坂口安吾の小説 二流の人は大河ドラマ 軍師官兵衛より面白い

 


NHK大河ドラマ、
『軍師官兵衛』で岡田准一さん主演とくれば、
わくわくドキドキですね、もう。

で、ここまでのところ、出来栄えは?……

まあ、ここからは私個人の勝手な意見ですが、
まずまずの出来ながら、いまひとつ……スパイスが足りない、かな?

権謀術数の男、黒田官兵衛(のち隠居して如水)を
准一くんがあの顔でやるとなれば、
もっともっと、凄味のある役作りができ、
そうなれば、ドラマ全体の深みもぐっと増したのではないか……
なんて、ついないものねだりツ黴€をしてしまうんですね。


Ψ <善・美・知>の超人:岡田官兵衛

まあ制作側としては、准一くんの美貌はあくまで<善なる美>として生かすべく
(やっぱNHK大河の主役だから「ワル」にするわけにもいかないんでしょう)、
これを中谷美紀さんの妻女ら、美女に囲ませてさらに輝かせ、
また春風亭小朝師匠の光秀(これが素晴らしい!)やら
竹中直人さんの(あまり賢くない)秀吉やらの脇役で引き立て……
といった算段なんでしょうな。

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ついでに文句をつけると、
「本能寺の変」の回で、信長の正室お濃(内田有紀さん)が
夫とともに本能寺にいて、そこで果てるシーンがありましたね。
これは以前の大河ドラマでもやっていたので
(その時は和久井映見さんだったかな? 刀をふるって戦っていた)、
「またか」と思ってしまいました。
NHKさん、やめてくださいよ、こんなのウソでしょう。

信長088491

こういうことも含めて、ここ十年ほど(もっとか?)の大河ドラマでは
現代の一般視聴者にウケようとするあまり、
(あるいは抗議がこわいのか)
“politically correct”(政治的に正しい)のベクトルに
歴史が歪められることの多いのに閉口しますね。
(この場合は、「夫婦は死ぬまでいっしょ。側室などない!」というベクトル)


でもそれは枝葉です。
脚本の根幹の部分で強く感じるのは、
岡田官兵衛の優秀さが<善・美>のみならず
<知>においても図抜け、超人の域に達しちゃってることです。

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だから、このドラマを見つづけていると、
秀吉の成功はすべて官兵衛の知謀によったものと見え、
裏返せば、秀吉自身は何一つ考えない人で、考えないまま天下が転がり込んだ、
ということになってきます(竹中さんの快演もそれを後押し)。


Ψ 俺(秀吉)の死後に天下をとる奴は?

でも、実際にそうだったのかな?
という疑問が当然浮かびます。

だから前回(8/03)の次回予告では、
秀吉の「官兵衛、おぬしはさても恐ろしい男よのォ」というようなセリフで、
官兵衛に対する恐怖と警戒の心がいよいよ頭をもたげたことが
サラリと示されていたように記憶します。

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さあ、ここからが面白いはずですよ。
秀吉と官兵衛の間に生じる心的葛藤をどう描いてゆくか……。

秀吉だって実は、考えない人では決してないわけで、
ほんとうは官兵衛の上を行っていた……

という視座から両者の葛藤の機微を見事に描き出したのが、
私の推奨する歴史小説の傑作、
坂口安吾『二流の人』(1948)なんですね、ハイ。


タイトルの「二流の人」が誰を指すかといえば、もちろん官兵衛で、
そもそもこの人、なんで四十の若さで隠居して「如水」になっちゃったかといえば、
安吾の小説では、
天下人となった秀吉が近親を集めての四方山話に、

「どうだな、俺の死後に天下をとる奴は誰だと思う。」

腹蔵なく言ってみろ、と笑顔で問いかけます。
その場で徳川、前田、蒲生、上杉などの名が挙がりますが、
秀吉笑って「乃公(だいこう)の見るところは又違う」といい、
官兵衛を名指した、というのですな。

「俺の戦功」はあいつの「智略によるところが随分とあって」……

「狡智無類、行動は天下一品速力的で、心の許されぬ曲者だ」

とのたまった。

殺害Assassins-Creed-III-s
ただちに隠居してしまおうという官兵衛の決心は
この話を伝え聞いたことによるという次第。
だって、怖いじゃないですか。
こうなると、いつ殺されるやらわかったもんじゃない……。

こうして長子、長政に家督を譲り、如水翁となるわけですが、
ただ、その後も軍略家としての冴えと野望は沸々と持続した次第で……。


Ψ 茶番のような儚さ

で、結局のところ、秀吉の不気味な予言が当たらなかったのは
彼が「一流」でなかったことの証明……
というふうに安吾の小説は読めるわけです。


では誰が「一流」であったのかといえば、
やはり秀吉、そして家康というところになるわけですが、
それは必ずしも彼らの頭脳が官兵衛を上回ったということではなく、
言ってみれば、総合的な「人間力」でかなわなかった
というふうに描かれていますね。

このあたりの微妙さについては、こちらの記事もご参照ください。
「軍師官兵衛のキリスト教入信:ほんとに”二流の人”だった?」

ともかく、そのへんがとても面白い。
「天才」に近いものの今一歩、イマイチの人であった官兵衛を
作者安吾は愛しながら突き放す、作家魂で描き切ります。
関ヶ原の戦いを終えての、ラストの文章がまたいい。

応仁以降うちつづいた天下のどさくさは終わった、
俺のでる幕はすんだという如水の胸は淡泊に晴れていた。どさくさはすんだ。
どさくさと共にその一生もすんだという茶番のような儚(はかな)さを彼は考えていなかった。


どくろFall-Of-Man-s

こういう場合に「茶番のような儚さ」を思うか否かは、
その人が「一流」かイマイチの人かとは別に、また興味深い個人差ですね。
この暗示に満ちた結びもまた、「性格」を描くこの作家
(武将たちの「性格」の描き分けの鮮やかさも『二流の人』の傑作たるゆえんです)
の関心のありどころを暗示して余韻を残すものとなっています。

このほかにも、多様な性格でそれぞれに魅力ある人物、
印象深いシーンが次から次へと繰り出され、
とにかく面白い、「一流」の小説ですよ。


Ψ 安吾は一流、恋人も美女

もちろんテレビドラマにそこまでの表現を期待するのはないものねだり
だとはわかってます。

ここで称賛したいのはのような人物として
黒田官兵衛を描き切った作家、
坂口安吾の哲学と技量です。


ついでのようで恐縮ですが、彼とロマンスのあった
女性作家矢田津世子(つせこ)さんは
「文壇一の美女」と呼ばれた人です。
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出身は秋田県なので、当然のごとくに
「秋田美人」といわれましたが、
秋田県の特定の地域に美女が多い(または、多かった)のは
たしかなことのようですね。

詳しくはこちらをご覧くださいね。
「《秋田美人》の謎?「白人混血説」の可能性を動画で検証!」

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One Response to “坂口安吾の小説 二流の人は大河ドラマ 軍師官兵衛より面白い”

  1. […] 目しながらこのドラマをウォッチしてきましたが、 ↓↓↓↓ ・「NHK大河『軍師官兵衛』より面白い坂口安吾『二流の人』」 ・「軍師官兵衛のキリスト教入信:ほんとに”二流の人”だっ […]

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