屋根裏の散歩者 怖いが笑えるオチ⦅ネタバレ⦆江戸川乱歩の覗き小説
やあやあサイ象です。
“感想文の書き方”シリーズもはや第83回。
“あらすじ暴露”サービスとしては
第52弾となります。
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今回はあの江戸川乱歩の代表作の一つ
『屋根裏の散歩者』で参りましょう。
(1925。『江戸川乱歩全集第1巻』所収)
いろんな面白味のちりばめられた
「犯罪小説」の傑作ですが、これを
映画化するとなると、モチーフの一つに
すぎないピーピング(覗き)のテーマが
どうしても前面に出て、エロティックな
作品に仕上げられてしまいますね。
その一例の予告編を下に掲げますが、
未成年者はご遠慮くださいね;^^💦 👇
”名探偵”明智小五郎登場
さて、そのようなわけで、映画などの情報から、原作にもその筋の盛り上がりを
期待される読者はガッカリされるかも
しれませんよ。
乱歩にそういう作品がないわけでは
ありませんが、『屋根裏の散歩者』は
乱歩がまだその方面に触手をのばす以前の
「推理」主眼の小説で、あの”名探偵”
明智小五郎の出始めのころのものです。
その「あらすじ」を暴露しようというわけ
ですが、一口に「あらすじ」をといっても、
ストーリーの骨子だけでいいという場合から、
読書感想文を書くんだから分析・解説つきの
詳しいものがほしい、という場合まで、
千差万別でしょう。
そこで出血大サービス((((((ノ゚⊿゚)ノ
「ごく簡単なあらすじ」と
「やや詳しいあらすじ」の
2ヴァージョンを用意しましたよ~~(^^)у
どちらもネタバレは避けられませんので、
怖い、でも笑えるオチがどんなだか、
知りたくない人は絶対に読まないで
くださいね(◎◎)。
ごく簡単なあらすじ(要約)
まずは「ごく簡単なあらすじ」。「 」内は原文からの引用です。
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では、参りましょう。
無気力な25歳の郷田三郎は、素人探偵の
明智小五郎と知り合ってから「犯罪」に
魅力を感じ始める。
下宿屋では押し入れの上段で寝ていたが、
ある日、天井板が上に持ち上がることを
発見し、好奇心から天井裏に入って
動き回り、すき間や節穴から住人の
秘密を覗き見するようになる。
ある時、虫の好かぬ遠藤の部屋を覗くと
大口をあいて眠っており、もしこの節穴から
毒を垂らせば彼の口に落ちるはずだ、
彼の部屋にあるはずの壜入りのモルヒネで
それをやれば完全犯罪が成立する…
という考えがひらめき、三郎はある夜
これを実行に移す()。
警察は遠藤の死を自殺と断定したが、
3日後に訪ねてきた明智小五郎が
友人として明るく話し、現場を見せて
もらったりするうち、三郎は心理的に
追い詰められる。
そこを見抜いた明智は(実は捏造の)
「証拠物」を突き付けて三郎を
自白に追い込む。
明智小五郎と知り合ってから「犯罪」に
魅力を感じ始める。
下宿屋では押し入れの上段で寝ていたが、
ある日、天井板が上に持ち上がることを
発見し、好奇心から天井裏に入って
動き回り、すき間や節穴から住人の
秘密を覗き見するようになる。
ある時、虫の好かぬ遠藤の部屋を覗くと
大口をあいて眠っており、もしこの節穴から
毒を垂らせば彼の口に落ちるはずだ、
彼の部屋にあるはずの壜入りのモルヒネで
それをやれば完全犯罪が成立する…
という考えがひらめき、三郎はある夜
これを実行に移す()。
警察は遠藤の死を自殺と断定したが、
3日後に訪ねてきた明智小五郎が
友人として明るく話し、現場を見せて
もらったりするうち、三郎は心理的に
追い詰められる。
そこを見抜いた明智は(実は捏造の)
「証拠物」を突き付けて三郎を
自白に追い込む。
え? なんだかよくわからんし、
これじゃ怖くもないし、笑えもしない
じゃないか?
それにそうシンプルに計画殺人が成功し、
かつその犯人がアッサリ自白して
しまうのか?
……等々の❓が浮かびますよね。
そこでやはり「やや詳しいあらすじ」が
必要となるわけです;^^💦
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やや詳しいあらすじ
原文は1~8の8章に分けられていますので、以下でもこれにしたがって記述していきます。
ほぼ完全なネタバレになりますが、
推理小説でいう「トリック」や経緯の
すべてを書ききることは、さすがに無理。
なので、少々納得がいかないという読者は
やはり本文を読んでもらうしかない…
ということになりますね。
🐾【1】
学校を出てから職業を転々としてきた25歳の郷田三郎は、仕事にも遊びにも
女にも打ち込めず、酒も飲めない。
下宿も転々として「東京中の下宿屋を
一軒残らず知っている」ほど。
それが素人探偵の明智小五郎と
知り合ってから、「犯罪」にだけ
言いしれぬ魅力を覚えるようになる。
金持ちらしい通行人を尾行したり、
妙な暗号文を公園のベンチの板の間に
挟み込んで、誰かがそれを発見するのを
木陰から見張ったり……
といった遊戯を楽しんでいたが、やがて
遊戯には「危険」――それこそが「犯罪」の
魅力だ――がないがゆえに飽き足りなくなる。
🐾【2】
「犯罪遊戯」にも飽きたころ、三郎は東栄館という新築の下宿屋に移る。
そこでも退屈して、10日ほどしたある日
押し入れの上段に布団を敷いたままに
して、そこで寝ることを思いつく。
実際に寝てみると予想以上に感じがよく、
襖の隙間から漏れてくる糸のような
電気の光を見ていると、探偵小説の世界に
入ったようで愉快になる。
が、それも3日ほどで飽きて、手に届く
天井板に落書きなどをしていると、
ふと天井板が上に持ち上がることを発見。
電灯工事の際の出入りのために
その板だけ釘でうちつけず、
上から石で重しをしてあったのだ。
好奇心から天井裏に入ってみると、
鍾乳洞の内部を見るような興奮を覚え、
その日から「屋根裏の散歩」が日課となる。
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🐾【3】
東栄館は中庭を囲んで桝形になっているので、自分の部屋から屋根裏に入り、
一周して部屋に戻ることができる。
また天井裏には至る所にすき間があり、
そこから住人たちの秘密を覗き見
することも勝手次第。
この「天井からの隙見(すきみ)」で
「滑稽な、悲惨な、或いは物凄い光景」
を数多く見た三郎は、下宿人同士の
感情のもつれなども知るようになる。
ある時、虫の好かぬ歯科医の助手、
遠藤の部屋を天井裏の節穴から覗くと
鼻の病気のせいか、大口をあいて
鼾(いびき)をかいている。
🐾【4】
遠藤の寝顔を見ているうちに、この節穴から唾を吐けば、ちょうど
遠藤の口に落ちるのではないか
と思いついた三郎は、猿股の紐を
垂らしてそれを確かめる。
立ち去ろうとしたとき、恐ろしい考えが
三郎の頭にひらめく。
「なんの恨みもない遠藤を殺害する」
というのがそれで、それは十分
実現可能と思われてくる。
というのは、以前、遠藤の部屋で酒盛り
したとき、遠藤が昔、女と情死しようと
したと言い出して、致死量だという
モルヒネの壜を見せたことを思いだし、
このモルヒネを使えば完全犯罪が
成立すると考えたのだ。
🐾【5】
4,5日後の夜、遠藤の部屋で長く雑談した三郎は、遠藤が便所へ行ったすきに
例のモルヒネの壜を盗み出す。
自室へ戻り、かねて用意の砂糖や
アルコールと調合しながら、発覚の
可能性を考えて計画を中止しようとも
するが、結局は「人殺しの魅力を断念
する気にはなれない」。
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🐾【6】
「屋根裏の散歩」を始めて10日ほどしたある夜、遠藤の部屋の節穴を覗くと、
鼾をかく遠藤の口がいつか見たときと
寸分たがわぬ位置にある。
猿股の紐で確かめても間違いないので、
ポケットから毒壜を取り出して
モルヒネを十数滴、口の中に落とす。
遠藤はやがて目を見開き、
まっ赤になって玉の汗をかく。
やがて顔色が白くなったかと思うと
青藍色に変色し、グッタリとなる(
「人殺しなんて、こんなあっけない
ものか」となんだかガッカリもし、
また自らの行為の恐ろしさにも襲われる。
🐾【7】
翌日、昼頃に下宿に戻ると、警察の臨検も終わっており、遠藤の死は失恋による
自殺と断定されていた。
それから3日後、明智小五郎が訪ねて
きて事件のことを聞くので、得意の絶頂に
あった三郎は、からかってやりたいような
気になり「これは他殺じゃあるまいか」
と口にしてしまう。
それならと遠藤の部屋に同行し、一通り
見まわした明智は、そこにまだ置いて
ある目覚まし時計が、遠藤の死んだ朝も
鳴ったことを下宿人の証言で確認する。
🐾【8】
半月ほど経た夜の10時ごろ、帰宅した三郎は押し入れの襖を開いて仰天する。
薄暗い天井から、死んだ遠藤の首が
さかさまにぶら下がっていて、
いきなりニッコリ笑うのだ(((゜д゜;)))。
ワッと叫んで逃げようとすると、
「郷田君。郷田君。僕だよ。失敬々々」
と押し入れの天井から下りてきたのは
ニコニコした明智小五郎。
「さっそくだが、これは君のシャツの
ボタンだろうね」と、天井裏に落としていた
証拠物を突きつけられ、三郎は観念する。
が、明智は「僕は警察へ訴えやしないよ」、
証拠が一つもないから、という。
シャツのボタンは、この前会ったときに
取れていると気づいたから、ボタン屋で
仕入れておいた「僕のトリック」さ、
「君は興奮している際だから、多分
うまく行くだろうと思ってね」
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乱歩自身も「困ったところ」
どうでしょう。「あらすじ」でも多少はワクワクして
いただけたのではないでしょうか。
楽しめるポイントが色々とありますよね。
ただ、天井の節穴から毒薬を垂らすという
殺人手段をめぐっては、「節穴と被害者の
口とが垂直線上につながる」という状況の
説明は、完璧とはいえませんよね。
これは実は乱歩自身も「困ったところ」で、
各方面から批難と助言を受けた
と述懐しています。
また作中のモルヒネについては、致死量に
足りないとの指摘も受けたそうで……。
まあまあ、現代の水準から見て
どうかと思える点はあるとしても、
この作品の歴史的意義と芸術的価値は
決して小さくないものと思われます。
ともかく乱歩はゾッとさせてくれますね。
👉この大エンターテイナー乱歩の
世界をめぐっては、かなりの記事を
書きためています。
あなたのお気に入りを
こちらから見つけてください。
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👿江戸川乱歩の本:ラインナップ👿
というようなわけで、この作品で感想文を
書こうというのは、学校からはあまり
期待されていないものと推察されます。
でもどんな本でもよいと言われている
のであれば、もちろん選んで
かまわないわけです。
いろいろと情報提供しましたので、
もう書けないことはありませんよね。
え? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でも具体的にどう進めて
いいかわからない( ̄ヘ ̄)?
それならまず、当シリーズの
感想文の書き方《虎の巻》の
適用例をご覧ください。
乱歩以外にも多くの作家・作品をとりあげ、
「あらすじ」や「感想文の書き方」
の記事を量産しています。
👉こちらのリストをどうぞご覧ください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
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