桃太郎さん,鬼が何をしたの?鬼退治は正義か悪か,いろんな理屈 | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象

桃太郎さん,鬼が何をしたの?鬼退治は正義か悪か,いろんな理屈

サクラさん
日本男児のヒーローと
いえばまず桃太郎です
よね~(😻)

ハンサム 教授
そうですね。

でも殲滅された鬼の方は
たまったもんじゃない
ですよね;^^💦


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サクラさん
でも鬼は悪い奴だから
仕方ないんじゃない
ですか?

ハンサム 教授
え? 鬼さんどんな
悪いことしましたか?

  

もともとの昔話では
鬼が悪いことした
なんて一言も言って
ないんですよ。

サクラさん
え~(🙀)それじゃ
勝手に攻め込んだ
桃太郎の方が悪い
…と?

  
というわけで本日のテーマは桃太郎!

桃太郎物語にまつわる様々な疑問──

とりわけ彼の軍団が退治することに
なっている「鬼」たちというのは、本当に
退治されるに値したのか、値したとしたら、
どんな悪いことをしていたのか……

──といったあたりに突っ込みを入れ、
そこから見えてくる、実は以外に広い
「桃太郎世界」へのご案内を試みたいと
思うんです。

そんなわけで、内容はザッと以下の通り。


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🍑 永遠のヒーロー?

まずは現代のカッコいい桃太郎を
ご覧いただきましょう。

今や人気絶頂 👀”松田翔太”桃太郎です! 👇


ただ桃太郎ファンもそう安閑として
いられなくなって来たのが、現代ですね。

当ブログでも、少し前に「桃」と「桃太郎」
について書こうとしたのですが、どうにも
書きにくくなって、いったん退却しました。

実はあの太宰治も、傑作再話集『お伽草紙』
(1945)で「桃太郎」も当然書こうと
思っていたけど、けっきょく書け
なかったと自白しているんですよね。
👉このあたりについては下記の記事も
ご参照ください。

ひな祭りに男の子を取り込もう!「桃/桃太郎」の霊力で

太宰治おすすめ作品「カチカチ山」💛名言《惚れたが悪いか》


いったい何が問題なんでしょうか。

桃太郎広告 2014-06-02-huffpost_140602_01-thumb

これは日本新聞協会広告委員会主催の
「新聞広告クリエーティブコンテスト」の
2013年度最優秀賞作品「めでたし、
めでたし?」の画像です。

念のため文字を書き出すと、こうなります。

ボクのおとうさんは、
桃太郎というやつに殺されました。

審査委員からは「鬼の子どもにとっては
そうなんだ、と読み手の心に小石を
投げるような作品だ」とか、
「“逆からの視点”で幸せとは何かを
考えさせる発想が抜きんでている」
といった評価が寄せられたそうです。
(引用元:2013年度 新聞広告クリエーティブコンテスト

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👹 鬼からしたらたまらない❔

つまりこれは“逆からの視点”―鬼目線―で
見たら、このお話どうなのよ( ̄ヘ ̄)、
という異議申し立てですね。

たしかに、「鬼」になんの落ち度もない
ならば、これは正義に反するように
思われます。


なので、現代の絵本などでは、たいてい
前半のどこかに鬼の悪行(村を荒らすとか、
姫をさらうとか)が入れてありますよね。

テレビアニメ『日本昔話』でもそうでした。
👇

「鬼ヶ島の鬼が来て村で暴れている」
という設定により、桃太郎の「鬼」攻撃が
正当化されているわけです。


👹 「鬼が悪い」のはお約束

ただ、このようなシーンは近代になってから
入ってきたもので、江戸時代まで日本各地で
語り伝えられていた「桃太郎」物語の
ほとんどは、鬼がどんな悪いことを
したかを語っていません。

このことは、「鬼が悪い」というのは
日本人(「大和民族」と限定すべきか)に
とって自明のことで、いちいち断るまでも
なかった、ということを示してますよね。

つまりはじめから「悪役」と
決まっていたのですよ。

  鬼と桃太郎

そう、往年の西部劇におけるアメリカ
先住民(いわゆるインディアン)と
同じです。

したがって、事情は、アメリカ映画界と
まったく同様。

「悪役」にも生活があり家族もあって、
親が殺されれば子は悲しむ……という
現代的な視点が入り込んで来ることは、
時代の趨勢として止めようもありません。

広告作品「めでたし、めでたし?」も、
近代的なこの流れに棹さすものように
見えますね。

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🍑 ももたろうはわるものなり
──福沢諭吉の教え

ところで、この視点が非常に新しく斬新
であるかといえば、そういうわけでも
ないんですよね。

鬼の視点に立とうとした「桃太郎」物語は
明治以来いくつも試みられているからです。




以下にその例をいくつか挙げてみましょう。

まずは福沢諭吉『ひびのおしえ』。

これは明治4年(1871)ごろ、6~8歳の
息子に語り聞かせた話をまとめたものと
されています。

ももたろうが、おにがしまに
ゆきしは、たからをとりに
ゆくといえり。

けしからぬことならずや。

たからはおにのだいじにして、
しまいおきしものにて、
たからのぬしはおになり。

ぬしあるたからを、わけもなく、
とりにゆくとは、ももたろうは、
ぬすびとともいうべきわるものなり

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仮に鬼が「いったいにわろきもの」
だとしても……と福沢先生、話を続けます。

その宝を奪って帰還し、爺さん婆さんに
あげたというのは「ただよくのための
しごとにして、ひれつせんばんなり


まことにごもっとも(_ _。) 

ただこのご説、もし「その宝はもともと
鬼が村から略奪したものだった」という
一言を加えることができれば、それだけで
たちまち瓦解するわけですよね(^^)у

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👹 鬼目線の「桃太郎」物語

福沢の場合は“逆からの視点”――鬼目線――を
説明してみせただけで、「物語」の形に
したわけではないのですが、その20年後
には、すでにこの“鬼目線”からする
物語が本になって世に出ています。


尾崎紅葉の『鬼桃太郎』(明治24年(1891))
がそれで、これは桃太郎に征伐された
「鬼ヶ島」で「日本の桃太郎」への
報復作戦が組織されるという趣向。

広告作品「めでたし、めでたし?」の
鬼の坊やも、大きくなったら、さぞや
勇んで従軍するだろうと思わせます。

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   アニメ映画『桃太郎の海鷲』(1944)広告  

ほかにも、明治・大正から昭和の
プロレタリア文学に至るまで、「桃太郎
=善/鬼=悪」の固定観念を反転させた
冒険的な作品は、探せばけっこう
見つかるんですよ。

全部紹介する余裕はないので、ここでは、
そのなかで最も有名な作者、芥川龍之介
の『桃太郎』を挙げておきましょう。

下にその所収本と寺門孝之さんによる
絵本化を並べます。
(絵本は鬼の娘への暴行などの
過激な絵もあるので閲覧注意)



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この短編小説のきわめつけは、征伐された
鬼の首領が桃太郎にひれふして、自分たちは
「あなた様にどういう無礼を致した」ために
「御征伐を受けた」か合点がいかないので
教えてほしいと懇願し(iДi)、
これに桃太郎が返答する場面です。

「日本一の桃太郎は犬猿雉の
三匹の忠義者を召し抱えた故、
鬼が島へ征伐に来たのだ」
「ではそのお三かたを
お召し抱えなすったのは、
どういう訳でございますか」 

「それはもとより鬼が島を
征伐したいと志したが故

黍団子をやっても召し抱えたのだ。
――どうだ?、これでもまだ
わからないといえば、
貴様たちも皆殺してしまうぞ」

      桃太郎002

どうでしょう? 

完全な正義のヒーローとして提示された
桃太郎より、これらのように反転され、
ひねられた「桃太郎」こそ考える大人へと
子どもを育てる上で有益なのでは
ないでしょうか。

子どもの側でも「お、トーチャン
(かーちゃん)やるじゃん」(ノ゚ο゚)ノ
と見直す可能性大ですよ。

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🍑 フランス版《MOMOTARO》絵本

子どもの理解力がまだそこまで行っていない
という場合は、上の動画で紹介したような
シンプルな絵本を読んであげればいいと
思いますが、なるべく美しい絵を
見せたいですよね。

この意味で最高レベルにあるものとして、
フランスで刊行された《Aventures de
Momotaro》(桃太郎の冒険)を紹介して
おきたいと思います。

  桃太郎2008-04-24 13.17.19

発行年は不明ですが、再話者ジュディット・
ゴーチエ(小説家テオフィル・ゴーチエの
娘)の没年が1917年ですので、それ以前
でしょう。

画家は諫山扇城。日本人なので、絵に
「日本一」などの日本語も入ってて
楽しいです(*~▽~)ノ

これはその1ページ。

IMG_20150125_0007

右上の日本語を書き出すと、こうなります。
桃太郎等奮闘シテ遂ニ魁鬼ヲ擒ニシ
国寇ヲ除キ巨多ノ金銀財宝ヲ得
本懐ヲ達スルノ図

要するに、日本国家に害をなす集団を
排除し金銀財宝を得て本懐を達した、と。

福沢先生の渋い顔が目に浮かぶ
ようですが……

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え? 全体を見たい?
入手はむずかしいので、大学図書館などで
探していただくしかないでしょうね。

これで検索してみてください。
  👇
Le dragon imperial : roman chinois ; Aventures de Momotaro : tres ancienne legende japonaise / introduction de Brigitte Koyama-Richard
(Le Japon et la Chine dans les livres de Judith Gautier / choisies et avec une introduction de Brigitte Koyama-Richard ; v. 1)


まあ、とにかく「桃太郎」物語も
日本人の「財宝」の一つには
ちがいありません。

「鬼」の扱いが不当だという理由で
埋もれさせるとしたら、それもまた
不当ではないでしょうか~~(^O^)/
👉「鬼」の扱いをめぐっては、
こちらの記事もご参照ください。

節分の鬼は「怖い」それとも「可哀想」?豆まきは続けるべき?

  青鬼Grumpy-s

👉また「鬼」ばかりでなく、桃太郎に
従った「犬」「猿」「雉」の動物たちの
扱いも考え直すべきなのかもしれません。

それぞれの性格づけが、犬は犬、
猿は猿で、なんとなくもっともらしい
わけですが、でもそういう性格って
いったい何を根拠に創造(=想像)
されているんでしょうかね?

そのへんの問題はこちらで詳しく検討
していますので、ぜひご参照ください。

熊がかわいいのはなぜ?怖い猛獣にやさしく抱かれ…という心理の歴史


👉そのほか日本の昔話をめぐっては
下記の記事などもご参照を。

浦島太郎は意味不明?善行も”禁断の玉手箱”で罰せられ…

浦島太郎 玉手箱の意味は?パンドラの箱を重ねた太宰治

こぶとり爺さんの教訓を動画で:戦前アニメ,志の輔,太宰

     IMG_20150201_0004

👉当ブログでは、日本と世界の多様な
文学や映画の作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

「感想文の書き方」一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/


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