yayoi
       典型的な縄文人(上)と弥生人の顔
 

とはいえ、「自然との共生」云々だけの
解釈では到底スッキリさせてくれない
のが『もののけ姫』の世界。

まだまだある謎のうち、特に気になる
のはコレではないでしょうか…。


2.カヤ/アシタカ/サンと渡る小刀

『もののけ姫』の物語は、アシタカが
エミシの村を追放される経緯を語る
ところから始められます。

未明、ヤックルという馬代わりの
大きなシカを厩(うまや)から出し、
いよいよ村を出ていくアシタカ。
👉日本にいたとは思われないこの鹿的な
動物の謎についてはこちらで情報提供
しています。

もののけ姫 玉の小刀の役割は?カヤ/アシタカ/サンと渡るのはなぜ?

     


そのとき、村の出口で彼を呼び止める
のが、カヤという名の可憐な少女。
  

なんとその声を担当していたのは、
あとでサンも演じることになる同一の
声優、石田ゆり子さんだったのですね。

カヤとサンは顔も同系統といえばいえて、
つまりどちらもアシタカ好みの、近似
したタイプという設定なのでしょう。

この後、アシタカがサンを見そめて
「そなたは美しい」ともらすのも、
その意味では不自然ではないわけです。

  
    黒曜石の”矢じり”のネックレス


問題は、そのアシタカが村を出る時、
見送るカヤに差し出される
玉(ぎょく)の小刀。

その場面の会話はこうでした。

「これを私の代わりに
お伴させて下さい」

「大切な玉の小刀じゃないか」

「お守りするよう息を吹き込めました。
これからもずっとあなたのことを
思います」

「私もだ。いつまでもカヤを思おう」

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👉この「玉の小刀」も今や商品として
出回っています。


    
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ところが……

その小刀をアシタカはサンに渡すよう
弟分の山犬に託し、それを受け取った
サンはこれをネックレスにして、
その後つねに首に下げるように
なるのですね(叫び)

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結局のところ、サンの人間への憎しみは
なくならないため、二人は「共に
生きる」ことはかなわず、
「また時々、お前に会いに来よう」
というアシタカの言葉にサンが
うなずく…

というエンディングですが、ここでも
サンは小刀を首にかけており、
アシタカはそれをくれた故郷のカヤを
思いだす様子もありません。

    
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この経緯が多数女性ファンの不興を買った
わけですが、この反感はサンとカヤの
二役を演じた当の声優、石田ゆり子さん
自身のものでもありました。

これについては、石田さんは録音現場で
宮崎監督に抗議したそうですが、
監督の返答は「男なんてそんなもんさ」
だったそうで…。
👉宮崎監督のこの問題発言にも関連し、
この小刀の受け渡しの意味や、それにより
カヤのその後の生涯はどうなってしまうのか
等々の問題は、こちらの記事でさらに
詳しく追究しています。

もののけ姫の舞台はどこでもない?地勢相関図で玉の小刀のリレーを再考察!

もののけ姫 カヤには子孫が…?アシタカとのその後4つのシナリオ

        


こういう男性観の表現だったかどうかは
さておくとしても、これが女性の反発を
買う危険性はおそらく計算済み。

贈り物が三人の間を渡っていくという
展開には、宮崎監督なりのこだわりが
あったにちがいありません。


とすれは、それはなぜ小刀でなければ
ならなかったのでしょうか。

美しい黒曜石で作られたものだから
貴重だということはわかりますが、
それが刀だということには何事かが
象徴されているのでしょうか。

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3.脚をさらして眠るサン

ここで少し話が飛ぶようですが、ケガを
負ったアシタカがサンの暮らす岩屋の
中で何日も寝たきりでいたあたりの
場面を思いだしてください。

ようやく傷が癒えて、起きようとする
アシタカが、すぐそばで眠るサンを
見つめるのですが、この時のサンは
安らかな寝顔で、女性らしいきれいな
両脚がしっかり見えています。

    

この場面の絵コンテを見た鈴木敏夫さん
(プロデューサー)は、すぐにピンと来て、
この時点での二人の関係について
宮崎さんに尋ねたそうです。

その時は答えようとしなかった宮崎さん
ですが、その後、鈴木敏夫がしつこく
問い詰めると、ついに口を開いて
こう言ったとか。

「そんなの、わざわざ描かなくても
わかりきってるじゃないですか!」

  


これまでの作品と違い、「必要なことは
全て描くけども、わかるようには描かない」
というのが『もののけ姫』での宮崎監督の
基本方針だったとのことで…。
👉わかるようには描かない」という
芸術家魂で貫かれた『もののけ姫』が
わかりにくいのは当然といえば当然。

いまだによくわからないという
読者さんのために、理解の助けと
なる「人物・地勢相関図」を作成
しましたので、ここにお見せします。



この複雑な関係についてさらに
詳しい情報はこちらの記事で
お読みいただけます。


もののけ姫 エボシ御前の腕はなぜモロにもがれる?裏設定を探ると…
     
    
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さて、もうおわかりですよね。

子供にはわからないし、わからなく
てもいいけれど、大人には読み取って
ほしいと思いながら描かれている部分。

要するに性的な意味で”深い仲”に…
それ以外にないのです。

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4.小刀の深い意味

さてそこで「カヤ→アシタカ→サンと渡る
小刀」の話に戻りますが、それがほかの
何物でもなく刀剣類だということに、
作者はどのような意味を込めて
いるのでしょうか。

精神分析の祖、ジグムント・フロイトの
『夢判断』などを覗いたことのある人は
すぐにピンとくるでしょうが、刀剣類の
意味するところは、「危険性」と並んで
「男根」だということになります。
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そこで、もしこの小刀を男性の象徴のように
受け取ってよければ、それをアシタカに渡す
カヤの行為には、「私はもうこれはいらない
から持って行って」(これまでの性関係は
終わりにするしかないので)と言っている
のだと読むことができます。

わりあいサッパリした感じでそれができる
のは、性行為の目的(すなわち妊娠)を
すでに果たしているから…
という解釈も可能でしょう。

  

そう理解してよければ、この小刀をサンに
与えるというアシタカの行為には、彼の
男性性の向かう対象がカヤからサンに
移った…という経緯を読むしかない
わけですよね。

その”移り気”が女性ファンの怒りを
買ってしまったらしいのですが、
そこはまあまあ;^^💦
あの小刀を渡した時点で、カヤは
アシタカにそれを許しているとも
いえるんじゃないですか?


ん? そういう展開こそが男に
都合のよい”男性中心主義”だ?

そこはまあ、宮崎さんを
批判するしか…;^^💦
👉ともかく『もののけ姫』の裏設定として、
“子供にはわからなくてもいい”性的なコトが
ガッツリと埋め込まれていることは
“オタク評論家”岡田斗司夫さんも
認めるところ。

こちらの動画でも解説されています。




まとめ

さあ、いかがでした?

謎の多い『もののけ姫』の世界ですが、
そのいくつかについては、これで
なるほど…と納得していただけたの
ではないでしょうか。

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要するにこの映画は、宮崎駿監督自身の
世界観、歴史観、人生観、そして男女観・
性愛観までもがガッツリと描き込まれた、
おそらくライフワークといっていい作品。

基本は決して子供向けではないのですが、
子供にも鑑賞されるよう、上手に作り
上げているところがまたサスガ…
というわけなのです。
👉芸術家としての宮崎駿に関心をお持ちの方は
こちらの記事などもご参照ください。

千と千尋の神隠し ハクの本当の名前は?漢字でどう書く?

方丈記冒頭(原文)早わかり!漱石の英訳/宮崎駿の言及をヒントに


風立ちぬ 菜穂子は小説と映画でどう違う?あらすじを比較すると

     

さあともかくこれで『もののけ姫』に
関してはOKですね。

感想文でもレポートでも、書こうと
すればスイスイと書けてしまうでしょう。



ん? 書けそうなテーマは
浮かんできたけど、具体的に
どう進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、当ブログで書きため
ています「感想文の書き方」シリーズ
記事のどれかを参考にしてくださいね。

👉当ブログでは、日本と世界の多様な
文学や映画の作品について、
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょ~~(^O^)/


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