人のセックスを笑うな 原作小説のあらすじ⦅ネタバレ⦆と鑑賞

人のセックスを笑うな 原作小説のあらすじ⦅ネタバレ⦆と鑑賞

やあやあサイ象です。

今回で第120弾((((((ノ゚🐽゚)ノ
となります”あらすじ暴露”サービス
(感想文の書き方シリーズとしては
179回)!

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今回は松山ケンイチ・永作博美主演の
映画(井口奈己監督、2008年)の原作、
山崎ナオコーラさんの小説(2004年度
「文藝賞」受賞作)『人のセックスを
笑うな』で行ってみましょ~!
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ドキッとさせるタイトルではありますね。

でも、本の表紙からもおわかりでしょうが、
内容は決してポルノグラフィーではなく、
18歳未満は読んじゃダメー\(*`∧´)/
とか…そういう小説ではありません。

その点はご安心を願いますが、
(え?ガッカリですか?;^^💦)
ともかく、まずは「ごく簡単な
あらすじ」をお読みください。


ごく簡単なあらすじ(要約)

ぎゅっと要約してしまうと
こんな感じになります。

19歳の美術専門学校生、「オレ」は
39歳で既婚のユリにモデルになって
くれと言われ、いつか深い仲になる。

性愛を深めつつ、やがてその夫にも
会って話すが、むしろ好意さえいだく。

     

翌年4月、ユリは突然、学校を退職。

オレには「一人で考えたい」などと
告げて、夏には夫とともに
ミャンマーへ旅発ち、帰国後も
会おうとしない。

結局、自分が求められていない
ことを悟り諦めるが、
心には思い続ける。

え? これじゃ全然わからん?

まあそうでしょうね;^^💦

それでは、映画予告編の動画を
ご覧いただきましょうか。👇


ん? これでもわからん?

それでは、やはり下記の「かなり
詳しいあらすじ」を読んでいただく
しかないんですね。

どちらもちゃんと読むのはしんどい…
という方のために「あらすじ」を暴露
しちゃおうというわけですが、もちろん
ネタバレありになりますので、結末を
知りたくない人は読まないでください。


かなり詳しいあらすじ

では始めましょう。

原作に章立てなどはありませんが、
読みやすさに配慮して、私の勝手な
判断で「起・承・転・結」の4部に
分けて参ります。

「…」内は原作からの引用です。


💕【起】

「オレ」こと19歳の美術専門学校生、
磯貝みるめは、同校の卒業生で講師の
「ユリ」こと39歳の猪熊サユリに
飲み会の帰りに声をかけられる。

「私、君のこと好きなんだよ。
知ってた?」
「えーと……知ってたかも」

   art-school-img_2600

2週間後に学校で呼び止められ、
「絵のモデルになってほしい、
ヌードではないから」と言われる。

次の日曜、ユリのアトリエへ行き、
1時間半、モデルをつとめると、
ユリは「お土産あるから」と
「どうやらモデル料らしい、
たくあんをビニール袋に
入れてくれた」。


その3週間後から1週おきにモデルを
しに行くと、徐々に脱がされ、やがて
トランクスと靴下だけになる。

ユリが「誘っていることがはっきりと
わかって」、やがて関係に入り、
その翌日、彼女は「コンビニの袋に
入った黒いくつ下」を差し出した。

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💕【承】

ユリの絵は「あまりに個人的に見え」たし、
彼女もオレの絵を評価するわけでは
なかったが、オレたちは学校でもキスを
するような仲になり、ユリはマフラーを
プレゼントしてくれた。


夫の猪熊さんは、アトリエには来ない
ことになっているらしく、結婚して
14年だが「常に戦乱状態」だという。

互いの考えはまったくわからないが
「気は合う」…とユリは屈託なく話す。

      

「磯貝くんのこと大好きなんだけど、
猪熊さんも大事な人なんだ」

半年ばかり過ぎて仲が深まると
ユリは自分のことを随分と
いろいろ考えていたが、
オレにはそれがくだならく
見えることもよくあった。
〔中略〕
そんなことを考えて、
むかむかしているのは、
ユリにあまりにも惚れ過ぎて
しまっていて、失うのが
怖い臆病心がなせる業(わざ)
なのだとは、その頃は
わからなかった。


友人の堂本に女友達「えんちゃん」
こと遠藤祥子を紹介され、3人で
食事しての帰り、駅のホームで
堂本がトイレへ行ったすきに
彼女にキスする。

「ものすごく眩しくてかわいい
女の子に見えた」からだったが、
ひどく公開して悩み、電話して
謝ると、怒っていないようだった。


夫は実家に帰ったとのことで、
年越しをユリと二人で過ごす。

幸せって「こういうことだと思う」
と泣き出したユリの涙を舐め、
「布団の国のお姫様と王様の
気分で眠った」。

     

ずっと友達だった「えんちゃん」が
退学することになり、コーヒーを
付き合ってくれといわれる。

「私、べつにキスがなくてもね、
磯貝くんのこと好きになってた。
〔中略〕私とは、つき合えない?」
と切り出され、
「好きな人がいる」からと断る。

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💕【転】

二月、ユリの自宅(アトリエでなく)
への2度目の訪問。

画集を見てからコタツで眠って
しまい、目覚めると台所で音が
するので行ってみると、料理していた
ハンプティ・ダンプティのような
猪熊さんが、ほほ笑んで挨拶する。

   
   『鏡の国のアリス』のハンプティ・ダンプティ

👉『鏡の国のアリス』(1872)はルイス・
キャロル作の児童文学で、有名な
『不思議の国のアリス』の続編。

くわしい情報はこちらをご参照ください。

不思議の国のアリス 原作のあらすじ ハチャメチャすぎて怖い?

        

この人は相当の変わり者だ。

でも、おそらく常識も
持っていて、人に合わせる
ことができる。

しかしその能力がある分、
殻が厚く、中は風変わりな
ものがそのままに
なっている。

ユリがこの人を大事に
思うことがわかる。

猪熊さんの手料理を3人で食べ、
小さな声でビールの乾杯もし、
彼の繰り出すジョークに笑う。

「オレは猪熊さんに好意を
抱いてしまった」。

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💕【結】

四月、新学期の学校でユリの退職を
知って衝撃を受け、電話すると
夕食をともにすることになる。

これから他の仕事を探すけど、
その前に猪熊さんミャンマーを
旅行してくると日本酒を飲みながら
話したユリは、やがて突っ伏して泣く。


2週間後にまた食事し、
「気分を変えたいタイミングだから」
「どうしても一人で考えたいことが
あって…」「絵のことで悩んでいる」
など、断片的な説明を受ける。

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五月、ユリは飛び立ち、
オレは「腑抜け」になる。

六月、帰国しているはずのユリに
電話とメールを送るが、応答なし。

七月、ユリからようやく電話があり、
いくつか問答すると「彼女が本当に
オレに助けを求めていないことが
よくわかった」。


「秋が来て、冬が来ても、ユリの
ことをしょっちゅう思い出していた」。

オレの誕生日でもある12月25日は、
堂本とえんちゃんとでパーティ。

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こんなかわいい人を
ふったという、残念な
ような気持ちが湧くが、
そういうものだ、
とも思う


3人で花火をしながら「卒業しても、
また集まりたいよね」と堂本が言い、
オレはユリの最後の笑顔を思い浮かべ、
しばらくしてから答えた。

会えなければ終わるなんて、
そんなものじゃないだろう


古いストーリーの新しい装い

さあ、いかがでした?

けっこう面白い? それとも
┐( ̄ヘ ̄)┌…ですか?


まあ、ストーリーだけ見れば、
別に新しくはないわけで、要するに
20歳前後の若者が年増の人妻と
恋愛し、結局は別れる(見ように
よっては”もてあそばれた”だけ)
という、昔からよくあるお話。

なので「あらすじ」だけたどれば、
なにコレ、なんてことないじゃん…
ということになるかもしれません。

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それがなぜ高い評価を受けたのか
といえば、《その古いストーリーに
新しい装いを与える》ことに見事に
成功しているから…ということに
なるでしょう。

その《新しい装い》はいろいろと
指摘することができるでしょうが、
私個人に強く訴えたもの4つばかり
挙げておくと、こんなところです。

  1. 女性作家が「オレ」という
    男性の視点人物を設定したことによる
    語り(文体)の新鮮さ。

  2. ユリは美女ではないし、
    容姿はオレの”タイプ”から遠いこと。
  3.   
  4. ”間男”猪熊さんの人間的な力を
    背景ににじませたこと。

  5. ユリからオレへのプレゼントに
    力(意味)をもたせたこと。

ん? どういうことかわからない?

それではこの3点について、以下で
少しづつ解説させてもらいます。


1. トランスジェンダー的な語り

女性作家が男性視点をとるという
トランスジェンダー(性転換)的な
語りの新味は文庫本(上記)の「解説」で
高橋源一郎さんも力説されたところです。

たとえば「女生徒」や『斜陽』で太宰治が
試みた《女語り》の裏返しなわけで、
これによって、非常に新鮮なムードと
洞察を小説に持ち込むことに成功
しているといえそうです。
👉太宰の「女生徒」『斜陽』、それから
文学におけるトランスジェンダーの
問題については、こちらもご参照
いただけるとありがたいです。

太宰治 女生徒のあらすじと考察 👩女はいやだ…曲折する意識を読む

斜陽(太宰治)のあらすじと感想☀簡単/詳しくの2段階で解説

寺山修司 毛皮のマリーのあらすじ:LGBTの世界的傑作を解説

     lgbt



2. 好きになると、形に心が食い込む

古今東西、物語の世界においては、
女主人公(男に愛される女)は美しい
ものと相場が決まっていたわけで、
この常識が崩されたのは比較的
新しいことなんですね。

日本だと、夏目漱石『明暗』のお延
あたりが突破口だろうと思うんですが、
ともかくナオコーラさんのこの小説でも
この反転が試みられ、それが一つの
すぐれた洞察を生んでもいます。


たとえばオレは「昔の加賀まりこの
ような、黒猫みたいな」かわいい
女の子が好きだと思っていたのだが、
「ユリはまったくそんな顔はしていない」。

     

目は一重で、顔は丸顔。
薄い唇はいつもカサカサ。
体には肉が付きすぎている。
〔中略〕
しかし恋してみると、
形に好みなどないことがわかる。

好きになると、その形に
心が食い込む。
〔中略〕
そこにある形にオレの
心が食い込むのだ。
〔中略〕
あのゆがみ具合がたまらない。
忘れられない。

これですね。

わかる人にはわかる、恋愛の実相を
見事に表現した文章ではない
でしょうか。
👉恋愛の実相を見事に描き出した文豪、
夏目漱石については、たとえばこちらの
記事をご参照いただけると幸いです。

漱石の名言でたどる恋愛💛『吾輩』猫が読み直す『こころ』etc.

     ƒvƒŠƒ“ƒg



3. 背景から読者に迫る”間男”

10歳以上若い妻が浮気していることを
知りながら、その浮気相手の若者を
受け入れ、好意さえ抱かせてしまう
この「ハンプティ・ダンプティ」の
ような五十男の、不思議な魅力。

いわゆる”間男”として、彼なりに
苦悩はあるに違いありません。

   

それでも妻を離さず、むしろ旅行などで
巧みに引き込んでしまい、結局は
「オレ」に勝利してしまうという
繊細かつシタタカな男。

その振る舞いは表立って描かれる
ことはないまま、ユリの変化や
言葉の背景にあるに違いない存在
として、強烈に読者に迫ります。

これもこの小説の大きな美点でしょう。

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4. 進化する「プレゼント」の力(意味)

ユリからオレへの「プレゼント」は、
最初にモデルになった日の「たくあん」から、
関係に入った翌日の「黒いくつ下」へ、
さらに仲が深まっててからの
「マフラー」へと進化していきます。

最初の「たくあん」はまったく意外で
ほとんど度肝を抜かれますが、
安っぽさ、ダサさの極み…として
選ばれたのでしょうか。


ともかく、それが「くつ下」に進化した
ことにもし意味を求めるなら、靴下は
足を挿入するものですから、その前日に
二人が入った”挿入”(😻)関係が
ほのめかされているとも読めます。
👉「靴下」類のこの”意味”については、
こちらの記事もご参照ください。

靴下のプレゼントに意味あり?【女性から男性に…👣】は危ない?

クリスマスプレゼントは靴下にって、なぜ?サンタの答えは?

     


最後の「マフラー」は最も重要。

なにしろ小説の書き出しで、これを
巻いて登場するオレが「二年前の
十二月にもらったときは嬉しかった
ものだ」とつぶやくほどですから。


実際、読み進めると、このプレゼントの
くだりは、オレの幸福感の絶頂期に
あたります。

彼女は愛情表現が上手い。

二人でいるときは、学校では
見せない顔を見せてくれる。

耳をひっぱり、眉毛を撫でで、
「ずっと恋人でいてね」と
抱きついてくる。

十二月のオレの誕生日には
マフラーをプレゼント
してくれた。

    

この「乾いた」マフラーに二年後も
包まれている「本当は湿った
生き物」としてオレ…というのが
書き出しの述懐。

その「意味」はこうだ、と明確に
打ち出されることはありませんが、
これらのプレゼントが隠れた「力」
として物語を推進していることは
十分に読み取れます。
👉マフラーやネクタイのプレゼントには
「あなたに首ったけ」という意味が
あるという説も…。

これについてはこちらの記事を
ご参照ください。

マフラーをプレゼントする意味 💝”首ったけ”と思う人もいる?

プレゼントの意味の読み方・読ませ方! アクセサリーは?etc.


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まとめ

まあタイトルからして、これで
読書感想文を書いて学校に出すのは
むずかしいのかもしれませんが、
学校や先生の方針次第では可能
なんじゃないでしょうか。

先生の顔色を見て、これはエロい
ものではなく真面目な小説なんですよ、
だからこれで書いてもいいですか?
と打診してみてはどうでしょう。


あえて書くことにした場合は、
上に挙げてきた情報や私見を大いに
役立ててもらえたらと思います。



ん? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。
👉当ブログでは、日本と世界の多様な文学や
映画の作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/


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