羽田圭介:スクラップアンドビルド(芥川賞作品) のあらすじ【ネタバレ】

羽田圭介:スクラップアンドビルド(芥川賞作品) のあらすじ【ネタバレ】

やあやあサイ象です。

おなじみ「あらすじ」暴露サービスも
ついに大台を超えて今回でなんと
108弾((((((ノ゚🐽゚)ノ

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「感想文の書き方」シリーズ全体では
167回となる今回は第153回(2015年
上半期)芥川賞を受賞した羽田圭介さんの
『スクラップ・アンド・ビルド』!


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NHKでのドラマ化でも話題沸騰ですね。

今回はこれで読書感想文を書くことを
念頭に、そのあらすじを簡単に
(とはいえラストまで包み隠さず)
暴露してししまおうという目論見です📣


つまり完全ネタバレ!ということに
なっちゃうんですが、犯人さがしの小説では
ないですし、結末を知ったら読む気を
なくすというようなことはありません。

むしろちゃんと全部読みたくなる
ような、とてもいい作品作なんです!

簡単(とはいえやや詳しい)あらすじ【ネタバレ】

では行ってみましょう。

原作は行あけによて、15ぐらいの部分に
区切られていますが、これらを私の
勝手な判断で「起承転結」の4部に
分けています。

「…」内と「”」印の囲みは、
原作からの引用です。

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👍【起】

28歳の健斗は5年間勤めた会社を
7か月前にやめ、現在は就職活動しつつ
行政書士資格試験に向け勉強中。

3年前、結婚で出ていった姉と入れ替わる
ようにして同居するようになったのが、
埼玉の叔父の家から回されてきた、
87歳の祖父(長崎出身の母の父)。

家に金を入れないかわりにその介護を
することが、昼間は仕事で出ている
母と健斗との間の取り決めだった。
(父は少年時に死去)

「もう、毎日体中が痛くて
痛くて……どうもようならんし、
悪くなるばぁっか。
よかことなんあひとつもなか」

背を丸め眉根を寄せ、
両手を顔の前で合わせ
ながら祖父がつぶやく。

佳境にさしかかった、
と健斗は感じる。

「早う迎えにきてほしか」

高麗屋っ。

中学三年の課外学習で見た
歌舞伎で、友人たちと
面白がり口にしまくった
屋号を思いだす。

祖父の口から何百回も
発された台詞を耳にしながら、
健斗は相づちをうちもせず
ただその姿を正視する。

「毎日、そいだけば祈っとる」

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「五人兄妹のなかで最もニヒリスト」
とも見える母に似たのか、健斗もまた
完全に醒めて聞いているのだが、
それでも祖父は毎度の愚痴をやめない。


が、ふと健斗が思ったのは、この
「死にたい、というぼやき」を祖父の
「魂の叫び」として「言葉どおりに
理解する真摯な態度」が必要なの
ではないか、ということ。

痛みを恐れる祖父の極端な慎重さは
「究極の自発的尊厳死を追い求める」
ものであり、その手助けをすることこそ
「孝行孫たる健斗に課せられる使命」
ではないか…と。

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👍【承】

介護福祉業界で働く友人の大輔と話す。

祖父の望みを手助けするなら「動きを
奪う」のがいちばん「現実的で効果的」
だろうが、半端になって生き延びれば、
介護は余計面倒になるが、おまえに
やり遂げる自信はあるのか?


「本当の孝行孫」として健斗は、祖父の
社会復帰のための訓練機会を「しらみ
潰しに奪って」いこうと、整理や掃除に
汗を流す。

「わぁ、きれいになった。ありがとう」
「楽させてやりたいから」


4歳年下の亜美とは、会えばすぐ
ラブホテルへ行く仲。

彼女が先にシャワーを浴びている間に
腕立て伏せやスクワットをして心身に
活力を漲らせてから事に及ぶ。
     
      

「ちょっとすごいじゃん最近」と亜美に
いわれるほど好調だが、それは勉強の
方の好調さも含めて、自らに課してきた
筋力トレーニングと「一日最低三度の
射精」という鍛錬の成果と思われた。

そんな自分から祖父を見ると「子供へと
退行した祖父の親にでもなったかの
ような錯覚に陥っ」て、「教え導いて
あげなければ」とも思う。


亜美に会うつもりで、祖父をひとり
残して家を出たが、「行けない」との
メールが入ったので帰宅。

「ただいま」と大声を出して入り、
リビングのドアを開けると、
「なにか黒く小さなものがものすごい
勢いで」駆けていくのが見えた。

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👍【転】

祖父の88回目の誕生日に姉が連れてきた
1歳半のひ孫を祖父はあやし続ける。

赤子とはいえ、一歳半とも
なれば五、六キロの
重さはある。

印象ほど筋力は衰えていない。

健斗の脳裏に、すばしっこく
走る珍獣の姿が明滅した。

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中途採用面接を受け、「誰にも命令
されないのに死ぬほど辛い鍛錬をやる
自己規律、精神性の高さ」で自分は
勝っていると思いながら帰宅すると、
祖父が苦しんでいる。


すぐ車で病院へ運ぶと、急性心不全
による「急性肺水腫」との診断。

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あのまま母が帰ってくるまで
放っておけば、祖父は彼岸へ
行けていたかもしれない。

しかし、あのとき祖父は
苦しがっていた。

つまり、苦しい中での死は
祖父の望むものではないと
健斗は判断したのだ。


いつも迎えに行くショートステイ先に
普段より早く行った健斗は、祖父の
思わぬ振る舞いを見る。

若い女性ヘルパーの腕や胴体を、
明らかに必要以上に触っているのだ。

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だいたい老人の性欲とは何か、
と健斗は自問する。

子孫繁栄のためなら、
死んで下の世代への負担を
減らすほうが、よほど
子孫繁栄につながる。

ここでも、子孫繁栄を願う
祖父の性欲と、健斗たち
世代が繁栄するための
尊厳死アシストは繋がりを
見せている。

未だ性欲を隠しもっていた
老人をあの世へ送る援助
行動は、子孫繁栄を願う
老いた性欲野郎にとっての
本望でもあるわけだ。

   

祖父を連れ帰り、用事をすますと
目にしてしまった「祖父の性欲」の
気持ち悪さを薄めようと「三連発
頑張」って、ぐったり。

絶倫二0代の性欲と比べる
ことで、祖父のいやらしい
手つきはただ援助を求める
手へとようやく浄化された


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👍【結】

祖父の入浴を介護。

途中、尿意を催したのでトイレへ行き、
戻ってみると、祖父がおぼれかけて
いるので、恐怖に襲われつつ助ける。

わざと沈めようとした、
と思われたのではないか。

〔中略〕なにより健斗自身も
自分のことが信じられない
不安にとらわれていた。

己の奥深くで、究極の尊厳死を
かなえてやろうとする親切心
とも異なる熱に突きうごかされ、
本当は危険だと感じていた
入浴を、安全だと思い込もうと
していたのでは。

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が、「ありがとう」「死ぬとこだった」
と穏やかにいわれ、健斗は自分の
思い違いに気づく。


健斗はやがて医療機器メーカーの営業職に
採用されたが、これが「ここ数ケ月の
生産的生活で培った様々な能力のおかげ
なのはあきらかだった」。

母と叔父は祖父を長崎の特養老人ホームへ
入所させる予約をしたが、それでも
二、三年の順番待ちだ。

茨城へと旅立つ健斗を送る車の中で
「じいちゃんのことは気にせんで、
頑張れ」と祖父が声をかける。

「俺が帰って来るのを待っててよ」
「来んでよかよ。じいちゃん、
自分のことは自分でやる」

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感想文どう書く?
介護で発生する笑えない笑い

さあ、いかがでした? 

登場人物はそれぞれ味があって
面白いんですが、なんといっても
輝いているは「じいちゃん」ですね。

「スクラップ」になりかけ…というか
もうなってしまっているかもしれない
じいちゃんですが、この人とこれから
自分を「ビルド」してこうとする
わかり主人公との交錯。

そこに自然に発生してくる、
笑えない笑い……
(といってもやっぱり笑いますけど)

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老人介護がひとごとはでないという
人の割合はこれから増えていく一方
でしょうから、この作品もこれから
長く読みつがれ、またドラマ化・
映画化などもされていく可能性は
大きいでしょうね。

となれば、もしこれで読書感想文などを
書こうという場合は、まず考えられる
のは介護に関係することで、何か自分の
身近にある問題と関連づけてみること
ではないでしょうか。
👉介護の問題は、カフカの
『変身』にも読み取ることが
できます。

比較してみるのも
面白いでしょう。

こちらをご参照ください。

カフカ 変身のあらすじ:簡単/詳しくの2段階で解説

カフカの変身をどう解釈?「兄=虫を介護する妹」で感想文?

       


それから江戸川乱歩の超問題作
『芋虫』ですね。

芋虫(江戸川乱歩)のあらすじ:伏字だらけの問題作!内容は?

江戸川乱歩 芋虫で感想文◎◎映画『キャタピラー』も鑑賞して

             芋虫 caterpillar-564543_640

ああ、それから芥川賞の同時受賞
となった又吉直樹『火花』 と
比べるのも面白いかも。

ピース又吉 火花のあらすじ:笑いながら泣く芸人哲学の世界

又吉直樹 火花で感想文・批評文を☆火花を散らす”ボケ”師弟


ほかにも筋トレのこととか、亜美さんとの
交際のこととか、書けそうなテーマは
いろいろありそうですよね。

👉その一つ一つについて解説していく
余裕はありませんので、当ブログで
書きためてきた記事の一覧から
ヒントを見つけてもらえれば
と思います。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
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