坂口安吾の小説でおすすめは ですって?

それはもう文句なしにコレ、
『二流の人』(1948)ですよ。

『白痴』もいいし『風博士』もいい。

『紫大納言』も『風と光と二十の私と』も
いいけれど、これらはどれもなというか、
表現に安吾独特の臭みのようなものが
あって、ついていけない人もいると
思うんですよね。

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そういう臭みなしに、すっと入っていける
歴史小説で、かつこれを通読することで
安吾思想の深いところまで降りて行く
ことになる…

そういう意味でオススメの傑作が
この『二流の人』なんですね。
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官兵衛が二流なら、一流は誰?

で、タイトルになっている「二流の人」
というのが誰を指しているかといいますと、
あの黒田官兵衛(のち隠居して如水)。

そう2015年のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』で
岡田准一さんが見事に演じきったあの人物!


あの傑物が「二流」なら、オレなんか
どうなっちゃうんだよ…と人をへこませそうな
タイトルとも言えますが、ここにも安吾の
皮肉がたっぷりと効いているわけですね。

いや、まあ要するに、官兵衛が「二流」なら、
「一流」といえるのはもう信長・秀吉・
家康の三英傑ぐらいしかないわけで、
実際、小説もそういう趣旨なんです。



善・美・知の超人:岡田官兵衛

大河ドラマの『軍師官兵衛』はどんな感じ
だったかといいますと、「悪」の匂いもある
岡田さんの美貌を、中谷美紀さんの妻女ら
美女の包囲でさらに輝かせ、また明智光秀役の
春風亭小朝、秀吉役の竹中直人らユニークな
配役で見事に引き立てていましたね。
 
文句をつけると、「本能寺の変」の回で、
信長の正室お濃(内田有紀さん)が夫とともに
本能寺にいて、そこで果てるシーンがありました。

これは以前の大河ドラマでもやっていたので
(その時は和久井映見さんだったかな? 
刀をふるって戦っていた)、「またか」と
思ってしまいました。

NHKさん、やめてくださいよ、
こんなのウソでしょう。

   信長088491

こういうことも含めて、ここ十年ほどの
大河ドラマでは現代の一般視聴者にウケようと
するあまり、(あるいは抗議がこわいのか)
“politically correct”(政治的に正しい)の
ベクトルに歴史が歪められることの多いのに
閉口しますね。
(この場合は、「夫婦は死ぬまでいっしょ。
側室などない!」というベクトル)


でもそれは枝葉です。

脚本の根幹の部分で強く感じるのは、
岡田官兵衛の優秀さが<善・美>のみならず
<知>においても図抜け、超人の域に
達しちゃってることです。

  superman-s

だから、このドラマを見つづけていると、
秀吉の成功はすべて官兵衛の知謀によった
ものと見え、裏返せば、秀吉自身は何一つ
考えない人で、考えないまま天下が転がり込んだ、
ということになってきます
(竹中さんの快演もそれを後押し)。

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オレの死後に天下をとる奴は?

でも、実際にそうだったのかな?
という疑問が当然浮かびます。

つまり大河ドラマでは秀吉がやがて官兵衛を
遠ざけるのは、その知謀の冴えを恐れたから…
というストーリーで、実は秀吉こそが「二流」
だったと言っているかのように見えます。

でも安吾の『二流の人』はそうではなくて、
やっぱり秀吉は「一流」、官兵衛は「二流」
以上ではなかった、という解釈で進めて
いるところが面白いわけなんですね。



さて官兵衛、そもそもなんで四十の若さで
隠居して「如水」になっちゃったかといえば、
安吾の小説では、天下人となった秀吉が
近親を集めての四方山話に、

「どうだな、俺の死後に天下をとる
奴は誰だと思う。」

腹蔵なく言ってみろ、と笑顔で問いかけます。

   

その場で徳川、前田、蒲生、上杉などの
名が挙がりますが、秀吉笑って「乃公
(だいこう)の見るところは又違う」といい、
官兵衛を名指した、というのです。

「俺の戦功」はあいつの「智略による
ところが随分とあって」……

「狡智無類、行動は天下一品
速力的で、心の許されぬ曲者だ」

とのたまったのです。


ただちに隠居してしまおうという
官兵衛の決心はこの話を伝え聞いた
ことによるという次第。

だって、怖いじゃないですか。

こうなると、いつ殺されるやら
わかったもんじゃない……。

こうして長子・長政に家督を譲って如水翁と
なるわけですが、ただその後も軍略家としての
野望は沸々と持続し……


関ケ原の戦いに向けては九州を平らげてから
様子を見、関ケ原の勝者に襲い掛かろう
という軍略を温めていたものの、東軍の
勝利があまりにも早かったため目算が
外れてしまいます。

ああ、やっぱり「二流」だったのか…と。

関ケ原の戦いの経緯については
こちらもご参照ください。

映画『関ケ原』(2017)で岡田さんが
石田三成を演じる巡り合わせと
なったのもご愛敬。

関ヶ原のあらすじ 映画(2017)は小説(司馬遼太郎)をどう変えたか 

          
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茶番のような儚さ

で、結局のところ、秀吉の不気味な予言が
当たらなかったのは彼が「一流」でなかった
ことの証明……
というふうに安吾の小説は読めるわけです。


では誰が「一流」であったのかといえば、
やはり秀吉、そして家康というところに
なるわけですが、それは必ずしも彼らの
頭脳が官兵衛を上回ったということではなく、
言ってみれば、総合的な「人間力」で
かなわなかったというふうに
描かれています。

このあたりの微妙さについては、
こちらの記事もご参照ください。

軍師官兵衛のキリスト教入信:ほんとに”二流の人”だった?


ともかく、そのへんがとても面白い。

「天才」に近いものの今一歩、イマイチの
人であった官兵衛を愛しながら突き放し、
作家魂で描き切ったのが『二流の人』。

関ヶ原の戦いを終えての、ラストの文章がまたいい。

応仁以降うちつづいた天下の
どさくさは終わった、
俺のでる幕はすんだという如水の
胸は淡泊に晴れていた。

どさくさはすんだ。

どさくさと共にその一生もすんだ
という茶番のような儚(はかな)さを
彼は考えていなかった。


どくろFall-Of-Man-s

こういう場合に「茶番のような儚さ」を
思うか否かは、その人が「一流」か
イマイチの人かとは別に、また興味深い
個人差ですね。

この暗示に満ちた結びもまた、「性格」を
描くこの作家(武将たちの「性格」の
描き分けの鮮やかさも『二流の人』の
傑作たるゆえんです)の関心のありどころを
暗示して余韻を残すものとなっています。

このほかにも、多様な性格でそれぞれに
魅力ある人物、印象深いシーンが次から
次へと繰り出され、とにかく面白い、
「一流」の小説ですよ。

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安吾は一流、恋人も美女

もちろんテレビドラマにそこまでの表現を
期待するのはないものねだり
だとはわかってます。

ここで称賛したいのはのような人物として
黒田官兵衛を描き切った作家、
坂口安吾の哲学と技量です。


ついでのようで恐縮ですが、彼とロマンスの
あった女性作家矢田津世子(つせこ)さんは
「文壇一の美女」と呼ばれた人です。
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神楽坂 矢田津世子作品集/古典教養文庫

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出身は秋田県なので、当然のごとくに
「秋田美人」といわれましたが、
秋田県の特定の地域に美女が多い(または、多かった)のは
たしかなことのようですね。

詳しくはこちらをご覧くださいね。

《秋田美人》の謎?「白人混血説」の可能性を動画で検証!


それではまたお目にかかりましょ~;^^💦

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