寺山修司 毛皮のマリーのあらすじ:LGBTの世界的傑作を解説

 


やあやあサイ象です。

「あらすじ暴露」シリーズ第93弾
(感想文の書き方:第145回)の今回は
寺山修司の傑作戯曲『毛皮のマリー
La Marie-Vision』で参ります。

1967年に美輪(当時丸山)明宏主演、
寺山自身の演出で初演。

以来、海外の国際演劇祭などを含めて
華麗に公演を重ね、2016年にもなお
美輪明宏演出・主演(叫び)でヒット中です。

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舞台はどんな感じか、まずは2001年公演の
情景をチラ見してください。




👉 引き込まれるか、”引く”か

どうです?

いかにも妖しい世界に、引き込まれ
そうになっていませんか?

それともイヤラシイ! と
”引いて”しまいました?


反応は大きく分かれそうですが、
そのことこそ、この作品が人間心理の
深いところに眠るある種のタブーに
突き刺さってくることの証拠では?

つまり誰の心にも    gay  1454277434
多少は秘められているLGBT的な
世界への憧憬と恐怖……。

LGBTとは…Lesbian, Gay,
Bisexual,そしてTransgender
(性同一性障害や異性装趣味
など性の不確定性の傾向全般)
の4語の頭文字をつなげて
作られた新語です。

これらの傾向はもはや隠す
必要のないものだという
考え方が世界的潮流に
なってきていますよね。

え? 私はLでもGでもBでもない?

そうだとしても、たまには女〔男〕に
性転換してみたいという程度の
「トランスジェンダー」的性向なら、
多少は身に覚えが…あるのでは?

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半世紀前に書かれた『毛皮のマリー』が
今ふたたび脚光を浴びているのも、
このLGBT問題が近年とみに浮上してきた
ことと無関係ではないでしょう。


さて、本日はそのあらすじを暴露
しちゃおうという算段ですが、もちろん
ネタバレありでラストまで行きますし、
LGBT的なものに嫌悪感を抱かれる方には
さぞかし不快な記述も含まれてくる
ことと思います。

そのような部分を読みたくない人、
また結末を知りたくない人は絶対に
読まないでくださいね(^^)у。

出典はこちらです。
  





👉 やや詳しいあらすじ

では参りましょう。

文中「”」印のグレーの囲みと
「  」内は上記文庫本から
そのままの引用した文章です。


【1】
擬古典的に装われた贅沢な一室。

バスタブに浸かる40歳の美男
”毛皮のマリー”と、そのかたわらに
直立する下男(醜女〔しこめ〕のマリー)

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手鏡を見てうっとりと「この世で一番の
美人は?」と『白雪姫』ばりに尋ねる
マリーに「あなたです」と
即答する下男。

下男に毛ずねを剃らせながら、
「応接間の草原」で蝶を追っている
一人息子の欣也について報告を受ける。


半ズボンをはき捕虫網を持った18歳の
美少年・欣也が登場し、大きな
ガラス壜に入れた蝶を突き出す。

「つかまえたよ、マリーさん」
「(威圧的に)マリーさんじゃないよ、
お母さんだって言ったろ!」


欣也はしぶしぶ「お母さん」と呼んで
珍蝶「ミイロタテハ」に見入る。

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        ミイロタテハ

「きれいだなあ――世界中に、
何匹ぐらいいるんだろう」
「一匹」
「一匹?」
「母さんが染めたんだよ。
モンシロチョウにベニオシロイを
つけたんだ」と嘲笑するマリー。


マリーは欣也をヒステリックに
叱りつけて退場させ、これから
出かけると下男に告げる。

「欣也は、決して外に出さないように
してね。今の世の中は、あの子には
刺戟がつよすぎますからね」



【2】
暗闇にいる欣也にマリーの声。

「ふつうの学校じゃこう教える…」

『おまえは、ウソばっかり
ついているから、せめて
すること位は、ほんとの
ことをなさい』
ところが刑務所であたしが
教わったのは、あべこべ
だった……
『おまえはいつもホントのこと
ばかり言ってるから、せめて
すること位はつくりものに
なさい』


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紋白が「ちわあ!」と登場し、
欣也と蝶のことなどについて会話。

にじり寄ってくる紋白から逃げようと
する欣也だが、やがて紋白の
自分語りに聞き入り、つかまる。

「出てって」と哀願する欣也に
「人生ってものがどんなだか教えて
あげるまではテコでも動くもん
ですか!」と迫る紋白。


突然、「出てお行き!」
と怒鳴るマリーの声。

あいたドアから、舞台一杯もある
巨大なタテアゲハチョウが
「死の影のようにあらわれる」。

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紋白を罵倒し、欣也を懐柔する
マリーの声に反応して、欣也は
紋白をはねとばし、お祈りのポーズ。

マリーのけたたましい哄笑。

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【3 間奏曲】
暗闇に下男が登場し、「あたしの
かなしい歌を一つきいてください。
これは戯れの幕間狂言なのです」
と語りはじめ、踊る。

「いっそひと思いに、マリーを死んで、
生まれかわるとしましょうか」と
カツラを脱ぐ。

lgbt

すると…
「悪夢のように美しい毛皮のマリー」
7人が飛び込んで華麗にダンス。


「何だか、さわがしいよ」という
マリーの声で静まり、
下男はもとの下男に。



【4】
三日後。

刺青をした裸の水夫と
マリーの会話。

ややはなれたソファーでは
「詩人として雇われている」
裸の男1と2が戯れる。

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男1と2の奏でる胡弓と詩が流れる
中で、水夫とマリーは話す。

「あんたは、どうして女に
変装したりするんだね?」
「それはあんたが刺青を
してるのと同じことよ。
男であるだけじゃあきたらず、
警察官を演じたり、
船乗りを演じたり、
思想家を演じたり、
フットボール選手を演じたり
する人がいっぱいいるのに、
おかしいじゃありませんか。
女を演じるのだけを、
好奇の目で見るなんて」

マリーはやがて欣也の実母は自分が
殺したのだと告げ、「あたしと一人
息子の、かなしい因果話」を
語り始める。

私は食堂の娘だったけれど、かわいい
店員のかつ子が、やがて美貌で私に
引けを取るようになったものだから、
私をひどくいじめた。

その復讐に、  1-300x247
私はある男に金をつかませて、
かつ子と関係をもたせた。

その結果、欣也ができて、かつ子は
難産で死んだので、引き取って「女に
しちゃう」べく育てている……。


ふらりと入ってきた欣也が
この話を聞いてしまう(叫び)。



【5】
夢遊病者のようになった欣也が登場し、
マリーのドレスを片っ端から
破り捨て、泣きだす。

そこへ入ってきた紋白の誘いを受け、
外の世界へ逃げ出すことにする。

「きみは男? それとも女?」
という問いに紋白は答えず、
「あたし、あなたを好き。愛してる!」
と抱きつく。

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「叱られる、叱られる!」と怯えながら
欣也は言われるままに目を閉じる。

見えるぞ、何もかもウソで
ぬりかためられた一つの
世界が……

そこでは、ぼくは
とても老けている。
〔中略〕
ドライフラワーに日の影、
もう誰もうたわなくなった
ツァラレンダーの古い
シャンソン、お母さん、
あんたはすでに死んでいる。

迫ってくる紋白におびえた欣也は
相手の首を絞め、殺してしまう(ドクロ)。

「ああ終わったぞ。
これ、全部標本をつくらなきゃ」
と夢遊病者のように出ていく。

マリー登場。  137678  

欣也は出ていったと聞いても
鼻先で笑い、「欣也、帰って
らっしゃい……」と手を拍つ。

「まるで催眠術にでもかかったように」
欣也が入ってくる。


「憑かれた人形」のような欣也に化粧を
施して「美少女」に仕上げていくマリー。

「坊や おまえは今にこの世で
一ばんきれいになるんですよ」




👉 解説:寺山修司の猥雑な世界

さて、楽しんでいただけましたか?

気に入った人は2001年公演なら
DVDで鑑賞することもできますので、
こちらをどうぞ。
   



え? どこを楽しめばいいのか
わからない┐( ̄ヘ ̄)┌?

そうですねえ……生の舞台のド迫力は
やはり文章からだけでは伝わり
にくいんでしょうね。

おそらく劇場では、猥雑で妖しく
退廃的な世界に呑み込まれ、陶然と
酔い心地になるか、それともゲロを
吐いてしまうか……

どっちにしてもカラダが反応して
しまうような、多少ともアブナイ
舞台なんでしょう。

文学として読むとすれば、  512440461-聖母マリア-モスクワ-絵画-キリスト教

ドラマを進める主要動機というか、
エンジンは、寺山作品で繰り返し主題化
される「母と息子」の強く悲しい関係…

より具体的には、強い母の拘束・監禁状態
からいかに離脱して”男”になるか、
それともそれはしょせん不可能なのか…
といったところかな?


こういう問題って、「LGBT」云々を超えて、
男子はもちろん女子にとっても(母または
そうなる可能性のある存在として)
かなり普遍的ですよね。

もし感想文など書くのであれば、
そのあたりから入っていってみては
どうでしょう。


👉 世界で変身していったマリー

ともかくこの作品、欧米各地でも上演
されていったわけなんですが、その場
その場でどんどん姿を変えていったと
寺山自身が書いています。

初演では女装男性ばかりによる、
キッチュなポップ・アート風のもの
としてステージに上がったものが、
エッセン市立劇場では擬古典的な
歌劇風の黒喜劇、ニューヨークの
ラ・ママでは、観客が「毛皮の
マリー」の部屋の中を歩きまわる、
密室の観客参加劇、そして
パリのレ・アールでは街頭の
性解放劇と姿を変えて…

        (上記文庫本「解題」)

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世界的な評価と反響に迎えられたことは
間違いないんですが、その要因としては
まずその主題をなす「LGBT」問題。

日本の「LGBT文学」としては、
寺山のライバルともいわれた
三島由紀夫の『仮面の告白』が
先駆的傑作として有名です。
こちらを参照。

三島由紀夫 仮面の告白のあらすじ笳銑GBT文学の先駆作を解説

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また「LGBT」的主題ばかりでなく、それを
舞台にのせた様々な技法の芸術性もまた世
界に通用した、ということがいえます。

たとえば黒々とした笑いとともに進む
劇展開は”シュール”(シュルレアリスム=
超現実主義)的でもありますよね…。

シュルレアリスムをめぐっては
こちらもご参照ください。

シュールの意味と使い方:お笑いの世界から芸術的”超現実”へ
原民喜 夏の花で感想文:夢が交錯する”超現実派”の文体を解説

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どうです? 寺山修司の世界も、
なかなか危なっかしくて面白そう…

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