浦島太郎に玉手箱をなぜ渡す?”開けるな”の意味はパンドラの箱だから?
サクラさん
乙姫が浦島太郎にあげる
玉手箱って、意味わかん
ないですね。
開けちゃいけないんなら
そもそも渡さなきゃいい
じゃないですか。
玉手箱って、意味わかん
ないですね。
開けちゃいけないんなら
そもそも渡さなきゃいい
じゃないですか。
ハンサム 教授
そこは諸説ありますが、
一つは浦島はまた竜宮城
に戻ることになってて、
そのパスポートのような
ものなんだから開ける
必要はない…ってこと。
一つは浦島はまた竜宮城
に戻ることになってて、
そのパスポートのような
ものなんだから開ける
必要はない…ってこと。
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サクラさん
ほほ~(🐱)で他の説は?
ハンサム 教授
きっと開けるだろう
けど、それは私への
裏切り…
竜宮で過ごした300年の
時間を背負う煙を浴びて
一挙に年をお取りなさい、
という女性の怨念の炎…
けど、それは私への
裏切り…
竜宮で過ごした300年の
時間を背負う煙を浴びて
一挙に年をお取りなさい、
という女性の怨念の炎…
サクラさん
え~ッ(🙀) そんな恋愛
ドラマの世界だったん
ですか?
ドラマの世界だったん
ですか?
ハンサム 教授
もともとそうだったの
が、明治に入ってから
子供向けに変形されて
しまった;^^💦
が、明治に入ってから
子供向けに変形されて
しまった;^^💦
サクラさん
分かりにくくなった
のはむしろその
せいですね……(😻)
のはむしろその
せいですね……(😻)
というわけで本日のテーマは、浦島太郎の
お話で乙姫が浦島にあげる「玉手箱」の
意味について。
これがギリシャ神話の「パンドラの箱」に
似ているという問題もあって、別記事で
そのことにふれましたので、今回はその
オトシマエという意味もあります。
👉その記事はこちらです。
・浦島太郎の教訓って…?意味不明になったのは恋愛部分が消されたから…
「パンドラの箱」とは?
まず「パンドラの箱」のストーリーを押さえておきましょう。
正確な原話はさておいて、一般に
知られているのはこんなお話でしょう。
人間に火をもたらしたプロメテウスへの
怒りが収まらないゼウスは、職人の神
へパイストスに命じて、この世で最高の
美女パンドラを作らせ、これを
プロメテウスの弟、エピメテウス
のところへ行かせる。
”最高神”ゼウス
エピメテウスはパンドラの美しさに
心を奪われ、妻にする。
👉『日本書紀』で「浦島子」が亀姫を
「感(たけ)りて婦(め)に」したのと
ソックリですね。(上記の別記事参照)
また『日本書紀』で浦島が行ったと
されている「蓬莱」の国とそこで
出会った仙人をめぐっては
こちらもご参照ください。
・七福神の名前の覚え方:新作決定版!🐢なんで浦島太郎が…?
エピメテウスの家には、プロメテウスが
残していった黄金の箱(原話では甕)が
あり、それには、病気、盗み、ねたみ、
憎しみ、悪だくみなど、この世の
あらゆる厄災が人間の世界に行かない
ように、閉じ込めてあった。
パンドラはこの美しい箱を見るなり、
素晴らしい宝物が入っていると思い、
開けてほしいと頼むが、エピメテウスは
「この箱だけは決して開けるな」という
兄の言いつけを守り、拒む。
それでもパンドラが「あけなければ、
わたしは死ぬ」と言い出したため、
エピメテウスは開けてしまう。
そのとたん、箱の中からあらゆる厄災が
飛び出て、人間の世界に飛散する。
エピメテウスが慌ててふたを閉めると、
中から「私も外へ出してください…」と
弱々しい声がするので「お前は、誰?」
と尋ねると、「私は希望です」
との答え。
こうして人間たちは、どんな厄災に
見舞われてもなお希望を
もつようになった。
怒りが収まらないゼウスは、職人の神
へパイストスに命じて、この世で最高の
美女パンドラを作らせ、これを
プロメテウスの弟、エピメテウス
のところへ行かせる。
”最高神”ゼウス
エピメテウスはパンドラの美しさに
心を奪われ、妻にする。
👉『日本書紀』で「浦島子」が亀姫を
「感(たけ)りて婦(め)に」したのと
ソックリですね。(上記の別記事参照)
また『日本書紀』で浦島が行ったと
されている「蓬莱」の国とそこで
出会った仙人をめぐっては
こちらもご参照ください。
・七福神の名前の覚え方:新作決定版!🐢なんで浦島太郎が…?
エピメテウスの家には、プロメテウスが
残していった黄金の箱(原話では甕)が
あり、それには、病気、盗み、ねたみ、
憎しみ、悪だくみなど、この世の
あらゆる厄災が人間の世界に行かない
ように、閉じ込めてあった。
パンドラはこの美しい箱を見るなり、
素晴らしい宝物が入っていると思い、
開けてほしいと頼むが、エピメテウスは
「この箱だけは決して開けるな」という
兄の言いつけを守り、拒む。
それでもパンドラが「あけなければ、
わたしは死ぬ」と言い出したため、
エピメテウスは開けてしまう。
そのとたん、箱の中からあらゆる厄災が
飛び出て、人間の世界に飛散する。
エピメテウスが慌ててふたを閉めると、
中から「私も外へ出してください…」と
弱々しい声がするので「お前は、誰?」
と尋ねると、「私は希望です」
との答え。
こうして人間たちは、どんな厄災に
見舞われてもなお希望を
もつようになった。
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この「希望」の原語は「エルピス」で、
「予兆」「期待」などの意味もあるため
「希望」の訳が適切かどうかは異論も
あるそうです。
英語では古来”hope”と訳してきたことも
あって、上記のような救いのある
エンディング(不幸中の幸い)の
ストーリーが定着した模様。
玉手箱に封入された「時間」
さて、「浦島物語」に戻りましょう。前回の記事(上記)でもふれていますが、
「玉手箱の謎」の考え方として広く
流布しているのはこんなところでしょう。
蓬莱(とこよのくに)または竜宮での
亀姫または乙姫との悦楽の日々は
3日だったり3年だったり、話により
いろいろだが、ともかくその間、
現世(郷里)ではその何百倍もの
時間が流れていた。
Edmund Dulac, Urashima Taro(1916)
乙姫が「玉手箱」に封入したのは、
本来なら浦島が経験すべきであった
その「時間」であり、姫は彼から
奪ってしまった「時間」をそのような
形でお返しした。
「玉手箱」をあけて煙を浴びた浦島が
たちまち100歳だか300歳だかの
老人と化すのは、本来の(現世の)
「時間」を取戻してしまったから…
亀姫または乙姫との悦楽の日々は
3日だったり3年だったり、話により
いろいろだが、ともかくその間、
現世(郷里)ではその何百倍もの
時間が流れていた。
Edmund Dulac, Urashima Taro(1916)
乙姫が「玉手箱」に封入したのは、
本来なら浦島が経験すべきであった
その「時間」であり、姫は彼から
奪ってしまった「時間」をそのような
形でお返しした。
「玉手箱」をあけて煙を浴びた浦島が
たちまち100歳だか300歳だかの
老人と化すのは、本来の(現世の)
「時間」を取戻してしまったから…
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これで一応、筋は通りますね。
でも、それなら、乙姫はなんのつもりで
そういうことをしたのでしょうか。
つまりこの「時間」が浦島にとって
大きな厄災であると知っていたならば、
この贈り物には悪意があったと
いうことになるでしょう。
「規則上渡さないわけにいかないので
渡したものの、厄災を受けてほしく
なかったので『あけるな』と言った」
というのでしょうか。
その場合は、愛があるなら規則がなんだ!
といいたくもなりますよね。
やはり乙姫は自分を捨てる浦島への怨念から
(浦島は郷里の両親のもとへ帰りたいと
言うので、乙姫の感情に「嫁姑問題」を
読む解釈もあります)これ以上ない厄災を
彼に食らわせようとしたのでしょうか。
👉「開けてはいけない」と言われていた
のに開けてしまう(なぜかどうしても、
そうなってしまう)……という不思議。
これって、ほとんど人類普遍といってよい
タブー(禁忌)犯しのテーマ。
これについては、コチラで探求しています
ので、ぜひご覧ください。
・菊 鶴 菱 桜…と何?⦅日本5大タブー⦆メディアが避ける意味と理由
太宰治の「玉手箱」解釈
さて、ここで紹介したいのが、太宰治の再話短編集『お伽草紙』
(1945 👇)に収められた「浦島さん」。
⦅広告:クリックすると楽天市場へ⦆
👉この本についてはこちらで
より詳しく紹介しています。
・太宰治おすすめ作品「カチカチ山」💛名言《惚れたが悪いか》
この太宰版「浦島さん」こそは、
「浦島物語」に「パンドラの箱」を
持ち込むことで「玉手箱」から
新しい意味を引き出すことに成功した、
きわめてユニークな傑作なのです。
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箱(太宰作品では「貝殻」)の底に、
パンドラの箱にあった「希望」とやらが
残っていたところで、「浦島さんは既に
三百歳である。三百歳のお爺さんに
『希望』を与えたって、それは悪ふざけに
似ている」と太宰は言い放ちます。
「何とかして、この不可解のお土産に、
貴い意義を発見したい」と長いあいだ
思案し、ようやく少しわかってきた…
「つまり、私たちは浦島の三百歳が、
浦島にとって不幸であったという
先入観に依って誤られて来たのである」
というのです。
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気の毒だ、馬鹿だ、などという
のは、私たち俗人の勝手な
盲断に過ぎない。
三百歳になったのは、浦島に
とって、決して不幸ではなかったのだ。
(下線部は原文では傍点の振られた箇所)
浦島は、立ち昇る煙それ自体で
救われているのである。
貝殻(箱)の底には、何も残って
いなくたっていい。
そんなものは問題ではないのだ。
曰く
年月は、人間の救いである。
忘却は、人間の救いである。
竜宮の高貴なもてなしも、この
素晴らしいお土産に依って、
まさに最高潮に達した観がある。
思い出は、遠くへだたるほど
美しいというではないか。
しかも、その三百年の招来をさえ
浦島自身の気分にゆだねた。
ここに到っても、浦島は、乙姫から
無限の許可を得ていたのである。
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ありがとう、乙姫
どうでしょう。素晴らしい解釈ではありませんか。
乙姫は決して浦島を憎んで
あの玉手箱を渡したのではないのです。
あけたくなければそれでよし、
あければまたよし。
あけることは一切の「忘却」を意味し、
すなわち「人間の救いである」から。
この部分を読むと、ほんとに救われた
気分になります。
ありがとう、太宰。
ありがとう、乙姫…:*:・( ̄∀ ̄)・:*:
👉太宰治に関心をお持ちの読者は
こちらのの記事もご覧くださいね。
・太宰治の本でおすすめは?人間やめたくなった時こそ読みたい15作!
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太宰治の本:ラインナップ
銀座のバー”ルパン”でくつろぐ太宰(林忠彦撮影)
これでもう書けますよね、
感想文でもレポートでも。
え? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?
そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。
👉当ブログでは、日本と世界の種々の
文学作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。
参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
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僕も浦島太郎の玉手箱は、パンドラの箱にそっくりだと思いました。
HIDENOBUさん
ですよね~^^
そこを見据えた太宰はさすがであり、
また彼らしいもの悲しさを湛えています。
約束を破る事の恐ろしさだね。
教訓話の意味もある。
ビャビャさん
ですよね~^^
その恐ろしさを「忘却は、人間の救いである」と
むしろポジティヴに読み換えたところに太宰の
小ずるく悲しい作家魂があるような気がします。