千と千尋の神隠し 海外の評価・反応は?人気の理由は”東洋のアリス”?
『千と千尋の神隠し』
は海外での評価も
スゴい(
にアカデミー賞…
一般の映画ファンの
レビューでも絶賛の
声が圧倒的ですね。
アリス』だという声も…
ところだと思いますが、
NYタイムズの批評家は
そうは言わず「これは
宮崎氏の『鏡の国の
アリス』だ」と評して
います。
なぜそちらにしたん
でしょうか?
ありませんが、「モノに
名前がない森」に入った
アリスが混乱してしまう
あたりが『千と千尋』の
世界に通じるのかな。
奪われるということが
『千と千尋』の一つの
テーマですものね。
外国人の反応も色々と
面白いものがありそう
ですね(😻)
というわけで本日の素材は長編アニメーション
として史上初めて世界三大映画祭最高賞
(ベルリン国際映画祭で金熊賞)を獲得し、
さらにはアカデミー賞でも長編アニメーション
部門最優秀賞を受賞するなど国際的栄光に
包まれている『千と千尋の神隠し』
(英訳題:Spirited Away, 2001)
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その評価をめぐってのリサーチと
考察です((((((ノ゚🐽゚)ノ
特に海外(主として英語圏)の一般の映画
ファンの反応を探っていくことを通して、
読者のみなさん各自の『千と千尋』評価の
ための判断材料を提供できたらと
思っています。
本日の内容はザッと以下のとおり。
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
まだ観ていないとか、観るには観たがストーリーはあやふやだという方のために、
まず予告編動画をご覧に入れましょう。
ただ日本語版では新味がないという
方も多いでしょうから、ここは一つ
英語版で行きましょう。 👇
(思いだして)いただけたでしょうか?
ん? やっぱよくわからん?
それでは以下に用意しました
「簡単なあらすじ」をお読みください。
(ただしネタバレなしです)
両親とともに車で引越し先へ
向かう途中、森の中の奇妙な
トンネルから通じる無人の街へ
迷い込む。
そこは、怪物のような姿の
八百万の神々が住む世界で、
両親は飲食店で勝手に暴食し、
その罰か、豚に変身する。
千尋も帰り道を失って消滅
しそうになったところを、
ハクという少年に助けられる。
ハクが働く「油屋」という名の
湯屋の主人は、相手の名を奪って
支配する湯婆婆(ゆばーば)。
仕事を持たない者は動物に
変えられてしまうと聞いて
湯婆婆に雇われた千尋は、
名を奪われて「千(せん)」と
新たに名付けられる。
自分も名を奪われて何者か
わからなくたっているハクは
本当の名前を忘れると元の世界に
戻れなくなると千尋に忠告する。
懸命の働きで皆から一目置かれる
存在になった千尋は、ある客から
不思議な団子を受け取る。
湯婆婆の言いつけで、彼女の双子の
姉の銭婆(ぜにーば)から、
魔女の契約印を盗みだしたハクは、
追跡されて重傷を負う。
千尋はハクに例の不思議な団子を
飲ませて助けるが、ハクは衰弱。
千尋はハクを助けたい一心で、
危険を顧みず銭婆のところへ
謝りに行くことを決意する…。
海外の批評家の評価は?
さて、海外での評価ですが、まずはプロの批評家のコメントから。
冒頭の会話でもふれました『ニューヨーク・
タイムズ』へのエルヴィス・ミッチェル
の時評は「アニメでしか呼び出せない
魔法的世界」(Conjuring up atmosphere
only anime can deliver)と題しての
絶賛の内容。
この映画の核心にある「塔のように隆起し、
喪失された夢らしさ」の世界は間違いなく
監督自身の強迫観念に基づいているとして、
ミッチェルはこの映画を「宮崎氏の
『鏡の国のアリス』」と呼んだのです。
(引用元:The New York Times)
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念のため、『鏡の国のアリス』でアリスが
「モノに名前がない森」(the Wood Where
Things Have No Names)に入った
あたりの記述を見ておきましょう。
ひんやりして薄暗いところへ入った
アリスは「あんなに暑いところから、
こんどは──こんどはなんだっけ?」
と言葉が出てこないことに驚きます。
「いったい、なんていうんだっけ?
きっと名前がないんだ──
そうだ、名なしなんだ!」
〔中略〕
「なら、あたし、だれなの?
思い出せるものなら
思い出してみたいわ。
ぜったい思い出してみせるから!」
でもそう決心したところで、
あんまり足しにはならない。
四苦八苦したすえに、
ただこういったきりだ。
「リだ、リで始まるんだ!」
(第3章 鏡の国の昆虫たち)
(引用元:『鏡の国のアリス』矢川澄子訳、新潮文庫)
👉『鏡の国のアリス』などルイス・キャロルの
不思議な世界をめぐっては、こちらで
詳しく情報提供しています。
ぜひご参照ください。
・不思議の国のアリス 原作のあらすじ ハチャメチャすぎて怖い?
千尋が迷い込んでしまった世界も
この森に似ています。
ただ、少し歩いてこの森を抜け出る
だけで「名前」を取り戻すアリスに
対して、宮崎氏はこの「名前喪失」の
世界を大きな物語へと膨らませて
いきます。
たとえば人間の「顔」は「名前」の
代わりになることがありますが、
『千と千尋』に出てくる「カオナシ」
という妖怪は、まさに「名なし」の
一表現と読むこともできるでしょう。
実際このカオナシ、厳密には顔が
ないとは言えないわけで、
ないのはむしろその「名前」。
彼はそれを問われても「あ」とか
「え」とかしか言えません。
醤油に入り込まれたカオナシ
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「名前」は広く取れば「名詞」全般であり、
「名詞」は言語全般を代表する原初的な
言葉です。
『千と千尋』全編に底流する思想として
「言葉は力である」という主張を挙げる
ことができると思いますが、この意味に
おいて、カオナシはまさに「無力」の
極みであり「名無し」の戯画化です。
この意味での「名前=言葉」を取り戻そう
とするハクと千尋の助け合いを軸に
進んでいく『千と千尋』の物語は怪異で
恐ろしく、気持ち悪いのと同時に
ロマンティックで倫理的でもあるのです。
👉『千と千尋の神隠し』に見られる「名前」の
テーマについてはこちらでさらに詳しい
考察と情報提供を行っています。
ぜひご参照を。
・千と千尋の神隠し ハクの本当の名前は?漢字でどう書く?
海外の一般人の評価は?
それでは、プロではない一般の映画ファンたちは『千と千尋の神隠し』をどう
受けとめているのでしょうか。
それを知るのに手っ取り早いのがIMDb
(Internet Movie Database:インター
ネット・ムービー・データベース)。
映画・テレビ番組・俳優・芸能人・ビデオ
ゲーム関連の情報を配信する英語圏で最も
有力なオンラインデータベースです。
このサイトの”Top Rated Movies”
(会員の10段階評価の集計による
ランキング)で『千と千尋の神隠し』は
なんと を
張っているのです!
アニメ映画としては断トツの世界1位、
日本映画としては黒澤明の『七人の侍』
(1954)の19位につぐ2位に着けて
いるのですね。
評点の平均は☆8.6個で、その内訳を
みておきますと、☆10個をつけた
レビューが682個寄せられていて、
これは全体の51.8%ということに
なります。
ちなみに☆9個以下で数値はなだらかに
減少し、☆4個と3個では最少の
11(0.08%)で、☆1個しかつけない
という人は41(0.3%)となっています。
ここで☆10個(51.8%):☆1個(0.3%)
の比を褒貶比(ほうへんひ)と呼ぶことに
したいのですが、『千と千尋の神隠し』
では、これがなんと約「17:1」という
ことになるのですね。
👉褒貶比はここで私が勝手にでっちあげた
造語です;^^💦
つまり「毀誉褒貶」の「褒貶」──褒めると
貶(けな)すと──の人数の度合いが
どれくらいかを示す指標として使える
と思っています。
ここで参考までに、この褒貶比を他の
人気映画で見ておきますと(もちろん私が
調べた限りでの話になりますが;^^💦)、
『千と千尋』をしのぐのはIMDbの上記
ランキングでは66位につけている『もの
のけ姫』(宮崎駿、1997)の「34:1」
(51.5%:1.5%)と75位の『君の名は。』
(新海誠、2016)の「38:1」(51.8%:
0.3%)のみ。
いずれも驚異的な比率ですが、この
2つの映画の評価についてはこちらで。
・もののけ姫 海外での反応・評価は?評論家も一般人も毀誉褒貶で割れる
・君の名は【海外の反応・評価】アカデミー賞に届かなかったのはなぜ?
これに続くのが上記ランキングで11位という
人気を誇る『ファイト・クラブ』(1999)の
「27:2」(49.0%:3.6%)や2019年の映画賞を
総なめにした『ジョーカー』の「21:2」
(56.5%:5.3%)。
13位(2010年以降では1位)に食い込んで
いる『インセプション』(2010)では、
これが「7:1」(43.6%:6.3%)。
これらは褒貶比の高い部類といえますが、
逆に低いもの、つまり酷評も結構多い
作品としては、
『ダンケルク』(2017):「7:5」
『ムーンライト』(2016):「7:4」
『ラ・ラ・ランド』(2016):「5:2」
が挙げられます。
こうしてみると、『千と千尋』の「17:1」
という比率はやはり驚くべきものと
言えそうです。
(以上、2020年8月20日時点のデータ)
👻1.どんな映画にも似ていない
⦅IMDb☆10個のレビュー⦆
さて少し横道にそれましたが、本題の『千と千尋の神隠し』に入って
いきましょう。
IMDbに寄せられた☆10個のレビューと
☆1個のとを、それぞれ”Helpfulness”
(役立ち度)順に並べ換えた場合に上位に
出てくるレビューのうち、「ラスト」の
問題に関わるものを二三、拾い出して
訳出していきます。
その一つ、robhan19さんによる
2006年7月の投稿から
見ていきましょう。
友人の勧めでしぶしぶレンタル
して観たのだが、2日後に返却
するまでに結局、6回も見直し、
翌日には購入することになった。
娘も、いつも一緒に見て
私と同じくらい好きになった。
時に怖いが、全体を通して
素晴らしい、驚愕すべき映画だ。
大笑いしたかと思えば、次の
瞬間には身を乗り出し、
すべてがリアルに感じられる。
〔中略〕
娘はマンガを描くようになり、
オープニング・テーマの
ピアノ演奏を習い始めた。
私はこの映画をどんな人にも
推薦する。
でも警告。
それはとても……変な世界です。
時を経た2013年、gogoschka-126さんは
「自分がこれまでに見たうちで最高の
ラストシーン」というタイトルの
レビューで、こう絶賛しています。
深く神話的なお伽話の
アニメ映画でこれほど独創的な
ものは、一つも見たことがない。
映画としては、なんとシュール
(surreal)なアイディアだろう!
適切な表現が難しいが、この作品には
映画への”他者性”の感覚──私が見た
どの映画にも似ていないという──
がある。
〔中略〕
東洋/アジアの神話世界にある程度
なじんでいる東洋の観客は、
物語のテーマをそれほど奇妙には
感じないのかもしれないが、
私には、驚異を美しく描いた
この作品は新しい何かだった。
傑出したアニメ映画。
同時に可笑しくて奇異で怖くて
感動的な、このユニークな
芸術作品を、私はどれほど
推薦しても、し足りない。
☆10個のレビューを見渡していくと、
これらのほかにも様々な見方から
『千と千尋の神隠し』への驚き、
その楽しさ・美しさが指摘され、
称賛の言葉があふれかえっています。
ただ、もちろんその一方で、比率と
してはきわめて少数派であるとはいえ、
それらに反対する意見、特に☆1個
という評価で全面否定の意思表示を
明らかにしたレビューもあることも
無視できません。
次にはそれらに目を配りましょう。
👻2.18禁ものの気持ち悪さ
⦅IMDb☆1個のレビュー⦆
「この映画のIMDbでの評価の高さは驚異的だが、称賛するレビューの
どれもたいしたことを言っていない」
ときめつけるのは、 2017年の投稿者、
TheBigSick14さんです。
第一に、この映画は全年齢
向きではない。
あれだけ恐ろしいホラー画像や
気持ち悪いキャラクターが
出るなら18禁にすべきだ。
第二に、物語が信じがたすぎる。
ハク、カオナシ、銭婆(ぜにーば)…
特にハクがセンに親切にする
理由が不明だ。
第三に、全編を通して
明確な目的や狙いがない。
センは両親のいる人間世界に
戻る方法を知らぬまま、
最後のハクによる解決を
待つばかりなのだ。
総じて、これは全時代を通じ
最も過大評価された作品であり、
宮崎駿はおそらく最も評価に
価しない監督である。
う~ん、なかなか手厳しいですね。
でも「ハクがセンに親切にする理由が
不明だ」というのはいかにも無粋な
コメント。
「秘すれば花なり」が日本の美学
なんですよ…
なんて口にしたくはないですけどね。
遡って2010年の、m-wolkerstorfer8
さんのレビューも同様に厳しい
ものです。
「宮崎はウォルト・ディズニー
より上だ」と書いた人がいて、
不幸にしてそれは正しいが、
ディズニーの上を行くのは
むずかしいことではない。
この映画は──私の意見では──
“ラン&ジャンプ”ゲームの
アニメ版であり、なろうとして
なれなかった『不思議の国の
アリス』である。
奇怪な絵、吐き気を催すような
怪物たち、恐ろしい音楽、
なきに等しいプロット、
深く落ち込ませる雰囲気。
もうおわかりでしょう、
私は嫌いです。
これらの否定的なレビューを見渡すと、
多くはその物語世界に入っていこうとは
しておらず、その手前で好みの問題として
「受け入れられない」という拒絶反応を
起こしているように見て取れます。
その意味では、ストーリ-ラインを
もう少しわかりやすくしておけば…
という批評も出そうですが、そこは
どう考えるべきでしょうか?
『もののけ』と『トトロ』の結婚
最初に紹介したエルヴィス・ミッチェルは、『NYタイムズ』の時評の終わりの方で、
この作品に前作『もののけ姫』(1997)
ほどのスケールはないと指摘した上で、
『千と千尋』は「『もののけ』のパワーと
『となりのトトロ』の生気あるポップさ
との結婚」だとも評しています。
なるほど、『トトロ』の楽しさの側に
もっとぐっと寄っていれば、嫌悪感を
表明した☆1個のレビューの数は
減っていたことでしょう。
が、その代わり☆10個の絶賛も減少
させた可能性が大きいでしょうね。
ともかくこの『千と千尋の神隠し』、
前作『もののけ姫』ですべてを出し切り、
実際、引退宣言までしていた宮崎監督が
諸般の事情からもう一度やる気を
起こして取りかかった作品。
かなり難解な部分のあった『もののけ姫』
からすれば、ずいぶん『トトロ』の
軽快さを取り戻してはいます。
が、それと同時に『もののけ姫』について
宮崎自らが口にしていた「必要なことは
全て描くけども、わかるようには描かない」
という制作方針が『千と千尋』にも
生き残っているようでもあるのですね。
👉『もののけ姫』のこのポリシーや出来あがった
作品の諸々の”謎”をめぐっては、
こちらの記事をご参照ください。
・もののけ姫 カヤには子孫が…?アシタカとのその後4つのシナリオ
(出典:https://tr.twipple.jp)
・もののけ姫 玉の小刀の役割は?カヤ/アシタカ/サンと渡るのはなぜ?
・もののけ姫の原作?絵本(絵コンテとも違う)は映画と別世界だった!
・もののけ姫 エボシ御前の腕はなぜモロにもがれる?裏設定を探ると…
・もののけ姫 サンのお面の意味は?縄文人/弥生人の戦いが背景に?
まとめ
さて、以上で『千と千尋の神隠し』の海外での評価に関して、言いたいことは
ほぼ言いつくしました。
ん? お前自身の評価はどうなのか?
そうですねえ…
☆10個でもいいけど、ちょっと辛く
9個にしておきたい気もありますね。
マイナス1点は、これも「好み」の
問題になってしまうかもしれませんが、
妖怪的な神々があまりゴチャゴチャ
出すぎかな…
それよりは千尋とハクとの恋愛に近い
感情を深めることを通して宮崎哲学を
浮上させてほしかった…
という”ないものねだり”
によるものです;^^💦
さて、とにもかくにも、コト『千と
千尋の神隠し』に関するかぎり、
これだけの情報があればもう
万全でしょう。
誰かさんにちょいと知ったかぶりを
してやろうかという場合も、
あるいは感想文やレポートを
書こうかという場合も…。
ん? 書けそうなことは浮かんで
きたけど、具体的にどう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?
そういう人は、ぜひこちらを
ご覧くださいね。
👉当ブログでは、日本と世界の多様な
文学や映画の作品について
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。
参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
こんなコメントが来ています